普通ならみんな眠りについているはずの深夜にもかからわず、
「「「お帰りなさいませアイリス様!」」」
まるで待ち構えていた沢山の侍女たちが王女様を出迎えてくれた。いきなり連れてこられた僕らは城の上部にある豪奢な部屋に案内された。
「あの……」
「なんですか?あぁ、私のことはレインと呼んで下さい。貴方様方は王女様の客人としてお招きしたのですから」
客人ならもう少しやり方があるんじゃないのかな?アレって誘拐だよね。まぁ、レインさんが言うには王族であるが故に身分が釣り合い、年の近い遊び相手もいないので、アイリスの初めてのわがままに免じて、暫くの間遊び相手になって欲しいとのことだった。まぁ、しばらくしたら迎えも来るだろうし別にいいか。
王女様は冒険の話の続きをとカズマさんにせがんでいたけど、カズマさんの冒険の話は殆ど話し尽くしてしまったらしい。すると王女様は僕の方を見た。
「えっと、王女様……」
「アイリスでいいですよ。それに言葉使いもララティーナと接している時と同じようで構いません」
「それじゃアイリス様で……」
「様もいりません」
「悪いけど、様付けはまださせてくれないかな?力押しで呼び捨てにしろとかいつも通りあだ名で呼んでほしいとか言うのは勘弁してほしいんだ。その内呼び捨てにするから良いだろう」
「お前、何があったんだ?」
「前に話したけどそのっちは一時期それはもう物凄く偉い身分になって、会うたびに礼儀作法をしっかりしなきゃいけないって思ってたのに、ことごとくそのっちに押し切られてな………」
「なんだかお前も苦労してるんだな」
「こっちに来てからはまぁ色々と解放されたかな」
「ウミ様、お話を……」
「はいはい」
とりあえずバーテックスの話を軽く説明し、僕が中学校で所属していた勇者部について話していた。
「ボランティアですか?」
「そう、『人々のためになることを勇んで実施する』のが勇者部の活動目的なんだよ。まぁ魔物退治とかそういうのではなく、ゴミ拾いや猫探しみたいな事をしてたけど……」
「確かお前とユウキとトウゴウが所属してるんだよな」
「ユウキという方はあのピンク色のドレスを着た方ですね。トウゴウという方は青白いドレスの方ですね」
よく覚えてられるな。てっきり下々の方々なんて一々覚えられませんって言うのかなって思ってたけど……
「まぁあとは幼稚園とかで演劇をしたりとか……文化祭とかで……」
文化祭であることを思い出した。そういえば東郷に衣装作りを頼まれてたんだっけ?まだ全然作ってない。どうしよう……
「あのウミ様、どうかしましたか?」
アイリス様が心配そうな顔をしていた。僕は丁度良く部屋に入ってきた白スーツさん……クレアさんに道具一式と布とか借り、早速制作に入ると、何故かアイリス様とクレアさんが食い入る様に見入っていた。
「凄いですね。短時間でもう二着も……」
「城の侍女でもここまではいきません。ウミ様凄いですね」
「何故かこういう衣装作りとかが得意でして……」
「得意って言うよりかは名人芸みたいなものだろう」
名人芸って言われるほどのものなのかな?まぁとりあえず頼まれた分の衣装作りは終わった。
時刻的にはもう深夜を回っていた。そろそろ寝るべきかと思っていると、突然鐘の音が鳴り響いた。
『魔王軍襲撃警報!魔王軍襲撃警報!騎士団はすぐさま出撃!冒険者の皆様は、街の治安維持のため、街の中へのモンスター侵入を警戒してください。高レベルの冒険者の皆様はご協力ください!』
魔王軍の襲撃の知らせを聞いて、クレアさんが装備を整えた始めた。さて、僕らも言ったほうが良いけど、カズマさんは武器を持ってきてないし……
「ちょっと行ってくる。カズマさんはアイリス様と一緒にいて」
「あぁ、分かった」
「武器なら城の武器庫にあるからそれを借りれば……」
クレアさんがカズマさんも戦いに出向いたほうが良いと話すが、僕はそれを止めた。
「クレアさん、武器というのは慣れしたんだものじゃなければ駄目だと思いますよ」
「そ、そうですか……」
僕とクレアさんはすぐに外へと出向くのであった。
一時間くらいして戦いは終わり、僕らの勝利だった。とはいえ僕の場合は遠距離からの狙撃とワイヤーで魔物を拘束するくらいしかしてないけど、ただ気になったのは……
「あの、クレアさん。聞いていいですか?」
「何でしょうか?」
「どうしてここにいる冒険者や城の兵士はバーテックスに対して攻撃が通じてるんですか?」
「………やはりお気づきになりましたか」
クレアさんもそのことにはちょっと気になっていたみたいだった。クレアさんが言うにはバーテックスは倒せることは当たり前だと思っていたみたいだけど、ミツルギや他の街での噂ではダメージを与えられないとの話をきいていたみたいだ。
「アクセルの街では勇者の職業であるウミ殿や他の方々しか倒せなかったのですか?」
「はい、今は新しい職業の巫女のスキルで他の冒険者も倒せるようになりました。ちなみにカズマさんも巫女のスキルを使えます」
「最弱職の強みというものですか……」
「この街に巫女が?」
「いえ、いませんが……もしかすると」
クレアさんはある場所を見つめていた。僕もその場所を見つめると巨大な木が見えていた。
「あれは?」
「王都に伝わる御神木です。もしかするとあの御神木の力なのかもしれないですね」
御神木か………ちょっと気になるな。機会があったら行ってみるか……
アイリス様とカズマさんの部屋に戻り、また他愛のない話を続けるのであったが、そろそろ就寝の時間になり、僕らは明日には帰してもらえるような話を聞き、アイリスは名残惜しそうにしていた。
「お二人はなんだか昔の頃のお兄様みたいです。私には実の兄がいるんですが、もうこんな風におしゃべりすることができなくて、本当はもう少し残って欲しいんですがこれ以上わがまま言うと………」
「今、なんて?」
突然カズマさんが聞き返していた。
「…え?あ、あの…本当はまだ残って欲しいですが、と…」
「その前になんて言った?俺が何みたいだって?」
「ええっと、昔のお兄様みたいだと………」
「もう一度言ってくださいお願いします」
「お、お兄様みたいです」
「できれば砕けた感じで、もう一度…」
「お兄ちゃんみたい」
突然ガッツポーズをし始めたカズマさん、もしかして城に残るとか言い出さないよね
「ウミ、俺は城に残る」
「いや、明日には帰してくれるって……」
「お前………今のアイリスの言葉を聞いて何とも思わなかったのか?」
「悪いけど、妹的な存在が二人ほどいるんだよ」
樹はもちろん、めぐみんも自分で兄的だと言っていたし、ただお兄ちゃん呼びはちょっとうらやましい
「仕方ない。アイリス。ちょっと……」
カズマさんがアイリスに耳打ちをすると、アイリスが僕の袖をきゅっと摘み、上目遣いで……
「お兄ちゃん、お城に残ってくれないの?」
「ぐぅ…………」
「効果抜群だな。アイリス、さっきのセリフをもう一回、出来たらお兄ちゃんの部分を変えるんだ。あと11通りある」
「11通りですか?」
「あぁ、お兄ちゃんの他に兄ちゃまとか……」
「分かった。僕も残るから……アイリスに変なことを教えるな」
「あっ、今!?」
うっかり呼び捨てで呼んでしまった。だけどアイリスは嬉しそうにしていたからいいか。
「アイリス、残る代わりにちょっとお願いしたいことがあるんだけど………」
「お願いですか?」
「御神木を見てみたいんだ」
次の日、僕、カズマさん、アイリス、クレアさん、レインさんの五人で御神木にきていた。御神木はそれはもう大きかった。
「でかくないか……」
「この御神木は王都に突然生えた木です。そして成長速度は凄く昔の王族はこの木を神が植えたものだと言い出しまして、御神木として祀り始めました」
アイリスが説明する中、僕は御神木から感じる力にどことなく懐かしさを覚えた。
「この木………神樹なのか?」
「神樹とは?」
「クレアさん、神樹っていうのは僕がいた国にあった神様ですよ。この木からはその神樹と同じ力を感じます」
「ではこの御神木は神様だというのですか?」
氷雨さんに見せてもらったあの日記に書かれていた存在ってコレのことだったのか?でも、どうしてこんな所に、それにこの御神木の役割は……
「ウミお兄様、中には入らないで下さい。この中は認められたものしか入れないようなっています」
「そういう魔法がかけられてるのか?」
「いいえ、そういうわけではないのですが、もしかしたら御神木自身が張った結界でしょうか?私は入れますが、クレアやレインは入れません」
王族しか入れないか……だとしたら調べるのは無理そうだな。そう思い、僕らはその場を後にしようとすると、上からヒラヒラと花びらが落ちてきた。
「これは……」
花なんてないのに、どうして花びらが上から落ちてきたのかわからないけど、花びらが地面に落ちた瞬間、形を変え、一人の女の子へと姿を変えるのであった。
女の子は僕のいた世界の巫女装束を着ており、髪の色は赤色で見た目は10歳くらいだった。少女は目をこすりながら僕の事を見て……
「う~ん、ここは……あっパパ!!」
「「「「パパ!?」」」」
僕以外の全員が驚きの声を上げるのであった。
うん、謎の少女は出すかどうか悩みましたが、出してしまいました。謎の少女については次回やります。
あと12通りの呼び方ですが、シ○タープリ○セ○の呼び方です