スパロボOG TENZAN物   作:PFDD

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今回はRecode of ATX ディバインウォーズの#3と#4の間ぐらいのふわっとした時間軸になります。


未完成のATX

【新西暦186年 9月BB日】

 

 いつもの日記の前に先日の戦闘での反省点を書いていこう。報告書には出せない内容も込みでやれば自分用の記録にもなるだろう。

 1.独断専行。正直言ってこれは私のワガママが強い。『テンザン』なら確かに勝手な行動をするし、今までの訓練でも極力スタンドプレーをするようにしてきた。今回は私のような人間の勝手に他の人間を巻き込みたくない、という思いからやって、他の兵にはデータ取りだけに専念させたが、そもそも私の手綱を取れなかった時点で彼らは罰せられるのだ。それだったら最初からお目付け役ではなく、それこそ母艦からのような物理的に制止が間に合わない場所にいてもらうべきだった。それに加え、独断専行に乗る多数との戦闘では、私はまだ弱い。相手がリュウセイやアヤのような素人の毛が生えた程度ならともかく、対空戦に慣れた戦車隊やライディースのような正規軍人のPTパイロットがもっといれば確実に墜とされていたはずだろう。過信は禁物だ。だが『テンザン』として、そして私個人の事情(自殺)に他者を出来得る限り巻き込みたくはないというワガママのため、今後も単独行動は続けなければいけない。必要なのはそれが許される状況・環境を作ることあろう。

 2.リオンとの適正。そもそもリオンは設計思想的に戦闘機からの発展だ。『テンザン』本来の戦い方を終始できるならともかく、私のような格闘戦が主となってしまうなら絶対に合わない。現に今回の戦闘では加速を乗せたとはいえ、戦車を持ち上げ横転させたり、咄嗟にゲシュペンストを蹴ったりと、何度も無茶をしたものだから、フレームへの負荷が尋常ではない物となってしまって整備員の人たちに怒られてしまった。そう考えると、私の今の戦い方はリオンには合わないのかもしれない。少なくともガーリオン、できればゲシュペンストクラスの運動性と剛性を保っているのが一番だ。本来『テンザン』が乗るバレリオンには、正直、合わないだろう。勿論乗ることになればバレリオンを十全に扱えるようにするが、リオンの時より戦えるかわからない。

 3.戦闘での武装。結論を言うと、近距離兵装が足りない。事前に胸部マシンキャノンを多目的ランチャーに換装してチャフを積んだのは逃げの手としてよかったが、迎撃・近接用にもう一度マシンキャノンにするか、別の手段を考える必要がある。できれば簡易的なナイフでも括り付けられないか相談する必要がある。

 以上、反省点の書き出し終了。

 

 ここからいつもの日記にする。

 まず今の私は潜水艦でアイドネウス島への帰路についている。戦闘データは既に送信済みだが、私の乗ったリオン・テストタイプ内に蓄積した損傷具合を直に研究員が見て今後の開発に反映させるためだ。おかげで私は事務的な仕事やシミュレータ、それに日課を行う以外は時間が空いており、心境を落ち着けるのに丁度いい状況だ。

 次にこの前の戦いだが、リュウセイたちと戦えたことは、予定通りとは言えちょうど良かったと言えた。相手も初陣同然だったから、私のような人間でも少しはうまく立ち回れることができた。勿論ライディースや戦車部隊の砲撃には何度も冷や汗が流れ、次の行動を考え続けなければ手を止めてしまっただろう。命のやり取りなんてまっぴらゴメンだ。だが私の役割と望みはその命のやり取りの中にしかないのだ。本当、ふざけている。

 そもそも、私は死にたいはずなのに、自分に死がぶつけられようとする瞬間を常に恐れている。つまり、私はまだ何だかんだいって生にしがみついているのだ。何というか、我ながら浅ましい。こんな世界にいたくなくて自殺を決行し、失敗し、確実に死のうと『テンザン・ナカジマ』の役割を遂行しているのに、ここに来て体が死を拒否するとは。確かに役割を全うできずに死んだら悔しいが、それならそれで死ねるからいいはずなのに、だ。もっと『テンザン・ナカジマ』らしく享楽主義に生きれれば、死ぬコトになっても特に怯えずに済むのかもしれない。ならやはり、より『テンザン』に成り切らなければいけない。追加でここも反省点に入れておこう。

 それと、先程の反省を踏まえ、私の方でリオンの改造を提案、もしくは早期に手足の自由度の高いガーリオンの配備を整備班やアードラーに提言する必要がある。やはりリオンでは思った通りに動けないことが多いからだ。せめて武器の追加ができれば、と考えている。

 最後にリュウセイの腕前だったが……まぁ、初めて戦ったときのリョウトよりはマシぐらいだった。とりあえず、向こうもほぼ初陣と考えれば妥協点かもしれない。

 とにかく、これからだ。私も、リュウセイも。

 

 

【新西暦186年 9月C日】

 

 流れるようにラングレー基地へのちょっかいに参加することが決まった。どうしてこうなった。アードラー死ね。ビアンふざけんな。

 

 

【新西暦186年 9月E日】

 

 また出撃前に日記を書くことにする。まずはどうしてこうなったかを書き出そう。

 

 初陣からの帰還後、リオンを預けてすぐにアードラーへ報告し、ついでにリオンの改造もしくは後継機を寄越すよう要望も言って、後はDC決起まで訓練付けかと思って研究室から出ようとした矢先、ビアンとシュウ・シラカワが部屋へとやってきたのだ。アードラーがおべっか着せて私に先程の報告と同じことを言うように命令してきた。恐らく、自分が選出したパイロットの戦果を総帥に言わせて、自分の評価もあげようという算段だろう。今思い返せば、あの時横にいたシュウ・シラカワの目がゴミを見るようにアードラーに向けられてたと思う。

 とにかく報告を終えると、何故か興味を持ったらしく、私の乗っていたリオンの所に共に向かうことになった。アードラーもついてきた。リオンの壊れっぷりを見てアードラーは青筋を立てて私を責めようとしたが、ビアンとシュウはアームで吊るされ何とか待機状態を保っているリオンに飛び乗り、損傷部の激しい部分などを調べ始めた。整備員たちや他の研究スタッフもいきなり現れた2人にぎょっとしたようだが、ビアンが仕事を続けろと言うと、リオンに修繕・解体に戻っていった。

 そして一通り見終わると、私に対し「改良点は何かあるか」などと言ってきた。思わずはぁ、などと言ってしまった。『テンザン』らしくはあるが、私としてはもっとうまくウザい言い方があったと思う。恐らくは状況に流されっぱなしで冷静な対応ができなかったせいだろう。

 とりあえず、リオンはまだテスト型だろうからという前置きを置いて、もっと人型っぽくしてくれと言った。ぶっちゃけこれだったら戦術としては戦闘機にテスラドライブ乗っけたほうがマシ、だとも。

 そうしたら、ビアンは「お前自身はどういう機体にしたい」などと聞いてきた。改良案の件はさっきの報告の時に言ってやったのだ、純粋にこんな機体がほしいという要望として「一点突破と小技を切り替えられる機体」と答えた。一点突破は対スーパーロボット、小技は対リアルロボット、その両方を持った機体。つまりは、対ハガネ・ヒリュウ改部隊を念頭に置いたものだ。ここまでいっては何だが、ノーマルのガーリオンでも大型武装を乗せれば問題なく条件はクリアできるだろう。

 ビアンは少し考え込んだので、少し冷静さを取り戻した私は、何というか『テンザン』だったら挑発するだろうと思い、極めて拙いことをいってしまったと思う。

 

「そんなものはなくとも、今のリオンの発展形で十分あんたのロボットだろうとぶっ倒せる」と。

 

 言った直後、空気が凍った気がする。アードラーと、そしてあのシュウ・シラカワも口をぽかんと空けていた。

 今書き出すと、明らかに自業自得だ。あの時の私は冷静ではなかったのだ。ちくしょう。バカ。死ね、私。

 少ししたら、ビアンが急に笑いだした。釣られてシュウも笑いだした。シュウはともかく、ビアンは怒り過ぎて笑うしかなかったのだろう、当然だ。ビアン・ゾルダークは大のロボット好きで、その愛とロマンが形となったのがあのヴァルシオンだ。それをリオンの発展系とはいえ、ただの量産機で倒せると言えば、それはとんでもない侮辱になってしまうだろう。それこそ決闘を申し込むレベルのだ。シュウが笑った理由は、まぁ私のようなクソザコナメクジが大言壮語を言って、ギャグとしか思えなかったのだろう。

 そしてビアンから、その証明をするための準備をしよう、と言われ、その間適当な任務で腕を磨け、などと言われてしまった。ビアンの怒りに内心ビクつき何も言えなかった私だが、アードラーの怒声とツバで正気に戻り、事の重大さを自覚してしまった。その錯乱のせいで、先日の日記ではビアンとアードラーに責任転嫁したが、どう見ても悪いのは私だけだ。

 とにかく、アードラーを通して、私は次の任務を与えられた。内容は、ATX計画により揃えられた機体の戦力調査兼別部隊の援護だ。取り寄せたデータでは、現在ラングレー基地に攻撃を加えているのはテンペスト・ホーカー少佐らしく、その揺さぶりの一環として、単騎でちょっかい出せというのだ。

 明らかに制裁、というか総帥に楯突いた一兵士を使い潰す算段だろう。随伴機は存在するが、それはこの前のようなデータ収集が中心のため、頼ることはできない。そもそも巻き込むわけにはいかないから丁度いいが、今回ばかりはきつい。

 何しろ相手は、あのATXチームだ。グルンガスト零式だ。ゼンガーだ。アルトアイゼンだ。キョウスケだ。ヴァイスリッターだ。エクセレンだ。ブリットは……まだグルンガスト弐式には乗ってないから大丈夫だろう。というより、あの3機/3人だけでも大分無茶振りだ。あれら相手に単騎突貫など死ねと言ってるのと同義だ。

 いや、死ぬのはいい。むしろ死ぬチャンスか。いや、きっとまだダメだ。これではリュウセイの踏み台にはなりきっていない。とにかく適当に戦ってある程度やらかせば撤退してもいいだろう、と思う。

 運がよいことに、私のリオンはタイプTをそのまま改造できることになったのだ。更に誰の配慮かは知らないが、新装備として特機にも通じるような巨大な槍と、それを調整する新たな開発者が2名整備班として追加されたのだ。これならグルンガストやアルトアイゼンの装甲もやれるかもしれない。

 

 どう見ても実験武器のモルモットです、本当にありがとうございます。

 

 こんなふざけたことを書くとは、そうとう私は思いつめているらしい。

 とにかく、脚部はガーリオンタイプのテストモデル、腕部も対ビームコーティングの付いたクローみたいなものを追加、槍の実験用にジェネレーター出力を上げたり剛性と強化したり専用ハンガーとサブアームを背部に取り付けたりと、大幅な改造を狭い潜水艦内で突貫作業で出来たのだ。カラーリングは勿論『テンザン』の黄色にしてもらった。後は私次第だ。シミュレータで改造後のモデルも試してみた。日記もこれで書き終わりだ。

 さぁ、やれるだけやってみよう。ダメなら、死のう。

 

 

 

 

 

 ラングレー基地にアラームが鳴り響く。即座に反応し、ATXチームのメンバーは基地内を駆け抜け、自身の機体へと乗り込んだ。出撃はまだしない、相手の詳細・意図がまだ不明なのだ。先日から何度も攻撃を、もしくはただの挑発行為を受けており、今回もその一環であり、実際に出撃する可能性は少ないだろう、と考えていた。

 

『アンノウン反応、1! 北東から接近、対空システムが沈黙!!』

「未確認機の詳細は?!』

『それが……速すぎて、捉えきれません!』

 

 だが司令部から届くこの報は、明らかに今までと違う。

 

「隊長、対空システムは前回の攻撃から復旧はどの程度終わっていますか?」

『本日07:00の時点で稼働率40%……攻撃の一環だろうが、単騎というのは考えにくい』

『ボスー、私のゲシュちゃんにメガビームライフル持たせて狙撃してみましょうかー?』

『それなら自分も直掩として出ましょうか』

 

 紅一点のエクセレン・ブロウニングがゲシュペンストの手をひらひらと振り提案すると、隊で一番若いブルックリンがそれに乗った。噂の"ヴァイス"があれば単独狙撃や斥候も案に含まれるが、あれはまだ最終調整中につき出せない。キョウスケはそれも踏まえてこの場合の想定を考えてみるが、それより早く隊長/ボスことゼンガー・ゾンボルト少佐が動いた。

 

『いや、ならばキョウスケも出す。基地に近づく前に3機で迎撃しろ』

「隊長は伏兵を見越して待機ですか?」

『そうだ、戦況次第では俺もそちらに出る。キョウスケ、俺が出るまではお前が小隊指揮を執れ』

「……はい」

『わお、よろしくねキョウスケっ』

『よろしくお願いします、キョウスケ少尉』

 

 命令を受け、キョウスケ達はそれぞれの愛機を繰り、基地地上層へと上がった。それと共にエクセレンのゲシュペンストが狙撃ポイントとなる基地北東部の高台へと飛び移り、ブリットのゲシュペンストTTが直掩に付いた。アルトアイゼンは2機の前に陣取り、アンノウンがいつ姿を表しても問題ないよう、北東部へ意識を集中する。コクピットのデータリンクを通して映る景色には、天へ放たれる弾幕が一つ、また一つと消えていき、その道筋が基地へと減速することなく続いているということだ。

 

『みーつけたわよー……って、スッゴイゲテモノねぇ、あれ』

「映像をこっちに回せるか、エクセレン」

『キョウスケ・ナンブ少尉、映像データはこちらでも何とか高精細の物が撮れました。今データリンクします』

 

 サブモニターにアンノウンの姿が現れる。なるほど、確かにゲテモノだ。先日一度だけ姿を見せた人型モドキの脚部を更に人の物に近づけ、小さな手には爪のようなものが取り付けられている。極めつけは全身真っ黄色のカラーリングと、背負った機体全長ほどの大きさを誇る巨大な突撃槍だ。だがあれだけの兵装を背に取り付けているというのに、その速度・運動性は先日の人型モドキより速く、機敏だ。地表すれすれで飛行しながら、的確に迎撃システムを潰していくその様は、少なくとも見掛け倒しというわけではないだろう。

 

「エクセレン、狙えるか?」

『ちょーち待ってね……管制、地形データと進路予測を5秒以内に』

『は、はいっ!』

 

 管制へのデータリンク要請を行いながら、ゲシュペンストがうつ伏せの狙撃態勢へと移る。進路予測では後2分もすれば基地へと到達する。キョウスケもまた、狙撃と同時に前へ出て、狙撃を回避した先をアルトアイゼンの加速を用い撃ち抜くつもりだ。モニター端にエクセレンから狙撃タイミングのカウントが表示される。アフターバーナーのペダルを遊びの領域まで軽く踏む。

 カウント3,2,1。

 0,その瞬間、ゲシュペンストのメガビームライフルから収束した高熱粒子が放たれると同時に、アンノウンがミサイルを放ちながら回避行動を取った。ミサイルを放った先は、眼前の地面。爆炎と土煙が巻き起こり、ビームがその中を貫く。反応は爆炎で不明、だが少なくとも、機体が爆発したような感じはしない。判断が遅れた、とキョウスケはペダルを踏み込み、アルトアイゼンを加速させた。

 

「アサルト2、第2射準備! アサルト3、援護射撃!」

『オーライ、アサルト4!』

『アサルト3、了解!!』

 

 指示を出したキョウスケの視界が急加速する。あと3秒でポイントにつく。リボルビングステーク、セット。視界の中、煙の中から黒い影が上へ飛ぶ。捉えた、と影目掛けて釘打ち機を叩き込む。だが、感触が可笑しい。アルトアイゼンの加速と巻き込まれて生まれた突風により爆煙が晴れることで、その正体が判明した。空のミサイルポッドだ、やられた、思った途端、アルトアイゼンの斜め後ろから衝撃が立て続けに襲った。正面装甲の硬いアルトアイゼンの弱点を突いたアンノウンは、地面に仰向けの態勢を取り、キョウスケを待ち伏せしていたのだ。

 

「こいつ、アルトの弱点を……っ!?」

 

 衝撃、バーニアが1基やられた。何とか反転し左腕3連マシンキャノンをばらまくが、既にアンノウンは飛び上がり、再び基地へ向かった。基地のエクセレンから2射目、それを回避し、アンノウンは逆に反撃を寸分違わずゲシュペンストを狙い撃った。エクセレンがゲシュペンストを全身のバーニアを使い飛び退かせるが、半フレームほど遅れ、レールガンの弾頭がメガビームライフルとゲシュペンストのアンテナ部分を破壊した。

 

『ちょっとぉ、ゲシュちゃんのお耳がぁッ!?』

『ッ、T-LINKリッパー、GO!!』

 

 マシンガンで弾幕を張りながら、ゲシュペンストTTのコンテナから念動誘導式のブーメランを発射した。小刻みに回避機動を取りながら尚も基地へ飛ぶアンノウンへと、上下左右から挟み込むように向かう4基のリッパーと挟撃するため、キョウスケもまた3連マシンキャノンを撃ちながらペダルを踏み込む。バーニアが1基やられた分加速が落ちたが、それでも並のゲシュペンストよりも遥かに速い。必然的にブリット機からの弾も受けるが、豆鉄砲ならアルトアイゼンの装甲で受けて問題ない。それ故の、リボルビングステーク。今度こそ逃げ場はない。

 獲れる、と思った瞬間、再びキョウスケの目は驚愕に見開かれた。アンノウンは逆ブーストを掛けて急停止したのだ。当然、リッパーとアルトアイゼンのトリガータイミングがズレる。その瞬間、アンノウンは左右のブーストをかけて反転し、超加速の中突き出されたアルトアイゼンの右腕に自身の右手のクローを突き刺すと、反転の勢いのまま回転し、再度逆ブーストを掛け、アルトアイゼンをリッパーの目前につき出したのだ。

 

「なっ、ガッ?!?」

『キョウスケ少っぐあああぁっ!!』

 

 強固なリッパーの刃ががアルトアイゼンに突き刺さる。自身が念動操作した武器を味方に当ててしまったことにブリットが動揺して弾幕を止めてしまい、その隙を逃さず、アンノウンがレールガンを叩き込んだ。5発命中し、ゲシュペンストの首、両肩、両腿を撃ち抜かれ、ブリット機が前へ倒れ込む。キョウスケも何とか踏ん張り、機体を着地させて敵機へ向き直るが、間髪入れずに膝蹴りを側頭部へ叩き込まれ、倒れ込んだ。側面から地面へ叩き落されたアルトアイゼンへレールガンの銃口が向けられる。咄嗟に残ったバーニアで地面を抉るように跳び、何とか射撃から逃れ、態勢を立て直す。

 

『ちょ〜とそこの黄色君、好き勝手やりすぎなの、よっ!!』

 

 そのまま追撃されようとした瞬間、頭部アンテナをやられながらも追いついたエクセレンのゲシュペンストがブーストをかけ、上空からアンノウン目掛けて両腕に構えたM950マシンガンを放った。同時に、味方機が離れかつ射程圏内に入ったことから、基地内の短距離迎撃ミサイルが発射される。アンノウンはこれも飛び上がりながら距離を取り、ミサイルを胸部のバルカンらしきもので迎撃する。その間に、指揮を執る者として状況を確認する。

 

「アサルト3、状態は?」

『っ、すみません、駆動部をやられて機体の四肢が動きません。サブモニターが生きてますから何とかリッパーで援護だけでも……』

「なら、タイミングは任せる。アサルト2はそのまま相手の動きを制限し続けろ」

『そうは言っても相手さん、もうこっちの動きに慣れて、わきゃぁっ?!』

 

 エクセレン機の左のマシンガンが撃ち抜かれ、爆発した。たまらず舌打ちをし、アルトアイゼンの3連マシンキャノンで弾幕を張る。状況は劣勢、しかもこちらは動けない機体がある。もう一度ステークを当てに行くか、と思考するが一瞬留まる。2度もアルトアイゼンの突貫を躱し、カウンターをぶつけてきたのだ。明らかに相手は、アルトアイゼンの戦闘方法を理解している。先日の戦闘データが既に回っているのか、と推測するが、この場では埒が明かない。

 

「分の悪い賭けだな、だが……」

『ったく、赤いカブトムシはともかく、白騎士がいないのは予想外だってのっ』

「むっ?」

 

 ペダルを踏みかけた途端、突然聞こえた、オープン回線からの声。存外幼い、それこそブリットとそう変わらないぐらいの声音。基地内の人間ではない、となるとどこから聞こえてきたのかは明確。

 

「その機体のパイロットか」

『おう、その通りだぜ赤カブト。こちとらゲームの歯ごたえが足りなくてすっげぇ落ち込んでんだぜぇ。もうちっとがんばってくれよぉ』

『ゲーム、だと!? 戦争をゲームだっていうのかお前は?!』

 

 当然、オープン回線のため、ブリット、いや基地全体にこの声は聞こえていた。

 

『ねぇキョウスケ。ここで『戦争をゲームと同じだと思うな!!』とか、かっこいい事言ってみない?』

「……言わせておけばいい、と言いたいが、この状況では様にならん」

『そうよねぇ、てこっちもうっ?! 幾らなんでもでたらめ過ぎない?!』

『お、そのゲシュはお姉ちゃんパイロットかよ』

『あらん、坊や。だったらちょっとは手加減してもらえるかしらん?』

『ホッ! 悪いな、俺は男女平等主義なんだよっ!!』

『それはッ〜、残念、てか本当に手加減してよぅっんもう?!』

 

 会話の間にも攻防を続いている。その最中に、ついにエクセレン機の残ったマシンガンと、左腕が撃ち抜かれてしまった。だがそのダメージを負うまでに丸い頭となってしまったゲシュペンストは、倒れ伏す白いゲシュペンストTTをフォローできる位置まで移動することに成功しており、傍に落ちていたマシンガンを残った手で拾い上げて再度弾幕を張ることができた。

 

「なるほど、確かに楽しんでるな……だが」

 

 相手の真の思惑は不明だ。だがあれだけ幼く、それこそ戦争をゲームと考えるような幼児性と享楽者なら、隙はある。いや、作り、流れをこちらに向けることもできる。

 

「ここからはゲームではなく、賭けの時間だ」

 

 リボルビングステークを構え、ペダルを踏み込む。同時にリッパーがゲシュペンストTTから放たれた。当然、アンノウンは気づき、クローの付いた小さな右腕を振りかぶった。かかった、と両肩のウェポンハッチを展開。

 

『てめぇっ?!』

「チップだ、持っていけ!」

『っ?!』

 

 スクエア・クレイモア、斉射。広範囲に放たれたそれを、しかしアンノウンは避けた。両足と左肩のバーニアをフルブーストし急上昇、逆木の葉返しといった調子で不規則な回転をしながら急浮上し、クレイモアの大半を回避したのだ。しかしその代償として主武装と言えたレールガンに、右足を持っていった。

 

『この程度ぉっ??!』

『そこぉっ!!』

 

 そして飛び退いた先に、ブリットが放ったT-LINKリッパー。迫る二つの刃を、両手のクローが咄嗟に弾く。だがその拍子に爪は砕け、近接武器を失った。アンノウンが後退するが、そこを抑えるべく、アルトを加速させステークを振りかぶる。だがそこを読まれ、残った左脚の蹴りをアルトアイゼンの右腕に合わせられた。舌打ち一つ、ならばと左の3連マシンキャノンをゼロ距離で当てようとした瞬間、左腕を巨大な矛先が貫き破壊した。衝撃でコクピットが揺れ、アルトアイゼンが落ちる。何とか姿勢を制御し、機体を両脚で着地させる。そして改めて、愛機の腕を破壊したそれを仰ぎ見た。

 

『まさか、こいつまで使うことになるとはよぉ……』

『わぁ……おっきい上に光ってるわねぇ……』

 

 それは、アンノウンの背に取り付けられていた巨大な突撃槍だ。サブアームで補助されたそれはアンノウンの細身の機体には不釣り合いな太さと長さを誇り、バンプレートから先は淡い緑の光を放っていた。直撃したらやばい、と長年の勘が告げている。

 

『さてと……そろそろ来るかな?』

 

 アンノウンが構えた。それと同時に基地の大型リフトの稼働音が響き、ラングレー基地最大戦力がその姿を表した。荒ぶる神仏を形にしたようなフェイスと巨体、右上段に構えられたその巨体と同等と特殊兵装/悪を断つ剣/零式斬艦刀。そして巨人の名は、グルンガスト零式。その背の、スペック上は大気圏すら突破可能なブースターと、斬艦刀の峰に取り付けられたバーニアが一斉に火を噴き、神速の加速を生み出した。

 

『セィッ!!』

『ッ、インパクトランス、60%!!』

 

 交錯、アンノウンが弾き飛ばされる。だが、しかし、獲っていない。零式は即座に右腕のブースターを点火し、質量兵器として飛翔させた。アンノウンは残った左足と槍を地面に突き立て制動を駆けると、即座に飛び上がり、ブースト・ナックルを飛び越える。しかしバランサーが破損したのか、コマのように機体が回転している。その状態で尚、グルンガストへ跳び、巨大な剣のように槍を構えた。

 

『ッ、破!?』

 

 右腕が戻るのは間に合わないと判断し、ゼンガーが左腕一本で斬艦刀を無理やり振るい、遠心力が込められた槍の横薙ぎを迎撃する。今度は拮抗、槍から放たれるエネルギーがスパークを起こし、両機の装甲を焼いた。だが、パワーでは特機であるグルンガスト零式が上であり、僅かな拮抗の後、再度アンノウンを押し飛ばした。

 

『かっははは、さっすが大ボス、さすがグルンガスト! こうだよ、こうでなきゃなぁ!!!』

 

 アンノウンのパイロットが喚きながら、今度は多少の後退りをしながらも、見事に着地した。片足でだ、ひょえーっと場違いな音声がエクセレン機から響いた。

 

『悪童……所属を言え、そうすれば捕虜としては扱おう』

『ホッ言うかっての。まぁちょいと強がってみても、俺もこいつもそろそろ限界でよ、そろそろフィニッシュと行かせてもらうぜ』

 

 言いながら、右腕の戻ったグルンガストは再び右上段の構えを取り、アンノウンはふわりと浮かび上がった。パイロットの言うとおり、アンノウンの各部からは傷つき、破損し、潤滑油が漏れ始め、スパークが鳴っていた。何をする気だ、とキョウスケはいつでもアルトアイゼンで吶喊できるようにしたが、次の瞬間、突撃槍が更に輝き、放たれたエネルギーが衝撃波となって機体を叩いた。

 

『ぬぅッ?!』

 

タイミングをずらされたグルンガストの打ち込みは空を切った。同時にアンノウンが天高く飛び上がり、途中でピタリと止まると、穂先をラングレー基地へと向けた。特攻するつもりか、とブリットの叫びを他所に、槍のエネルギーが高まるのが管制から届いた。

 

『何あれ……ゼンガー少佐、アレを止めてください! あのまま撃たれれば、基地の表層が吹き飛びます!?』

『何だとっ?! ゼンガーっ!!』

『承知ッ!!』

 

 グレッグ司令の声に、ゼンガーが、グルンガスト零式が飛び、構えた。まったく同じタイミングでアンノウンの背部で過剰なバーニア光が瞬く。

 

『各部、ジェネレーターのリミッター解除……インパクトランス、オーバーチャージ……受け止めてみやがれ! ロンゴッミニアド!!!』

 

 槍の光は極光となり、流星となって落ち始めた。咄嗟にアルトアイゼンを満足に動けない2機の前に出し、防御姿勢を取る。あれは、落ちた瞬間、終わる。それだけのパワーがアレに込められているのだ。

 

『一意専心!! 斬艦刀、一刀両断!! チェストォォォォォォォ!!!!』

 

 その流星に、悪を断つ剣が真っ向から挑んだ。衝突の瞬間、エネルギーの波が四方へと飛び散り、基地周辺で爆発が何度も巻き起こる。そして起こるのは僅か十数秒の鍔迫り合い。

 

『ぬうううぅ!!』

『ちぃぃぃぃッ!!』

 

 グルンガストが押したと思えば、槍が押し返す。槍が押し進むかと思えば、グルンガストが踏ん張る。長い時間に似た感覚は、しかし唐突に終わりを告げた。

 

『ここまでかよ、ちぇ。けど目的は達したぜぇ! あばよ示現流!!!』

 

 アンノウンのパイロットがそう言うと、槍が不自然な爆発をした。その直後、光が膨らみ、弾け、視界を真っ白に焼いた。そして突風が巻き起こり、アルトアイゼンを地面へと押し付けた。モニターが正常に戻ると、荒れて焦げた基地と、その中央にそびえ立つグルンガストの姿があるだけで、アンノウンの姿はどこにもなかった。レーダーを見るが、先程の衝突の余波のせいか、正常に表示を出せないでいる。

 

『……すまん、逃した』

 

 ゼンガーの言葉に、アンノウンが既にこの場にいないと確信した。同時に張り詰めていた緊張が多少は解れ、一息つく。

 

「いえ、隊長。隊長の責だけではありません。俺たちも大分やられました」

『そうよ〜、さすがに今回は、ねぇ』

『そういう訳にもいきませんよ、エクセレン少尉。状況的に見れば……悔しいけど、自分たちの負けです』

『その通りだ。加えて再び奴が来た時、今度は単騎ではないはずだ』

 

 ゼンガーの言うとおり、あの機体とパイロットが再び現れる時は、他の部隊も同時に現れるだろう。そうなれば、果たして満足に対処できるか。

 

『各人、まずは休め。報告は俺から行う。スクランブル要員も他の隊に調整してもらう。19:00よりデブリーフィングを行う』

 

 了解、と各人から返事が響き、タイミングよくレーダーも回復した。敵影ゼロ、やはり既に離脱したようだ。

 気味が悪い、それがキョウスケが受けた素直な印象だ。今までの挑発行動ではなく、突然の攻撃、それも単騎のみ。加えてその単騎がラングレーの保有するPT3機と特機とマトモにぶつかり、同等の戦力を有する。もしこの前までの戦略を取っていた相手なら考えられないし、自分がこのような作戦を行うならば、絶対に出すタイミングではない。明らかにアレは鬼札の類だ。

 そこまで考えたなら、推論できる説は二つ。1つは相手が方針を変えた。今回のような特機とも渡り合える戦力を用意し、それを見極めた上で、力押しをかけてくる。そうなれば次の戦いは混迷を極めるだろう。近隣の基地から応援も呼ばねばならない。

 もう1つは、今までの指揮者とは別の存在が介入したこと。この説は、あのパイロットは今までのDC兵からあまりにも毛色が違いすぎることからの推測だ。もしこの説なら、再び散発的な挑発になるだろうが、あの機体が存在する以上、今までよりも警戒レベルを上げなければならない。

 それとは別に、気になることがある。

 

「ラドム博士、聞こえますか?」

『何、キョウスケ少尉? 早くアルトをハンガーに戻してちょうだい。結構やられているみたいだし……』

「白騎士、というのは、件の"ヴァイス"を指してますか?」

 

 通信を繋いだ先、ATX計画開発主任であるマリオン・ラドム博士が、息を呑んだ。

 

『……そうね、そのことも含めて、後のデブリーフィングで話します。とにかく今は動きなさい』

 

 通信はそれで切れた。厄介なことだ、これで相手側に、ATX計画が漏れていることが判明したのだ。相手がインチキをしている上、札が悪すぎるポーカーをしている時のような気分となりながら、キョウスケは基地へと帰還した。




インパクトランスは予定に入れていた。けどロンゴミニアドはその場の勢いで出した、反省している。だが私は謝らない。
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