この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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89 鎧の神器

「ということになったんだよ」

 

「何でぇぇぇぇぇ!?何でそんなことになってるの!?絶対無理だと思ってたのにぃぃぃ!?」

 

クリスさん、カズマさん、僕の三人は喫茶店に集まっていた。カズマさんはアクア感謝祭とエリス感謝祭の共同開催が出来るようになったことを話していた。

アクシズ教会の後、カズマさんがお祭りの責任者と話して、何とか共同開催に持ち込めたのだった。

 

「いや、俺はあくまで説得しただけだよ。共同開催をした方がいいっていい出したのは、ウミだぞ」

 

「君か!?」

 

首謀者が僕だと分かり、胸ぐらをつかんでくるクリスさん。というか僕はあくまで提案したまでなんだけど……

 

「何、私の加護を受けてるのに、何でアクシズ教に協力的なの!?前に聞いたけど、アクシズ教に入りたがっていたって聞いたよ」

 

「いや、それには色々と訳があって……あの、苦しんですけど……というかクリスさん、手伝い頼まれてるけど断ってもいいんじゃないんですか?」

 

「そ、それはそうなんだけどさ。昔から先輩に何か頼まれると、いつの間にか手伝わされるんだよね。特に君たちの蘇生の後始末とか……」

 

何だか苦労してるみたいだけど、でも何だかんだ頼まれごとをしっかりこなすあたり、本当にいい人なんだよね。この女神様って……

 

「それでクリスさん。神器の行方は分かったの?」

 

「そうだよ。祭りのことなら屋敷でも出来るのに、わざわざここに呼び出したって言うことは見つかったのか?」

 

「うん、アンダインっていう変なものを集めるのが趣味な貴族の屋敷にあるみたいなんだよね」

 

「それだったらダクネスにでも頼めば何とか成るんじゃないのか?同じ貴族同士だから大丈夫だろ」

 

「それは無理だよ。助手くん。アンダインはこの神器を非合法な手段で手に入れたみたいだからね。きっととぼけられるよ。何せ欲しいものはどんな手でも使っても手に入れる貴族だからね。ダクネスに交渉を頼んでも、そんなもの知りませんって言われて終わりだからね」

 

何というか真っ当な貴族ってどの世界でも少ないな。大赦の大物中にでも良からぬことを考えている人たちがいたし……まぁそういう人たちは何かをする前に手を討っていたから危険な目にはあうことはなかったけど……

 

「と言うことはアレですか?お頭」

 

「アレだね。助手くん」

 

神器回収はどうやらあっちでやるみたいだな。仕方ないか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後の深夜、侵入するための準備を済ました僕らはアンダインの屋敷の前に集まっていた。クリスさんは口元をバンダナで隠し、カズマさんはバニルさんの仮面を付け、僕は国防仮面の格好をする中、もう一人僕の隣に国防仮面がいた

 

「なぁ、ウミ」

 

「何?カズマさん?」

 

「てっきり俺はお前だけか、もしくはボタンかスミの二人が来るかと思ったんだけど、何でユミが来てるんだ?」

 

「カズマおじちゃん。このお屋敷に泥棒に入るんだよね。楽しみだね」

 

「出かける直前に友海にバレてな。まぁ泥棒向きのスキルも持ってるみたいだしな」

 

「泥棒って、いや確かに泥棒だけどさ。出来れば盗賊スキルって言ってほしんだけど」

 

「というかこんな事に巻き込んで、ユミの将来は大丈夫なのか?」

 

「えー?だって潜伏スキルが物凄いんだって教えてくれたのカズマおじちゃんだよ。物陰に隠れて奇襲が出来るって、牡丹も使えるんだよ」

 

まぁ、そういう考えなら仕方ないか。それにしても何でこんな時間なんだ?友海はたまたまトイレに起き出して、僕の格好を見て興奮して眠れなくなったから大丈夫だろうけど、もう少し早めでも良かった気がする

 

「ねぇ助手君、どうしてこんな時間なの?もう少し早めの方が良かったんじゃない?」

 

「人間、この時間帯の方が深く眠ってるものなんですよ。眠ってすぐだとちょっとした物音で目覚めるものなんですよ。日本で家族と暮らしてたころ、こっそり飯を取りに下りるのはこの時間がベストでしたね。これは俺が日々培ってきた生活の知恵ですよ」

 

「君にはもう何も言わないよ。ユミちゃん、眠くなったらパパにおんぶしてもらって寝るんだよ」

 

「うん、分かったよ。クリスおばちゃん」

 

「おば……いや、まぁ女神の年齢からしてみればそうなんだろうけど……おばちゃん呼ばわりされるとショックだな……」

 

「とりあえず早い所潜入しましょう。入り口で集まっていたらいつか人が来ますよ」

 

僕らは早速アンダインの屋敷に侵入するが、王城と比べて警備はそこまで厳しくなく、割と簡単に進入はできた。

 

「そういや気になってたんだが、お前も女神なんだから、アクアみたいな暗視能力は使えるんですか?」

 

「う~ん、先輩みたいにこの世界に連れてこられたんじゃなく、ウミさんの精霊としてきたから、暗視能力は全くと言ってほしいほど使えなくって、逆にウミさんを守る関係に特化してますね。あとは女神オーラがあってアンデットにたかられたり、悪魔やアンデットの正体を見破ったり出来ます」

 

「何だろ?アクアより使えるな。なぁ、ウミ、交換しないか?」

 

「モノ扱いはよくないよ。カズマさん」

 

「そうだな。悪かった。ほら、お頭、手を握ってくださいね。俺が先導しますから」

 

「助手君、別に手を握らなくても大丈夫だよ。以前王城に行った時もちゃんと付いて行ったじゃないか」

 

「何言ってるんですか。あの時はまだ月明かりがありましたけど今夜は星一つ見えない曇り空です」

 

「佐藤和真さん。私に意図的にセクハラをしたら強烈な天罰を下りますよ?急にお腹を壊した時、トイレに駆け込もうとしたら先客がいるとか。そしてかろうじて間に合ったかと思えば紙がないとか」

 

「調子に乗りましたすいません」

 

セクハラしようとしたのがバレて、天罰が降されるって怒られるカズマさん。それにしても恐ろしい天罰だな

 

とりあえず侵入を始めた。鎧を見つけた際にはカズマさんが持ってきた梱包材で包めば音も気にすること無く盗めるらしい

 

 

 

 

 

 

 

 

屋敷の中も特に警備はなく、潜入スキルも使う必要がないくらいだった。そんな中クリスさんの宝感知スキルで屋敷の怪しい部屋にはいるけど……

 

「クリスさん。本当に女神ですか?何で関係ない宝の前で立ち止まるんですか?」

 

「いや、今の私は女神じゃなくって盗賊のクリスだからね。こうお宝を見つけると盗賊血が……」

 

「出来れば女神としての血を騒がしてください」

 

「パパ、これ綺麗だよ。一つ貰ってもいいかな?」

 

「友海、盗んだらクリスさんみたいになっちゃうよ」

 

「何?将来の義賊仲間ができるのは嬉しいな」

 

「うん、分かった。おっぱいちっちゃくなりたくないから止める」

 

「ぶほっ!?」

 

友海の言葉を聞いて、カズマさんは吹き出した。その瞬間、クリスさんは膝を抱えていた。

 

「ちっちゃくないよ。こう寄せれば……それと助手くん。笑いすぎ」

 

「す、すみません。それにしたって……ちっちゃく……ぶほっ!?」

 

「………あとで助手くんのお金を盗んで孤児院に寄付するからね」

 

クリスさんの言葉を聞いて、カズマさんは笑うのを止めるのであった。それにしても友海は色々と正直すぎじゃないか?未来の教育はどうなってるのやら……

 

 

 

しばらく屋敷の中を捜索していると重厚な扉のある部屋に行き着いた。クリスさんが罠を解除すると

 

「ちょ、ちょっと待ってくださいお頭!」

 

「どうしたの助手君?」

 

突然中にはいるのを呼び止めようとするカズマさん。何か感知したのかな?でも中を見る限り人影はなく宝の山がたくさんあった。

 

「二人とも見てごらんよ!これなんかかなりの値打ち物だよ!」

 

「あっ、お頭ずるいですよ、それ俺が狙ってたのに!」

 

クリスさんとカズマさんの二人がお宝に目を奪われる中、友海は何かを発見し、僕に見せた。

 

「パパ、これ見て」

 

「ん?これは………腕輪?」

 

見つけたのは錆びついた腕輪だった。まぁここの貴族は変わったものを集めるのが趣味だって言っていたから、こういった物があってもおかしくないか。

するとクリスさんが腕輪に気が付き、覗き込むと……

 

「これも神器だね。目的のものじゃないけど回収しとこ」

 

「どんな神器なんですか?」

 

「これは頭の中に思い浮かべた場所に行ける神器だよ。本来の持ち主が使えば魔力とか関係なく、どこにでも自由自在に行けるようになるんだ。でも、所有者以外の人が使うとなると莫大な魔力を使うんだよね」

 

何というかかなり便利な神器だな。上手く使えば敵の背後に回り込んで攻撃とか出来るけど……

 

「それにしても目的の物が見つからないね。この腕輪の他に神器級の宝があるのは確かなのに……」

 

クリスさんがそんな事を言う中、カズマさんが急に何の変哲もない壁をペタペタ触り始めると、その一部がボコリとへこみ、忍者屋敷の回転壁のようにくるりと回った。

 

「隠し扉か、やるねえ助手君」

 

「こう見えてお頭の次に運がいい自信がありますから」

 

「中に入ろうか」

 

僕らは中に入ると部屋の中心には鎖に縛られた鎧があった。これが例の神器なのか

 

「この鎧、傷だらけだね」

 

「聖鎧アイギス。この鎧は魔王軍相手にずっとご主人様を守り続けた鎧だからね。この鎧の持ち主はどんなに激しい戦でも最後まで誰にも負けなかったんだよ」

 

クリスさんが傷を一つ一つ確かめるように触っていた。本当に物凄い鎧なんだな。

 

「ご主人様が病気で亡くなる最期までキミはよく頑張ったね…」

 

クリスさんは鎧に向かって小さく呟きながら触れたその手で優しく撫でた。

 

『おい坊主、気安く触ってんじゃねえよ』

 

どこからともなく声が聞こえ、全員が誰の声なのか確認する。まさかと思うけど、この鎧が喋ったのか?

 

「えっ。ぼ、坊主?それってあたしのこと?!いやなにこれちょっと待って!?今の声ってキミなの!?聖鎧アイギス!?」

 

『おっ、なんだよなんだよ坊主じゃねえのか。それならもうちょっとだけ触ってていいぞ。では改めて、初めましてだな、俺の名は聖鎧アイギス。喋って歌えるハイブリッドな神器。愛称はアイギスさんでよろしく頼むわ』

 

「鎧が喋るって情報なかったから、ちょっと驚いたけど、ねぇ、アイギス」

 

『アイギスさんだって言ってるだろ小僧』

 

「小僧じゃないよ!ていうか神器のクセに何でそんなに態度デカイのさ!」

 

「お頭、夜中に侵入してきてるのに、無機物と喧嘩してる場合じゃないですよ!そんな事より目的を!」

 

鎧と喧嘩を始めるクリスさん。そんな中カズマさんは鞄の中から梱包材を取り出した。

 

「そうだった。ねえアイギス…さん。あたしたちがこうして侵入してきたのは、もう一度キミの力を借りたいからなんだよ。あたしが、キミの新しい持ち主を探してあげる。その人は、前のご主人と同じ異世界人。日本ってとこから、この世界を救いにやってくる予定の人だよ!」

 

『あ?なに言ってんだお前、なんで今さらそんなことしなきゃなんねーのよ。俺は嫌だよ?だって俺の力を貸して欲しいってことは、そりゃ鎧として持ち主を守れってことだろ?ばっかじゃねーの?鎧だって叩かれりゃあ痛いし、この格好良いピカピカボディに傷も付くっつーの!大体その持ち主はどんなヤツよ』

 

「その…ハッキリとは断言出来ないけど、正義感と勇気溢れる、とても優しい」

 

『違う違う、中身なんてどうでも良いんだよ!要は外見だよ外見!巨乳か?スレンダー系か?言っとくけどそこのガキみたいな奴はNGだぞ。あ、美人系より可愛い系がいいかな。前のご主人は剣士だったし今回も剣士系がいいな。鎧の下は薄着で頼むわ』

 

この鎧、ろくなものじゃないな。もう神器じゃなくって呪われた鎧だな。

 

「なあ、この下品な鎧って本当に必要なのか?こんなもん海の底にでも沈めちまおうぜ」

 

「というかこのままそっとしておいたほうがいいって、その内ここの家主が試しに身につけるから、こいつも少しはおとなしくなるだろう」

 

「二人とも、気持ちはわかるけどこれでも神器。うん、気持ちはすごくわかるんだけど、我慢しようよ」

 

『?おいそこの黒髪の小僧は一体なにをしようとしてんだよ。…つーかちょっと聞きたいんだけどお前ら誰?そういえばさっき『夜中に侵入してきてるのに』って言ってなかったか?』

 

「そうだよ。俺たちは侵入者だ。今からお前を持って帰って、新しい持ち主に渡すんだよ。お前は神器で聖鎧なんだから頑張って働けよ」

 

「日本から送られてくる人って、女の子はあまりいないから、キミの希望に添えるかは難しいんだけどね。でもまあもし女の子がやってきたらそっちを優先してあげるから…」

 

カズマさんとクリスさんが説明する中、アイギスは大声で叫び始めた

 

『人さらい---!!』

 

 

 

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