ガーディアンが行く場所 オレは臆病な君を守り続ける 作:孤独なバカ
月夜の黒猫団と出会い二週間、
オレがパーティーに入ったことで月夜の黒猫団はかなり動きがよくなった。槍使い二人の動きの攻撃力も過去のボスのラストアタックで落ちた槍を使うとかなり攻撃力が上がった。
オレは基本的に経験値ボーナスをもらわないように攻撃はせずに防御中心、防具のレベルを下げ
「今日はこれくらいで帰ろうか。サチとケイタが疲れてきてるし。」
オレは時間を見ると狩りを始めてから七時間が経っていた。今の階層は28層、最前線から二層低い階層だった。
それだからこそオレはメンバーの様子を見て体調や疲れを見極めて帰るタイミングを見ていた。
レベルは順調に上がっているらしく、月夜の黒猫団のメンバーはステータスを見てかなり驚いている。オレもほとんど手を出してなかったがレベルが1レベル上がるほど順調だった。たぶんオレのスキルの影響もあるのだろう。一人を覗いたら
「サチ、大丈夫か?」
オレはずっと心配していたサチに声をかける。
「うん。大丈夫。」
これまでぶっ通しで狩りをしてレベル上げていたからだろうか。疲労の色が見えていた。
やっぱり男性プレイヤーと違って、女性プレイヤーは攻略組に向いていない。争いごとが苦手な奴が多いのだ。アスナはたぶんキリトに追いつこうとしているのだろう。一度アスナにギルド内で恋愛するのは禁止かと聞かれた時はかなり驚いた。もちろんオレはそんなルールはギルドにないと言ってからキリトにアタックしているらしい。
何か目標があって攻略組に入る人は多い。
そのほとんどがこの世界で最強剣士になりたいためである。
ほとんどの攻略組は効率のいい狩り場や宝箱、クエスト情報を公表していない。
攻略組と言う強さが支え最強剣士と言う生きがいを得ているのだろう。それをケイタに話した時、ケイタはオレに向かって聞いてきた。
……誰かを守るために攻略組に入りたいか
オレは苦笑してしまう。たぶんケイタが言っているのはギルドメンバーのことだろう。ケイタは月夜の黒猫団の中でも夜遅くまでオレに知識や情報を教えてほしいと聞いてきた。
オレは隠すことなく知識や情報を教え続けた。正直ギルドのリーダー同士話がよく合うようになっていた。
そして一回の討伐の時に喜び、そして生きて帰る。
こういうギルドを目指しているオレにはまぶしかった。
町に戻るといつもの酒場に行く。そこにはキリトとアスナが戻ってきていた。
「お疲れ。攻略はどういう感じだ?」
「全くマッピングが進んでない。やっぱり軍が抜けてからはペースが落ちているな。」
「私達もクラインさんのパーティーと一緒に行動してるんだけど、未だに迷宮区までたどり着けてないわ。」
「うーん。やっぱりか。」
だいたい予想はできていた。
「あの、マッピングってそんなに時間かかる物なんですか?僕たちは無料でマッピングデータが配布されているんですけど。」
疑問に思ったのかケイタが言う。
「あぁ、最前線プレイヤーの奴らは基本的にマッピングデータを公表しないからな。オレがマッピングデータをアルゴから買って下層プレイヤーに公表しているやつだからな。」
マッピングデータを情報屋で買う。
たったそれだけのことで資金が減っていくのだ。
「攻略組は基本的下に下がらないだろう。それは自分たちが攻略から遅れることが嫌なんだよ。おかげで情報を抑えることが多い。最近じゃあ下層プレイヤーに軍の奴らから狩り場まで規制をかけているらしい。」
オレはため息をつく。
「おかげさまでギルドハウスも建てられないから大変なんだよ。普通は攻略組が下層プレイヤーを助けていかないといけないのにな。」
下層プレイヤーや職人プレイヤーに感謝しないといけないのに、今や支えてくれるのが当たり前みたいに威張っている。そんな奴らを見ると本当にイラついてくる。
「ユニバース、それくらいにな。」
「あぁ、悪い取り乱した。」
オレはちょうど出てきたドリンクを煽る。アオリンゴに似た爽やかな味が喉を潤した。
「それで、レベル上げは順調なの?」
「あぁ、一応順調だと思う。レベルは教えてもらったけどもう攻略組をレベル制限には追いつけるくらいな。だけど疲れがちょっと見始めているイメージがあるから明日は休んだ方が良さそうだな。」
するとケイタたちは少し驚いたようにしている。
「ふーん。なら私たちも休もうか。キリトくん。」
手を伸ばして背伸びをするアスナ。
「えっ。でもマッピングが。」
「キリトくん。最近私たちも休んでないし、ちょっと休んだ方がいいと思うの。なんだか焦っているような気がする。」
するとキリトもハッとしたようにして少し考える。そして
「そうだな。じゃあ、オレも休んでいいか?」
「あぁ、別にいいぞ。少しくらい気分転換してこい。どうせオレも休むつもりだし。久しぶりに下層の飯屋でも回ろうかな。」
「じゃあ、キリトくん明日買い物に付き合ってよ。」
「えっと、」
「おい、流石に後からにしろ。」
オレはアスナに苦笑してしまう。最初は攻略のことでいっぱいいっぱいだったのがいつの間にか明るくなった。キリトも自然と笑う機会は多くなっているし何よりもまだ生きている。
「ということでオレたちは休むつもりだけど、そっちはどうする?」
「そういえば、レベル上げに夢中だったし、オレたちも休もうか。」
すると月夜の黒猫団からも歓声が聞こえる。
久しぶりの休みってことで喜んでいる。
ただサチだけを除いたら。
その夜、ケイタからメッセージが届いた。
サチがいなくなった。
簡潔な文なだけオレは焦る。それはケイタ達も同じだったらしく迷宮区に探しに行くと言い出したのだ。
だけどオレは冷静だった。
「オレが追跡スキルを持っているから探してくるよ。サチのレベル的に一人じゃ迷宮区には行けないし、ちょっと会いに行ってくる。ケイタ達は部屋に待っていてくれないか?」
オレが追跡スキルを持っていることはメンバーに伝えていた。それを言うとハッとしたようにオレを見る。オレはサチの部屋で追跡スキルを使い薄緑色の足跡を追う。すると主街区の外れにある水路の中に反応があった。
オレは隠蔽スキルは持っていないので素直に入るとカツンカツンと足音がなる。するとその音に反応したのか座っている少女が目に入った。
「……よう。隣座っていいか?」
声をかけると、びっくりしたように呟いた。
「ユニバース……どうしてこんな場所がわかったの?」
「スキルでサチを探しにきた。他のみんなは今は宿屋で待機するように言ってある。」
オレはサチの隣に座る。互いに無言のまま時間だけが経過する。
「ねぇ。ユニバース。一緒にどっか逃げよ」
オレはサチと言う少女を理解してなかった。
「それって、この世界からってことか」
「……うん。月夜の黒猫団のみんなから、モンスターから、SAOから」
オレは少し考える。
「…オレだって逃げたいな。この世界から。」
オレはサチの気持ちが分かった。オレは10層に到達したあと三回赤のゲージまで体力が落ちた。その時の恐怖はかなり厳しかった。
「…でも、キリトとアスナ。そしてサチ達を守らなくちゃいけないから。」
オレはだからこそ、サチの言葉を断った。
「……ごめん。意地悪なこといっちゃったね。」
「意地悪なんかじゃない。オレだって本心は逃げたいんだから。」
オレだって本心は逃げたいに決まっていた。だけど、オレについてきてくれたキリトとアスナ、アルゴそして、月夜の黒猫団のみんなを裏切りたくなかった。
「…私、死ぬの怖い。怖くて、この頃あんまり眠れないの。」
サチはポツリと呟いた。
「…ねぇ、何でこんなことになっちゃたの、なんでこのゲームの中から出られないの? 本当に死ななきゃいけないの? あの茅場って人の言っている事は本当なの?……こんな事に何の意味があるの……?」
「オレもわからないな。」
オレはサチの望むべき答えを答えられなかった。
「たぶん、誰も本当の理由はわからない。だから、理由を聞きたくてずっと攻略組にいる人もいると思う。」
オレの予想はたぶん外れているだろう。でも、オレがサチにいえる一言だった。
「でも、オレにとってはこの世界にとらわれた意味はあったと思ってる。」
オレはサチの方を見て
「リアルじゃオレは天涯孤独の身なんだよ。」
「えっ?」
マナー違反だけどオレはリアルのことを話し始めた。
「両親は離婚、そして母方に引き取られたんだけど母さんは事故で死んだ。んでしばらくはじいさんと婆さんの家にお世話になっていたんだよ。でも結局末期の癌で二人とも死んじゃってオレはずっと施設で暮らしていたんだよ。」
オレはため息をつく。
「んでいつの間にか学校にも行かなくなって、ゲームや昔から習っていた剣道にばっかりのめり込んだ。んで去年の夏に初めて剣道で全国一位になった。だけど、オレのことを喜んでくれる人はなかったんだ。」
オレが頂点に立ったときオレは初めてリアルの孤独なことを知った。友達や部活仲間がいる。準優勝者に試合に勝って勝負に負けたような。いや、絶対そうだったのだろう。
「ずっと友達も家族もいない。そんな中で、茅場晶彦からオレはこのゲームを貰った。」
サチがオレの方を見る。茅場晶彦に現実世界で会っていたと言うことはだれにも話していなかった。
「多分、茅場晶彦の目的にオレも含んでいるんだろう。多分このスキルもな。」
オレはステータスを可視モードにしてサチに見せる。基本的に最前線のスキルばっかりだが一番下の文字を指指す。
「エクストラスキル、急成長。ステータスの伸び幅、パーティーメンバーの経験値の増加、そして全スキルの熟練度の上昇効率アップ。」
「……それって私たちのレベルやスキルの熟練度の効率がよかったのは。」
「全部オレのスキルのせいだよ。25層のボス攻略時から急に現れたスキル。たぶんラストアタックボーナスだったんだろうな。」
普通だったら二週間で狩り場を8つ上げることはそうそうできない。
「んでオレはこのスキルを使って攻略組を増やそうとしたんだ。アスナとキリトも賛同してくれて、だけど他の大型ギルドに邪魔された。最前線プレイヤーのレベルを上げることが優先だろうって言うくだらない理由でな。」
オレはKoBの副団長の男と聖竜連合連中に止められた時のことを思い出す。
「オレはその時に生きている意味を考えた。攻略も何もかもおろそかにしてな。飲まず食わずでいつの間にか二週間が経っていた。その間ずっと支えてくれたのがあいつらだ。」
キリトとアスナはずっとこもりぱなしのオレの世話をしてくれた。あの後もオレをギルドリーダーとして、そして一人の仲間としてずっと支えてくれた。
「なんか、オレにとって初めて生きているって実感したんだよ。心配されることなんて初めてだったから。だからこの世界でオレはずっとあいつらを守る。こんなオレを心配してくれたんだからな。」
オレは苦笑する。
「月夜の黒猫団はオレが守るさ。オレの前にいる限りはな。だからサチは死なない。絶対死なせはしないさ。キミのことはオレが守る。」
オレはサチの頭を撫でる。
「サチは死なない。オレが守るさ。」
「……ほんとに?ほんとに私は死なずに済むの?いつか現実に戻れるの?」
「あぁ。でも我慢はするなよ。いつでも気分転換に付き合ったりや不安は聞いてやるしな。」
するとサチがにじり寄り、オレの左肩に寄り添い、少しだけ泣いた。