あと書いてたらほとんど女の子が出て来ませんでした…
ああ、吐きそうだ。
臭い、臭い、あまりにも臭い。
人の臭いは嫌いだ、ヘドが出る。
特に腐った力を弄ぶ輩の臭いは大嫌いだ
この皇帝の司る洛陽宮中でふんぞり返る、
そもそもこいつらの使う香料も臭い。
結局、権力を持つヤツは皆おんなじだ、人間ってヤツは本当に…。
「…王允殿、どうかなされましたかな…?」
大分年を食っているのか、随分皺を寄せたツラをした痩せ男。
こいつが十常侍の実質的な長である張譲、とかくこいつが一番臭い。
特に目だ。こいつの目はとかく黒く、深く、そして濁りに濁りきったドブ川の様な目をしてやがる。
「その射抜く様な眼差しは、果たしてわたくしを射ているのか、それとも何を射ていらっしゃるのか…実に興味深いですな…クックック…」
仰々しい笑い方だ、本気でやってんなら…いっぺんテメェの笑いヅラ鏡で拝んだ方がいい。
「さあ、どうでしょう…。それよりもう陛下が参られますよ、『陛下から目を背ければ不敬罪』…でしたか…?怖いものですねぇ…」
わざとらしい丁寧口調。我ながら滑稽に感じているが致し方ない。
「いやなに…当然ですな、実に当然…いや必然といった方が良いでしょう、
良くもまぁいけしゃあしゃあと、呂強…あのクソ真面目な正直者もこれじゃ浮かばれねぇな。
だが必然ってのは確かだ、あいつらはやり方がヘタクソ過ぎたんだ、天罰が下るのも正しく必然ってとこだ。
皇帝陛下のおなり、とバカにデカイ朗らか声を出すのは陛下お気に入りタマ無し野郎筆頭の一人、蹇碩くん。実に爽やかな馬鹿ヅラ掲げて何がご満悦なのやら。
「苦しゅうない、頭をあげよ」
これもまた馬鹿ヅラ掲げたガ…皇帝陛下であらせられる劉弁陛下、その隣で気味の悪い笑みを浮かべるのは陛下をして母と言わせた十常侍の一人は趙忠。タマ無しも行き着くと性転換出来ちまうのが驚きだよ。
当然こいつも臭い連中の一人。
「……陛下のお言葉は以上になります、次は各施策の報告を…では最初に皇甫嵩殿から先日の出征について…」
施策も何も政治なんてまともにやっているヤツはこないだ神様に戦力外通告食らっちまったよ。
「次に張鈞殿、先の落雷被害の報告を…」
「はっ、落雷においては約3割程の…」
張鈞は相変わらず真面目だねぇ…まるで
「……では次に王允殿、勅書の報告を」
おお、きたきた
「は、先日の鳥丸の国内侵入に抗する勅ですが……」
「ええ拝見させて頂きましたよ王允殿。その勅書…本来の勅とは少し誤りがある様ですが…?」
趙忠…流石にめざとい、流石国家の母ちゃんってところかい。
「…お言葉ですが我々も国家を表する官軍…地方の太守に国家の敵を任せるわけには行きません。そうは思いませんか皇甫嵩殿?」
「へ、えっ!?わ、私ですか…?ま、まぁそうとも言えなくも無いと言いますか…」
当然だ、たかだか一万に満たない兵力の地方太守に五万は下らない鳥丸への防衛に充てる…これじゃ近い内に『俺の平穏にも』影響するじゃあないか。
「勅書の編纂には陛下より詔を得なければなりません。…王允殿、貴方ともあろうお方がその様な事をお忘れなさる程勝手極まる愚か者でもあるまいて…?」
「そうです!陛下の天啓とも言える勅令を…無礼千万ですぞ王允殿!これは国家に対する反逆とも取れ兼ねまするぞ!」
おうおう水を得た魚のようにくるもんだなぁ蹇碩くん。だが我ながら少しトチったな、勅書を書き直す時期を間違えたか…。
「お言葉ですが趙忠殿、蹇碩殿!王允殿のご高察、陛下の詔を賜る尚書令として誠に令を決する所存!これが一体何の反逆と言うのかお聞かせ願いたい!」
おお張鈞さん、こりゃありがたい助け船だ。声がデケェのを除けば最高だね。
「な…張鈞殿!貴方は何を申して「成る程」…ち、趙忠殿…?!」
「そう言った事であれば陛下に裁断をお願い申し上げましょう…陛下、王允殿の此度の所業…如何になさいましょう…?」
んなもんガキの皇帝に聞いてもロクに答えらやしねぇだろうよ、そもそも話すら聞いてるか怪しい位だ…コソコソと囁き合う様に話してんのが何よりだ。
「よい!許すぞ王允!あたまをあげい!」
「はっ、慈悲深きお情けの御言葉。この王允子師、感謝の極みに耐えませぬ!」
ああ、茶番だな。正しく茶番、その証拠にいやらしい笑みを深めたお母様が慈母の様な口調で話しかけてきやがる。
「フフ…王允殿。陛下の御心、しかと受け止めてこれよりの我らの発展に貢献するのですな」
我ら…ね。恩赦を下してやったから今まで通り都合良く狗であり続けろ、と言った所か…本当にいやらしい事この上無いね
だがそんなもん関係ない。
凡、これが俺の生き様。
凡であればこの宮中でも
特に問題なく過ごせる。
出過ぎず、無能過ぎず、大人しく、それなりに使いやすい忠犬の様な人間。
大志?夢?んなもんクソ食らえだ。
これでよい、平穏実に喜ばしき、だ。
だが俺の平穏を邪魔する奴は誰であろうと…
殺す
(皇甫嵩)「(王允さんしか若い男の人いないのに…好みじゃないのよねぇ…ハァ…)」
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「やあ王允殿、こんな所で出会うとは奇遇ですなあ、ハッハッハ!」
張鈞は十常侍には珍しく、誠に誠実で国を憂う心を持ち合わせるな男である。清廉かつ明朗快活、嘘のつけぬ正直者、下々の評判も高く信頼に厚い人間だ。しかし悪く言えば生真面目で不器用で声が無駄にデカイだけの人間、故に気を付けなければならぬ立場なのにこんな夜中に
「ああ、張鈞殿。実に奇遇ですな…先程は誠、有り難う御座いました…」
「ええ良いのです王允殿、貴方ほどの忠臣があの様な形で罷免されるなどあってはなりませぬ!…そう言えば先程の勅、あれは信なのですか?」
勅令、それは皇帝が発する非常に強大な法的拘束力のある命令、号令の事である。
張鈞はそれを心から信じている。皇帝を尊び、信じぬいているからこそ、その『皇帝本人が発した』勅の内容に納得行くはずが無かった。
「ええ、そりゃ勿論。あれだけの面々の前で発したのですから…ね」
「やはり北方領は飢饉により戦どころか民草の生活まで影響を与えています…その北方太守に鳥丸討伐を言い渡すなど言語道断ではありませぬか!私はこの事についてもう一度陛下に直訴いたすつもりです!」
小五月蝿い男だ。王允は茹だる心を抑えながらも表情に出さず答えた。
「討伐ではありません、あくまで防衛です。それに中央も兵と物資は派遣するつもりです。まぁ現実味を帯びない勅なのでせめてもの手助け、と言うことで勅を書する際付け加えただけですが」
さも当たり前かの様に飄々と答える王允、納得いかぬ張鈞は夕焼けと見紛う程顔を赤く紅潮させている。
「しかしこんなもの、実質上の討伐!疲弊を煽る愚策とも言える…!そもそも張譲殿や趙忠殿は一体何を考えておられるのか!?陛下を諫められるのはそれこそ彼らしかいないと言うのに…」
阿呆か、こいつは。
張鈞も流石に
「(純粋なのもここまで来ると無能のそれに近いねぇ…)…その様な事、あまり声を大にして言うものではありませんぞ、その『天』の耳に入れば呂勝殿の様に天罰が下るやも知れませんぞ」
「天!?天罰ですと!?天であらせられる陛下の御心に触れた天罰ならば如何様にも受けれましょうぞ!しかし私はーーー」
『嗚呼…不味いなあこれは』、王允の純然な心中はこれであった。このような大声で叫んだらいくら人通りの少ない道と言えど誰かに声を聞かれてしまうのは当然至極の摂理である。
ところで件の天罰とは決して事故の様に突発的に起こるわけでは無い、天の意志を代理する何者かがその罰者を捕らえた後、翌日の宮中内にその頸がさらけ出されている事から天罰と呼称されている。
更にその様な抵抗する人間を連れ去り殺す武技を持つ人間は十常侍には居らず、専ら私兵を持つことを禁じられる宦官には不可能でる。
故に天罰、天である皇帝陛下に逆らうものに下る重き罰として畏れられている。
「………だがそうじゃない…そうじゃないんだろう…?」
「王允殿聞いておられるのですか!、何をそんな…グアァッーーー!!」
真の暗闇を弄する無月の空、闇に乗じて現れるは黒装束の男達。
「確かに、『耳に入れてしまいました』よ張鈞殿、王允殿!その陛下への反意、陛下の御心に逆する言葉…見過ごせるものでは無い…!誅罰を下させて貰いましょう!!」
その爽やかに張り上げた声の持ち主は皇帝お付き宦官の一人である蹇碩である。
その周囲には蹇碩の兵と見える黒装束が三名ほどおり、たった今
「やあやあ少しお待ちください蹇碩殿、私は彼の話を聞いていただけ…私の心は陛下の御心に反する事ぞ何一つありませんよ」
「なりませんな王允殿、いや逆賊・王允子師!貴様も陛下の御心に反した罪として、誅を喰らえい!」
王允へ殺気を放ち駆ける黒装束、声だけでなく大事をやりきったかの様な爽やかな顔をする蹇碩、更に王允は
「(戦いは苦手なんだよなぁ…)」
と言う人種であり、明らかに危機に瀕した状況である。
しかしその飄々とした態度はこの様な命の危機に対面しても尚、決して崩れることは無い。
それは実に簡単な理由、たった一つの王允にしか無い大きな理由。
彼が諸行無頼の
『どくされ者』だから
「皆の者、控えい!控えええええい!!」
月無き朔夜。
暗闇をかき消す松明の紅明。
そこに現れるは眠気眼をこする皇帝と憤怒の面を隠しきれない趙忠、更にその細黒い眼で
「なっ、なっ、なっ、……ハッ!へ、陛下!張譲殿!こ、これは…!」
「言い訳無用」
先程までの爽やか面が折り畳まれ、くしゃりとした泣き顔に萎れる蹇碩。対して張譲は目線だけを蹇碩に移し、冷静かつ荘厳に言葉を紡ぐ。
「もう一度言おうか蹇碩殿…言い訳無用、と。そなたは誰の許可があって陛下の大事なされる君臣をその手で
「な…な…な……な、ぜ…なぜ
狼狽、今この場において蹇碩ほどこの言葉が似合う者はいない。
それほどの動揺を止めようともせぬまま蹇碩は鼻息を荒くし、萎えた顔面を錯乱したかのような狂乱の顔付きへ変貌させる。
「まさか…まさ、か………図ったな…図ったな…この私を…図ったなああああぁぁぁぁ…!!!ちょうじ…ガッ………?!ゲホッ…な、ぜ、だ……」
滴る血液、腹を破る鈍色の刃。
それは王允に向けられるはずだった凶刃、その刃が今正に翻るように蹇碩の濁った腸を切り裂いた。
「なっ、待、待ちなさい!全兵!奴らを捕ら「もうよい」…え…は、はい…しかし…」
「よいのだよ皇甫嵩殿、クックック…」
逃げ行く黒装束、追う皇甫嵩。張譲は両者にも興味無し、とも言いたげに張鈞を看取る王允を視界に捉え、不敵に笑む。
「災難であったな王允殿、張鈞殿は
「はい、
「さて、な。…王允殿、この様な輩はまた出でるとも限らぬ。お気を付けなされよ…クックック…」
「そちらこそ、お気を付けて…」
不敵な笑みには不敵な笑み。
互いを見定める深淵の眼。
火の明かり照る字裏道。
亡骸を運ぶ荷馬車の音が途切れても、この二人の男の笑みも、その心内に弾け合う火花も、途切れる事は無かったという。
(皇甫嵩)「(私はどうすればよいのでしょう…ハァ…)」
ーーーーーーーーーーーーーー
『天罰』の正体は蹇碩。 自己を尊大にも天を語る代行者と嘯き、私兵を用い陛下の君臣をいわれの無い理由で次々に抹殺。
しかる後その私兵に自らも討たれ、その最期を遂げた。
…とまあ今回の事例は纏めればこうだ。
尚書令である俺はこの事例を文に綴り上奏、後は詔と言う名のガキの戯言と趙忠お母様のありがたいお言葉を拝聴して終わり。うん、実に楽でいい。耳障りな声と話を除けば100…いや120点あげたい位である。
「さて…そろそろ行くかね」
日ももうすぐ落ちる…当たり前の事ではあるけど不便な物だ、早馬を出さないと………ん?………まさか、まさかアイツは…………
それは最も会いたくない程不愉快な見た目の癖に、俺にとっては今最も会いたい…ヤツであった。
「お久しぶりねぇん…あの時以来かしらん、王允ちゃん…?」
「ああ、久しぶりだな貂蝉さんよ…」
俺は俺の生きざまを貫く。
「久しぶりにアナタを見てみたら随分ヒドイ事してるみたいじゃない。凶刃をわざと誘き寄せ、
そうさ、それが俺のやり方だ。
「どーゆー人生辿ったらそんなヒドイ考えが思い付いちゃうのかしらねぇ…」
平凡を求める、それが俺の人生だ。
「どうもこうもないさ、俺の平穏を乱す輩は潰す…皇帝だろうが武神だろうが神様仏様だろうが
そのためなら『何だってやってやる』さ
「…その考え方は変わらないのか出来てしまったのか分からないけど…やっぱりアナタになら出来そうね」
殺し裏切り騙し盗み嘯き…『何だってやる』さ
「何がだ?言っておくけど俺の平穏を乱すヤツは誰であろうと許すつもりは無いぞ?」
「腐ってるわね、本当に」
おうおうおう、良く分かってるじゃないか
「ああ、腐ってるさ。最悪だろう?」
「ええ、本当に最悪ね。アナタの生き方も考え方も…全て」
そうさ、それが俺の進む道
「それは俺への誉め言葉さ…ありがとうよ、貂蝉」
平凡無才のこの俺が
このイカれた世界を歩くための
唯我独尊諸行無頼の
『くされ道』
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