ガーディアンが行く場所 オレは臆病な君を守り続ける 作:孤独なバカ
「……久しぶりにマップに出れたのはいいんだがここかよ。」
俺にとって本当に嫌なマップだった。今35層にある迷いの森に来ていた。
ここは俺がキリト達に剣を向けたところなのにあまり来たくなかったがある依頼のため来ないといけない羽目となった
結局アスナの件が完全に解決したのは二月の三週目を過ぎた辺りだった。聖竜連合も攻略組の一員だったので、かなりの揉め合いになりヒースクリフの仲介だけではなく、他の小型ギルドやソロプレイヤーまでこっちの味方をしてくれた。どうやら、他にも強引な引き抜きが多いかったらしい。
風林火山のクライン曰く大型ギルドに対抗できなかいプレイヤーが多かったのことだ。この結果ソロプレイヤーと小型ギルドの要望は通され聖竜連合は二度と引き抜きを行わないように仲介役の商人ギルド代表から命じられた。また下層、小型ギルド、ソロプレイヤーの連合が作られることになりその連合長に俺が選ばれるなど仕事がかなり増える羽目になった。
本当どうにかして休みたい。これじゃあ攻略してた方がよっぽどマシだ。
そしたら今度はオレンジギルドの捕獲の催促である。
本当に休みをくれ。早く現実世界に戻りたい。そして千代とゆっくりしたい。
そんなこと考えながら歩いていると四匹のモンスターと一人がマップ上に出てくる。最近キリトから取り直した方がいいと言われた索敵スキルだろうか。熟練度はあまりないがケイタとヒースクリフから借りている装備のおかげで対人間のハンティングは見抜けるようになっている。
てかここのフィールドでソロプレイヤーは結構きつい。前衛の火力とスピードを兼ね揃えたキリトみたいならまだしもここのモンスターは回復してくるから非常に厄介なはずだ。
俺は急いで走ると奥に3体のモンスターと座り込んでいる女の子の姿がいる。
まずい。俺は片手剣を抜き範囲攻撃のホリゾンタルを三体に同時に与える。今のレベルとこの武器ならば一格なので大丈夫だろう。すると3体は電子片となり消えていく。
どうやらプレイヤーは守れたらしく少しホッとするが、俺に怯えた様子だった。
ってか見ると小学生くらいの身長をした女の子で装備品は短剣。
……そりゃ怖いに決まってるか。
「大丈夫か?こんな時間はあまりソロで行動しない方が。」
と俺は下に羽みたいな物を見つける。
俺はそのモンスターのことを知っていた。第8層にしか生息しないフェザーリドラの羽だ。ペールブルー色の羽で可愛いとアスナが倒すのを惜しみながら戦っているのを覚えている。
ってことは、テイマーかこの子。
そして羽しかないってことは
「…悪い。君の友達助けられなかった。」
俺がいうとその少女は泣き出す。
「お願いだよ……あたしを独りにしないでよ……ピナ…」
「……」
その一言にずきっと胸が痛む。独りの辛さは知っている。そして好きな人がいなくなった辛さも知っている。
今この少女はどんな気持ちでここにいるんだろうか。でも、この想いの強さだったら
「そのピナなら蘇生させる方法があるぞ。」
「……えっ?」
するとその少女は俺の方をみる。
「その羽が『ピナの形見』じゃなくて『ピナの心』だったら蘇生させる方法はある。だからとりあえず確かめてくれ。」
すると急いでその少女は視線を落とすと
「……ピナの心って書いてあります。」
「なら47層に『思い出の丘』というフィールドダンジョンがある。そこでてっぺんにに咲く花がどうやら使い魔蘇生アイテムらし」
「本当ですか?」
するとその少女が希望を取り戻すが
「……47層…」
するとその少女が釈然としないようすでこっちを見る。
「……失礼だと思うがレベル聞いていいか?」
「……44です。」
「……なるほどな。」
確かに厳しいけど。この少女に昔の俺みたいなおもいはさせられない。
「俺がガードしてと装備品をアスナあたりから借りたらいけるがどうする?」
「……えっ?」
「行くんなら俺たちのギルドが護衛するけどどうする?」
すると驚いたようにこっちを見てくる少女。
「なんで……そんなことしてくれるんですか?」
警戒をしているようだしいいか。
「俺と同じ思いをして欲しくないから。」
その一言に少女は固まる。
「俺はリアルでは独りでさ、親も親戚でさえいないんだよ。ずっと独りでさ。今はギルドメンバーや彼女がいるけど…正直なところやっぱり独りでいるのは結構辛いし寂しいんだ。」
少し苦笑して
「ただそんな人を見るのが辛いだけ。だから、どちらかというと自己満足に近いかな?」
決してそれは人助けでも何でもない。ただの自己嫌悪だ。
「……悪い。迷惑だったら。」
「いえ。じゃあお願いしてもいいですか?」
その一言に少し微笑んでしまう。ちょっと気を使わせちゃったかな?
「ならちょっとギルドハウスに来てくれないか。すぐにアスナに連絡して事情を話すから。」
「はい。えっと、あたしはシリカと言います。」
「俺はユニバースだ。よろしく。シリカ。」
少し笑いながら右手を差し出す。そしてこれが竜使いシリカとの初めての出会いだった。
35層主街区に戻ると人が押し寄せてくる。どうやらシリカという少女の名前は人気者らしく男性プレイヤーを引き連れていた。
元々俺たちのことを知らないのか、そもそも人気者として有頂天になっていたのだろう。少し名前を言った時残念そうな顔をしていた
そしてそのことを自覚してるんだろう。ここに戻る間の顔や発言はどれも後悔を引きずっていた。
……こういうプレイヤーは強くなる。
俺はそう思っていた。一度失敗や後悔を経験しそれに立ち直るようなプレイヤーだったなら。
「……おい。あんた。」
「ん?」
「見ない顔だけど、抜け駆けはやめてもらいたいな。」
その一言にカチンとくる。
「あんた、それ本気で言ってんのか?」
「えっ?」
「人はアイテムじゃないんだ。誰にだって意思があるし、考えや感情がある。それ以前に俺は結婚してる。だからシリカを……決して誰かをマスコットにしたりはしない。」
ただそんなことはシリカにもそのアイドルみたいに扱われる人に迷惑だ。
「シリカ行くぞ。」
俺は手を引く。こんな人間からは離れたかった。
そしてしばらくたって。
「ゆ、ユニバースさん。」
「ん?どうした?」
「手を離してもらえると。」
「……わ、悪い。」
俺はとっさに手を離す。するとあっと小さな声をあげ残念そうにするシリカ。
……なんか妹みたいだな。この子
なんか守りたくなってくる感覚がある。多分そういう面があのプレイヤーを釣るのか。
「……悪い。ついムキになった。最近ちょっとこっちのギルドでも同じ案件で揉めていたから」
「……いえ。大丈夫ですけど……でも、ありがとうございました。なにから何まで助けてもらっちゃって。」
「……だから、自己満足って言ってるから礼はいい。それならピナを助けてやってからだ。」
少しため息を吐く。俺はオレンジギルドの捜索にきたのにな。少し御節介がすぎるし
「ちょっとギルメンに連絡するからちょっと待っててくれ。今回の件ちょっとサチに報告しないと泣かれるし。」
「あ、はい。」
俺は近くの道具屋の裏に向かいギルド用に緊急メッセージを送る。するとまずサチからメッセージが届き、その後にケイタ、キリト、アスナと続く。そして誰も了承して夜8時を回ってるにもかかわらず集まってくれるらしい。
「……なんでこんなにいいやつばっかりなんだよ。うちのギルドは。」
少しどころじゃなくてかなりお人好しな奴らばっかりに少し笑顔が隠せない。
正直なところうちのギルドはこのゲームを楽しんでいる。色々なところで休みながらも攻略は順調だしなによりも精神的な余裕がある。攻略は休みは他のギルドより桁違いに多いし、できるだけ希望も取り入れるようにしている。
なので正直他のギルドよりも安定している。
レベル上げも順調だしここの二カ月はほとんど出費も抑えられている。
やっぱりずっと一緒にいたいな。あいつらと。
そんな本心からそう思う。
さて、帰ろうか。
俺は元いた道に戻ろうとすると
「へぇ、てことは。『思い出の丘』に行く気なんだ。でも、あんたのレベルで攻略できるの?」
「……」
また面倒臭いことになった。俺はもう一度ギルドメッセージを送る。
その後ため息をつき
「シリカ。行くぞ。」
「は、はい。」
俺が言うとすぐに話を切り上げこっちに話してくる。
どうやら嫌な体験があるそうですぐにこっちに走ってくる。
すると一瞬奥の女性プレイヤーがこっちを見てくると俺は一礼して後ろを向く。
「……大丈夫か?」
「はい。でも…」
「いいから。俺たちのホーム19層だからとりあえず向かうぞ。君に話さないことも増えたし。それに一応うちのギルドのシェフが晩飯用意して待ってくれてるらしいから。晩飯もそこで。」
「えっ?でも悪いですよ。」
「……いや。ちょっと、いやかなりまずい状況になってるから。」
「…どういうことですか?」
「いいから。飯食いながら話す。」
俺はもう真剣だった。するとシリカもそのことに気づいたのか頷く。
そして転移門使ってギルドハウスのある階層へ転移した