「遅い!」
「GAA!?」
夜の闇を泳ぐ銀色の鮫がその牙を持って死徒に食らいつき、咬みちぎる。
「~っと、とりあえずここは全滅かあ」
ひゅん。と血振りをしてから剣を握り直すとスクアーロは気負いのない態度でどんどんと闇の深い森の中へと分け入っていく。
数分後、森の中から聞こえてきたのは悲鳴でも祈りでも、ましてや歓喜や闘気に満ちた物ではなく・・・
「う゛ざあ゛あ゛い゛!纏わり付くな!へばりつくな!葉を落とすな!毛虫をのせるな!暑っ苦しいぞお゛お゛お゛!」
苛立ちと怒に満ちたくだらない怒号であった。
・・・・・
がさり。と藪がかき分けられる。そこから顔を出したのは銀色の髪と粗暴な表情が特徴的な青年剣士。
「フ~ッ。呼吸が随分楽になったぜ・・・」
スクアーロは体中を軽くはたいて服に付いていた木葉やら小枝やらを落とす。最初は白かったYシャツは既に真っ赤に染め上げられており、黒いスラックスも所々が赤く斑模様を描いていて、それまでの戦闘の苛烈さを伺わせる。しかしその実赤は全て返り血の赤でスクアーロは疲れるどころか息一つ乱していない。
そんな人間離れした能力と、それに付随する仕事の完璧さを、イタリア裏社会の人間は尊敬と畏怖の念を持ってこう呼ぶ。
「・・・さすがはヴァリアークオリティだな・・・」
「何ィッ!?」
闇の中から現れた白人男性。スクアーロと同じく剣を握った初老の男性のことを彼はよく知っていた。いや、よく知っているなどという物ではない。
「何故テメエが生きている・・・?テメエは俺が殺したはずだ・・・剣帝テュール!」
そう言われてテュールは一つ頷いて答えた。
「ああ、確かに私はおまえとの戦いに敗れ、殺された。ここにいる私はタタリによって現出した、おまえの心に潜むデッドコピーだよ。まあ、有り体に行ってしまえば、意思を持ち、実体を有する幻覚というところだな」
「幻覚?嘘吐くんじゃねえ、このリアル、幻覚だなんて有り得ねえぞ」
そうだな。と頷きテュールは剣を構えた。
「しかしそれは詮索しても詮無きこと。剣士が二人顔を合わせているというこの状況でそれは唯の些末ごとだ。」
「だろうなあ。だったらまあ、もっかいきっちり三枚におろしとくのが賢明かあ゛」
先に動いたのはテュールだ。前回、彼がスクアーロに敗れたとき、決着まで三日三晩を要したそれを今回は・・・
「何イッ!?」
「う゛お゛お゛い゛・・・邪魔だあ・・・
瞬時にして三枚におろして見せた。
ジジッというデータがかすれるような音と共にテュールは四散し・・・
「なっ!?」
「・・・既に私は死んでいる・・・それをどうやって殺すことが出来よう?」
再びタタリとなって投影された。
「・・・は。ふざけた冗談だぜ・・・」
そう言って四散した方のテュールが持っていた剣を拾い上げるとスクアーロは一気に踏み込む。
ドンッ!ザグゥッ!
「ぅぐぁッ!」
テュールの体を背後の木に叩き付け、剣を持っている方の腕を拾った剣で釘付けにする。
「こっちは義手だろう?駆動部位はここだから、これで手を開かざるをえねえよなあ?」
言って力なく開かれた義手から離れた剣を瞬時に掴み、反対側の手を釘付けにしながら自分の剣で義手を少し上のところから斬り飛ばし、義手に突き刺さった剣を続けざま二の腕当たりに突き立てる。
「これでテメエは行動不能、大人しくしてろお゛」
テュールなどもはや相手にする価値もないというような素振りでスクアーロは血の臭いのする方向へと歩いて行った。
・・・・・
黒い、ヴァイオリンのような形をした武器が川面に落ち、色素の薄い、スクアーロのような銀髪を持った中性的な人物が崩れ落ちた。
「かつての剣帝もこの程度か・・・そうだな、XANXUSが帰ってきて、一段落したら2代目剣帝を名乗るとするかあ゛!」
終わり際については見たとおりですがリーズさん一言もなくお亡くなりになってしまいました・・・
次回、ベルVSタタリ、だれがタタリかは読んでからのお楽しみ~・・・ってことで
ちゃおちゃおー。