2-1話 再会と屋上
私がその子と会ったのは、私が1人であのにっくき中里…先生によって整備科の片付けを手伝い、寮に戻るのがかなり遅くなった日の事だった
「ねぇ!ちょっとそこのあなた!」
「ん?私?」
「そう!本校舎ってどこか、わかる?」
初めて見る子だった
茶髪をツインテールにした小柄な少女で制服を着ていなければ中学生でも通用しそうな子
「本校舎ね、本校舎は…」
「うんうん!」
「口で言っても迷いそうだし案内するよ。私は風花、あなたは?」
「私?私は
この出会いがまた一つの騒乱を起こす事になるとは、この時思いもしなかった私なのでした
──────────────────────
翌日
最近は朝のSHR前に箒さんと一夏君、セシリアと私の4人で話すことが増えてきた
内容も様々でISの事から日常的な事まで日によってまちまちだ
今日の話題は1ヶ月を切ったクラス対抗戦で、一夏君が勝つために何を意識すべきかの話をしていた
「でもさ、ほかのクラスの代表は専用機持ちじゃ無いんだろ?だったら機体スペックで圧倒してる俺が有利なんじゃ…」
「そのような慢心はいけませんわ!如何に機体スペックが高くとも、パイロットの腕一つで負けることだってありましてよ」
「そうだよ、特に一夏君は武器が一つなんだから引き撃ちに徹底されたら何も出来ずに負けちゃうよ?」
「うっ…!そう言われれば確かに…」
今日もいつもと変わらない穏やかな朝
それが続くと思っていた時が、私にもありました
「ふっふっふっ、久しぶりね!一夏!」
声のした方を見ると昨日出会った凰ちゃんがクラスの入口に立っていた
「どうしたのかしら?突然すぎて言葉すらでなかった?」
「鈴、お前その喋り方なんか変だぞ」
一夏君ワールド全開
凰ちゃんなりに格好つけたんだろうけど完全に台無しだった。
「アンタねぇ!!久しぶりに会った幼馴染に対して第一声がそれって酷くない!?」
「だって鈴らしくなかったからさ。久しぶりだな、鈴」
あっ、今の挨拶一つで表情ガラっと変わった
ははーん、さては凰ちゃんちょろいな?
「う、うん…久しぶり…一夏…」
私でもわかるあれは恋する乙女の目だ
恋した事ない私でもわかる
凰ちゃんは絶対一夏君の事が好きな人だ
「本当に驚いたよ、中二で転校しちゃってそれきりだったからな」
「ふふん、そうでしょうそうでしょう!それでね、一夏…」
ペチン
千冬さんが凰ちゃんの頭に出席簿を当てる音がした
「積もる話はあるだろうがもうSHRの時間だ、クラスに戻れ」
「千冬さん…」
「織斑先生だ」
嘘…出席簿ってあんな優しい音を奏でられたんだ…
凰ちゃんの襲来は新しい発見と共に終わった春の終わりの日でした
──────────────────────
4限を終えて食堂へ向かおうとしたら中里に捕まって時間を取られちゃったよちくしょう…
おかげでいつも一緒に昼食をとるメンバーはみんなもう先に着いちゃってるよ…
昼の食堂というものはどんな日でも賑やかなものだ
しかし今日はいつにも増して賑やかに感じる
というかうるさい
そんな事思いながら食堂の券売機の前で何を買うか悩んでいると凰ちゃんが食堂から飛び出していくのが見えた
なんていうか放っておけない雰囲気だったよねアレは…
「すいませーん!おにぎりもう1個オマケしてくれませーん?」
「いいよ〜、おばちゃんおまけしたげる!」
「ありがと!おばちゃん!」
私はおにぎりを2個(追加でさらに1個)持って凰ちゃんの行方を探す事にした
私が凰ちゃんを見つけたのは昼休みも半分終わった頃、屋上でだった
「どうしたのさ、こんな所で」
凰ちゃんは膝を抱えて泣いていたけど、私が屋上で声をかけると少し照れたように笑いかけてきた
「うん、ちょっとね!」
「嘘、絶対ちょっとじゃないよその顔は」
笑えてないよ
全然笑えてない
顔中涙でぐしゃぐしゃ
目だって赤いし口も震えてる
そんな顔されてちょっとだなんて思えるはずが無かった
「私でいいなら話は聞くよ?」
「ぅ…ぅぅ…」
そこで堤防が決壊したようで、堰を切ったように声を出して泣き出した凰ちゃん
私はそんな凰ちゃんの頭を撫でながら優しく抱きとめていた
──────────────────────
「なるほどね、そんな事が…」
泣き止んだ凰ちゃんから話を聞くと、どうやら昔一夏君に酢豚を毎日食べさせてあげる約束をしていたようで、言葉自体は覚えていたが意味までは理解出来ていなかったという出来事が昼にあったらしい
「酷いと思わない!?あの頃の私なりに必死に考えて言ったのにあの唐変木馬鹿一夏は…!何が毎日タダ飯よ!!」
一度不満を吐き出すと止まらなくなるのは人の性のようなもので、凰ちゃんの愚痴は止まらない
「大体何よ!一夏がIS学園に入学したって聞いたから無理言って私も編入したっていうのにあの態度は!」
「あー…確かにそれはわかるなぁ…」
私でもあの第一声はどうかと思う
もう少し別の言葉は無かったのだろうか…
そんな話をしていると気がつけば昼休みの終わりを告げる鐘の音が響き、教室へと戻る私たち
「風花、アンタには悪いけどクラス対抗戦は2組が勝つわよ」
「ああ、2組なんだっけ?」
「うん、私がクラス代表になったからには誰が相手でも負ける訳ないわよ!なんたって私は中国の代表候補生なんだから!」
ヘーソーナノカー
って待って!?代表候補生!?IS学園で親しい友達のうち2人が代表候補生ってそれどうなのよ!?
「しかし1組の代表が風花じゃなくて良かったわよ」
「え?どうして?」
「だってアンタ代表候補生じゃない癖してイギリスの代表候補生に勝ったんでしょ?しかも剣1本で。そんなのと戦うなんて私はごめんよ」
「偶然だよ偶然!2度目は私が負けるかもしれないし!」
クラスの前につくと私達は挨拶をして別れた
クラス対抗戦、こりゃあ一夏君は厳しいかな?
──────────────────────
あの日を境に、私は鈴ちゃんとも仲が良くなり良く話すようになった
1週間足らずで私達2人は同じ事で悩んだりしてる事がわかって意気投合しちゃったよね
今日は寮の部屋に鈴ちゃんを招待してセシリアと3人でお話しようと約束をしていた
鈴ちゃんとセシリアも、最初は代表候補生同士だから敵対とかしちゃうのかなとか思ってたけどそんな事はなくて、良い友達として話せると、互いに認めあってるらしく私も嬉しかった
「しっかしセシリアは大きいわよね〜」
突然そんなことを口走ったのは鈴ちゃんだった
「そんなことありませんわ!私はより大きい人など本国にはたくさんおりましたし…」
「いや、私達からすれば十分大きいわよ。ね?風花」
「うん…どうしたらそんな大きくなるのか聞きたいくらいだよ…」
セシリアを見ながら私も鈴ちゃんに同意する
何を食べたら大きくなれるのかとても不思議だ
「そんな事言ったらその…箒さんの方が大きいでは無いですか!ここは私ではなく箒さんに聞くべきでは?」
「今ここに箒さんいないしぃ…」
「勿体ぶってないで手っ取り早く教えなさいよセシリア!」
女三人寄れば姦しいとはまさにこの事
消灯時間までひたすらに話し続けた私達
明日はいよいよクラス対抗戦だというのに最終調整を手早く終わらせる鈴ちゃんは流石というかなんというか…
明日はどちらが勝つか、楽しみだね!
何が大きい?