掻き合いものが多すぎる
過負荷を知る人間にとってそれらと闘おうとすることは愚の骨頂として常識だ。意思で心と体を奮い立たせ宇宙飛行士が無重力訓練をするかのように自身へ過負荷への耐性をつけて、やっとスタートラインに立ったと言える。普通そこまでするメリットはない。関わり合いにならないというのが一番良くて、しいて言うならそれが過負荷との闘いといえるだろう。
だが愚の骨頂の真骨頂にして『過負荷の頂点』である球磨川禊はそんな小さな闘いとすらいえるそれすらも台無しにする。球磨川との初対面は大抵の場合、球磨川の方からやってくる。数多の転校しかり、本質的に問題の中心を探っていくと球磨川がいる。球磨川がおとなしく
つまり勝負は――
『きゅう』
球磨川の負けだ。
「あっけな!いくら何でも弱すぎるわよアンタ!」
御坂は目の前で目を回し倒れる球磨川を指さして言った。
「よく私に喧嘩売ろうと思ったわね」
喧嘩を売ってくる何かしらの自信があるのかと思い、警戒はせずともそれなりに気にしていた御坂にとって、たったの一撃、しかも様子見のつもりでだした、で地に付した球磨川には肩透かしもいいところだ。むしろ弱い者いじめをしてしまった気にさえなってくる。
『あたた』『完敗だよ』
制服のあちこちを焦がしいまだにプスプスと煙を上げる制服はかなりの出力で出されたことを示してた。それを
様子見で出せる御坂がおかしいのだ。
「ま、アイツみたいに能力が効かない無能力者なんてのが異常ってことよね」
おかげで感覚狂うわ、とぶつぶつと御坂がつぶやいているところに球磨川が頭を上げた、その顔はどこか不満げで勝負に負けたからかと御坂は思ったが、
『御坂ちゃん』
「あによ?」
『スカートの下が短パンていうのは』『卑怯だと思うんだ』
ピシリ、と空気が凍った。
あれからもう一発電撃をお見舞いされて完全にダウンした球磨川はそのまま放置され気が付いたら外は暗く時間帯は真夜中になっていた。とはいえ学生の街だ、その若さを動力に深夜を超えても活動するようなエネルギッシュな若者たちが溢れ街はいまだ活気づいていた。眠らない街『学園都市』は今日も平常運行だった。
夏休みが近いということでこれでも少ない方だというのだから球磨川には衝撃的だ。ちなみになぜ夏休みが近いと人が少なくなるのかは学生の憎き怨敵『期末テスト』が立ちはばかるからだ。
どうせならテストが終わってから転校したかった球磨川がとある人物を恨んでいるとパタリと目の間で人が倒れた。
『うん?』
倒れたのは高校生くらいの年頃の男子だった。突然に電池が切れたように倒れた男は身じろぎひとつせずコンクリートの地面に強かに体を打ち付けたままの姿勢でその姿をさらしている。
球磨川がしゃがみ込み男の息を確認すると、すぅすぅ、とまるで眠っているような呼吸が聞こえた。
「生きてるのか?」
近くで成り行きを見ていた男が球磨川に聞いた。
『呼吸もあるし』『生きてるのは間違いないと思うんだけど意識はないみたいだ』
球磨川はおい、ちょっとジャンプしてみろよ、チャリンチャリンさせてみろよと倒れた男に声をかけ
『ね?』
と声をかけた男の方へ振り向いた。
「あ、ああ」
ドン引きされていた。
男は救急車に運ばれ病院に搬送されていった。その時の救急隊員たちの言葉が球磨川の耳に残っていた。彼らは「またか」と言ったのだ。その後の動きも何処か事務的というか、勝手知ったるというかまるで、マニュアルが出来るまで同じことを繰り返しました、という感じだった。
これは学園都市に奇病でもはやっているのか!と球磨川にしては珍しくまともな考え、しかし的外れなことを考えていると彼の数多ある携帯、学園都市に来てまた増えた内の一つがバイブした。迷うことなくそれを取り出し確認する球磨川。
『あ』『佐天ちゃんからだ』
相手はいつの間にかメールアドレスの交換をしていた佐天からだった。
『球磨川さん!レベル上げる方法知りたくないですか?無能力者仲間の球磨川さんだから教えますけど、なななんと!噂のレベルアッパーをgetしちゃいました!」』
と書かれている。
『レベルアッパー?』
球磨川は首を傾げた。