皆さん、裏表のない素敵な人です。   作:いろはにほへと✍︎

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うたたねに 恋しき人を 見てしより 
夢てふものは たのみそめてき

―小野小町―

『うたた寝をしたときに恋しい人を見てからは、「夢」と言うものを頼みにするようになった』



はるかと再会

 「なんで俺が……」

 

 数学の授業中、チョークが無くなったということで、一番前の席の俺が指名され取りに行くことになった。不平不満を一人洩らしながら歩いていたが、そこでようやくチョークの置き場所を知らないことに気が付いた。

 時間かけて帰ろう……。

 せめてもの仕返しにと、そんなことを思いついて、俺は誰に聞くこともなく校内を回って探し始めた。

 体育館倉庫にでもあるんじゃね? ふざけたことを考えながら体育館に向かう。実際、倉庫と言ったら体育館しか思い浮かばない。よし、体育館に向かおう!

 性格の悪さと頭の悪さに定評のある俺は、ルンルン気分で体育館へと向かう足を踏み出した。

 しかし、それは直前で止まってしまった。

 

 ――塚原先輩だ。

 

 瞬間、俺は踵を返して、走り出す。しかし、振り返ってみれば塚原先輩が走ってこちらに向かってきていた。どうやら気づかれたらしい。

 

 逃げろ八幡。負けるな八幡。

 

 はたして俺の運命はどうなってしまうのか。そんなことは考えるまでもなく決まっていた。

 

 「待ちなさい!」

 

 そう聞こえた瞬間に、壁をバンと叩く音が鳴って、目を閉じてしまった。目を開ければそこには綺麗な顔があった。視線を下にやっていけばジャージ姿で、体育中だということがよく分かる。まあ、何よりの問題は、この状況が俗にいう壁ドンだということ。俺より全然格好良くて泣いた。

 

 「ど、どうも」

 

 挨拶は大事だ。しっかり視線を逸らして、中指さえ立てないものの話す気はないと言外ながらにアピールする。

 

 「ちょっとお話があるの」

 

 落ち着いた表情が、不気味さを漂わせる。俺とほとんど変わらない距離を走ったはずなのに、彼女は少しも呼吸を乱していなかった。

 

 「いや俺にお話はないんで……」

 

 狸の化かし合いと言うわけにもいかない。ここから先は彼女の独壇場だ。

 

 「面白いこと言うわね」

 

 「あはは……そうっすか? 笑えますね」

 

 「ええ、全然笑えないけどね」

 

 塚原先輩は、優しさとは程遠い仰々しい笑顔になって、そして俺に問う。

 

 「無事に帰りたいなら、分かってるわね?」

 

 あまりの威圧感に返事をする間もなく、俺はそのまま体育館横にある倉庫へと押し込まれた。

 

 × × ×

 

 「で、なんであんなことしたの?」

 

 「あんなことって?」

 

 「はるかに暴言を吐いたんでしょ」

 

 「暴言と言うか……、暴言ですね、ごめんなさい、命だけは……」

 

 そう言って比企谷君は命乞いをするように私を上目で見る。……私だって傷つくからね?

 

 「なんでそんなこと言ったの?」

 

 「……先輩がしつこいからです」

 

 そこだけは譲らないとばかりに、はっきりと彼は言い切った。

 

 「まあ、それは確かにね」

 

 「でしょう? 先輩といるとストレスがたまるんですよ」

 

 ここが勝負どころだと言わんばかりに、比企谷君は早口でまくしたてる。

 

 「そうね、あの子ほんとうるさいし」

 

 「そうそう」

 

 「でもたまに優しかったりしてね」

 

 「ほんと、あと可愛かったり……、あ」

 

 時すでに遅し。言質をとった。きっと比企谷君はそういうことを気にする。これは良い材料だ。

 

 「ふふ……。はるかに言われたくなければ、なんであんなことしたのか言いなさい」

 

 言えば、比企谷君は心底恨めしい顔でこちらを見つめる。

 

 「分かりましたよ、言えばいいんでしょ」

 

 「そうそう、物わかりのいい子は好きよ」

 

 「俺は先輩のこと好きじゃないっすけど」

 

 そう皮肉をこぼしてから、比企谷くんはゆっくり口を開く。

 

 「先輩はもし俺と付き合っているなんて噂が立ったらどう思いますか」

 

 そう前置きをして、彼はとてもどんよりした目で話を始めた。

 

 × × ×

 

 授業終わりの鐘が鳴って、私は更衣室に戻ろうとした。けれど、見渡してもひびきがいない。

そういえば20分くらい見ていない気がする。

 

「ひびきちゃーん?」

 

一人で大声を上げながら私は体育館中を回る。でも反応はない。もしかしたら体育館にいないのかも。そう思って私は体育館を出てみる。

 目の前には体育用具室があった。いるかもしれない! って思って私は戸に耳をつけた。

 すると、確かに人の声が聞こえた。それも会話をしているようだった。でも、内容までは聞き取れない。頑張って耳を澄ましたけど、やっぱり聞こえない。

 んんー? とひとりで困っていると、不意にその扉が開いた。壁に耳をつけていた私は、そのままのけぞってしまった。

 出てきた人たちと目が合ってしまう。

 

 「はるか……」

  

 一人はひびきちゃんだった。そしてもう一人は目を見開いて、そのまま固まったように私を直視し続けた。

 

 「先輩、まさか聞いてましたか」

 

 驚いている表情を隠しもしないで尋ねてくる。

 

 「え、ううん! 聞いてないよ」

 

 私は大仰に首を振って、否定する。逆に怪しく見えたかもしれない。

 私たちのやり取りを見てひびきがどう思ったのかはわからない。でも、ひびきは女神みたいに微笑んで私たちを突き合わせる。

 それからひびきは比企谷君に何か耳打ちした。

 比企谷君は必死に取り繕って、まるで何かを制止しようとしているみたいだった。あとは「話が違う」っていうのも聞こえて、なんか比企谷君はひびきに脅されてるみたい。

 私は少し笑ってしまった。

 

 「何笑ってんのはるか」

 

 ひびきに咎められることよりも、後ろの比企谷君が超不服そうな顔をしていることが気になった。

 

 「まあいいわ」

 

 「え?」

 

 私の応答には反応しないで、ひびきは大きく息を吸い込んで、吐き出した。

 

 「あんたたち、ちゃんと話しなさい」

 

 「え、いやちょっと待って……」

 

 私の言葉は空しく消えて、ひびきちゃんは私たちの腕を引っ張る。

 

 「ちゃんと言葉にしなさい!」

 

 そう言って、私たち用具室に放り込まれた。

 

 




最近ハイペースで登校しているのは、日曜日にパソコンの検定があるからですね(笑)

読めてうれしいという人もいるのかな?(笑)

実はほかにも多数作品投稿しています。拙い文章ですがよろしくお願いします!

いつも評価・感想・お気に入り登録等ありがとうございます!
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