模擬戦終わった。
寮のベッドで横になり、人を待ちながら今日の収穫を振り返る
一つ、わかった事がある
ガーベラはレーザーでも斬れる。超斬れる。
──────────────────────
時間は遡りセシリアと私の模擬戦
「先程の戦いぶり、見せていただきましたわ。最後の大立ち回り、見事としか言いようがありませんでした」
「お褒めに預かり光栄だよ、セシリア」
模擬戦前、何を言い出すかと思ったらいきなり褒められた。照れるよ
「私、あのような勝ち方は納得が出来ませんの」
「うん、そう言うと思ってたよ」
「ですから、私は風花さんに勝って一夏さんよりも強いという事を証明しなければなりませんわ」
考えが短絡的すぎやしないかそれ…
ジャンケンのグーチョキパーみたいな関係とか考え無かったんだろうか
否、考えただろう。
しかし彼女の性格がそれを認める事が出来ないのだ
自分が男よりも劣っていると認めたくないのだろう
「オルコット、叢雲の両者、準備は出来ているか」
「「はい!」」
「それでは、始め!」
開始の合図と共に距離を離すセシリア
まあ当然だよね。近接装備しか無いに等しいような私相手なら接近される前に潰すのが定石だもん
こりゃあ…長くなるかな…
詰めるのにどれほどかかることやら…
なによりも問題なのは、一夏君との模擬戦と違って今のセシリアは100%フルパワーの本気だという事
一筋縄では行かない事は火を見るよりも明らかだ
そしてレーザーライフル『スターライトmkⅢ』を私に向ける
私だってその場で棒立ちするなんて馬鹿な真似はしない
試合前にレッドから言われた忠告に従って動く
試合前にレッドに言われたことはひとつ
[直線的に動くな]
セシリアの狙撃を潜りながら距離を詰めようとするも、進みたい場所に狙撃が飛んできて思うように動けない
まあ遠隔兵器を使われるよりかは幾分マシなんだろうけどさ
一夏君とセシリアの模擬戦を見てて私が脅威に思ったのは狙撃よりもオールレンジ攻撃のできる自立機動兵器『ブルーティアーズ』だ。
レッドのサポートがあるといえ初見であれを躱しきれる自信はない
って待てよ…?本気なのにどうしてブルーティアーズを使えない?
思い出せ私、何が原因でセシリアは一夏君に負けた…?
白式の一次移行?否、それは大詰めでの出来事だ
そう、セシリアはブルーティアーズ使用時は足が止まってしまう。そこを一夏君に見抜かれてブルーティアーズを破壊された。そしてそのまま大詰めへと繋がったはずだ。
多分セシリアは、私相手でも同じ事が起きるのを警戒している。
おおかた、足を止めれば私の実力なら掻い潜ってでも接近されるとか思われてるのだろう
(このままだと負けは明らか。レッド、何か策無い?)
[無い事は無い]
レッドの策
それは策というにはあまりにも無謀なもので、半ば博打のようなものだった
(面白いね…成功すればだけど…)
[原理的には可能のはずだ]
やらなきゃどのみちやられるんだ
無謀だろうがなんだろうがやるしかない!
セシリアからの狙撃を右に跳躍し避ける
そして着地と同時にガーベラを抜刀しながら瞬時加速、突撃をかける
「いっけぇぇ!!」
「ヤケになって特攻ですの?これだけ距離があれば狙い撃つのは簡単でしてよ!!」
その時、スターライトmkⅢから放たれた光の筋は私にはひどくゆっくりに見えた
体が怖がって逃げそうになる
それでも勝つにはこれしかない
真正面から受けて、突き抜ける!!
ガーベラを斜めに構え、レーザーに突っ込む
視界には膨大なエネルギーの光と、それを斬り裂くガーベラしか映らない
きっとそれは一瞬で、しかし私にはそれがまるで何分も続いたかのように思えた時間だった。
斬り裂いた光の先には驚愕した表情のセシリアがいた
「一気に!決めるッ!!」
「くっ…!インターセプター!」
鍔迫り合いのような形になるも、近距離での戦闘では私に分があるのは明らかだ。
「どうするセシリア!まだ続ける!?」
「私は…負ける訳にはいきません…!!」
[左右からエネルギー反応あり!]
「ッ!?」
レッドの警告を受け後ろに飛び退く
そのすぐ後には私のいた場所に2本の青い光線が走った
「何で!?ブルーティアーズ稼働時、セシリアは動けない筈じゃ…!」
「行けます…行けますわ…!ティアーズ!」
何がセシリアをあそこまで突き動かすのだろう
強くなりたいという気持ちは悪いものではない。だがこの執念は異常だと思う。
男への怒り?憎しみ?明らかにそれだけではない、別の何かが彼女の根本にはあるのだろう
相手は代表候補生、同じ手が2度も通用するはずが無い
私に残ってる手は…
セシリアの全てを受け止め、そして乗り越えるのみ!
呼吸を整え、セシリアの動きを待つ
「さぁ、踊りなさい!私、セシリア・オルコットとブルーティアーズの奏でる
「生憎ダンスは苦手だからね!遠慮させてもらうよ!!」
4基のブルーティアーズから放たれるレーザーとスターライトmkⅢから放たれるレーザー。計5門からの射撃を躱し、避けられないものはガーベラで斬り裂く。
流石にセシリアと言えどもブルーティアーズの稼働時の射撃は精度が落ちるようで先程よりかは幾分かは楽だ
だが、ブルーティアーズを使用した息をつかせぬ波状攻撃で私の被弾も増えていく
無論私もやられっぱなしではなく、隙を見て3基のブルーティアーズを破壊している
[エネルギー残存量微小!次は無いぞ!]
(わかってる!これまでのデータから打開策ある!?)
セシリアも疲れからか射撃の間隔が広くなってきている
シールドエネルギーの残存量的に私もセシリアも、互いにこれがラストアタックとなるだろう
(レッド!どうなの?)
少しでも、0.1%でも勝利の可能性が高まるのなら私は全力でそれに乗るまでだ
[根性]
(あはは…本当にレッドは機械…?)
機械に根性って言われる日が来るなんて思ってもいなかった
(レッド、ビット破壊と同時にフライトユニットのパージの準備を。使用出来る全エネルギーを次の瞬時加速に使うよ!)
[合点承知!]
チャンスは一度、最後の
セシリアの射撃、それを回避した先にあるのは最後の1基!
その砲門が光を放つ瞬間、ガーベラで串刺しにして破壊する。
それと同時に残存エネルギーギリギリを使用した瞬時加速でセシリアへと肉薄する
「これで…どうだぁぁッ!!」
「忘れたのですか?ティアーズはあと2基ありましてよ!」
「忘れてなんかないよ!!」
セシリアの後ろから2発のミサイルが飛んでくるのが見える
(レッド!フライトユニットパージ!あとPICの制御マニュアルに切り替えて!)
[応!]
PIC(パッシブ・イナーシャル・キャンセラー)とは物体の慣性をなくしたかのような現象をおこす装置で、ISはこれと肩部にある推進翼、任意で装備できる小型推進翼を使って姿勢制御、加速、停止などの3次元的な動勢を行う。
そしてこのPIC、本来オート制御になっているのだが、マニュアルにすることでより細やかな動作を行うことができる。
しかしそれには同時に機体制御を意識する必要があるためそれ相応のリスクも伴う
私はパージされたフライトユニットよりも遅くなるように減速、フライトユニットを踏み台に跳躍しミサイルを回避する
そのままガーベラを振り上げ上からセシリアに突撃する
「くっ…インターセ─」
「遅いよ!!」
そしてそのままセシリアを地面に叩きつけ、ガーベラでセシリアの絶対防御を発動させる
「そんな…私は…負ける訳には…」
「もういいよ、セシリア」
もう、見たくなかった
「私の知っているセシリアは、そんな瞳をしていない」
「私の知ってるセシリアは、泣きながら戦うような人じゃない!」
「勝負あり!勝者、叢雲 風花!」
アナウンスが響き、模擬戦に決着がついた事が知らされる
「セシリアに何があったかは知らない」
レッドの展開を解除しながら続ける
「知りたいとも思わない」
「ッ…!!」
セシリアとすれ違うようにピットへ戻ろうとする
そしてしゃがみこんでいるセシリアの横で私もしゃがみ
「でも、こんな私でも力にはなれる」
「えっ…?」
「今夜、話したくなったら声をかけて」
そのまま私は立ち上がりピットへと向かう
そして、振り向かずにピットへと戻った