いきなり現れたセイバーオルタらしい漆黒の少女は、ランスロットに向かっていきなり叫んだ。
「ランスロット!
貴様の願い通り、私が裁いてやろう。
お前の全力を以って、私の裁きを受けとめるがいい!!」
「Arrrrrrrthurrrrrr!!」
セイバーオルタはランスロットの名を呼び、ランスロットもまたはっきりとアーサー王の名を呼んだ。
この発言からして、この少女は人格や記憶もセイバーオルタで間違いなさそうだ。
しかし、いったいどこから、そしてどうしてここに現れた?
アルトリアが知らない様子から考えると、『切嗣が密かに裏技を使って追加召喚していた』とか、『臓硯が裏技で召喚した』とかの可能性が高そうだけど。
いや、どちらにしろ、面倒なことには変わらない!
そんなことを考えていると、ランスロットを覆っていた黒い霧が消えていき……、って、えええええ!!
見間違いなどではなく、ランスロットがはっきり見えるようになり、ランスロットの手には
「
なぜ、貴方が!!」
漆黒の少女の呼びかけに加えて、見間違えようのないランスロットの姿を目にして、アルトリアは悲鳴のような声をあげていた。
しかし、アルトリアの叫びに対して、二人は全く反応を示さず、お互い見つめ合い、いや睨み合ったままだった。
そして、セイバーオルタはその手に黒い剣を具現化させると、ランスロットに向かって一気に駆け出した。
ランスロットもまた、セイバーオルタに向かって全力で駆け出し、二人はちょうど中間地点で激突した。
似た意匠を持つ二本の闇色の剣は正面から激突すると、凄まじい衝撃音が響き、同時にとんでもない量の魔力が辺りに撒き散らされた。
「なぜ、なぜ、お前が、……
思わずアルトリアが叫んだのも無理はない。
色は闇色に染まっていても、
「■■■■■■■■■■!!」
今度はランスロットが
「貴様の願い通り、徹底的に叩きのめしてやろう。
来るがいい、ランスロット!!」
そのまま二人は狂気と覇気をぶつけ合い、互角の戦いを始めた。
狂気に犯されたランスロットは、ただセイバーオルタに向かって突撃するだけだった。
しかし、セイバーオルタもまたランスロットに正面から打ち掛かり、その場で熾烈な剣戟が繰り返された。
……て、あれっ?
ランスロットの
つまり『パワーアップした雁夜さんが召喚したことによる強化+狂化+
……ああ、それと
まじでアルトリアの天敵だよな。
同じ疑問を感じたのか、メディアはすでに雁夜さんに問いかけていた。
「雁夜、貴方『狂化』を解除したの?」
「その通りです、プリンセス。
正直、これ以上の魔力消費は厳しすぎる。
……それに、いきなり現れた黒いセイバーの正体も目的も分かりません。
そこで、今回の戦闘はここまでとして、機会を見つけ次第バーサーカーを逃がすつもりです。
よって、魔力切れになるのを避ける為、『狂化』を解除しました」
「そう、その判断は正しいわね。
実戦経験も積めたし、貴方もバーサーカーの制御について少しはコツを掴めたようだし、……確かに潮時でしょうね。
黒いセイバーと距離を取れたら、……魔力供給を遮断して、強制的に霊体化させてバーサーカーを撤退させなさい。
今の貴方なら可能でしょう?」
あっ、なるほど。
その手があったが。
原作の雁夜さんならともかく、この世界の雁夜さんなら、自分の意志でランスロットへの魔力供給量を遮断することも可能だったか!
「ええ、十分可能です。
了解しました。
戦闘が小康状態に入り次第、霊体化させてバーサーカーを撤退させます」
こうして、ランスロットを撤退させる機会を伺いながら、僕たちは二人の戦闘の観戦を続けることになった。
改めてセイバーオルタの姿を確認したが、黒一色の鎧と服、そしてバイザーのような黒い仮面とそこまではセイバーオルタそのものだ。
しかし、黒目黒髪で、良く見れば肌の色も違うし、呆然と二人の戦闘を見ているアルトリアと比較すると、……少し背が高いか?
このセイバーオルタは、僕の知らない世界から来た存在か?
それとも、黒桜に『間桐家伝統の肉体改造』を施された結果、ここまで体が変化したのだろうか?
そんなことを考えつつ、戦う二人以外の状況を確認してみると、全員動く様子はなかった。
ディルムッドは元々アルトリアを守りたかっただけなのか、ランスロットとセイバーオルタの戦いには介入せず、少し離れた場所で二人の戦いを観戦するだけだった。
ケイネスもそれを良しとしたのか、彼の指示もなかった。
「ほう、バーサーカーはかの有名な湖の騎士ランスロットだったとは驚いた。
理性を失ってもあの技量とは、さすがは最強の円卓の騎士。
……惜しいのう、バーサーカーでなければぜひとも部下に欲しかったのだが」
「お前、本当にいい加減にしろよな!
それにもっと重要なことがあるだろ。
ありえないんだよ!
なんで、なんでセイバーがもう一人いるんだよ!」
「どうした、坊主?
確かにいるはずのない8人目のサーヴァントがいきなり現れたのだ。
動揺するのも無理はないが、もちっと落ち着いて対応できんのか?」
「バカ!
そんなんじゃない!!
あいつのクラスはセイバーだと、はっきりパラメータに表示されているんだ。
つまり、ここにはセイバーが二人いるんだぞ!
そんなこと、……ありえるはずがないのに!」
「ふむ、確かにそいつも不思議よの。
坊主の目には、あやつがセイバーだと見えておるのか。
……だが、それだけではないぞ。
あの黒い剣は、セイバーの剣と色以外は全て同一。
……どうやらこの聖杯戦争、一筋縄ではいかんようだのう」
そんなことを話しながら、イスカンダルとウェイバーも観戦していた。
ちょっと錯乱中のウェイバーの気持ちはよくわかる。
セイバーオルタの存在を知っている僕でさえ、何が起きているのか全然分からず混乱中なんだからなぁ。
『この様子なら二人の戦闘に邪魔は入らないか?』と思ったまさにその時、予想外の事態が発生した。
ランスロットとセイバーオルタの戦いは相変わらず凄まじいもので、その余波で吹き飛んだ破片の一つが、たまたま街灯の柱に激突してそれをへし折ったのだ。
……そして、運が悪いことに、その街灯はギルガメッシュが乗っていたものだった。
まあ、辺り一面に破片が飛び散っていたから、激しい戦闘が続いていれば、いつかは同じことが起きていたんだろうけど。
「雑種が!
唯一の王たる我を地上に降ろすとは!
その罪、万死に値する!!」
地上に引きずりおろされたギルガメッシュは、一瞬でブチ切れて剣と槍を二人に向かった射出した。
が、そんなものに殺られる二人ではなく、すぐさま戦闘を中止して距離を取り、同時に振り返ってそれぞれ飛んできたものを叩き落とした。
それを見たギルガメッシュは、当然ながらさらに沸騰した。
「貴様ら!
大人しく死んでおればいいものを!
我が宝物の前に、その程度の力など無力であることを知るがいい!!」
今度は一気に16個もの武器を出現させると、即座に二人に向けて撃ち放った。
当然、それは凄まじい音と共に大破壊を巻き起こす。
……が、土煙が風に飛ばされると、そこには無傷で攻撃を防ぎきった二人の姿があった。
おまけに、ランスロットは
……何をどう判断したのか僕には想像もできないが、……どうやら
さすが、チートサーヴァントが二人揃っているだけあって、ギルガメッシュの投射攻撃程度なら、全く問題ないらしい。
「……その汚らわしい手で、我が宝物を使うとは。
許さんぞ、雑種っ!!」
完全に切れたらしいギルガメッシュは、とうとう32個もの武器を出現させて攻撃しようとした。
『そろそろ時臣師の我慢も限界かな?』と見ていると、予想通り時臣師が令呪を使ってギルガメッシュに諫言したらしく、彼は急に視線の方向を変えた。
「貴様ごときの諫言で、王たる我に引き下がれと?
大きく出たな、時臣……」
ものすごく不満そうだったが、ギルガメッシュは展開していた武器を消し去った。
「……命拾いしたな、狂犬。
今の貴様では理解するだけの知性はないだろうが、……再び同じことを繰り返せばその時は死以外の結末があると思うな!」
そう吐き捨てると、他のサーヴァントたちを見下ろして、ギルガメッシュは傲慢に言い放った。
「雑種ども。
次までにそこの黒い奴らを退治しておけ。
我とまみえるのは真の英雄のみで良い」
そう言うと、ギルガメッシュは霊体化して姿を消した。
ふう、まずは一人撤退か。
時臣師も多分令呪を使っただろうし、ここは原作と同じ展開になっちゃったか?
……まあ、ギルガメッシュが怒った原因は、最初は不可抗力だし、二つ目は武器を手にしただけだから、雁夜さんに責任はないはず。
機嫌は損ねているだろうけど、『雁夜さんが裏切った』とか『非協力的だ』とか言われる恐れはないだろう。
……なぜか、何個か宝具の原典が置き去りにされているが、ギルガメッシュが回収を忘れたのか?
まあいい、使えるものは回収するのが僕のモットーでもあるし、目立たないように影を使って回収しておこう。
と、そんなことを考えていると、ランスロットも霊体化して姿を消していた。
ランスロットがギルガメッシュと対峙して、『アーサー王に対する暴走』が収まった時を狙って、雁夜さんが強制的にランスロットを霊体化させたのだろう。
霊体化してしまえばランスロットも無事に撤退できるはずだ。
「雁夜さん、大丈夫ですか」
「……あ、ああ、俺もバーサーカーも全く問題ないが、……本気で疲れた。
魔力を使いすぎたのも原因だけど、……まさかアーチャーと戦う羽目になるとは」
雁夜さんの声は、本気で疲労困憊といった状況だった。
戦いが終わり、大量の魔力と気力を消費した疲れが一気に出てきたのだろう。
「あれは不可抗力ですよ。
バーサーカーが戦ったのは、セイバーとランサーと黒いセイバーとアーチャーですけど、セイバー以外は相手から戦闘を仕掛けてきたわけですし」
「……そうだな。
多分その説明で時臣も納得すると思うが、……とにかく疲れた。
魔力回復のためしばらく寝てるから、何か緊急事態があったら起こしてくれ」
「わかりました。
後のことは任せてゆっくり寝ててください」
「……ああ、……頼んだ、よ」
雁夜さんの声は途切れた。
多分、眠りの世界へ直行したのだろう。
ランスロットは、アルトリア、ディルムッド、セイバーオルタ、ギルガメッシュと4人連続で戦ったんだから戦闘経験は十分積めたし、魔力の消費量もかなりのものだろうから、あの時点で撤退できて本当によかった。
そして、ランスロットは『暴走すれば(今の雁夜さんでも)制御が難しくなること』もわかったし、『ランスロットは予想以上に強いこと』、『ディルムッドには相性が悪すぎること』、そして『アルトリアを見ただけで暴走すること』も確認できたから収穫は多いと言える。
……まあ、原作知識で知っていたことも多かったけど。
さて、これで撤退したサーヴァントは二人目。
今倉庫街に残っているサーヴァントは、ぼろぼろのアルトリア、無傷のディルムッド、一度も戦ってないイスカンダル、メディアの影、偵察中のアサシンの分体、そして謎だらけのセイバーオルタである。
サーヴァント以外だと、アイリスフィールとウェイバー、そしてケイネスがいるな。
……ああ、隠れてマスターの狙撃を狙っている切嗣と舞弥もいたか。
「アーチャーだけでなく、バーサーカーも退散したようだのう。
まあ、バーサーカーの方は、四連戦だったから無理もないが」
「そうだな。
両方とも決着を着けたかったのだが残念だ。
……まあいい、次の機会にけりをつけてやろう」
「……随分と好戦的な奴よ。
ところで、少し聞きたいことがあるのだが、……色違いとはいえ
「そうだ。
……正確には、かつて騎士王だった存在、だがな」
セイバーオルタはあっさりとイスカンダルの問いに答えた。
しかし、当然それを許せない人がいる。
「ふざけるな、ブリテンの王は私だ!」
「そうだな、『かつてのブリテンの王』で、『未だにくだらない願いを持ち続ける愚か者』はお前だな」
「貴様!」
「私もかつて同じ願いを持っていたからな。
今思えば、あの頃の私は本当に愚かだった」
アルトリアは激昂し、セイバーオルタはアルトリアを相手にせず、しかしアルトリアの怒りに油を注ぐような発言を続けていた。
「……つまり、どういうことだ?」
ディルムッドの率直な問いに対して、セイバーオルトは淡々と言葉を紡いだ。
「かつて、この聖杯戦争に召喚されたが、聖杯を手にすることなく私はこの世界を去った。
そして、別の聖杯戦争に召喚され、その世界で不覚を取って悪性の存在に囚われてしまった。
普通ならそこで殺されて終わりだろうが、……私は殺されず悪性に汚染された結果この状態になったのだ。
つまり、私はかつて騎士王ではあったが、今は別の存在へと変質している身だ。
『別の存在へと変質した私』と『かつての私』は、全く異なる存在。
ならば、その二人が同時にこの世界に存在していても、おかしくはないだろう?」
「……確かに、理論上は貴女の言う通りね。
でも、聖杯戦争は7クラスのサーヴァントが召喚されて聖杯を求めて戦う儀式であり、本来なら同クラスのサーヴァントは一人しか召喚されないルールになっているはずよ。
話を聞いていると、どうやら貴女の方がイレギュラーな存在みたいだけど、一体何が起きたのかしら?」
僕たちがしてきたことを完全にしらばっくれて、メディアはセイバーオルタに質問した。
こういう駆け引きでは、やはりメディアは頼もしいな。
「大したことではない。
『私を取り込んだ悪性の存在』もこの聖杯戦争で召喚された為、私も引きずられてこの世界に来ただけだ」
「……って、まさか、お前以外にもサーヴァントがいるのか!?」
「そういうことだ」
ウェイバーの質問に対して、セイバーオルタはあっさりと頷いた。
その場にいた人たち(サーヴァント含む)は彼女以外全員驚愕の表情をしたが、それは僕たちも同様だった。
当然、僕たちは全員一斉に真桜の方を見たが、真桜は必死で顔を横に振っていた。
でも、『私(アルトリア)を取り込んだ悪性の存在もこの聖杯戦争で召喚された』って、どう考えても『真桜と融合している黒桜』のことだよな?
「し、知りません。
私は今でセイバーオルタさんのことは見たこともありませんし、それ以前に存在にも気付きませんでした。
彼女の言うことが事実だったとしても、この体と同時に、でも別の場所に召喚されたんじゃないですか?」
ついでに、黒桜とのラインが完全に閉じられていれば、真桜がセイバーオルタの存在に気付けなかったのも無理はないか。
……しかし、今の今までメディアの監視網から完全に隠れることなどできるんだろうか?
「その可能性は低いわね。
あれだけ強力、かつ目立つ存在が私の目から逃げられるはずはないわ。
それに、あの戦場は完全に私の監視下にあったのに、瞬間移動でもしたみたいにいきなり現れたのよ。
……ただ、出現場所の近くには真桜が作った影がいたけどね」
「……そういえば、セイバーオルタさんが現れた時、私の影のすぐ傍でした。
あの時は偶然だと思っていましたけど、……まさかっ!?」
「ええ、真桜が気づいた通り、あの時セイバーオルタは貴女の影を通って現れた可能性があるわね。
しかも、今までずっと貴女の中に潜んでいて、初めてこの世界に現れたと考えれば、……今まで見つからなかったことにも説明がつくわ。
何で今まで出てこなかったのに、今日になって出てきたのかは分からないけどね」
「……言われてみれば、セイバーオルタさんが現れた時、初めて感じる反応がありました。
すぐそばに彼女が現れたので、てっきりその反応だと思っていましたけど」
おいおいおい、黒桜の中にいたのが本当なら、……下手すると僕たちの情報、正確には真桜が見聞きしたことが全部ばれてるってことだろ?
おまけに、『真桜の支配下にいない』どころか、『本来マスターである黒桜の体と融合している真桜でさえ探知できない』となると、……ものすごくやばいんじゃね?
しかも、真桜の意志を無視して、黒桜の中に自由に出入りできることさえ可能だった場合、……脅威以外の何物でもない。
僕たちがセイバーオルタの謎解きをしているのと同様に、戦場でもセイバーオルタに対して質問は続いていた。
といっても、質問をするのは興味津々かつ遠慮を知らないイスカンダルだけだったけど。
「ところで、お主がイレギュラーな存在であり、本来いるはずがない二人目のセイバーだと分かったわけだが、……お主のことは何と呼べばよいかのう?
お主のこともセイバーと呼ぶと、そこにいる騎士王と区別がつかん。
……特に希望がないなら、黒セイバー、あるいはブラックセイバーとでも呼ぶがそれでよいか?」
「そうだな。
……ファントム」
「ん、何か言ったか?」
「私のことはファントムと呼べ。
英霊ですらなくなった私は、亡霊とでもいうべき存在だろう。
今の私には
「ふむ。では、ファントムよ。
『お主を取り込んだ悪性の存在』とやらもこの聖杯戦争に召喚されたらしいが、……そやつは今も『他のサーヴァントも取り込む能力』を持っておるのか?」
「ああ、多分可能だろう。
そして取り込まれれば、今の私のように闇に染められ、強制的に支配下に置かれるだろうな」
あああああ、どんどん黒桜の情報がばれていく。
しかも、そのことを知ったことで、『黒桜(真桜)に対する警戒レベル』は間違いなく最大級になってしまうだろう。
「そりゃ困るのう」
「困るのう、じゃないだろ!
アイツの言っていることが事実なら、そのサーヴァントは他のサーヴァントにとって天敵そのものだぞ。
下手すれば、聖杯戦争そのものが成立しなくなるじゃないか!」
「ふん、取り込まれる前に倒せばいいだけのことよ。
それゆえ、今ファントムに聞いておるのではないか」
「うっ」
ウェイバーの指摘に対して、イスカンダルは冷静に返答していた。
実際、黒桜の情報をばらされるほどこっちが不利になるわけで、僕は今ものすごく困っている。
いったい、セイバーオルタ、じゃなかったファントムはどういう目的で何のために戦っているんだ?
「それにしても、色々と教えてくれて余は助かるが、このことはお主のマスターに許可をもらっておるのか?」
「問題はない。
不完全な召喚だったせいで、私に対する支配はほぼ完全に解除された。
魔力供給元としては必要だが、私の行動を制限したり強制したりすることはもうできない。
恨みはもうないが、……この世界で従うつもりはない」
あ~、やっぱりそうか。
まあ、黒桜そのものならともかく、『黒桜の体を乗っ取った真桜(桜のコピー人格)』に従うはずもないよなぁ。
……ってことは、最悪の場合、『八神陣営の全情報を持ち、強力なサーヴァントでありながら、独自の行動を取る存在』ってことになるのか?
おまけに、弱体化しているとはいえ対魔力スキルを持っているわけだし、……いかん、僕たちにとってファントムは『天敵と呼ぶに相応しい存在』になりかねない。
僕たちが有利に戦えているのは『原作情報とそれを元にした戦略』なのに、その全てを知った敵がいたら、有利さが消えるどころか、一気に不利になってしまう。
やばい、やばすぎる!!
「それでお主の意志でここに現れ、お主が望んでかつての部下と決闘を行った、というところか?」
「その通りだ」
「余計な邪魔が入らなければ決着が着くまで戦えたろうに、残念だったのう」
「また機会はある。
そのときに、決着をつければいいだけのことだ」
戦場では相変わらず穏やかに二人の会話が続いてた。
他のメンバーは空気を読んだのか、誰も口出ししない状態が続いている。
「うむ、裏切った部下を裁くのは王の義務。
生前はそれが果たせなかったと聞いておる。
こうして再会できたからには、きっちりとけじめをつけるのは当然よのう。
残念ながら理性は残っとらんようだが、……裁かん理由にはならんわな。
……あっちのセイバーはそれどころではないようだが」
イスカンダルの言葉通り、アルトリアは『自称未来、それも悪性の存在に取り込まれて変質した騎士王の登場』と『かつて信頼した部下であり裏切り者でもあるランスロットがよりにもよってバーサーカーになっていた』という衝撃の事実二連発で、完全に呆然自失状態になっている。
今も、イスカンダルの言葉に反応すらしていない。
「情けないことだが、……かつての私も似たようなものだ。
バーサーカーの正体がランスロットだと分かっても、しばらくはそのことが信じられなかった」
「……裏切ったとはいえ、信頼していた部下がバーサーカーとなって襲いかかってくれば、……さすがにショックを受けるのは仕方ないと思うぞ。
もっとも、すぐに立ち直り速やかに鎮圧できないようでは、ましてやその事実を受け入れられないようでは、そやつには王たる資格はないがな」
「そうだな。
だから、かつての私は間違っていた。
ランスロットに対してどれほど感謝していようと、どれほど頼りに思っていようと、……不義の罪が明らかになった以上、一切躊躇することなくあの二人を罰するべきだった。
……それができなかったことが私の罪だな」
ファントムは静かに、しかし冷静にイスカンダルの言葉を認めていた。
だが、それに納得できない人もいたようだった。
「私とグラニア姫の関係をフィンが許したように、お前は許すことはできなかったのか?」
「無理だな。
お前たちは婚約の段階で逃げ出した。
しかし、私とギネヴィアはすでに結婚していたのだ。
……無論、私は女であるから偽装結婚だったがな。
だが『王妃による不義の罪は死刑』と法で決まっている。
……さらにランスロットは、不義がばれたときに罪のない騎士たちを多数殺していた。
王が法を破ることはできないし、ましてや罪を犯したのが妻と部下ならば、猶の事厳しく対処しなければならなかったのだ」
自分の状況と似ていた為か、ディルムッドがランスロットを庇ったが、ファントムは容赦なく否定した。
さすがにその言葉には反論できなかったのか、ディルムッドはそれ以上何も言わなかった。
「うむ、法を守ってこそ王。
そして、身内なればこそ、情を殺して厳しく対処するのは当然であるな」
「そういうことだ。
そして、それを貫き通すことができなかったからこそ、私は国を滅ぼすことになったのだろうな」
「まあ、それだけが原因とは一概には言えんが、……それが原因の一つだったのは間違いなかろうなぁ」
なぜかは知らないが、いきなりファントムとイスカンダルはしみじみと分かりあっていた。
ファントム(セイバーオルタ)って、黒化したせいでイスカンダルに近い思想に変わったのか?
まあ、セイバーオルタって発言や行動が暴君な感じだったから、まごうことなき暴君であるイスカンダルと息があっても不思議ではないか。
もっとも、『暴君でありながら結果として民を幸せにした征服王』と同じく、セイバーオルタの行動が周りを幸せにするかどうは未知数だけど。
「で、お主の目的はそれだけか?
それだけならば、バーサーカーに勝てば目的は達成、ということになるのか?」
「……本当にお前は懲りないなぁ。
セイバー、……じゃなかった。ファントムまでスカウトするのかよ!」
「何を言う。
余はこれから世界征服を行うのだぞ。
有能な人材はいくらでも必要に決まっとるわ!」
「断る。
ランスロットを裁く以外にも、この聖杯戦争でやらなければならないことがある」
「ほう、それはなんだ?」
「その一つは、今度こそランサーと決着をつけることだ」
ファントムはそう言って、まっすぐにディルムッドの方を見た。
「ランサーよ、本来ならばセイバーと最後まで戦いたいところだろうが、……先に私と戦ってくれないだろうか?
前の時は決着を付けられず、それが最後まで心残りだったのでな」
ファントムはいきなりディルムッドに戦いを申込み、ディルムッドは驚いた表情を見せた。
そして、当然ながらそれを許せない存在がいた。
「ふざけるな。
私の方が先だ!」
「ふん、全力でも不覚をとったのに、その左腕で勝てると本気で思っているのか?
それこそ、ランサーへの侮辱だな」
「くっ。だが、私は引くわけにはいかない」
「別に引けといっているわけではないし、私もここで決着をつけるつもりはない。
私の知るランサーよりも強くなっているようだから、どれほど違うか確認したいだけだ。
決着は、後日つける。
……無論、ただとは言わん。
『ディルムッドを倒すこと』、『ゲイボウを破壊すること』以外の方法で、お前のその左腕を治す方法を教えてやろう。
それでも承諾できないというならば、お前を動けない状態にしてからランサーへ挑むだけだ。
万全な状態ならともかく、心身ともに傷ついたお前など短時間で無力化してやろう」
「貴様!」
あまりの暴言にアルトリアが激昂したが、ファントムは平然と言い返した。
「どうした?
大人しく見ているか、力づくで止めるか、好きな方が選べばいい。
言っておくが、私は『愚かだった昔の自分』が大嫌いだ。
お前が相手になるというのなら、容赦するつもりはないぞ」
ファントムの本気の脅しに、アルトリアは悔しそうに俯いてしまった。
ファントムが
「そういうわけだ、ライダー。
ランサー相手に力試しをするが別に構わないな?」
「おお、構わんぞ。
アーチャーの攻撃を無傷で凌いだ戦いぶりも見事だったが、やはりお主の接近戦の戦いを見てみたいからの」
「いいだろう。
今の私は力を出し惜しみする理由も必要もない。
好きなだけ見ればいい」
それを聞いたイスカンダルは、ディルムッドの方へ向いた。
「聞いた通りだ。
ファントムはお主との戦いを望んでおるが、お主はそれを受けるか?」
「望むところだ、ファントムよ。
しかも、別の世界の私相手とはいえ、『今度こそ決着を付ける為』というこの上なく光栄な理由とあらば、戦いを断わる理由はない。
まあ、今回は実力の確認だけのようだがな。
……しかし、『かつてお前と戦った私』は何があって、お前と決着を付けられなかったのだ?
考えたくないが、……お前との再戦が叶う前に、他のサーヴァントに倒されてしまったのか?」
まあ、普通ならそう考えるよなぁ。
そして、その問いに対して、あろうことかファントムは一切隠すことなくディルムッドに話し始めてしまった。
「簡単なことだ。
私のマスターが、お前のマスターの婚約者を誘拐した。
そして、私との二回目の戦闘の途中で、婚約者の命と引き換えとして令呪を使わせてお前を自害させた。
……それだけだ」
「なんだと!
ソラウを誘拐だと!!」
思わずといった感じの、ケイネスの声、いや叫びが響いてきた。
「そ、そのようなことが!
……いや待て。
お前のマスターは、そこの女ではないのか?
彼女にそのような悪辣な真似が出来るとは思えん」
「私はアイリスフィールに忠誠を誓っていたが、本当のマスターは別にいる。
今もこの近くに潜み、お前のマスターを射殺する機会を伺っている可能性が高いぞ」
「主よ、お気を付けください!!」
「……安心したまえ、必要ないとは思うが、念のため防御システムを展開した。
サーヴァントに直接攻撃されない限り、この守りは万全だ。
彼女の方も異常はないことを確認したところだ」
「はっ、了解しました」
僕からは見えないけど、慌てて
というか、今までマジで防御システムを展開していなかったのか。
隠蔽の魔術だけで十分だと思っていたのだとしたら、迂闊にも程があるなぁ。
「どこまで事実かはわからんが、忠告感謝する。
……それにしても、かつてのマスターであり今は関係ないとはいえ、そこまで教えてくれるのは何故だ?」
「お前には借りがあった、それだけだ。
それに聖杯戦争が終わるまで、マスターとは一切会話をせず、直接掛けられた言葉は『令呪で命令された三回』だけ。
そして、最後には手酷い裏切りを受けた。
今となれば裏切った理由も理解できるのだが、……一切事情を説明することなく私を裏切ったことは今でも許せない。
よって、恨みはあっても恩などはない!」
ファントムはきっぱりと言い切った。
……こりゃ本気で怒っているな。
元々あった怒りや恨みが、黒化してパワーアップしてしまったのだろうか?
まあ、そういう負の感情はアンリ・マユの呪いと相性がいいのは間違いないんだろうけど。
「安易な同情などお前を怒らせるだけだろうが、……酷いマスターにあたったものだな」
「全くだ。
……だが、お前も似たようなものだ。
私と同じような目に遭いたくなければ、マスターとは腹を割って話しておいた方がいいぞ。
……令呪で自害させられた後、血涙を流し、全てを呪って消えていったお前の姿は痛ましかった。
せめてマスターから、『婚約者を助けるためにお前の命をくれ』と一言説明があれば、まだ納得しようがあったろうにな」
「……お前の言う通りだ。
私は主の為に命を捧げる覚悟がある。
主や主の婚約者の命を救うために必要であるならば、躊躇いなく私は死を選ぼう。
お前との決着がつけられずにこの世界から去ることになれば心残りはあるだろうが、……主たちの命を優先するのは当然のことだ」
自害させられた時のディルムッドの状況を知らないから、結構あっさりと自分の自害を認めているな。
……まあ、騎士たる者、自分の命で(本当に)主の婚約者の命が助かるのなら、躊躇なく命を捧げる覚悟を持っているんだろうけど。
そんなディルムッドでさえ、『事情の説明なし』『事前の予告なし』『ケイネスに己の全てを否定され、残っているのはセイバーとの戦いだけ』という状況で令呪を使って自害させられたのは、流石に許せなかったんだろうけど。
本当に、原作においては『ディルムッドの不運』と『切嗣の悪辣さ』が目立ってたよなぁ。
「……ところで、そこまで外道なお前のマスター、いや元マスターは、本当に約束を守ったのか?
私の知る限り、そのようなことをする連中は、約束など平気で踏みにじる奴らばかりだったが……」
やっぱりそこは突っ込むか。
さすがは経験豊富な歴戦の戦士。
いつの時代も手段を選ばない外道は存在したらしい。
「お前の予想通りだ。
一応契約は守って、誘拐した婚約者はお前のマスターに返したらしい。
だが、お前の自害を見届けた後、二人まとめてマスターの仲間に銃撃された。
そして、婚約者は即死し、死にきれなかったお前のマスターは私が介錯した」
うわ~、切嗣のやったことを本当に全部ばらしているし。
ファントム以外の全員があまりに悪辣な行為に顔をしかめているし、ケイネスが絶句している気配まで伝わってきている。
「……そんな馬鹿な。
いくら聖杯を求める戦いとはいえ、彼はそこまでしたのか!?」
想像を絶する内容に、アルトリアは思わず叫んでいた。
「ああ、そうだ。
まだ召喚されたばかりだから気づいていないだろうが、……お前のマスターは『目的の為なら手段を一切選ばない外道の魔術使い』だ。
『騎士』とは対極に位置する『暗殺者』そのものと言っていい。
当然、お前との相性は最悪だな。
そのことをさっさと受け入れておかないと、後で苦しむことになるぞ
戦いにおいてお前があいつと同意できることは、……何もないだろうしな」
一応、『聖杯を手に入れるという目的』なら同意していたんだろうけど、最後に聖杯を破壊させられて、それすら裏切られたわけだしな。
……本当にこの二人は、相性最悪としか言えない組み合わせだったよなぁ。
もっとも、第四次聖杯戦争は相性最悪な組み合わせが多かったんだけどね。
「……どこまでも外道な奴だ。
情報提供を感謝する、ファントムよ。
そのお礼は、これからの戦いで全力を尽くすことで示そう。
……主よ、この者と戦う許可をいただきたい。
私如きの判断ですが、ファントムとセイバーの様子を見た限り、隠していることはあってもファントムの言葉に嘘は無いと判断します」
「……仕方あるまい。
ファントムの発言がどこまで事実かは分からぬが、そいつがサーヴァントであることは間違いない。
ならば、いつかは倒さなければならない敵だ。
様子見など不要。
全力で貴様の全能力を駆使し、ファントムを倒せ!」
「はっ、承りました、主よ」
ディルムッドはケイネスの許可を得た後、ファントムの方へ向き直った。
「主の許可も出た。
準備はいいか、ファントム?」
「無論だ」
「では、いくぞ!」
言葉と同時に、ディルムッドが速度に物を言わせてファントムに攻撃を開始した。
ファントムは戦闘開始と同時に鎧を解除し、その魔力を全て移動に回すことで機動力を上げているが、……それでもディルムッドには追いつけなかった。
「セイバーが今のお前と同じことをして、どのような目にあったか見ていなかったのか?
……いや、彼女がお前の過去なら経験済みのはずだな。
一体何を考えている?」
ファントムの体にあちこちに、軽傷とはいえ
一方、ファントムは平然と答えていた。
「安心しろ、すでに対策済みだ。
今の私に、
その言葉通り、ファントムの傷は全て治っていった。
「なぜだ?
なぜ、
「お前も知っているだろうが、神秘はより強い神秘によって上書きされる。
それだけのことだ」
っておい、まさか、ファントムはあれを持っているのか?
セイバーオルタがあれを持っているなんてありえるのか!?
「
しかし、……いや、まさか?」
「まさか、お前はかつて失った私の聖剣の鞘を取り戻したのか!?」
ディルムッドと同時に同じ結論に達したのか、アルトリアが驚愕の声をあげていた。
「そのとおりだ。
こことは別の世界で、私は
「騎士王の聖剣の鞘は、『持ち主のあらゆる傷を癒す力』を持つという。
それは、……
その回復力は脅威だな。
これでは、
「そうだな、お前が私を殺すためには、コアを破壊するか、一撃で全身を消滅させるか、あるいは私の魔力を全て消費させなければ無理だろうな」
ファントムの挑発、いや残酷な事実に対して、ディルムッドは逆に戦意を掻き立てられたのか、獰猛に笑って答えた。
「いいだろう。
では、お前のコアを破壊してみせよう」
「そう簡単にはさせんぞ」
次の瞬間、二人は物凄いスピードで移動を始め、僕の目では残像と剣戟の光しか見えない攻防を繰り広げた。
しかし、セイバーオルタが
この二つの要素を含んだ展開って、一体どんな世界だ?
というか、アルトリアが
……ああ、黒化した後に
呪いなら
その予想が正しい場合、桜ルートのセイバーオルタが
本人の言うことが事実なら、彼女のマスターが黒桜なのは確かみたいだし、……いくら桜の(正義の)味方の衛宮士郎でも、黒桜の仲間になるとは思えない。
そのまさかが起きてしまった世界からファントムは来たのだろうか?
……ダメだ、情報が少なすぎて、まともな推測ができない。
もっと情報が欲しいなぁ。
まあ、原作知識というチート情報を持つ僕でさえこの状況だから、他の陣営、特にセイバー(衛宮)陣営の混乱具合はとんでもないものになっているだろう。
自分の存在と手の内をばらされた切嗣も、……いや、彼だけは冷静に対処方法を考えていそうだ。
自分の手の内を知り、パラメータを見てもセイバーと表示されている以上、本人の言う通り『ファントムは未来のアルトリアの可能性が高い』と判断するだろう。
しかも自分に対して、悪意というか敵意をはっきり持っている以上、『最優先で排除すべき存在』だと考える可能性もある。
もっとも、切嗣ではどうやってもまともなサーヴァントは殺せないだろうし、手札で唯一ファントムを殺せそうなアルトリアは、心身ともに大ダメージ状態で戦力になりそうもないけど。
切嗣は『目的のためなら手段を選ばない』を体現したような存在だから、できるだけ刺激するとか追い詰めるようなことはしたくなかったけど、……ファントムの存在が一気に追い詰めた可能性があるな。
これからは、切嗣の行動が完全に原作から乖離して、全く読めなくなったとみたほうがいいな。
ファントムとディルムッドはしばらく激しい剣戟を交わした後、いきなり距離をとって動きを止めた。
お互い武器を構えて向き合ったままだが、戦う様子は見られなかった。
そして、その間にディルムッドによってつけられたファントムの二種類の傷は、時間差はあったものの全て治っていった。
「これでは決着がつきそうにないな」
「そうだな。
技量も能力もほぼ互角。
だが、私が負った傷は魔力があるかぎりすぐに治るが、お前の傷はマスターが治療する必要がある。
治療する時間を与えなければ私が有利だ」
「それは否定しない。
が、速さで勝り、二槍を使う私に貴公が傷を負わせるのは困難ではないか?
実際、未だに私は無傷のままだぞ?」
そう、恐るべきことにディルムッドはファントム相手、それも鎧を解除して高起動モードになったファントム相手でも、無傷のままだったのだ。
……まあ、今のディルムッドは敏捷:A++だから、敏捷:Bのファントムでは高起動モードであろうとも、この状況は当然か。
「その通りだな。
全力を発揮できるようになった、お前がここまで強いとは思わなかった。
この世界へ来れたことを感謝しなければな」
「それは私も同感だ。
まさか、二人の騎士王と、それも『聖剣の鞘を取り戻している騎士王』と戦えるというありえない奇跡が起きようとは!」
「とはいえ、これ以上今ここで戦っても決着はつかないだろう。
お前の実力も理解できたし、私にとってはこれ以上今戦う必要はない。
今日のところはここまでとしないか?」
「……悔しいが、お互い決め手に欠ける状況なのは確か、か。
申し訳ありません、主よ。
戦いの許可をいただいておきながら、ファントムを倒すことを達成できませんでした。
『この場で決着を付けよ』という命令ならば、ファントムを倒すことに全力を尽くしますが、……ファントムを倒すためにはコアを一撃で破壊する必要があります。
これだけの能力と技量を持つファントム相手にそれを実行するとなると、相討ちとなる可能性も0ではありません」
さすがはディルムッド。
自分の身を省みない相討ち覚悟ならば、ファントムを倒せる自信があるんだな。
しかし、当然というべきか、『序盤からディルムッドを失う可能性がある危険な賭けを実行すること』をケイネスが選べるはずもなかった。
「……いや、聖杯戦争はまだ序盤。
そこまでする必要は無い。
聖剣の鞘を取り戻した騎士王は、伝承通り『不死身』と呼ぶに相応しい存在のようだ。
それが分かっただけでもよしとしよう」
「はっ、寛大な評価、感謝いたします」
妙にケイネスの物分りがいいけど、これもバタフライ効果か?
あるいは、……ソラウの安全を確認した際に、ソラウから何か言われたせいでケイネスの発言が変化したか?
……ソラウにべた惚れで、ソラウにも監視されている今の状況なら十分有りそうな話だ。
おかげで、ディルムッドは『主との約束を守れない無能な自分を許してくれた』と喜んでいるみたいだし、……何でか知らないけどランサー(ケイネス)陣営はバタフライ効果がプラスに偏っているなぁ。
「貴様も連戦によって魔力をかなり消耗したはずだ。
貴様はセイバーに圧勝し、バーサーカー相手に有利に戦い、ファントムと自称するもう一人のセイバーとも互角以上に戦った。
これ以上無理に戦う必要はない。
今日の戦いはここまでとし、帰還して疲れを癒すがいい」
「はっ、ありがたき幸せ」
ディルムッドはケイネスに感謝の言葉を伝えると、イスカンダルたちの方へ向き直った。
「そういうわけで、俺はここで帰らせてもらう。
ライダーよ、お前とはセイバーとの決着をつけた後、改めて決闘を挑ませてもらおう」
「おう、構わんぞ。
……しかし、惜しいのう。
お主は、我が軍団の先陣を任せるのに相応しい人材なんだがのう」
「無駄だ、征服王。
私は生前果たせなかった「最後まで主への忠義を果たす」という願いを叶えるために、主の召喚に答えたのだ。
万が一、主から『お前はもう必要ない』と言われることがあったとしても、……その時はそのまま英霊の座に戻るだけのことだ」
あまりにしつこいイスカンダルの勧誘に辟易したのか、ディルムッドの己の願いを口にした。
確かにそれを聞けば、誰もが勧誘することを諦めるのは間違いないが、……これを聞いたケイネスとソラウはどういう反応をするんだろうか?
「『自分の主は一人だけと決め、その主から不要だと言われれば大人しく英霊の座に帰る』と決意しておるわけか。
本当に惜しいのう。
……しかし、そこまで決意しておるならば、諦めるしかあるまい」
そう言ったイスカンダルは、一気に気迫に満ちた表情をすると、ディルムッドに言葉を叩きつけた。
「では、余の前に立ちふさがるときは、容赦なく叩き潰してくれよう!
お主のその忠誠、セイバーを倒し、余と戦うことで証明してみせるがいい!!」
「望むところだ、ライダー!!」
きっぱりとイスカンダルの勧誘を断ったディルムッドは、アルトリアと視線を交わした。
そして無言のまま、二人が頷きあった後、ディルムッドは霊体化して去っていった。
「そういうわけだ。
お前のその左腕を治したいのなら、
そして、
後で教えてもらうがいい。
お前が本当に信頼されていれば教えてくれるだろう」
そう言ってファントムは視線をアイリスフィールへ向けたが、その視線に耐え切れず、アイリスフィールは顔を俯かせてしまった。
いまさら、『アルトリアに
その様子を見たアルトリアは、『信じられない』といった表情を見せていた。
こりゃ、アルトリアとアイリスフィールとの間にあった絆までひびが入ったか?
セイバー(衛宮)陣営って、どこまでも不利になっていくなぁ。
ひょっとしなくても、僕の存在が彼らにとっての疫病神か?
僕とメディアは『アルトリアが欲しい』と思ってはいても、彼らに不利益な行動は一切とっていなかったはずなんだが、……運命って本当に不思議なものだ。
「結局、お前は戦わないのか?」
今日の戦いはこのまま終わりそうだと感じたらしいウェイバーがイスカンダルに尋ねたが、彼の回答は予想通りだった。
「うむ、余はハイエナのような真似は好まぬ。
セイバーと戦うのはランサーとの決着がついた後よ。
それと、ファントム。
お主の傷はすでに完治しておるが、魔力を相当消耗しておろう?」
「まだ戦うことは可能だが、……魔力量は万全と言える状態ではないのは確かだな」
「そういうことだ。
お主が魔力を回復した後、余と戦うことを望むのならいつでもかかってくるがいい。
無論、お主が言い訳の余地なく負けた際には、余の配下になってもらうがの」
「……いいだろう。
どうせこの世界には私の主はいない。
私に『お前には絶対に勝てない』、『私が従うのに相応しい存在』だと認めさせるようなことがあれば、そのときは喜んで従ってやろう」
「その言葉、もう取り消しはできぬぞ?」
「貴様こそ、『殺さずに勝つ』と考えていたせいで負けた、などと言い訳を言う羽目にならないように気を付けるのだな」
「ふはははははは。
『勝利してなお滅ぼさぬ』『制覇してなお辱めぬ』、それこそ我が覇道。
この二度目の遠征もまた、死ぬまでそれを貫き通すまでよ!」
「その減らず口がいつまで続けられるか、楽しみにしておくぞ」
こうしてファントムはイスカンダルと戦闘の約束を取り付けると、残りの二人に視線をずらした。
「残るはキャスター、いやプリンセスとセイバーだが……、二人とも戦う気はないようだな」
「ええ、私は元々戦うつもりはありません」
「だろうな」
メディアはあっさりと戦意がないと回答し、ファントムもそれを予想していたのか、あっさりと受け入れた。
一方、アルトリアは悔しそうな顔をしているが、何も言えないでいる。
『ランスロットとディルムッド相手に互角に戦ったファントム』が相手では、『片手が使えない状態では絶対に勝てない』と本人も分かっているのだろう。
「となると、もうこの場には戦う相手がいないわけだな。
では、私も引き上げるとしよう」
そう言ってファントムは背を向けて、街へ向かって歩き出した。
そのまま立ち去るかと思いきや、少し歩いたところでファントムは立ち止まって振り返った。
「ああ、言っておくべきことが残っていたな。
セイバー。
いつまでも現実から目を逸らし己を偽っていると、私のようになるぞ。
そして、アイリスフィール。
愛する者に尽くすのは結構だが、私が現れた今、これ以上セイバーを騙すのは不可能だ。
彼とよく相談した後、セイバーに全て話すことを薦めるぞ。
……まあ、彼の回答は容易に予想できるがな」
そう言って、今度こそファントムは去っていった。
「それでは、私も帰らせてもらうわ」
「おう、お主のマスターによろしくな」
「ええ、わかりました。
そうそう、私のマスターもずっと監視しているから、ここで話したことはすべて聞いているはずよ」
「そうか、それなら話は早い。
では、プリンセスのマスターよ。
余はお主を待っておるぞ。
我が覇道に少しでも興味を持ったならば、いつでも我が元へ来るがよい」
それを聞いて口元を笑みの形に緩めた後、メディアの影が戦場から姿を消した。
「さてと、では余も去るとしよう」
「結局お前は、何をしたかったんだよ」
「いや、余はそういうことをあまり深く考えんのだ。
……とはいえ、一癖も二癖もある強者たちと出会い、その力と技をこの目で見届け、さらに謎のサーヴァントまでいると知ることができた。
いやいや、世界征服の最初の一歩となるこの聖杯戦争も、存分に余を楽しませてくれそうよのう」
「聖杯を手に入れるのは私だ。
お前のその夢が叶うことなどない!」
アルトリアがイスカンダルの言葉を否定したが、イスカンダルは柳に風とその言葉を受け流した。
「そのセリフは、まずランサーを倒してから言うのだな。
……では、騎士王、しばしの別れだ。
余が言うまでもないだろうが、……どうやらこの聖杯戦争、お主との因縁がある輩が多いようだ。
そのような腑抜けた顔をしておるようでは、あっと言う間に負けてしまうぞ。
……おい、坊主。
貴様は何か気の利いた台詞はないのか?」
「勝手な事言うなよ。
……まあいいさ、ちょうど言いたいことがあるし」
ウェイバーは真面目な表情になると、真っ直ぐ立ってアルトリアの方を向いた。
「立場的には敵同士ですが、お会いできて光栄です、アーサー王陛下。
僕の名は、ウェイバー・ベルベット。
ロンドン、ブリテンの都市にある魔術協会で学んでいる身です。
貴女の強さは伝説で嫌と言うほど聞いていますし、この目でも拝見しましたが、……この聖杯戦争では僕たちが勝ちます」
意外、と言ってはいけないのかもしれないが、ウェイバーは正々堂々とアルトリアに向かって宣戦布告を行った。
「なんだ、余とはずいぶん態度が違うではないか」
「当たり前だ!
態度を変えてほしいなら、それなりの言動をとれよ。
お前は『偉そう』であっても、『尊敬できる対象』じゃないんだよ!」
「そうかのう?
これでも生前は部下に慕われていたと自負しておるが?」
「僕はお前の部下じゃなくてマスターだ!」
いきなり始まった主従漫才にちょっと戸惑いつつ、アルトリアはウェイバーに対して返答した。
「ウェイバー、貴方の宣戦布告を受諾しました。
必ずやランサーを打ち破り、その後にはライダーと決着を着けることを誓いましょう」
「ええ、その日が来るのを待っています」
ウェイバーはアルトリアに対して、凛々しく対峙していた。
何度もイスカンダル相手に見せていた醜態が嘘みたいだった。
アルトリアも、ウェイバーの気持ちのいい宣戦布告に少し癒されたように見える。
いや、本当にそんな感じに見えるんだよな。
まあ、それだけ、アルトリアは精神的にぼろぼろで、彼女にとって救いとなるのは、ディルムッドとウェイバーしかいないのも無理はないけど。
味方であるはずの切嗣はもちろん、忠誠を誓ったアイリスフィールすら信じられず、救いは敵のはずの二人しかいないとは、……なんでここまでアルトリアが不幸になってしまったんだろう?
「まさか、坊主が騎士王に宣戦布告するとは驚いた。
さすがに余も全く予想しとらんかったぞ」
「そんなの、大したことないさ。
女だったことには驚いたけど、かの有名な騎士王と会えたんだぞ。
だったら、挨拶するのは当然じゃないか。
これまでの会話と戦闘から、礼を尽くせば礼をもって対応してくれるのは分かっていたし。
だったら、無闇に恐れる必要もないよ。
……アーチャーが本当に高名な王様だったとしても、さすがにあいつに対して宣戦布告する気にはなれないけど」
「うむ、サーヴァントの真名は分からないのが当たり前だろうに、それだけでぶち切れるとは余にも予想できんかった。
確かに坊主は、あやつに対して話しかけん方が無難だわな」
ウェイバーは勢いよく頷き、強く同意していた。
確かに僕もギルガメッシュから回答を求められないかぎり、彼に話しかけようとは思わない。
どんな行動が彼の逆鱗に触れるかわからないから、ギルガメッシュとは話すことすら怖くて仕方がない。
基本的に、僕が出歩くときは影の分身を使うつもりだが、ギルガメッシュなら『影経由で本体へ直接ダメージを与える宝具(の原型)』を持っていてもおかしくないから、絶対に油断などできるはずもない。
「さて、坊主の挨拶も済んだし、我らも帰るとしよう」
そう言うとイスカンダルは、神牛に鞭を打ち付け空へ駆け上がって去っていった。
そのとき僕は、すっかり存在を忘れていたハサンのことを思い出した。
『まだアサシンはいるのか、いるなら真桜に狩ってもらうか?』と考えてクレーンの上を見たとき、僕は驚きのあまり完全に頭が真っ白になってしまった。
なぜなら、クレーンの上には二人のアサシンがいたのだ。
それだけなら、綺礼がバックアップを寄越したとも考えられる。
しかし、二人目のアサシンは
襲われたアサシンも、
だが、射程範囲から逃れるのが間に合わず、そのままアサシンは心臓を奪われてしまった。
そして心臓を奪ったアサシンは、その心臓を飲み込むとすぐに霊体化した。
……多分、用が済んだので拠点にでも戻っていったのだろう。
その時点で、やっと僕は我に返ることができた。
そして、表示されていたことすら気づいていなかった『謎のアサシンのパラメータ』を初めて確認することができた。
<サーヴァントのパラメータ>
クラス アサシン
真名 ハサン・サッバーハ
マスター 不明
属性 秩序・悪
ステータス 筋力 E 魔力 E
耐久 E 幸運 C
敏捷 E 宝具 B+
クラス別能力 【気配遮断】:A+
保有スキル 【投擲(短刀)】:B
【風除けの加護】:A
【自己改造】:C
宝具 【妄想心音】:B+
ステータスが低い以外は、どう見ても『第五次聖杯戦争の(真)アサシンのハサン』だよな。
つまり、『臓硯が戻ってきて5次ハサンを召喚した』ってことか?
慌てて報告しようとすると、全員すでに僕の方を見ていた。
「あのアサシンなら私たちも確認したわ。
あのステータスから判断すると、臓硯がアサシンの分体を苗床にしてハサンを召喚していたみたいね」
あ~、なるほど。
臓硯がハサンを召喚済みだったわけか。
「道理で時臣が焦るわけだわ。
臓硯がアサシンを召喚したことを確認していたのなら、それは間違いなく脅威。
しかも、今と同じように他のアサシンの分体を襲っていた可能性もあるわね」
メディアの推測が正しければ、奇しくも僕たちと臓硯は似たようなことをしていたことになる。
「ハサンの分体たちは、真桜だけじゃなくて、臓硯が召喚したハサンにも襲われていたとしたらたまったものじゃないですね。
でも、臓硯はどうやってアサシンを見つけて襲ったんでしょうかね?」
タマモは理解できないといった顔をしていたが、言われてみれば確かにそれは不思議だな。
「多分、使い魔を囮に使ったんじゃないかしら?
使い魔を捕獲するためには、魔術とかを使えない場合はサーヴァントの実体化が必要。
使い魔をあえて捕まえさせて、実体化&油断したところで隠していた蟲で襲ってしまえば、……一回限りだけど成功する可能性はあるわね。
なるほど。
原作でも、『監視カメラを持った使い魔のコウモリを、アサシンの分体の一人が捕獲して綺礼に渡しているシーン』があったな。
それにしても、裏技の本家の臓硯が、アサシンを召喚するとはねぇ。
現時点ではステータスは低いけど、今後サーヴァント(主にアサシンの分体?)を狩って自己改造スキルでどんどん強くなる予定か?
で、臓硯の目的はやっぱり不老不死か?
でも、原作では(第四次聖杯戦争は)様子見とか言っていたのに、なんで方針が変わったんだろう?
もしかして、雁夜さんやメディアたちへの復讐か?
……十分ありそうだな。
あっ、ハサンの存在には切嗣たちも気づいていたんだった。
となると、『アサシンが二人現れて、後から現れたアサシンが、ずっと偵察していたアサシンを殺して去ったシーン』を切嗣たちも目撃していた可能性は高いよな。
……ただでさえ、切嗣の行動が読めなくなっているのに、とどめに近い状況だな。
この後のホテル爆破、……まさかとは思うけどホテルの人と宿泊客を避難させずにホテルごと爆破するなんてことは、……今の切嗣ならやりかねないな。
切嗣たちの行動を、セイバーオルタの次ぐらいの優先度で監視しとかないとやばそうだ。
あと、ハサンが二人いてややこしいので、今後は腕ハサン(5次真アサシン)と分身ハサン(4次アサシン)と呼び分けることにした。
「そうそう、自称ファントムことセイバーオルタについては、今も使い魔で尾行させているわ。
どうやら彼女は霊体化できないようね。
他にも尾行している使い魔の気配はあるけど、ファントムは一切気にしないで街へ向かっているわ。
多分、分身ハサンの分体もいるでしょうね。
これが今の映像よ」
メディアがそう言うと、部屋の壁にファントムが歩いている姿が映し出された。
使い魔から受け取った映像をリアルタイムで表示しているのだろう。
ファントムはさすがに鎧の具現化を解き、黒のゴスロリ……ではなく、凛からプレゼントされた服を着ていた。
さっさと彼女と接触して、事情を聞くとか、可能なら協力体制を構築したいところだけど……、情報が足りなすぎるな。
ファントムの話が事実なら、黒桜に取り込まれ、黒桜(の体)と一緒にこの世界に召喚されてきたらしい。
おまけにアヴァロンを持っているなんて、どんな世界から来たセイバーオルタなんだか。
とりあえず、ファントムの正体を探るため、黒桜の記憶をメディアとメドゥーサと真桜の三人が再度調査することになった。
今までにメドゥーサと真桜が黒桜の記憶を調査&取り込んだ範囲では、『原作の桜ルートのデッドエンド』、つまり『士郎がセイバーオルタに止めをさせず、それにより凛が負けて、凛と士郎が黒桜に取り込まれた世界』だと判断していたらしい。
まさかとは思うが、『黒桜の記憶が改竄されていた』のか、あるいは『実は黒桜の自意識が存在していて、真桜の記憶を逆に読み取ってそれを元に作った偽物の記憶を二人に見せた』とか?
どっちにしても大問題なので、三人には僕の予想を伝え、黒桜の意識や汚染に気を付けて、最大レベルの警戒をした上で慎重かつ徹底的に調査するように頼んだ。
「誰に言っているのかしら?
私は魔術師だし、何より呪いとか人間の負の感情などは得意分野よ。
さすがに、アンリ・マユそのものが相手だときついのは確かだけど、『アンリ・マユの影響を受けた小娘』相手なら、体ごと取り込まれない限り私が負けることなどありえないわ」
実に頼もしいお言葉である。
さすがは神代の魔術師。
とはいえ、さすがのメディアも、黒桜に取り込まれたら『脱出」とか『黒桜を取り込み返す』とかはできないのか。
まあ、きちんと相手の能力を見極めて判断しているようだし、後は任せて大丈夫だろう。
それから、今気づいたけど、『メディアの分霊を降霊した』のは僕だけど、『サーヴァントとしてのメディアのマスターは真凛』だったよな。
まあ、真凛の存在は内緒だから、僕がメディアのマスターのふりをして、イスカンダルと会わないといけないってことか。
多分、それは『王の宴』のときか?
アルトリアとイスカンダルに(影の体とはいえ)直接会って会話できるのなら楽しみだけど、……ギルガメッシュと会うというのは恐怖しか感じない。
しかし、いまさらメディアに断ることなどできるわけがない。
ギルガメッシュに対しては最大限の敬意を示して謁見の挨拶を行い、後は質問されるまで一切話しかけないのが賢明か。
ファントムのこともあるし、本気で前途多難だなぁ。
更新が遅くなり、申し訳ありません。
その分と言ってはなんですが、戦闘シーンを増やしたつもりです。
今回の話でセイバーオルタの正体が少し明らかになりました。
次話でさらなる驚愕の事実が明らかになる予定です。
楽しみに待っていてください。
それと、腕ハサンが登場しましたが、予想していた人はいましたかね?
これで、この物語に登場する人物は(現時点の構想では)全員登場しました。
それにしても、気が付けばずいぶん登場人物が増えていました。
追記(10/19)
『評価:0』と『評価:10』がリセットされたようですね。
よろしければ、再評価をお願いします。
それと、おかげさまで『UA:10万突破』を達成できました。
どうもありがとうございます。
今後も面白い物語の更新を目指して、がんばっていきます。
【聖杯戦争の進行状況】
・雨生龍之介は警察に捕まり、青髭を召喚できないで退場
・原作登場人物全員(臓硯と龍之介と青髭除く)の冬木市入りを確認
・サーヴァント12人召喚済み(セイバー2人、キャスター2人、アサシン4人)NEW
・アサシンの分体(最大80体)のうち、8体死亡確認(生贄:2体、茶番:1体、マキリの聖杯への取込:4体、腕ハサンの生贄(未確認):1体、腕ハサンの餌:1体)NEW
・
・バーサーカー(ランスロット)の正体暴露 NEW
・セイバーオルタが、未来のセイバーだと告白 NEW
・セイバーオルタによる未来情報と切嗣の詳細情報の暴露 NEW
・セイバーオルタの主のサーヴァントが聖杯戦争に召喚されたことを暴露 NEW
・腕ハサン(5次真アサシン)の登場 NEW
【八神陣営の聖杯戦争の方針】
・真桜に悪影響がない範囲で、マキリの聖杯にサーヴァント取り込み
(現時点で、アサシンの分体を4体、魔力に変換済み)
・アルトリアを配下にする(メディアの希望)
・アルトリアの血を吸う(メドゥーサの希望)
・遠坂時臣が死なないようにする(真凛と真桜の希望)
・遠坂時臣の半殺し(メディアの決定事項)
・間桐臓硯の殲滅(メディアの決定事項)
・遠坂家の女性陣と間桐滴の保護(絶対目標)
・八神陣営の全員の生き残り(絶対目標)
・アンリ・マユの復活阻止(絶対目標)
【改訂】
2012.10.17 切嗣の行動予測を追記
【設定】
<サーヴァントのパラメータ>
クラス アサシン
真名 ハサン・サッバーハ
マスター 不明
属性 秩序・悪
ステータス 筋力 E 魔力 E
耐久 E 幸運 C
敏捷 E 宝具 B+
クラス別能力 【気配遮断】:A+
保有スキル 【投擲(短刀)】:B
【風除けの加護】:A
【自己改造】:C
宝具 【妄想心音】:B+
備考
高い確率で、マスターは間桐臓硯だと予想
<ファントム(セイバーオルタ)によって聖杯戦争の参加者全員に提供された情報>
・ファントムは、かつて騎士王だった存在
・第四次聖杯戦争に召喚されたが、聖杯を手にすることなく世界を去った。
・その後、別の聖杯戦争に召喚され、その世界で不覚を取って悪性の存在に囚われた。
そして、殺されず悪性に汚染された結果この状態(黒セイバー)になった。
・『アルトリアを取り込んだ悪性の存在』が第四次聖杯戦争で召喚された為、引きずられてこの世界に来た
・『アルトリアを取り込んだ悪性の存在』は、今も『他のサーヴァントも取り込む能力』を持っている。
取り込まれれば、ファントムのように闇に染められ、強制的に支配下に置かれる。
・セイバーのマスターが、ランサーのマスターの婚約者を誘拐した。
そして、セイバーとランサーのの二回目の戦闘の途中で、婚約者の命と引き換えとして令呪を使わせてランサーを自害させた。
・ランサーは、令呪で自害させられた後、血涙を流し、全てを呪って消えていった。
・誘拐された婚約者はランサーのマスターに返されたが、ランサーの自害後に、二人まとめてセイバーのマスターの仲間に銃撃されて殺された。
・セイバーはアイリスフィールに忠誠を誓っているが、本当のマスターは別にいる。
・セイバーは、聖杯戦争が終わるまでマスターとは一切会話をせず、直接掛けられた言葉は『令呪で命令された三回』だけ。
・セイバーは、聖杯戦争の最後にマスターから手酷い裏切りを受けた。
・セイバーのマスターは、『目的の為なら手段を一切選ばない外道の魔術使い』。
『騎士』とは対極に位置する『暗殺者』そのもの。
セイバーとの相性は最悪。
・ファントムは別の世界で、
そのため、
・