ハイスクールD×D~ボンゴレの息子が悪魔に!?~ 作:村雨刹那
声がした方に顔を向けるとツヤツヤの黒髪でスレンダー体型の女性がいた。
「・・・・・・レイナーレさま」
彼女が誰か、わからないけどレイナーレというらしい。
「あの・・・どちら様ですか?」
「汚らしい下級悪魔が気軽に私へ話しかけないでちょうだいな。」
ッ!?
なんで俺が悪魔だって知ってるんだ?
「その子、アーシアは私たちの所有物なの、返してもらえるかしら?アーシア、逃げても無駄なのよ?」
「嫌です。私、あの教会へは戻りたくありません。人を殺すところへなんて戻りたくありません」
アーシアははっきりと嫌悪の言葉をはき出す。
どういうことだ?
彼女が教会の者だということはわかる。
でも、アーシアがここまで嫌な顔をするとは思わなかった。
「そんなこと言わないでちょうだい、アーシア。あなたの神器は私たちの計画に必要なのよ。ね、私と一緒に帰りましょう?これでもかなり探したのよ?あまり迷惑かけないでちょうだい」
レイナーレが近づいてくるが、アーシアは俺の陰に隠れる。
アーシアが怯えているのがわかる。
俺はアーシアを庇うように前にでる。
「やめろよ。アーシアが怯えてるだろ。レイナーレさん、あなた、この子になにするつもりですか」
「下級悪魔、私の名前を気安く呼ぶな。私の名が汚れる。さっさと主の元に帰らないと死ぬわよ?」
するとレイナーレさんは手に光を集め槍みたいな物をつくり出す。
「光!?まさか堕天使なのか!?」
「あら?気づいてなかったのね。やはり下級悪魔ね」
俺、堕天使にあったのこれが初めてだし。
というか、この人俺の事、絶対馬鹿にしてるでしょ。
「セイクリッド・ギア、発動!」
両手が光を覆い毛糸の手袋に変貌する。
やっぱり手袋……
わかっていたんだけどな、なんでグローブにならないんだろ?
「……フフフ」
俺の神器を見て、心底おかしそうに嘲笑う。
「手袋が神器なんて本当、下級悪魔にお似合いのシロモノね」
確かに俺の神器がグローブにならず、手袋のままだと何にも出来ないけど、ないよりマシだ。
なんとかレイナーレを退け、アーシアを連れて逃げる!
俺の家まで行けばなんとかなるか―――
ズドンッ!!
あぶなっ!
いきなり光の槍を投げてきた!
「よくかわしたわね」
レイナーレは俺がかわすとは思っていなかったのか驚いている。
「残念だったな距離が離れてたから、このぐらいならよけれるさ」
リボーンの特訓の中に銃弾を避けるのがあったんだ。
最初は100メートルぐらいでゴム弾だったんだけど、避けられるようになったら距離をつめていき、ゴム弾から実弾に変わったんだ。
しかもコロネロも一緒になって撃ってくるんだ。
あの時は本当に死ぬかと思った。
フリードの時は近すぎて避けられなかったら、今回のように距離が開いていたら避けることはできる。
・・・・・だいたい4割の確率でだけど。
「アーシア、その悪魔を殺されたくなかったら、私と共に戻りなさい。あなたの神器は我々の計画に必要なのよ。その力、『聖母(トワイライト)の微笑(ヒーリング)』はそこの下級悪魔くんの神器と違って希少な神器なの。応じないのならその悪魔を殺すしかないわ」
「なに言ってるんだ!俺はあんたの攻撃をかわした。だから、あんたの攻撃は俺には通じない!」
「あなたこそ何を言っているの?私の槍をギリギリで避けたくせに。このまま続けていたら、あなたは死んでいるのよ。それにあなたみたいな下級悪魔に力を使うのは面倒なのよ。それを見逃してあげるって言うの、感謝してほしいぐらいだわ」
レイナーレは冷酷な表情でにらみつけてくる。
「アーシア!俺のことは気にせず―――」
「わかりました」
俺の言葉を遮り、アーシアはレイナーレの提示を受け入れる。
「アーシア!なんで!?」
「ツナトさん、今日は一日ありがとうございました。本当に楽しかったです」
アーシアは満面の笑みを浮かべ、レイナーレのほうに進み出す。
「いい子ね、アーシア、それでいいのよ、問題ないわ。今日の儀式であなたの苦悩は消え去るのだから」
儀式?アーシアに何をする気だ!?
「アーシア、待ってよ!」
「ツナトさん、私と友達になってくれてありがとうございます」
振り返ったアーシアの表情はいまだに満面の笑みだった。
「さようなら」
それが彼女の別れの言葉だった。
アーシアの体をレイナーレの黒い翼が覆う。
「下級悪魔、この子のおかげで命拾いしたわね。次に邪魔したら今度こそ本当に殺すわね」
嘲笑うレイナーレは、アーシアを抱いたまま空高く飛び上がる。
何もできなかった。
昨日は守ることすらできず逃げて
今日は守るはずのアーシアに守られて
悔しくて悲しくて、涙が流れてくる。
自分の非力さを呪い、後悔した。
グローブに変化しないから何もできない。
そう思ってた。
でも違う。
何もできないと思い、なにもしなかっただけなんだ。
自分の中で覚悟ができていなかった・・・
「……アーシア」
返事は返ってこない。
そんなことは分かりきっている。
だけど彼女の名前を言いたくなった。