「ちょろっとー、あんた大丈夫?」
一万円を飲み込まれたのを見かねた茶髪の少女が球磨川に話しかける。
『・・・』
少女の問いに球磨川は答えなかった。
しかし、少女は気にせず告げる。
「残念な事にこいつから金を取り戻すのは不可能よ。だけどいい事教えたげるわ。」
少女はそう言うとトントンとまるでボクサーのようなステップを刻むと
「チェイサー!!!」
勢いよく自販機に蹴りを叩き込んだ。すると自販機は危なげな音を辺りに響かせながらもガコンッと缶ジュースを吐き出した。
少女の言ういい事とはこれの事だろう。
『えっと、それマジ…?』
思わず球磨川の口は驚愕と疑問を呟いていた。
「何よ、あんたお嬢様に夢見すぎよ?これくらいフツーよフツー。」
『嘘だ!!!僕は君みたいなのをお嬢様だなんて認めないし思ってない。』
「…ま、私も自分がお嬢様ってタチじゃないのは分かってるからいいけどさ、常盤台の制服着てるとよくそう思われるのよ」
『…常盤台?』
球磨川の知らない単語がでてきた。しかし、その常盤台の制服には見覚えがある。白井黒子が着ていたものだ。
「あんた常盤台を知らないってどういうことよ」
少女はあまりの球磨川の無知さに呆れる。学園都市にいる以上、頂点上記と常盤台を知らないなんてありえない。いや、学園都市の外でだって知る者は知る学び舎なのはずだ。
『あはは、実は僕一昨日ここに転校してきたばっかりなんだ。』
「えっと、あんた中学生よね?」
『ん?高3だけど?』
「へー、高3ね…って高3!?」
『おいおい』『いくら僕が童顔だからってその反応は失礼だぜ』
「い、いや、それもそうだけど、そうじゃないわよ!」
確かに見た目中学生な球磨川が高校生、しかも3年という事にも驚いた少女だが、もっと驚くことがあった。
遅すぎるのだ。普通、能力開発とは早ければ幼稚園、遅くても小学生でやるもので球磨川のようにある程度脳が完成しきっている者にやるものではない。完成されているといっても球磨川の場合は負完成なのだが…。とにかく球磨川の歳のころは能力の上昇さえ難しい時期であり開発なんてとてもじゃないが出来ないだろう。
「あんたよく来たわね」
『前いた学校が廃校になってね。』『どうせならと思ってさ』『それにここでやりたい事もあったしね。』
「やりたいこと…ね。」
この男やりたい事とは何だろうか。何故だかその事について考えるとゾクリと何かが背筋を伝っているような気持ち悪さを覚える。
まるで良いも悪いもごった混ぜにしてめちゃくちゃなってしまうような危機感。もしかしたら自分を支えてるものを━━━
『そんなことよりさ』
「ッ!」
球磨川に話かけられ少女ははっとした。今、自分は何を考えていたんだろうか?こんな貧弱そうな男に何を感じていたのだろう。高3で能力開発をしようとする馬鹿にだ。少女はなんだか恥ずかしくなってしまった。
「な、なによ」
『白井黒子ちゃんって知ってる?』
「って黒子?あたしの後輩だけど?それがなに」
まさかこの男の口から後輩の名前が出てくるとは思ってなかった少女ー御坂美琴は怪訝な表情を浮かべる。
『そう、君の後輩』『白井黒子の身を預かっている』『これから伝えるいくつかの事をやってくれたら無事に彼女を解放しよう』
「は?」
あまりに唐突なことを言われた美琴は言葉を失った。しかし、聡明な彼女の頭は言われた事を理解するのに時間はかからず、理解してしまえば怒りが追いついてきた。
「あんた!!何のつもりよ!黒子をいったいどうしたの!」
『彼女の身柄の安全は保証するよ』『君が大人しく言うことを聞けばね』
「ふーん。あんた私がlevel5の超電磁砲の御坂美琴様だって分かってて言ってるわけ?」
『勿論』
勿論、球磨川は知らなかった。
「じゃあ、あんたが黒焦げになるのも覚悟してきたわけよね!!」
彼女がそう言うと球磨川の足の先に雷が落ちる。
『おいおい冷静になれよ。』
「分かってるわよ!あんた1人を倒したって黒子が解放されないくらい!組織かグループで計画してるんでしょ。でもこ!れ!は私の八つ当たりと知りなさい!」
『冗談だって、嘘。さっき言ったことは嘘だよ』
「は?」
美琴の呆けた声をあげ、纏っていた稲妻と気が抜ける。
『ごめんごめん笑』 『名前すら御坂ちゃんが言うまで知らなかったぜ』『それより君、本当にlevel5なのかい!?』
凄い凄いとはしゃぐ球磨川は美琴がいままで接してきた後輩やミーハーなファンの姿とおなじで、
「ほんとに?ほんとに冗談だったの?」
『なんなら白井ちゃんに電話してみなよ』
あっけからんと球磨川が言い放つのを見て今度こそ美琴は力を抜いた。
「あんたねぇ、言っていい事と悪いことがあるでしょ!てか何で黒子のこと知ってるのよ。」
『白井ちゃんには迷惑を掛けられてね。』『同じ制服だしもしかしたら知り合いかなって?思って』
「八つ当たりって訳!?」
『おっと八つ当たりしようとしたのは御坂ちゃんも一緒じゃないか』
「私のとあんたのは違うでしょうが!」
全くなんて暴論だろうか、犯人の仲間に怒るのと赤の他人に怒るのとでは訳が違うと美琴は思った。
それに黒子が迷惑を掛けるとは何をしたんだろうか。
その事について美琴が聞こうとしたとき、
『それにしても』『あんな冗談を直ぐに信じるなんて』
『御坂ちゃんの周りには
球磨川禊は
果たして御坂美琴の敵なのだろうか味方なのだろうか。
はたまた球磨川の言うそれ以外の存在なのだろうか。
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