朝食を食べた後、皆を集めて僕は作戦会議を開いた。
「昨日の夜、何かあったんですか?」
「ずっと徹夜で訓練していたのよ。
本来サーヴァントの体は睡眠を取る必要はないらしいけど、ホムンクルスと融合したせいで少しは睡眠が必要になったみたいだわ。
おかげで眠くてしょうがないわ」
「ええ、そうですね。
早くこの体を使いこなす必要があるとはいえ、徹夜は辛いですね」
僕はメディアに尋ねたのだが、真凛と真桜がすぐに答えてくれた。
なるほど、確かに真凛も真桜も疲れと眠気を感じさせる顔をしている。
あ~、なるほど。
いきなり『サーヴァントとホムンクルスと仮想人格の融合体』になった以上、影の体ともホムンクルスとも違う感覚だから訓練が必要なのは当然だろう。
昨日の夜、二人とも精神世界に来なかったのはそういう理由だったのか。
「真凛と真桜は、『ホムンクルスの体を使いこなす訓練』と『ホムンクルスの体にある魔術回路で魔術を使う訓練』はしていたけど、……真凛は『魔法使いの遠坂凛』、真桜は『マキリの聖杯になった間桐桜』の体をいきなり使う羽目になったのよ。
サーヴァントの体に関して、『体を使いこなす訓練』は第一段階、次に『魔術回路を使いこなす訓練』をして、最後に真凛が『宝石剣を使う訓練』、真桜が『スキルを使う訓練』を終えて、初めてまともに戦えるようになるのよ。
……死にたくなければ、最終段階を終えるまでここに隠れて、ひたすら訓練するしかないわ。
もちろん、他のサーヴァントと戦うなんて論外よ」
「やっぱり、サーヴァントの体と融合したわけだから、それだけの訓練が必要ですか」
「当然よ。
通常のサーヴァントなら『生前の全盛期の体を魔力で構築した体』を手に入れるわけだから、すぐに使いこなせるわ。
一方、真凛と真桜は『オリジナルの未来の体』を手に入れたわけで、『オリジナルの未来の経験』がない以上、訓練を積むことで少しずつ理解しないといけない。
……正直これはかなりのハンデね」
聞けば聞くほど大変そうだな。
それだけ訓練が必要なのはわかるが、……聖杯戦争が終わるまでにそれだけの訓練が終わるのか?
「ああ、安心して。
確かに一からそれだけの訓練をしていたら、いつ終わるか分からないけど、……幸いこの体にはオリジナルの記憶も残っているわ。
その記憶を取捨選択しながら取り込むことで、訓練時間の短縮は可能よ」
真凛は頼もしいことを言ってくれている。
元々真凛は、5歳の遠坂凛の記憶と人格のコピーをコアにした仮想人格だから、未来の遠坂凛の(一部の)記憶を取り込むのも、気を付けてやれば問題ないだろう。
……しかし、
「真桜はそんなことをして大丈夫か?
元々、間桐桜の記憶はきついものが多いのに、黒桜の記憶を受け取れば、お前もアンリ・マユの影響を受けてしまわないか?」
「……私も少し不安です。
でも、『貴方の力を借りるだけの仮想人格』だったはずの私が、偶然とはいえあの世界の私の力を取り戻すことができました。
これは、ただの偶然かもしれません。
でも、私にとっては待ち望んでいた奇跡です。
この力で、この世界の私と滴ちゃん、そしてお父様を守ってみせます。
そのためなら、記憶ぐらい受け止めて見せます。
……それに、記憶の取り込みはメドゥーサも一緒にやっていますから、万が一のことがあってもフォローしてくれます。
だから大丈夫です!」
「その通りです。
私が常に真桜のフォローを実施します。
あの世界のように、アンリ・マユに汚染させるようなことは絶対にさせません」
真桜の表情を見る限り、強がりではなく自信があって言っているようだ。
メドゥーサの方もそんな真桜を全力で支える覚悟があるようだ。
これなら、……大丈夫か?
「わかった。
ただし、くれぐれも気を付けてくれよ。
強くなるに越したことはないけど、真桜の命が一番大事なんだからな。
……メドゥーサ、真桜のことを頼むよ」
「はい、焦らないで、でも急いで強くなります」
「もちろんです。
真桜のことは任せてください」
真桜とメドゥーサは顔を見合わせると、ゆっくりと微笑んだ。
この二人なら大丈夫だろう。
しかし、不安な事は他にもある。
「真凛と真桜は、『サーヴァントとホムンクルスと仮想人格の融合体』という状態みたいですが、体に異常はないんですか?
アーチャー、じゃなかった、英霊エミヤの腕を移植した士郎は、腕の封印を解いただけで死へのカウントダウンが始まっていましたけど」
あれはひどかった。
ゲームをやっていたとき、僕は全く士郎が助かる方法が思いつかず、「桜ルートは『士郎が犠牲となるエンディング』しかないのか?」と考えながらプレイしていたぐらいだ。
「衛宮士郎の場合は『生身の体にサーヴァントの体をそのまま移植した』からあれだけ酷い目にあったのよ。
真凛たちの場合、『ホムンクルスの体にサーヴァントが融合した』わけだから、彼のようにはならないわ」
そうなのか、それは良かった。
僕はメディアの説明を聞いて安堵したが、しかし『移植』と『融合』でなぜそこまで差が出たのか不思議だった。
僕の表情から僕の考えを読み取ったのか、メディアは説明を続けた。
「貴方が使える降霊術でも英霊の分霊を召喚するけど、それは『
だけど、降霊術を使うことで『召喚した分霊を己の体と融合させることで、分霊の力を自由に使うこと』も、理論上は可能よ。
もっとも、そんなことをすれば死ぬまで分霊と分離できないし、それ以前に分霊との融合に失敗すれば必ず死ぬわね。
それも、よほど英霊と相性が良くないかぎり成功しない、リスクの大きすぎる無謀な賭けだわ」
……聞いているだけでも即座に理解できるほど危険すぎる行為だから、そのリスクは当然だろう。
いつか僕が分霊との融合が可能な技量に達したとして、僕は実行しようなどとは絶対に思わない。
しかし、『遠坂凛と遠坂桜の遺伝子から作ったホムンクルス』と『遠坂凛と遠坂桜の人格と記憶のコピーから作った仮想人格』ならば、英霊リンと反英霊サクラとの相性が抜群なのは言うまでもない。
というか、英霊の分霊との融合なんて、融合対象の英霊が『未来の自分』か『前世の自分』ぐらい縁が深くないと成功しないんじゃないか?
まあ、世の中には『向こう見ずな馬鹿』とか、『追い詰められて他に手段はない人』とかは結構いるだろうから、一発逆転で挑戦する人がいてもおかしくはないとは思うが、……世間的には自殺と同義なんだろうなぁ。
真凛と真桜に悪影響がなさそうなのは朗報だが、世の中には絶対はないから、毎日メディアやメドゥーサに健康診断をしてもらって、異常がないかチェックしてもらったほうがいいだろうな。
一番の心配事項にけりがついたので、僕は次の心配事項を確認することにした。
それはもちろん、『メディアの考えと今後の方針』である。
ずっと僕の
契約違反ではないが、果てしなく続く幽閉の日々に怒りを露わにするぐらいは十分ありえると思っていたのだが……。
僕が見たところ、現在の機嫌は普通のようだ。
ただしこれが、嵐の前の静けさでない保証もない。
僕は虎穴に飛び込むような勇気を振り絞ってメディアに問いかけた。
「あの、意図したわけではありませんが、真凛と真桜がダブルキャスターになった以上、メディアとメドゥーサは今までと変わらない状態ですよね。
……これからどうするつもりですか?」
「本当に貴方は、イレギュラーな事態を起こしやすい運命みたいね。
降霊術で自意識をもった私たちを召喚したことといい、誰も予想していなかった英霊リンと反英霊サクラの召喚といい、……まったく困った存在だわ」
その言葉に思わずびくっと反応してしまったが、意外にもメディアは僕に対して(怖くない)笑顔を見せた。
「安心なさい。
リンとサクラを召喚することまでは予想していなかったけど、私たちのサーヴァント化が失敗することがありえることは十分予想していたわ。
だから、サーヴァント化に失敗したときに実行する次善の策も考案済みよ。
貴方風に言えば『こんなこともあろうかと』、次の策は考えておいたのよ」
……まさかメディアにそのセリフを言われるとは!
確かに、魔術チートのメディアこそが、一番それを言うのに相応しい立場だったか。
「もう準備は終わっているし、試すのは早い方がいいわね。
失敗したらすぐに戻ってくるから、ここで待っていなさい」
そう言って、メディアはメドゥーサを連れ、さらに縁の品まで持って拠点を出て行った。
あっという間の展開に、止めるどころか、何をするか尋ねることすらできなかった。
……まあ、今の二人の体は影の体だから、術者(僕)が逆探知されるとか、影を経由して直接術者(僕)へダメージを与える攻撃を受けない限り、特に問題はないはず。
そう考えた僕たちは、真凛と真桜がサーヴァントの体を使いこなす訓練を手伝いながら、メディア達の帰りを待っていた。
ちなみに、サーヴァントの体、保有スキル、宝具(真凛のみ)を使うためには訓練が必要だが、クラススキルだけはサーヴァントの体に付与されたものであるため、今の真凛と真桜でも十分使えるらしい。
そのため、訓練をある程度したら、クラススキルの【道具作成】スキルで魔術具を作り、さらに【陣地作成】スキルで拠点を強化する予定らしい。
……真凛がある程度サーヴァントの体に慣れた後、時間に余裕がありそうなら、ネタアイテムの作成が可能か聞いてみることにしよう。
【道具作成】スキルと八神家の降霊術を合体させれば、クラスカードができる……といいなぁ。
その後、真凛たちの訓練を手伝いながら、今後の展開を考えていた。
第四次聖杯戦争は、セイバー、アーチャー、ライダー、バーサーカーの召喚を準備をした日の夜を初日(サーヴァントが召喚されたのは、二日目の日付変更直後)とすると、『アサシン(の分身の一人)が、アーチャーに殺される茶番』が起きるのは6日目。
それまでの間に、原作では
・切嗣パーティーとケイネスパーティーが冬木市に来る。
・ケイネスがランサーを召喚する。
・龍之介が殺人事件を起こしてキャスターを召喚する。
ということが起きた。
このうち龍之介は、この世界では『殺人犯として指名手配になっただけでなく、すでに警察に捕まっている』ので出番なしで終了。
可能なら『ケイネスによるランサー召喚シーン』を見てみたいが、……無理をする必要はないだろう。
ということは、原作通りの展開ならば、6日目まではこちらから行動を起こさない限りは平穏だ。
……メディア達は一体何をするつもりなのか、今さらながら不安になってきた。
しかし、彼女たちの行動の邪魔をするわけにはいかないから、帰ってくるまではライン経由でも話しかけない方がいいだろう。
影の体を飛ばして雁夜さんに状況を確認してみると、僕の予知夢(原作知識)よりも強い状態のランスロットの召喚に成功し、今は命令通りに動かす為の訓練を少しずつ行っているところらしい。
バーサーカーって、狂化スキルを使って狂化の呪いのせいで正気を失ってしまうから、ほんと管理が大変なサーヴァントだよな。
今の雁夜さんは、魔力量も多いし、マキリの魔術刻印も持っているから、狂化スキルを使わない限りはバーサーカーでも十分に制御可能だとは思うけど。
それと、『ランスロットの分霊とバーサーカー召喚の相乗効果の調査』の結果については、驚くべき回答があった。
「君と相談した通り、ランスロットの分霊を降霊した状態でバーサーカーの召喚を行ったわけだが、……バーサーカーと僕との間にラインが繋がった瞬間、僕の中にいたランスロットの分霊とバーサーカーの間にもラインが繋がってしまったらしい」
「それって、まさか、分霊がバーサーカーのクラススキルを手に入れましたか?
いや、もしかして、分霊が自意識を持ったとか?」
「さすがにそれはないよ。
ただ、ランスロットの分霊とバーサーカーの間にラインが繋がって、バーサーカーの存在が錨のような状態になって分霊を繋ぎとめているらしくて、僕は何もしなくても、ランスロットの分霊は僕の中に留まっている状態になったんだ。
ようは、君が降霊した分霊と同じ状態だね」
「ってことは、ランスロットの分霊を憑依させ続けるために必要な意識の集中とか、魔力の消費とかが?」
「ああ、そういうことをしないでも分霊は俺の中に留まっている。
これで、ランスロットの力を借りることに集中できる。
今度こそ成功させてやる」
そう、雁夜さんはマキリの末裔であり、属性は水で、「吸収」や「使い魔の制御」といった分野に適正があり、逆に降霊術の適正はそれほど高くなかった。
そのため、メディアが閉じていた魔術回路を開いた後に十ヶ月も訓練をしても、ランスロットの分霊から借りられたスキルは、【対魔力】と【
しかし、現在の状況ならば、ランスロットのランクAのスキルや宝具の力を借りることも不可能ではないだろう。
雁夜さんには是非、【
「そういうわけで、これからバーサーカーを制御する訓練と並行して、分霊の力を引き出す訓練も行う予定だ」
雁夜さんの声は自信満々であり、強化されたバーサーカーの召喚成功によって、かなり自信がついたと想像できる。
一応忠告しといた方がいいだろうな。
「今の雁夜さんの魔術師としての才能と、この三年積み重ねてきた努力は、一流の魔術師にも劣らないでしょう。
それは、召喚されたバーサーカーの強さが証明しています。
ですが、僕と同じく修行期間が短いのも紛れもない事実です。
時臣師やランサーのマスターであるケイネスは、幼少時から同様の訓練を行っています。
才能や努力が同等ならば、後は修行期間の長さがものをいいます。
それと、以前も言いましたけど、バーサーカーはサーヴァントの中でもトップクラスで扱いが難しいクラス、実質ハンデがついているようなものです。
くれぐれも、そのことを忘れないでください」
「ああ、わかっているよ。
俺の目的は、葵さんたちの為、時臣をフォローすることだ。
俺が死ぬような無茶をするつもりはないよ」
雁夜さんは冷静に判断しているように見えるから大丈夫かな?
雁夜さんは結局ランスロットの分霊を降霊させるのが精一杯で、重ねて英霊エミヤの分霊を同時に卸すところは試すことすらできなかった。
……雁夜さんの
投影魔術と【
ほんと、残念だ。
「それよりも、君の方こそ大丈夫か?
昨日プリンセスに概要を聞いたけど、あの二人のサーヴァント化に失敗して、その代わりに真凛ちゃんと真桜ちゃんがサーヴァント化したと聞いたぞ」
雁夜さんの言葉からすると、英霊リンと反英霊サクラのサーヴァント(自意識なし)を召喚したことは内緒にしたのかな?
とりあえず、こちらからは話さないほうがよさそうだな。
「ええ、とりあえず体に問題はなさそうなので、今は二人ともサーヴァントの体を使いこなす訓練中です。
今はそれすらも満足にできない状態なので、しばらくは戦わずに隠れているつもりですよ」
「そうか。
俺は時臣師に協力することを約束しているが、君への協力を惜しむつもりはない。
他のサーヴァントに襲われるようなことがあれば、すぐに連絡をくれ」
「ありがとうございます。
ないとは思いますけど、その時はお願いします」
「もちろんだ。
じゃあ、気を付けてくれよ」
雁夜さんは、やる気満々だな。
頼りにできる同盟者が、実力をつけ、優秀なサーヴァントの召喚に成功したのはとても頼もしい。
僕たちの方もがんばらないと。
そういえば、この世界は僕の干渉によって、僕と雁夜さんの状況が大きく変わった。
この世界のマスターを現時点の魔力量だけで比較すると、
真凛=真桜>ケイネス≧時臣師≧切嗣>雁夜さん≧僕>タマモ>綺礼>>ウェイバー
ってところかな?
公式設定では、知名度補正×現地補正×マスターの魔力量による補正で、サーヴァントの強さが決まるらしい。
原作の状況から推測すると、この世界のサーヴァントの状況は、次のような状態だと推測できる。
<知名度補正×現地補正×マスターの魔力量=総合的な補正>
知名度×現地補正×マスターの魔力量=弱体化
・アルトリア : 大 × 無 × 大 = 微
・ギルガメッシュ: 中 × 無 × 大 = 少
・ディルムッド : 少 × 無 × 大 = 中
・イスカンダル : 大 × 無 × 少 = 中
・リン : 無 × 大 × 最大 =中~少?
・サクラ : 無 × 大 × 最大 =中~少?
・ランスロット : 大 × 無 × 中 = 少
・ハサン : 少 × 無 × 少 = 大
こんな感じかな?
リンとサクラが『マスターの魔力量最大』となっているのは、当然『真凛+タマモ』、『真桜+僕』というように二人もマスターがいるためだ。
生前のパラメータは予想するしかないが、(リン、サクラ、ランスロット以外の)それぞれの原作におけるパラメータと上記の考察を比較すると、……うん、大体あっていそうだ。
弱体化の程度だけで考えれば、アルトリアが有利か。
もっとも、ギルガメッシュは持っている宝具が強いので、ステータスが多少弱体化しようと全然関係ないのが恐ろしいところで、原作において時臣師がギルガメッシュの召喚に成功した時点で『勝ったも同然』だと確信していたのも無理はない。
僕が召喚したリンとサクラについては、未来の英霊の為、知名度補正なしの影響がどこまで大きいかが不安要素だな。
もっとも、現地補正大だし、マスターが二人もいるから、それで多少は相殺しているんだろうけど。
そんなことを考えつつメディア達の帰宅を待っていると、昼頃にいきなり目の前にメディアとメドゥーサが転移してきた。
『今日は失敗したのか?』と呼びかけようとして、目の前に現れたものを見て僕は絶句してしまった。
<パラメータ>
クラス アサシン
真名 メディア
マスター なし
属性 中立・悪
ステータス 筋力 E 魔力 E
耐久 E 幸運 A
敏捷 E 宝具 -
クラス別能力 【気配遮断】:A+
保有スキル 【高速神言】:B
【呪具作成】:C
宝具 なし
<パラメータ>
クラス アサシン
真名 メドゥーサ
マスター なし
属性 混沌・善
ステータス 筋力 E 魔力 E
耐久 E 幸運 A
敏捷 E 宝具 -
クラス別能力 【気配遮断】:A+
保有スキル 【魔眼】:A
【怪力】:C
【神性】:E-
【対魔力】:C
【騎乗】:B
宝具 なし
そう、視界に表示されたのは二人分のサーヴァントのパラメータだったのだ。
一体二人に何が起きたんだ?
突っ込みどころが多すぎて、僕はちょっとしたパニックになってしまった。
とりあえず質問が必要なのは、
・どうやってサーヴァントを召喚したのか?
・なんでアサシンになっているのか?
・なんでステータスは幸運以外全部ランクEなのか?
・なんで宝具が一つもなくて、スキルも減少&弱体化しているのか?
だよな。
質問しようとした瞬間、メディアが一瞬で僕の目の前に移動し、僕が口を開く前にメディアが指示をしてきた。
「事情は後で説明するわ。
いますぐ、私の言う通りに行動して、その後令呪を使って私に命じなさい」
有無を言わさないメディアの言葉に、僕はコクコクと黙って頷くことしかできなかった。
まず、サーヴァントのメディアとメドゥーサの二人と、僕は
これで、マスターなしの状態でも僕経由で魔力を受け取れるので、サーヴァントの二人が魔力切れで消滅する可能性は無くなった。
……もちろん、僕の魔力が足りる限り、という条件付きだが。
さらに、
その後すぐに、メディアが僕の右手を、メドゥーサが僕の左手を握ってきた。
その感触を感じ取りながら、僕はメディアから伝えられた言葉をそのまま繰り返した。
「聖杯の誓約に従い、メディアとメドゥーサに対してマスターが命じる。
僕の
令呪で命じた瞬間、僕の
そして、その分霊は目の前にいるサーヴァントのメディアとメドゥーサと融合し、次の瞬間、サーヴァント召喚時と同レベルの激しい光と風が巻き起こった。
すぐに光と風は収まり、僕は状況を確認しようとしたが、すでに二人とも僕の傍にはいなかった。
その時にはすでにメディアとメドゥーサは僕から離れ、真凛と真桜の前にいた。
そして真凛と真桜は、ライン経由でメディアの指示を聞いていたらしく、すぐに呪文の詠唱を始めた。
「「告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者、汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ。
我に従え、ならばこの命運、汝が杖に預けよう!」」
っておい、これは『サーヴァント召喚』、……じゃない。
『サーヴァントとの再契約の呪文』じゃないか!
「「アサシンの名に懸けて誓いを受けましょう。
貴女を我が主として認めます」」
驚いている僕を置き去りにしたまま、真凛はメディアと、真桜はメドゥーサと手を触れ合わせ、再び激しい光と風が巻き起こった。
慌てて二人のパラメータをチェックした僕は、さらなる驚きに襲われた。
<パラメータ>
クラス アサシン
真名 メディア
マスター 八神真凛
属性 中立・悪
ステータス 筋力 D 魔力 A++
耐久 C 幸運 A
敏捷 B 宝具 -
クラス別能力 【気配遮断】:A+
保有スキル 【高速神言】:A
【呪具作成】:B
【騎乗】:A+
宝具 なし
<パラメータ>
クラス アサシン
真名 メドゥーサ
マスター 八神真桜
属性 混沌・善
ステータス 筋力 B 魔力 B
耐久 D 幸運 A
敏捷 A 宝具 B
クラス別能力 【気配遮断】:A+
保有スキル 【魔眼】:A+
【怪力】:B
【神性】:E-
【対魔力】:B
【騎乗】:A
【海神の加護】:A
【大地制御】:B
宝具 【他者封印・鮮血神殿】:B
【自己封印・暗黒神殿】:C-
なんだろう、このさらに突っ込みどころ満載の状況は?
……とりあえず、本人に事情を確認するべきか。
「あの~、無事にマスターと契約はできたようですし、よければ細かい事情を教えてもらえませんか?」
「ええ、構わないわ」
僕の質問に対して、メディアはこちらを振り向くと、自信満々で答えた。
「最初にしたことは簡単なことよ。
私たちはここから出た後、アサシンの分体を二人捕獲して、彼らを生贄として私たち自身のサーヴァントを召喚したのよ」
「まさか!
そんなことできるはずがないわ!!」
真凛が驚きのあまり声を上げたが、僕も同感である。
アサシンを生贄にしてサーヴァント召喚?
何の冗談だ、それは。
「そうでもないのよ。
第五次聖杯戦争のある時間軸において、臓硯は『マキリの蟲で佐々木小次郎を倒し、その体を苗床にしてハサンの召喚を成功させる』という離れ業を行ったわ」
「……つまり?」
「ええ、ユスティーツァの記憶を元に、私の魔術でその業を再現して、『アサシンの分体を生贄にすることで、サーヴァントの召喚を行った』のよ」
……いともあっさりと、なんてとんでもないことを言っているんだ!
それに、臓硯がやったのは『一人しかいないアサシンを苗床に召喚』したのに対して、メディアは『最大で80人いるアサシンの分体の一人を生贄にして召喚』をやってみせたのか。
……本当にメディアって、(魔術の技量が)規格外の存在だよな。
「それで、メディア達のクラスがアサシンだったんですか。
……いや、でも、同じシステムを再現できたとしても、生贄とした分体のアサシンは、オリジナルの80分の1の霊力しか持っていないはず。
等価交換の原則から言っても、それを生贄にして召喚したのなら、同じぐらい弱いか、とんでもなく不完全なサーヴァントしか召喚できないんじゃないですか?」
「ええ、その通りよ。
おかげで召喚できたサーヴァントは、『ステータスは幸運以外最低ランク』で『宝具なし』。
あるのは、『数も減り弱体化したスキル』と『アサシンのクラススキル』だけだったわ。
あと、元々自意識を持たない状態のサーヴァントを召喚するつもりだったから問題なかったけど、あの召喚ではどうやってもまともな自意識を持ったサーヴァントは召喚できないわね」
あー、そういえば、召喚されたばかりの(5次)ハサンも、クー・フーリンの心臓を食べるまでは明確な自意識があるような描写は少なかったな。
「……となると、『召喚した自意識のないサーヴァント』を乗っ取って、ここまで連れてきたんですか?」
「ええ、いくらサーヴァントといえども自意識がなければ、精神防御は完全に無防備よ。
影の体で憑依して、体の制御権を奪うのは簡単だったわ」
まあ、簡単なのは『メディアとメドゥーサが自分自身のサーヴァントに対して行った』からであり、僕が同じことを試しても絶対に成功しないのは予想できる。
「『最弱状態のアサシンクラスの二人のサーヴァント』を連れて帰ってきたことは、今の説明で理解できました。
……で、令呪を使うことで『分霊とサーヴァントの力』を引き出して、僕の
自分で言っていて、目眩がしそうな事のオンパレードだな、おい。
令呪も使って色々したとはいえ、『最弱状態のサーヴァントを、ここまで一気にパワーアップさせた』なんて、こんなことがあっていいのか?
……さすがに、元々分霊が持っていた宝具しか持っていないみたいだけど。
「ええ、そうよ。
オリジナルと同等レベルの力を持った分霊っである私たちが、貴方の
それがサーヴァントの体と融合して、さらに優秀なマスターとラインを結べば、当然サーヴァントの能力は向上するわ。
もっとも、イレギュラーな処理だから、融合後も私たちが元々持っていたスキルや宝具しかないのが残念だけど」
「えっ、……てことは!?」
「ええ、私は宝具が一つもないし、メドゥーサは
これを手に入れることはできないでしょうね。
どうしても宝具が欲しければ、……真凛の【道具作成】スキルで、
言っておくけど、短期間で作ることになる幻想魔術具でどこまで宝具の性能を再現できるかは、作ってみないと分からないわよ」
そういうことだったのか!
くそ~、宝具が揃えば多少の弱体化は問題なかったのになぁ。
幻想魔術具も現時点ではどこまでオリジナルの性能を再現できるか不明だから、あまり期待できないし。
って、そういえば。
「真凛と真桜と再契約したのは、……やっぱり、僕よりもマスターとしての素質が上回っていたからですか?」
「その通りよ。
元々『魔術師として超一流の素質を持つ魔術師の遺伝子を使ったホムンクルス』だったのに、サーヴァントの体が融合して『ありえないぐらい優れた魔術師のサーヴァント』になっているのよ。
当然の選択だわ。
……もしかして、貴方が契約したかった?」
「いえ、別に」
悔しいのは事実だけど、メディア達が強い方が絶対にいいからな。
しかし、これでキャスター二人にアサシン二人(実質、キャスターとライダーが一人ずつ)で、サーヴァントが計4人。
魔力供給が可能なのが、僕、タマモ、真凛、真桜、凛ちゃん、桜ちゃん、滴ちゃんの7人だから、魔力不足による弱体化も起きにくいはず。
怖いぐらい順調に戦力アップが続いているけど、……何か落とし穴とか罠とかないか?
あまりにも順調すぎて、お調子者の僕でも怖くなってくるぞ。
あっ、そうだ。
メディア達がサーヴァントとなれ、僕の
「僕の
……となると、スキルを借りてた僕たちが一気に弱体化してしまったか」
「ああ、そうですね。
せっかく、スキルを借りる訓練と使いこなす訓練をずっとしてきたのに、全部無駄になってしまいました」
「それは痛いわね」
「残念ですけど、……メディアさんとメドゥーサさんの幸せには変えられませんから、仕方ありませんよ」
タマモたちはメディアとメドゥーサのスキルが借りられなくなったが、それは仕方ないという態度だった。
が、メディアの返答は予想外のものだった。
「何言っているの?
もう一度私たちの分霊を降霊させればいいだけでしょ?」
「……いいんですか?」
「分霊を降霊して力を借りる程度のことに、いちいち文句をつけたりはしないわ。
そんなことを気にしていたら、最終的には降霊術を使う全ての魔術師を殺さないといけなくなるし、そんな面倒なことはしないわ。
……ただし、自意識を持った分霊は必要ないわ。
あくまでも、自意識がない普通の分霊を降霊しなさい」
「わかりました」
確かに、自分の分霊の力を勝手に使われるのは面白くないだろうけど、降霊術がこの世に存在する以上今さら気にすることでもないか。
いくら、メディアでも、この世界にいる全ての降霊術の魔術師を殺すとか、この世界で降霊術が使えないようにするのは不可能だろうし。
「今思いついたんですが、再度降霊した分霊と融合することで、さらにパワーアップはできませんかね?」
「……それは、どうかしらね?
確かに今の私たちは、生前と比較すれば少し弱体化しているから、パワーアップできる余地があるのは間違いないわ。
でも、最弱状態からここまで力を取り戻せたのは、『分霊と融合して霊力を回復した後に、真凛たちと契約を結んだ』からよ」
「つまり、さらに分霊と融合しただけではパワーアップにはつながらないわけですか?」
「その可能性が高いわね。
今の私の体は『大聖杯が構築したサーヴァントの体』であり、分霊を元にして作られたけど分霊とは別の存在。
分霊と融合することでスキルや魔術系宝具も増えて、不足していた霊力を補充できたわ。
だけど、今はもう霊力は十分足りているから、さらに霊力を増やしたとしても能力向上には繋がらないわね」
残念だ。
となると、メディア達は生前と同じ能力を取り戻すことも、彼女たちの全ての宝具を取り戻すこともできないのか。
真凛や真桜の方も、……多分あれ以上スキルや宝具は持っていないだろうから、分霊を降霊して分霊と融合させる意味はない、か。。
……ん?
僕が、英霊リンや反英霊サクラの分霊を降霊して、二人の力を借りるって手もあったか。
……まあ、反英霊サクラを降霊するなんてどう考えても自殺行為だから、実行するつもりは欠片もないが。
英霊リンの方も、【中国武術】は必要ないし、【魔法】はリン以外が使えるはずがないし、【魔術】も属性が違うから、……分霊を降霊する意味が全くないか。
その後、僕が降霊術を実行したところ、『強力ではあっても自意識が無いメディアとメドゥーサの分霊』の再降霊に成功した。
どうやら、僕の降霊術の腕前も向上していたらしい。
……もちろん、召喚の縁の品(人)として、サーヴァントになったメディアとメドゥーサを使ったのも効果があったのだろう。
さっそく、タマモと真凛と真桜が試したところ、以前と同じく分霊からスキルを借りることができた。
で、やっぱり僕の意志や技術では、分霊を
……その必要はないから別に構わないんだけど。
ともかく、こうして無事にメディアとメドゥーサがサーヴァントになることができた。
しかし、……やっぱり、(分霊が持っていなかった)宝具がないは痛い。
……本当に残念だ。
そういえば、メディア達がサーヴァントになるため仕方がないこととはいえ、この時点でアサシンの分体を二体も狩ったわけだから、綺礼、そして綺礼から連絡を受けた時臣師はものすごく警戒レベルを上げたんだろうなぁ。
……まあ、メディア達がサーヴァントになれたのなら、対価としては安いものか。
それにしても、分裂して最弱状態のアサシン相手とはいえ、『影の体で2体も捕獲して、救援が来る前に生贄にして再召喚を行ってここへ戻ってきた』のか。
原作情報があったとはいえ、半端ない離れ業だよな。
「そういえば、気配遮断スキルを持つアサシンをどうやって見つけたんですか?
あれを使われると、よほどのことをしない限り探知できないはずですが」
アサシンは当然全員霊体化して見つからない状態で、遠坂邸や教会を防諜しているだろうし、本当に一体どうやったのだろう?
「簡単なことよ。
『円』を使ってアサシンを見つけて、そのまま魔術で捕獲しただけよ。
最弱状態だったから、捕縛するのも簡単だったわ」
「『円』ですか?
……ああ、そういえばそうでした。
『円』は元々魔力を使って魔力展開範囲内の存在を探知するものでした。
さすがのアサシンも探知されたわけですか?」
「正確には、教会の近辺で『円』を展開して、『円』の効果範囲内に探知できない人型の空間があったから、そこにアサシンがいるというのがわかっただけよ」
ああ、なるほど。
一帯全てを探知範囲内において、その中で結界でもないのに探知できない部分があれば、そこは気配遮断スキルを使ったアサシンがいるはず、ということか。
『完全に気配を断てば発見することは不可能に近い』という効果を逆手に取った探知方法だな。
『円』にそんな使い方があるとは思わなかった。
「しかし、選択の余地がないとはいえアサシンですか?」
僕の言葉に、メドゥーサは反応を示さなかったが、メディアははっきりと顔を顰めた。
「私も気に入らないけど、仕方ないわ。
可能ならクラスを変えたいところだけど、ユスティーツァの記憶にもサーヴァントのクラスを変える方法はなかったから、どうしようもないわね」
「やっぱり、サーヴァントのクラスチェンジはできないんですか?」
「あら、貴方もクラスチェンジを考えていたの?」
「ええ、雁夜さんが召喚したランスロットが予想以上に強かったので、セイバークラスに変えられればもっと強くなる可能性が高いと考えていたんです」
バーサーカーの狂化によるパワーアップは暴走というリスクが大きい。
それよりは、『理性を奪われることが無く、対魔力や騎乗スキルを持ったセイバークラス』の方がよっぽど強くなると思う。
「気持ちはわかるけど、令呪を三画使っても無理でしょうね。
クラスチェンジは諦めて、バーサーカーをうまく運用する方法を考えた方が建設的よ」
「……わかりました。
そうします」
クラスチェンジのことは諦めるとして、メディアには他にも聞きたいことがあった。
「それにしても、よく臓硯の裏技を再現できましたね」
「私たちを舐めないでほしいわね。
仮にも、大聖杯のユスティーツァの記憶を手に入れたのよ。
つまり、ユスティーツァが記憶していた『聖杯戦争に使われた聖杯御三家の秘術』は全て入手済みよ。
それを元に研究したことで、貴方が記憶していた『聖杯戦争の裏技』は、私の魔術で再現することは可能なのよ。
なんだと!
それはすごい。
というか、すごすぎる。
このことを知ったら、『聖杯御三家が即座に同盟を組んで、僕たちを一人残らず殺しに来てもおかしくない』ぐらい恐ろしい事実だ。
……まあ、臓硯は行方不明だし、時臣師も『弟子のしたこと』ということで交渉次第では黙認にしてくれる、はずだから、本当に怖いのはアインツベルンだけだけど。
ちなみに、メディアが言った『僕が知っている聖杯戦争の裏技や強化策』などは次の通り。
<聖杯戦争の裏技>
1.エーデルフェルトは、双子の姉妹で参加し、善悪両方の側面から同一クラスでサーヴァント(セイバー?)を二体召喚した。
2.アインツベルンは、8番目のクラス『アヴェンジャー』でサーヴァントを召喚した。
3.ケイネスは、魔力のレイラインの接続先と令呪の持ち主をそれぞれ別の人物に分けた。
4.キャスター(メディア)は、サーヴァントでありながらサーヴァント(アサシン)を召喚した。
5.言峰綺礼は、ランサーのマスターから令呪を奪って、サーヴァント(ランサー)に対して令呪で主替えを同意させた。
6.間桐桜は、偽臣の書を令呪で作り出して、マスター権限を譲った。
7.間桐臓硯は、アサシン(佐々木小次郎)を殺し、彼の体を使って真アサシンを召喚した。(この際、臓硯が令呪を持っていたか不明)
<聖杯戦争におけるサーヴァントの強化策>
1.遠坂凛が(キャスターが死んでマスターなしの状態になった)アルトリアと契約して、アルトリアはパワーアップ(未熟なマスターが原因だった弱体化の解消)。
2.ハサンは【自己改造】スキルを使うためクー・フーリンの心臓を食べ、彼の戦闘力を己の物とし、さらに高い知性を手に入れた。
((5次)ハサンとクー・フーリンは、宝具以外の全てのパラメータが一致している)
間桐臓硯は裏技の「7」でハサンを召喚し、強化策の「2」でハサンのパワーアップを行った。
同様にこの世界のメディアとメドゥーサは、アサシンの分体を生贄にすることで『最弱状態かつ自意識が無い状態のメディアとメドゥーサのサーヴァント召喚』(裏技の「4」と「7」の組み合わせ)を行い、『強大な力を持つ分霊とサーヴァントを融合させること』と『優秀なマスター(真凛と真桜)と再契約すること』(強化策の「1」)の合わせ技で、第五次聖杯戦争とほぼ同等の能力を手に入れた、ということか。
一つ一つの要素を考えれば、メディアとメドゥーサなら実現してもおかしくないとは思う。
だけど、それをまとめてやったことで、『自意識を持った分霊』が『強力なサーヴァント』に成り上がってしまった、というのはマジでありえない。
裏技やらルール違反の常習犯である聖杯御三家も、このことを知ったら絶叫、下手すれば発狂するんじゃないか?
メディアのチートぶりをずっと見てきた僕でさえ、信じられないことだしなぁ。
「って、もしかして、……今回と同様にアサシンの分体を捕獲すれば、他のサーヴァントも召喚できるんですか?」
「サーヴァント召喚だけならできるわよ。
ただし、『縁の品か分霊が必要』なのと、『召喚したサーヴァントは、アサシンのクラススキルと一部の劣化スキルを持っているだけ』よ。
おまけに、自我がほとんどないから、『命令された通りにしか動けないただの人形』でしかないわよ」
僕の思い付きに対するメディアの回答は、全くもって容赦がなかった。
たしかに、今回は『自意識持ちの強力な分霊』という非常識な存在がサーヴァントと融合したからこそ、これだけの強さと自意識を手に入れることができたんだった。
『自意識持ちの強力な分霊』がいなければ、(最弱状態の)他のサーヴァントを召喚する意味が全くない。
『自意識持ちの分霊召喚』も、令呪を使った上偶然成功したようなものだし、再度成功させる自信は全くない。
……諦めるのが賢明か。
『クー・フーリンが使用した戦車の一部』と『衛宮士郎の髪の毛』、それと『柳洞寺の山門』という縁の品があるから、『この方法を使って、クー・フーリンと英霊エミヤ、それと佐々木小次郎なら召喚できるかも?』とか思っていたけど、甘すぎる考えだったか。
「それと、意志がないとはいえ、私の分霊がいる貴方の
どうしても降霊したのなら、女性の英霊だけを召喚しなさい」
えっ!?
いつの間にか、僕が降霊していい存在は『女性限定』が決定済みだったのか?
「そうね、私が可愛いと認める少女なら好きに降霊して構わないわよ」
「それは、……例えば、アルトリアとか、ジャンヌとか?」
「ええ、それはいい考えね。
特にジャンヌは、神を信じ、最後まで国のために尽くしてきたのに、必要がなくなったらすぐに裏切られた挙げ句、哀れな最期だったようだし。
彼女なら文句はないわ」
「メドゥーサの意見はどうですか?」
「私は別にありません。
桜や真桜に悪影響を及ぼすことが無ければ誰でも……いえ、ペルセウス以外なら誰でも結構です。
まあ、メディアの意見に従うのならば、男の英霊は降霊しないのでしょうが」
まあ、そうなるだろうな。
メディアも、イアソンなんて二度と顔も見たくないだろうし。
しかしそうなると、『メディアの分霊が僕の魂の空間にいる限り、降霊できる英霊は絶対に女性英霊のみ』となるのか。
それも『メディアが可愛いと認める英霊』以外は全て許可制。
美少女英霊って、ジャンヌとアルトリア以外だと、赤セイバーとか、実在するか不明の
女性の英霊という範囲でも、原作キャラ以外ではほとんど思いつけない。
『女性の英霊のみ許可』って、無茶苦茶制限が厳しいじゃないか。
まあ、英霊って基本男がなるものだから、女性の英霊が少ないのは当然ではあるんだけど。
……ああ、キャス孤もいたか。
ここにも、キャス狐もどきならいるけど。
しかし、
「キャス孤は召喚できないしなぁ」
「何を言っているのですか?
確かに、玉藻御前様は神様の分霊なので、冬木の聖杯戦争でサーヴァントとして呼ぶことはできないでしょう。
ですが、降霊術ならば、古来より『神降し』の言葉もあるように、神様の分霊を降霊することも可能なのですよ。
……実際に降霊できるかどうかは別問題ですが」
「それ、いいわね」
うぉっ、僕の独り言に、タマモだけでなくメディアまで食いついてきた。
「玉藻御前なら、狐を多分タマモを縁の存在にして降霊術を使えば、降霊できる可能性はあると思います。
ですが、僕の
分霊とはいえ神様が入る余裕はありますか?」
「私の見たところ、最低でもサーヴァント一人分ぐらいの余裕はあるわ。
キャス狐のイメージで召喚すれば、それぐらいで収まるでしょう。
万が一何かあったら私が全力でフォローするから、さっさとしなさい」
なんかメディアのテンションが高いぞ。
あるいは、自分が解放されたから、安心して無理難題を言っているのか?
こりゃ、断るのは難しそうだな。
それに、もし本当にキャス狐の分霊の召喚に成功すれば、タマモがその力を借りられる可能性は高そうだ。
しかし、この時期にわざわざそんなリスクを背負う必要はあるのか?
「……仕方ないわね。
玉藻御前の降霊は保留でいいわ」
「わかりました」
悩みまくる僕を見て、脈がないと悟ったのかメディアの方から保留を言ってきてくれた。
よかった。
いくら僕でも、必要性が少ないのに神霊の降霊をする気にはなれない。
リスクが怖すぎる。
メディアには逆らえないから、保留にしてくれて本当に助かった。
「そうそう、今までは順調なことばかりだったけど、予定通り行かないこともあるわよ。
例の、貴方から依頼されていた大聖杯からの魔力供給だけど……」
「えっ、まさか?」
「ええ、大聖杯を使ってルール違反をするマスターやサーヴァントがいることを想定していたみたいで、かなり面倒なプロテクトが掛かっていたわ。
時間を掛ければプロテクトを解除することも可能だけど、今の時点で下手に手を出すと大聖杯のシステムがおかしくなる可能性が高いわ」
「え~と、そういうことも想定して準備をしていたのでは?
それに、ユスティーツァの記憶に解決策はなかったんですか?」
この時点でそんなことを言われると、すごく困ってしまうのだが。
一体何があったんだ?
「どうも、後から対策を付け加えたらしくて、ユスティーツァの記憶にはプロテクトの情報は無かったわ。
元々御三家の誰かが裏切ることを防ぐために、御三家が協力して対策を施したんでしょうね。
少なくとも、私が読み取れる範囲では、プロテクトに関わる情報は無かったわ」
あ~、なるほど。
裏技やら謀略やらやりたい放題の聖杯御三家だから、『大聖杯から魔力を不正に受け取ること』も想定の範囲内だったわけか。
サーヴァントを7体、今回と前回は8体(メディアとメドゥーサはイレギュラーなので除外)召喚して、マスターに令呪を与えた時点で、残る魔力は『聖杯戦争が終わるまでにサーヴァントへ供給する魔力+α』ぐらいしかないはず。
その魔力を一人のサーヴァントが奪ってしまえば、残るサーヴァントは初期保有魔力とマスターから供給される魔力だけで戦わなくてはいけない。
当然、大聖杯から魔力を奪ったサーヴァントが圧倒的に有利になる。
その対策をしておくのは当然だったか。
「所詮、聖杯御三家が手を組んだとしても、この時代の魔術である以上、私に解析できないものはないけど、……さすがに聖杯戦争が終わるまでに解析を終える自信はないわ」
「それなら仕方ないですね。
無駄になるとデメリットが多いので、他の作業にその時間を使ってください」
「そのつもりよ」
こうして、原作では何もなかったはずの聖杯戦争二日目において、『メディアとメドゥーサのサーヴァント化』という、僕にとっても完全に予想外のことが起きた。
というか、メディア達が起こしてしまった。
そういえば、サーヴァント化の際にアサシンの分体を二体倒しているわけだから、事実上これが『聖杯戦争の開幕戦』になるわけか。
戦いっていうよりは、開幕を告げる儀式みたいなものだったな。
少なくとも時臣師陣営は、『内緒にしていたはずの複数体いるアサシンの存在がバレた挙句に、分体が二体も殺されてしまった』んだから、今頃ものすごく焦っているんだろうなぁ。
これで第四次聖杯戦争も、完全に原作崩壊状態になったな。
僕の陣営はサーヴァントが4人もいてそれだけ聞けば心強いけど、いるのはキャスター二人とアサシン二人(実質はライダーとキャスター)。
つまり、後衛3人と遊撃1人とものすごく偏った戦力である。
おまけに真凛と真桜は『体を使いこなすところから訓練中』だし、メディアは
やっぱり、できるだけ搦め手で攻めるべきなんだろうなぁ。
はてさて、これからどうなることやら。
ご覧の通り、またまたとんでもないことが起きました。
私なりに考察して、『八神家の降霊術』+『メディアの魔術』+『ユスティーツァの記憶』+『原作知識』があれば可能ではないか? と考えました。
これで、聖杯戦争に参加するメンバーが大体揃いました。
原作崩壊が確定し、今後の展開はすごいことになる予定です。
【聖杯戦争の進行状況】
・ケイネス、ソラウ、衛宮切嗣、アイリスフィール、舞弥、アルトリア以外は冬木市入りを確認
・サーヴァント10人召喚済み(キャスター2人、アサシン3人)
・アサシンの分体(最大80体)のうち、2体死亡確認(生贄:2体)
【八神陣営の聖杯戦争の方針】
・遠坂時臣が死なないようにする(真凛と真桜の希望)
・遠坂時臣の半殺し(メディアの決定事項)
・間桐臓硯の殲滅(メディアの決定事項)
・遠坂家の女性陣と間桐滴の保護(絶対目標)
・アンリ・マユの復活阻止(絶対目標)
【設定】
<サーヴァントのパラメータ>
クラス アサシン
真名 メディア
マスター 八神真凛
属性 中立・悪
ステータス 筋力 D 魔力 A++
耐久 C 幸運 A
敏捷 B 宝具 -
クラス別能力 【気配遮断】:A+
保有スキル 【高速神言】:A
【呪具作成】:B
【騎乗】:A+
宝具 なし
備考
八神遼平の魂の空間ソウルスペースにいた分霊と融合済み
<パラメータ>
クラス アサシン
真名 メドゥーサ
マスター 八神真桜
属性 混沌・善
ステータス 筋力 B 魔力 B
耐久 D 幸運 A
敏捷 A 宝具 B
クラス別能力 【気配遮断】:A+
保有スキル 【魔眼】:A+
【怪力】:B
【神性】:E-
【対魔力】:B
【騎乗】:A
【海神の加護】:A
【大地制御】:B
宝具 【他者封印・鮮血神殿】:B
【自己封印・暗黒神殿】:C-
備考
八神遼平の魂の空間ソウルスペースにいた分霊と融合済み
<サーヴァントのパラメータ>
クラス バーサーカー
真名 ランスロット
マスター 間桐雁夜
属性 秩序・狂
ステータス 筋力 A(A+) 魔力 B
耐久 B(A) 幸運 A
敏捷 A+(A++) 宝具 A++
クラス別能力 【狂化】:C
保有スキル 【対魔力】:E
【精霊の加護】:A
【無窮の武練】:A+
【勇猛】:A
【心眼(真)】:D
宝具 【騎士は徒手にて死せず】:A++
【己が栄光の為でなく】:B
【無毀なる湖光】:A++
備考
魔術回路を全部開いた間桐雁夜がマスターのため、原作よりもパワーアップしてスキルも増えている。
ただし、狂化によって【対魔力】と【心眼(真)】はランクダウンしており、【勇猛】は効果を発揮できない。