あの日あの場所あの時から。   作:如月の夢

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失踪してたよ(断言)
向こうの作品終わってないよ(絶望)

どうも最近リアルが何かと忙しい(仕事)しずねは最かわっ☆です!

いやぁ、向こう完結してねーのに……


雨+傘の押しつけ=発熱

雨が降れば人はどう思うだろ。

雨が降ることを歓喜する者がいれば、嘆く者もいる。

雨が降ることを歓喜するものは、水を欲する人たち。

または、雨が降ることで起こりうる副作用に歓喜するのだろう。

学生でいえば、嫌いな体育。

 

逆に嘆くのは、落ちた雰囲気によるものや、雨のせいで予定に支障が出るもの、または徒歩や二輪車などなど。

リア充は主にこちらなのだろう。

放課後の予定がパンパンな彼らにとっては雨などというどうしようもないまさに天敵とも呼べるのだ。

 

ちなみに俺は前者である

なぜならリア充どもの予定が大いに狂うからである。

まさに歓喜。

しかし、今日に限って嘆く側になる。

なぜなら、かっぱを忘れた。

ようするに、帰れない。

周りは部活を終え、既に帰宅する生徒で溢れている。

うわ、最悪だわ、などと嘆く言葉がリア充から聞こえてくる。

普段ならその姿に笑い転げる所だが今回は俺も最悪だと思っている。

あれ、俺もとうとうリア充の仲間入りに?違います。

どうやって帰ろうか。

濡れてでも帰って、などと考えるがそれは許されない。

なぜなら、風邪をひく危険があるからだ。

風邪で学校を休むという行為は、ボッチを破滅へと導く。

なぜなら、休んだ日のぶんを復習する手がないからだ。

ノートをとってくれる友達なんぞいないからだ。

さて、どうしたものか。

しかし、ここでふと思い出す。

ぼっちは何かと用意周到なのだ。

下駄箱に折りたたみ傘を仕込んであるのだ。

仕込んであるって言うとかっこいいよね、暗器みたいで。

それはないな。

 

誰もいない昇降口へ。

さぁ、早く帰ってアニメでも見ようか。

下駄箱を覗けば、そこには折りたたみ傘。

良かった取られてなくて。

あいつのならいいや、って持っていく奴いるからね。

壊れてないことを確認しながら外へ向かう。

しかし、そこで初めて気づく。

無言のまま空を眺める一人の女子生徒。

既に体が濡れていることから、突然の雨に引き返してきたのだろう。

しかし、俺には関係ないことだ。

隣を通り過ぎ手行こうとする時、彼女と目が合った。

その瞳は何だか泣きそうだった。

無意識とは怖いもの。

俺は気づいたら

「どうした。」

声をかけていた。

 

 

「傘を取られたねぇ……」

神様よ、フラグ回収する位置が違いませんか。

いや、俺で回収しろってことではないよ?

「……」

彼女は空を見上げたまま、静かに頷く。

「それは災難だったな。」

「べつに……」

「べつにってお前…」

「それで誰かが濡れずに済むならいい。」

「とは言ってもお前が濡れるだろうが。」

「私はどうでもいい。」

「じゃあ何でここで止まっている。」

「帰る方法を模索中。」

呆れた、自分のことを考えずに他人を思ったのか。

「他人のことより、まず自分のことを考えろよ。」

自分で言っておいて、これ程までに大きなブーメランはないと思う。

しかし、今はどうでもいい。

「ほらこれ使え。」

「貴方は?」

「俺は別に濡れても平気だ。」

嘘です病んじゃいます。

「貴方はさっき、自分のことを考えろと言った。それとこれは矛盾している…。」

「いいから帰れ、じゃあな。」

そう言って、無理やり傘を押し付け走る。

まさにカンタ君、あいつはいい男だ。

 

 

「比企谷くん………………。」

 

 

 

 

翌日。

「くっそ…こっちのフラグを回収すんのかよ。」

神は非情である。

何事も都合は良く行かない。

ピピッと己の脇に刺さる機械を抜き、そのデジタル表示を読む。

「38……」

そう、風邪を引いたのだ。

微熱程度なら頑張ったのだが、これは無理だ。

「はいるよー。お兄ちゃん、どう?」

首を振って答える。

「どれどれ…って38度もあるじゃん!ほら寝る!」

布団を強引に掛けられる。

「今日はここから動いちゃダメ。学校はもちろん休み!」

普段なら、言われたい言葉ランキングトップ10の動くな、の言葉に喜ぶが、状況が状況だ。

「なんで昨日、お兄ちゃん傘さしてこなかったの?折りたたみ傘置いてなかったっけ?」

「忘れてたんだよ。」

人に押し付けた。なんて言えるわけない。

「ふーん……まぁいいや。」

その後、小町は学校にいってしまった。

熱で体がだるい、これは寝るしかない。

そう思い、意識を闇に落として行った───

 

 

 

ふと目が覚める。

脳は現在の状況を整理し始める。

熱はだいぶ引いたようだ。

服は汗でベトベトしている。

おかげで喉はからからだった。

お昼を食べていないからか、多少の空腹を覚える脳。

窓から射す茜色の光に、夕方になったことを察する。

しかし、これらすべて以上に脳が意識するものがある。

チャイムが鳴っているのだ。

重い体を起こし、何とか玄関まで向かう。

「小町…じゃねぇよな。密林も頼んでないし……」

ようやくたどり着いた玄関、未だに定期的にチャイムが鳴っている。

まるで機械のように一定のリズムを刻んでいる。

「はい、どちら様で……」

ドアを開けたその先には、昨日の彼女が立っていた。

 

 

 

「お見舞い、ねぇ。」

一体なんのために。

「…………。」

かまくらを膝に収め撫でながら、静かに頷く。

病人の家にあげるのも、と考えたが気づいたらこうなっていた。

「しかし、わざわざ何のために。」

当然の疑問をぶつける。

すると、彼女は自分のカバンを開き、丁寧にまとめられたファイルを手渡してくる。

「ん?」

受け取り、中を確認する。

「お前……」

中はルーズリーフを含めた紙が数枚。

内容は

「これ今日のノートか?」

連絡を伝えるプリントと、今日の板書らしきもの。

「…………。」

またもや、静かに頷く。

「何でこんなもの。」

「困ると思ったから。」

たしかに困るが、如何せんすごく綺麗にまとめられたノート。

しかもコピーなどではない、ちゃんとシャープペンシルで書き込まれている。

「まてよ?」

しかし、1つ疑念が浮かんだ。

これを糧に脅してくるのか。

などではなく、昨日のことから考察できること。

それは

「お前、自分の分のノートも取ったか?」

「…………忘れてた。」

 

数分後、俺らの間には約二倍になったプリントがある。

家の固定電話のコピーを使った。

「お前は阿保かよ。」

「自分のことまで視野に入れていなかった。」

「昨日言ったのに……」

「……そうね。」

素直に聞く彼女。

「けど。」

違った。

「それは貴方も同じ。」

痛いところを突いてくる……

「貴方は自分のことを考慮せずに傘を私に貸し付けた、そして結果として風邪を引いた。」

「そんなことはどうでもいいだろ。」

「良くない。自分の発言には責任を持つべき。」

そう言っておでこを触られる。

ひんやりしてて気持ちいい……違う。

ばっと身を引く。

「な、お前何する。」

「何……何って熱を確かめようと試みた。」

辞めてくれません?熱出ちゃうよ違う熱が。

「結果、まだ熱があるということが分かった。直ちに横になるべき。」

「なら帰れ。」

「…………。」

「いや、そんな泣きそうな顔されても。」

「貴方は私のせいで…」

「俺は大丈夫だから。」

「せめて、寝るまで面倒を見させて…」

「移るから帰れ。」

「……………………」

余計泣きそうになる彼女

「はぁ……わかったよ。俺が寝たら帰れよ?」

「……。」

ようやく嬉しそうに微笑む彼女。

はぁ、寝よ。

 

 

夢を見た、暖かい夢を誰かに包み込まれるような。

周りからは冷たい視線を浴びてもそれでも暖かい。

その熱は手に集まる。

暖かい、心が安らぐ────

 

 

───照明の眩しさに目を覚ます。

頭の上に冷たさを感じる。

右手を持ち上げ頭にあてがうとベチャっと音がした。

どうやら濡れたタオルを置いてくれていたらしい。

全くできた妹だと思いながらドアへ視線を向ける。

そこに居たのは、今までに無いくらい最大級のニヤけ顔の妹だった。

ん?

左手に違和感を持つ。

視線を移すとその先には。

「………………z」

あー…………

「お兄ちゃん、おはよう☆」

「まて小町、お願いだ待ってくれ。」

「ん?ん?なにかな?」

うぜぇぇ。

ってそんなことよりも。

「おい、起きろ……えっと。」

やべぇ、名前を知らない。

「おい、起きてくれ。」

「ん…………」

いやいや、んじゃなくて。

「……おはよう比企谷くん。」

「お前、帰れって言ったよな。」

「うん、帰ろうとした。でも行かないでって言われたから残った。」

は?

「は?」

いやいや、声に出しちゃったよ。

「寝言。行かないで。確かにそう言った。」

まじか

「…………。」

無言で頷く彼女。

いや、さらっと心の声に返答しないで。

「へぇ、お兄ちゃん、んへぇ。」

やべぇ、小町のこと忘れてた。

「と、とにかく帰れ、な?」

「うん、そうする。お邪魔しました。また明日ね、比企谷君。」

ニコッと笑う彼女に少しみとれる。

「へー、でもすごいねお兄ちゃん。」

「なにが?」

「あの人、全然表情が動かなかった。」

「は?結構表情かわるぞ?」

「え?」

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

───やっぱり比企谷君はすごい。

私の表情が分かる人、初めて───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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