スクアーロVSワラキー、お楽しみください。
その少女に何故殺さないのかと聞かれ、ソレはこう答えた。
「何、さしたることではないさ、強いて言うなら同病相憐れむというやつだよ。では、血を吸わせてもらうとしよう」
4年後、シュラインにいた女性の当時の姿がそこにはあった。それに噛み付いているのは金髪に黒い舞台衣装のような服、襟元のクラバットが金の縁取りを施された黒尽くめのファッションに白を加え、高貴な印象を抱かせる。
もはやソレという必要もないだろう。ソレこそが死徒二十七祖の一角、第13位のタタリ、その本体たるワラキアの夜(或いはズェピア・エルトナム・オベローン)の姿だ。
そしてその牙が彼女の首筋に食い込み、血を飲み始めたところで・・・
「え?」
「・・・な・・・?」
ワラキアの右腕が落ち、鮮血をほとばしらせた。
それをなした影が一気に近付き、腰の入ったミドルキックでワラキアを彼女から遠ざける。影が唸りを上げた。
「う゛お゛お゛い゛・・・気味の悪いモンを見せるんじゃねえ゛・・・」
「ム・・・少々無粋なやからが入り込んだらしいな。飛び入り参加とは・・・いやいや、それほど悪い気はしないモノだ。ふん、食料が増えたというのも些か楽しい。」
彼女の前に庇うように立つスクアーロを瞼越しに見つめ、ワラキアはふむ。と一つ頷いた。
「まあ、それなりの猶予は出来てしまったようだが致し方ない。結果はそれほど変わらぬらしいので、この場はよしとしよう。しかしだ。舞台で好き勝手暴れられては脚本家としての自負に傷も付こうというモノ。君の血を持ってこの傷を癒すとしよう!」
癒すとしよう!と言う声と共に見開かれた目。閉じられていたときの涼やかな印象を根本から覆すような狂気的な血溜まりだった。
「テメエ、名前は?」
「・・・ぇ・・・?私・・・ですか・・・?」
「他に誰がいる?いいから名前、さっさと教えやがれ」
スクアーロの問に少女は少し逡巡してから
「・・・シオン・・・と言います」
と答えた。それを聞いたスクアーロは視線をワラキアに向けたまま、
「いいかシオン、よく聞け」
と指示を出し始める。
「すぐにこの場から離脱しろ。何も考えるな、振り向くな、とにかく走れ、この状況が忘れられるぐらいまで走れ。」
「え・・・?ですが・・・」
いきなりの逃げろという指示に困惑するシオン。スクアーロは怒りの形相で振り向くと怒鳴った。
「いいからさっさと逃げやがれ!ちょろちょろされると邪魔なんだよ!俺はそろそろ骨のある相手とこっそりひっそりじっくりゆっくり、暴れてえんだあ゛!」
「・・・ッ!わっ、分かりました。その前に、あなたの名前を聞かせて下さい」
ひくっ。と喉を鳴らし、微かに怯えたようであったが、シオンはすぐに気を取り直して自分を助けた者の名を問うた。
「スクアーロ。
「では、スクアーロ。どうか無事で!」
おう。と短く返すとスクアーロは一足飛びに距離を詰め、ワラキアに斬りかかる。
「カット!」
ワラキアはそれを自らの操る悪性情報を持って迎え撃ち、しばしの拮抗の後に弾かれる。
「チッ。優男みてえな見た目でなんてえバカ力だ」
「ふむ。若いのになかなかの腕前だな・・・ではこのようなモノはいかがかな?」
ワラキアが右手をかざす。両目は見開かれ、そこから伝う血液はまるで号泣する悪鬼のようだ。
「・・・!走れ!シオン!」
「はっ、はい!」
後ずさりしていたシオンが全力疾走でその場を離れたのを見送り、スクアーロは苦笑未満の表情を浮かべながらワラキアの右手の纏わり付く黒いモノを見つめる。
「・・・マフィア界の恐怖の象徴だって噂の復讐者でも、こんなパワーは出ねえかも知れねえなあ゛・・・」
全霊の呆れを込めたスクアーロの呟き。それにワラキアの呪文のような言葉が重なる。
「魂魄ノ華欄ト枯レ杯ノ蜜ハ腐乱ト成熟を謳イ例外ナク全テニ配給、嗚呼是即チ無価値ニ候!」
ミキリ。と言う音がその手から聞こえ、ワラキアの歌はまだ続く。
「蛮脳ハ改革シ衆生是ニ賛同スルコト一千年、学ビ食シ生カシ殺シ称エルコト更ニ一千、麗シキカナ毒素遂ニ四肢ヲ侵シ汝ラヲ畜生ヘ進化進化進化進化セシメン!・・・カカカカカ・・・カ・カ・・・カット!カットカットカットカットカット!!リテイク!!!」
「なんだあ?急に饒舌になりやがって・・・妙な化けモンだぜ・・・ッ!」
ワラキアの右手が一瞬大きく見えた。本能的に回避行動を取ろうとするスクアーロの目にはワラキアではなくその目前に現れた黒い渦のみが見える。
「お待たせした・・・これより幕と行こう!ナイト・オブ・ザ・ブラッドライアー!」
渦が動き始め、スクアーロは全力バックステップを踏み、その攻撃から逃れようとする。
「カット・・・カットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットカットォォォ!」
狂ったような叫びと共にナイト・オブ・ザ・ブラッドライアーの渦がかき消える。そして再びスクアーロが回避行動を取るより半瞬早く、彼の足をマーモンが粘写したような血涙を流す泣き笑いの紋章がスクアーロの足をかすめた。
「ぐっ!
全体重を込めた衝撃剣。それをワラキアは片手に生み出した小さな光で受け止め、更に数倍の技で返した。
「開幕直後より鮮血乱舞!烏合迎合のはて名優の奮戦は荼毘に付す!鼠よ廻せ秒針を逆しまに誕生を逆しまに世界を逆しまに廻せ廻せ廻せ廻せ廻せえーっ!」
ナイトルーラー・ザ・ブラッドディーラー。ワラキアは自らを高速回転させてその身をダイヤモンドカッターの刃のようにする必殺技だ。
慌てた様子でそれを躱すスクアーロ。しかしいつまでも躱し続けられるはずもなく、東の空が白み始めるころ・・・
「ふん!」
「なにっ!?」
スクアーロは光こそ出さなかったモノの先程のワラキアのように絶妙のタイミングでナイトルーラー・ザ・ブラッドディーラーをガードした。刹那、スクアーロの外見が揺らいで見えた。ぶれるように重なる長髪黒衣の影。
「
場所が場所なら海面すらも抉るような剣技が走り回り、青い炎を身に纏った影が刹那の後にワラキアの胴体をとらえた。
「ゴアアアアアアアッ!」
細切れに刻まれたワラキアは朝日の中、唯の噂へと還っていった。
・・・・・
「これが俺の経験したタタリだ」
現代のスクアーロはそう言ってこの話を締めくくったのだった。
「・・・?なんだ今のは?髪が伸びたような・・・」
桐嶋版メルブラのワラキーはすごかったなあ・・・というわけでそんな桐嶋ワラキーよろしくためで盛大に喋って頂きました~
それでは皆さん、次回もお楽しみに!
ちゃおちゃおー。