とある過負荷の禁書目録   作:なっち様

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第5話

『あははははは』『なんちゃってー』『ちょっとシリアスな雰囲気出しただけだよ」

 

「はあ!?アンタいい加減にしなさいよね!」

 

 なんなんだこの男はここまで私を馬鹿にする奴なんて今までいなかったと、美琴は怒りの中にある種の新鮮さを感じていた。

 

 (年上の余裕ってことかしら?)

 

『ごめんごめん』『お詫びにこれ上げるから』

 

 球磨川は自販機の取り出しから何の缶を手に取ったか見すらせず美琴に手渡す。

 美琴は反射的に受け取ろうとして缶を持つ球磨川の手に生理的嫌悪感を感じ缶を落としてしまう。

 

『大丈夫?』

 

「え、ええ。

というかアンタこれ元は私が出したやつじゃないの!

しかも、いちごおでん味だし」

 

 美琴がしゃがんで缶を拾い上げた、どうやら球磨川が適当に掴んだのは『大外れ』だったらしい。

 その缶を微妙な顔で持ち上げる美琴、お嬢様気質の彼女は開けもせずにそのままゴミ箱に入れるというのにどうやら忌避感を感じるらしい。

 

「アンタこれ飲みなさい」

 

 最終的に球磨川に飲ませるという解決を見つけることに成功した。

 自分で飲むという考えは最初からない、『いちごおでん』は『ガラナ青汁』と対をなし、彼女をして二大地獄と言わしめるまずさだからだ。

 

『ええ~』『名前からして地雷じゃんそれ』

 

「いいから飲む飲む、散々私を揶揄ったんだからこれくらいしなさいよね」

 

『はあ』『わかったよ』

 

 そう言い美琴から缶を受け取る球磨川、美琴はまた缶を落としそうになるのを必死に耐え無事渡すことができた。

 いつも逃げていく猫たちもこんな感じなのかと身を持って体験した美琴は自分が嫌われるのもしょうがないと思った。

 缶を受けとった球磨川はためらうことなく一気にそれを飲み干す。

 さすがの美琴も驚いた。

 

「ちょっちょ、別にイッキしろとまでは言ってないわよ」

 

『?嫌な事は早く終わらせるもんだぜ』

 

 うげーと、いつも笑顔の球磨川でさえ『いちごおでん』の味の凶暴さには眉をひそめた。

 だが過負荷基準でいけば全然耐えれるものだ、まだ飲み物としての機能が残ってるのだから。

 泥水を啜り、ガソリンの味が一般教養な過負荷たちが美琴がこの程度を地獄と言ってるのを聞いたら抱腹絶倒だ。

 

 だからといって球磨川はガソリンよりましだから余裕とは言わない。

 余裕でもないし耐えられないけどそれを体験してきたから過負荷なのだ。

 他人より駄目で弱いのに他人より惨めで不幸なのが過負荷と呼ばれる彼らの共通点だ。

 

「アンタ変わってるわね」

 

 美琴は自分で言っておいて何を今更と思った。

 レベル5は不本意ながら変人の集まりと呼ばれるが、変人度合いで言えば球磨川もレベル5入り間違いないだろう。

 そのことを美琴はこの短い時間で嫌というほど感じた。

 

『僕は普通(ノーマル)ではないからね』

 

「そうね、アンタは異常っていうのよ」

 

『おいおい僕をそんなプラスなものと一緒にしないでくれ』『僕はただの過負荷(マイナス)だよ』

 

「は?マイナス?何よそれ、ちゃんと分かる言葉で話しなさいよね」

 

『御坂ちゃんはまだ知らなくていいことだよ』

 

 質問に答えず括弧つけて話す球磨川を見て美琴は先ほどの評価を改めた。

 

(こいつ完全に中二病だ)

 

 先ほどは年上の余裕を少しとはいえ感じたというのに、高校三年生には見えない童顔もあいまって、今では思春期の痛々しい男だ。

 おおかた自分をレベル5と知って興奮しているのだろうと美琴は思った。

 そう考えれば意味深な発言や『いちごおでん』のイッキ飲みはただのカッコつけなのだろうと美琴は思った。

 自分が感じたあの悪寒に目を背けて、考えないようにして、臭いものに蓋をして。

 

「あんたさ、もし私と勝負しようとか思ってるならやめておきなさい、高3で奇跡的に能力開発に成功したのかもしれないけどそんな付け焼刃でどうにかなるほどレベル5って看板は安くないの。

あんたが逆立ちしてやっと私を一歩動かせるくらいよ」

 

 初めて能力を手に入れた者が最初にすることと言えば腕試しだろう、美琴は球磨川もそうなのではないかと思った。

 能力を手に入れたことによる全能感が球磨川の中二病を発病させたのだと。

 美琴自身かなりの戦闘狂(バトルジャンキー)なのだが、だからといって能力を手に入れて舞い上がってるひよっこもひよっこの初心者(ルーキー)をいたぶるのは趣味ではない。

 だが、美琴のこの考えは否定されることになる。

 

『まっさかー!』『僕ほど身の程をわきまえた人間はいないぜ?』『逆立ちしたところで御坂ちゃんを一歩動かすどころかそのまま転倒して再起不能(リタイア)がオチだぜ』

 

「そ、そう」

 

 ここまで自分を卑下するとは美琴も思わなかった。

 

『でも』

 

「でも?」

 

『もしかしたら愛とか勇気で僕の真の力が覚醒するかも』『しれない』『よねっ!』

 

「!?」

 

 不意打ち。

 いつの間にか握っていた螺子を御坂の顔面目掛けてねじ込んだ。

 しかし、周囲に張り巡らせた電磁波による目視よりも早い接近の把握で美琴はそれをすんでのところで躱した。

 

「言っても聞かないか、しかし、いきなり反則技(アウトレイジ)とはね」

 

 通常、勝負に死の危険がある技を持ち込むことは禁止されている、というか普通そこまでやる者はいない。

 『死合い(デスマッチ)』と呼ばれる危険な喧嘩行為をする集団がスキルアウトの連中にはいるらしいがそこだって死者が出たことはない。

 今の行為だって、美琴じゃなかったら最悪死んでいたかもしれない。

 

「ちょっと痛い目見てもらう必要があるみたいね」

 

 バチバチと周囲に目に見えるほどの電撃をまとう美琴。

 

『逆立ちどころか不意打ちまでしたのに』『一歩も動かすことができないなんて』『あーあ』『また勝てなかった』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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