(先に1も投稿しているので注意してください)
『あーあーマイクテスト……双方、準備はいいか?』
通信機からスレイの棒読みな声がメット内に響き、大丈夫と返す。アンドーヤ基地の海上演習場、その直上で浮遊するゼノリオンの500m先に、ディスカッターを構えるサイバスターから、問題ねぇ、とマサキの快活な声が届く。ファインマン兄弟が徹夜でのサイバスターのチェックおよびデータ取り、更にはイスルギ重工からの依頼でサイバスターのリアルモニタリングに集中するため、戦いの審判は昨日のシミュレータでの繋がりで、スレイが務めることとなった。なお、ユルゲンたちは逆にゼノリオンmod2とシェースチのモニタリングで同じく手が離せない状況だ。
結局、一夜明けても、ちゃんとした答えを言葉にできなかった。ゼノリオンに乗る前、そのことを告げようとしたが、みんなには「それでいいんじゃないか」「真面目だな」「堅苦しい」と、呆れられたり、苦笑されたりしてしまった。納得はいかないが、それでも、心に迷いを抱いて、この場に辿り着くことができた。
『勝利条件は、参ったと敗北宣言をするか、こちらのモニターで戦闘不能の判断を出すまで。演習場の貸し出し時間の3時間を超えた場合は強制終了、基地周囲への被害を出しても同様。コックピットへの意図的な攻撃は不可。最後に、勝負を受けたテンザンとシェースチが勝った場合、"ある時期"以降、伊400のメンバーをラ・ギアスへ亡命させる……以上だ、異存はないか?』
「ホッ、いいっての」
『ま、こっちから持ちかけたんだ。そこは引き受けてやるよ』
『安請け合いするからニャー」
『うっせぇ、男に二言はねぇ』
クロの呆れた口調に、マサキが悪態を返すとともに、サイバスターが構えを取った。上段付き構え、分かりやすく、そしてサイバスターの特性を存分に理解した戦法。対するテンザンはいつも通り、左のハンドレールガンを突き出して水平に、右のハンドレールガンは肩の位置に持ってくる。霞の構えに似た、受けの形。しかし銃器であるが故に、このまま攻勢にも向けられる。合わせて、レールガンのマシンセルをスピアモードで形成、切先をサイバスターに固定する。
「いくぞ、シェースチ」
「ええ、テンザンさん」
『やるぜ、シロ! クロ!」
『オーライニャ!』
『子どものオモチャにされた恨み、ここで鬱憤纏めて晴らさせてもらうニャ!』
それぞれが感情が、場の緊張感が張り詰めさせていく。海鳥の鳴き声がやがて失せ、波と風の音だけが場に残る。その中で、誰かの喉が音を鳴らした。
『始め!』
レフェリーの開戦の号令と、空気が爆ぜた。
『テンザンくんが剣をやっていた? いや、そんなことは聞いたことがないよ』
ゼノリオンの剣戟、いや戦闘方法についてリョウトに尋ねたことがあった。ヒリュウ改やハガネに残された戦闘データ、そして先日のジブラルタルでの剣戟を見るに、もはや武芸百般としか言いようのない扱い方をしていたからだ。だが、その予想は外れたようだった。
『あれは天賦の才ってやつじゃないか? それも、災いレベルのやつ……そういう奴から、早死にしちまったんだけどな』
戦闘経験のあるイルムは肩をすくめながら、しかし目は笑うことなく断言した。
『……俺たち教導隊には、それを束ねる隊長がいた。その人も強かったが……ヤツは、才だけで上回っている』
過去を振り返りながら、戦闘データを振り返っていたカイは言った。
そう、テンザンと戦った人間は全て、その才を恐れた。だが、その全ての戦闘では、多対一が常であり、本当の意味での一対一を経験をしたものは殆どいなかった。
それ故に、機動兵器、それも専用機に乗ったテンザン・ナカジマの戦闘技術の全てを一身に受けたものは、誰もいなかった。
そして、それを初めて受けることになったマサキ・アンドーの感想はただ一つ。
「化け物かよっ」
剣がいなされる。ファミリアは掴み、踏み台にされる。カロリックミサイルは基点から撃ち抜かれる。剣の間合いでのみ戦いとなっているが、それでも尚、圧倒される。自身が見様見真似とはいえ神祇無窮流を納めていなければ、間合いの維持すらできず、両腕を切り落とされていただろう。それほどまでの差が、マサキ・アンドーとテンザン・ナカジマの間にあった。
「そこまでの力を持ってて、なんでこんな中途半端なことばっかしてんだよ、ええっ?!」
『ああ、そうだなっての!』
「マサキ、マズイにゃ! もう左腕の負荷がっ」
「分かってる、クソ!」
強引に剣を振り抜き、受けたゼノリオンを退けさせる。パワーではこちらが上、それを分かっていてもなお押しきれないのは、純粋に腕の差だ。むしろ相手は今の一撃の合間に、レールガンの弾丸が脚部の掠め、白い装甲に傷を作っていた。
「わかっちゃいたけど、そういうことだよな」
テンザン・ナカジマは剣や銃の才能があるのではない。"機動兵器の戦闘"に対して、神がかり的な才があり、それを伸ばしているのだ。魔技/神技とも評されるべきそれが、精霊に愛される魔装機神操者であるマサキの嗅覚には、まだ成長途上であると認識していた。
「それなのに、窮屈そうに見えるのは……未来ってやつのせいか」
『……さぁな』
「だったら、そいつを捨てちまえるようにしてやるよ!」
今度は、剛の剣を意識して切り込む。下段からの切り込みは、しかし両の刃を交差させることで容易く捕まり、折られると気付いた瞬間で剣を回して引っ込める。だがそこに蹴りを入れられ、追撃の2撃を何とか剣の腹で受けつつ、間合いに入りすぎたと後悔する。
「受けてたら負けるか。へっ、ゼオルートのおっさん相手でもここまで一方的じゃなかったぜ」
魔力を満たし、斜めの軌道を取る刃を力で弾き、怯んだゼノリオン相手に、更に正中の振り下ろしを見舞うが、これを反対のレールガンで撃たれることで止められ、そのまま引き下がられた。拮抗しているように見えて、その実は機体性能差によって成り立っている。そして、相手はそれを何度も覆してきた。さぁどうでる、と正眼に構え直していると、パワー負けを認識したゼノリオン/テンザンが双銃をホルスターにしまうと、今度は背中の盾を両手で持って構えた。盾の縁から溢れた銀/マシンセルは薄い刃となし、それは盾から重剣へと役目を変えた。それによる構えは、霞。ここにきて受けかとも考えるが、そうではない。
『……悪いが、こいつの試運転でもあるからな。こっちも付き合ってもらうっての!』
「上等!」
霞の構えのまま、スラスターいっぱいによる踏み込み。放たれた横薙ぎをディスカッターで受けず、そのまま上へいなした瞬間、回転の勢いをつけた後ろ回転蹴りがサイバスターの胴を打つ。衝撃に堪らず後退しかけるが、しかしすぐに横に逸れた。瞬間、その場をゼノリオンの盾/剣が回転を加えて切り裂き、無防備に見える背がマサキの前に現れた。今ニャ、とシロクロの叫びに、戦士の勘がブレーキをかけた。そして迎撃のため、風のプラーナをディスカッターに込める。途端、両腰のバーニアにより縦に一回転したゼノリオンが、その勢いのまま刺突を繰り出してきた。
「虚空斬っ!」
迎えるのは神祇無窮流・虚空斬。風の精霊の力を宿したその剣は、火花を散らしながら重剣の突きを横に逸らすことに成功し、そしてサイバスターに、即座に盾を手放したゼノリオンの肘打ちが刺さった。衝撃で意識が一瞬飛ぶ、だが、危険と判断し、上へと退きつつ、牽制のカロリックミサイルを無数に生み出して放つ。それはすぐさま撃ち落とされたが、距離を置くことに成功し、一瞬の呼吸を整える。
その呼吸の間に、先ほどゼノリオンの手から離れた盾が迫る。ストライクシールドみたいなやつだった、とマサキが思い出した時には遅く、高速回転した盾の直撃をもらった。
「がっ、あぁ」
なすすべなく吹き飛ばされ、海に墜落する。そのまま気を失わなかったのは、マサキの生来の頑強さと負けん気のおかげだった。それ故に復帰は早く、海水を浴びた飛び上がるサイバスターは、疾風でもってそれを払う。同時に起死回生の手を思考する。
アカシックバスターとコスモノヴァはタメが長くこの場では不足。サイフラッシュは必ず決めなければこちらがダウンするためリスクが高すぎる。何か他に手はないか、その思考は一瞬で、同時に脳裏に浮かんだのは、恩人の振るった剣だった。
「シロ、クロ、こっから更にぶん回すぞ!」
「「ええっ!?」」
2匹の悲鳴を無視して、両翼から風のプラーナを全開にしてサイバスターを上昇させる。ディスカッターには力を更に纏わせ、一撃を重く、そして加速させる。迎撃の姿勢を取ったテンザンのレールガンが4回瞬く。四肢を狙った牽制、それをあえて受けて、その上で減速はしない、そこでついに、テンザンが狼狽える気配が見えた。
「そこだっ!」
一撃。ハンドレールガンの刃で受け止められるが、想定通り。そのまま剣を振り抜き、再度距離をとりつつ再加速。勢いを逃さないようにしつつ横に弧を描きながら、もう一度剣を振るう。今度はいなされるが、されるがままにして再度離脱。一撃離脱を意識しながら、今度は下にループを描きながら、真下から攻めこむ。これを盾で受け止められそうになったが、その横を縫うように切りつける。その一撃は、ゼノリオンの腕を切り裂いた。
『コイツは……っ』
「見様見真似! 乱舞の太刀!!』
通った。その意識とともに、更なる加速を続ける。加速のたびに機体は風に近づき、そこから放たれる刃はゼノリオンに傷と、そしてマークを付けていく。風を遮るものはない、故にこの刃は透る。ギリギリと震える肢体に耐え、その一方で冴えてくる剣筋に身を任せるままに、サイバスターを駆り続ける。
まだ遅い、まだ浅い。
より早く、より深く。
集中する、加速する、意識が剣に潜っていく。
ディスカッターの輝きが増し、サイバスターの軌跡が光を帯びる。
本体ならば、この技を習得することはまだ先の未来であるはずだった。だが、同等かそれ以上の技量をもった4人のパイロットとのハンデ戦、"テンザン・ナカジマ"という災禍/才気、そしてサイバスターを動かすラプラス・デモンコンピュータが導く未来を見通す"精霊"の意思が、マサキの剣を未だ届かないはずの高みへと引き上げていく。
テンザン・ナカジマに宿る、呪縛/未来を断つために。
「未来を知ってるっていっても、そんなのでテメェを縛る必要なんかねぇ! オレも、お前も、ここにいるだろ! その理由に、正義の味方もあるんじゃねぇのか!」
『っ……!』
加速、斬撃、加速、斬撃、加速、斬撃。
ゼノリオンは双銃剣によって一撃一撃に対応し、致命打を避けつつも、しかし確実に機体に傷を増やしていく。それでも、徐々にその傷を受ける割合が減ってきている。マサキが5の攻撃を仕掛けるうちに、2撃、3撃と防がれることが増えていく。現に今、レールガンの1発で持って、逆袈裟の剣線を合わせられ、そのまま弾かれた。確実に対応を始めた魔人を相手に、しかし勝機を見出したマサキは、最後の一撃を見舞った。
高速三連撃。虚空斬を応用し、幻影の風の刃を5つ生成し、右払いから始まる剣の実体と合わせて繰り出したそれは、その幻を撃ち抜かれ、実体の2撃を防がれつつも、本命の3撃目は頭部へ通した。
瞬間、ディスカッターの真言が瞬き、魔法陣が完成する。淡い空色の巨大な陣は、その中心にゼノリオンを置くことで、中心点の存在を拘束する。
『っ、まさか、本当に乱舞の太刀かっての!?』
「へっ、言ってるだろ。お前が未来を知ってるってんなら、俺たちはそれを上回りゃいいだけだ!!」
ディスカッターの切先に光が灯る。魔法陣と連動したそれは、中心点へ叩き込めば相応の威力を爆発させ、敵機へ致命傷を与えるだろう。
「俺の勝ちだテンザン、さっさと答えを聞かせてもらうぜ」
だからこその勝利宣言、しかしテンザンは、それを受け入れないようだ。審判、と通信機に向かって叫ぶが、機械からは無言しか返ってこない。どういうこった、と嘯くマサキの前に、答えが浮かび上がってくる。
『マサキ・アンドーさん。貴方が戦っているのは、テンザンさんだけではないんですよ?』
「さっきの盾……!?」
それは先ほどまでゼノリオンが持っていたはずの大楯だ。いつの間にか手放していたが、乱舞に集中していたことで、それがどこにいるかをマサキは見失っていた。その盾が、交差部分を中心に展開する。ラ・ギアスの文字が刻まれた中心が輝くや否や、左右が大きく伸び、その内側から銀の枝が広がり出した。枝ははやがて膜を作り、ゼノリオンと、それを取り囲む魔法陣ごと覆い尽くしてしまった。
『ヴェルトール・イデア。この盾は、貴方のような人と力でも、そう簡単に壊せないと思ってください』
「言うじゃねぇか!」
安い挑発、だがそれで十分。剣を最上段に構え直し、サイバスターを膜と魔法陣の真上へと一息に移動させる。呼吸を、剣と、サイバスターに合わせる。
「なら、こいつでトドメだ!」
サイバスターを落とす。加速と落下の認識が、サイバスターを更に加速させ、ディスカッターの輝きが極限まで高まる。今出せるこの一撃をゼノリオンが作り出した光の盾へと叩き込んだ。途端に暴風が吹き荒れ、銀と翠の光が互いを食い合い始める。ディスカッターの切先が震え、力の反発に押し負けそうになる。
『ぐうううぅぅっ』
「っ、うぉおおおおお!!」
それを自身の魔力と根性で踏みとどまらせ、更に踏み込む。剣が更に前へ突き出て、銀の盾へと入り込んでいく。そしてその剣が半ばまで入り込んだ瞬間、銀の膜がひび割れ、そして銀と翠と空が爆発する。その光の嵐の中をサイバスターはかき分け、先にいるだろう敵へと向かう。このまま正面を切り、頭部を絶って戦闘不能とする。
これで俺の勝ちだ、その思いとともに、光の先に見えた影に対して、渾身の一撃を放つ。
そして、その真横から現れたゼノリオンの一閃によって、ディスカッターを握りしめた右腕を切り飛ばされた。
「な……なん、で」
『ヴェルトール・イデアの目的は乱舞の太刀の防御じゃない、乱舞の太刀の拘束から逃れるためだ」
唖然。そんな呟きしかこぼせなかったマサキへ、光の収まった先にあった、レールガンの一丁を回収したテンザンは淡々と告げた。
『ヴェルトール・イデアは俺とシェースチの念で、レプリカのブラックホールエンジンをオーバーロードし、マシンセルを大量展開するシステムだ。このエンジンはシラカワ博士の魔術理論が用いられている、だったらそれは、同じラ・ギアスの持つエネルギーにも反応するはずだ……だからわざと、魔法陣全体を覆い、広げた盾と干渉させて、盾の崩壊と陣の崩壊が同時になるようにした』
おかげでまたシェースチに無茶させちまったっての。そう告げるテンザンの声には自嘲の色と、そして安堵と信頼があった。
『マサキ・アンドーなら、きっと"私"の知る未来や想像以上の成長をする。それこそ、最悪ポゼッションをするぐらいに……今回は、乱舞の太刀までだったが、だからこそ対抗策が閃いた。盾を割った瞬間、そのまま切りかかってくるはずだ。けれどもこっちがそこで防御の姿勢を取っていたら、それこそ更に成長するかもしれない。だから、一瞬のための囮を置いて、横合いから斬った』
切り飛ばされた右腕が、ゼノリオンの上に降ってくる。それを両腕でキャッチすると、そのままサイバスターへと差し出した。
『なぁ、マサキ。"私"は、俺の意思で、今も戦ってるんだ……だからよ、そこは余計なお世話なんだっての』
「……それは、我慢してるんじゃねぇのか」
たまらず、声をあげる。テンザンの声に、怯えを感じってしまったからだ。
マサキはここにきて、知ってしまった。子供達に向けていたテンザンの笑みを。勝ち抜き戦を見ていてその後に楽しそうに感想戦をするテンザンの笑い声を。正義の味方とはと問われたに泣きそうになっていた表情を。
「テンザン、お前は……戦いに向いてないんじゃないか? いや……お前はきっと、戦士じゃないんだ」
『そうだな……だから、俺は、正義の味方志望でいい』
無理をして、人を殺すことに、懸命に向き合っている。マサキのようにそれを受け入れた存在であるならば、あるいはただの兵士であれば、はたまた大義を持った英雄であれば、それは自然と受け入れられるもののはずだ。
何故ならそれは敵だから、倒すべき宿敵だから、任務の障害や目的だから。そうやって、ただ淡々と、人という種の機能として麻痺していくはずの感性だ。
『正義の味方ってのは、きっと自分の特大のエゴを押し付けて、それを色々な人が受け入れてもらえるやつだ。正しき怒り、みたいな……それには、力も必要で、責任もある。だからこそ、人々の希望に、灯火になれる』
俺にはきっと無理だ、そうやってからからと笑う男/子供は、それでもと続けた。
『これだって、正義の味方の一つかもしれない。一人だけで痛みを抱えて立ち上がり続けるやつや、泣いている顔を隠しながら悪って言われている連中と戦い続けるのも、立派な正義の味方の在り方だと思う。もしかしたら、誰も殺さずラブ&ピースを唄い続けるやつだっているかもしれない』
一つ一つ、思い出すように話すテンザンに、斬られた腕を受け取ったマサキは、ただ黙って続きをまった。
『俺は、そこまでできない。ただ、無相応な知識と、それなりの腕だけを持った、ただの人だ。ただの悪役の役割を果たして死ねればいいと思う、馬鹿野郎だ。そんな俺にも、誰かを助けたいって気持ちや、守っていきたい場所、許せないやつも、色々ある。それをやっていくには、正義の味方のような、何かを為せる存在をコンパスにして、自分を誤魔化し続けるんだ……よくある、誰かの真似事しかできない、バカでいいんだ』
泣きそうな熱を帯びる声に、マサキ/正義の味方は問いかける。
「それは、正義の味方じゃねぇ……ほんとに、ただの人じゃねぇか。お前は、人だろ?」
『そうかも、な。けど、俺がきっと、ただの人にもなれなかったから、こんな風に思うんだよ……自分で自分の命を捨てるやつは、善人面も、悪人面も、半端にしかできない……だから俺も、人の命なんて背負う覚悟も持てない……けど、それでも、やりたいことがある』
「……それは?」
『こいつらが生きて、笑っていられる未来が見たい。それで、もし手が届く範囲に他の人がいれば、少しだけそこに手を伸ばしていたい』
それを目指すことが、俺にとっての正義の味方だ。
ゼノリオンのカメラアイが、基地の方向へそっと向けられた。つられてマサキもそちらを見ると、海岸線沿いに、伊400のメンバーが並んでいるのが見えた。表情まではわからない。だが、そこには悪感情と呼べるものはなく、ただ、しょうがないな、という許容の感情が感じ取れた。
「……はぁ」
『……悪いな、俺の方が年上のはずなのに、ガキみたいな答えになって』
「いや……ただ、さ」
申し訳なさそうなテンザンに対して、思わずため息をつきながら、どっと力が抜けて、コックピットシートに背中を預ける。安心感により、緊張が解けたからだ。
「お前だって、立派な正義の味方だよ」
答えには、理解できないものがあった。
それでも、泣きながらでも立ち上がり、怖い怖いと喚きながら歩き続けようとする奴は、どう表すか。
それに、正義の味方、という言葉が、すとんと当て嵌まったのだから。
戦闘シーンのみ後編にしました。そのため短くなっています。
ユルシ亭ユルシ亭…