ダンジョンで運命を変えるのは間違えているだろうか 作:サントン
ーーまずいことになったな。
ここはオラリオの広場前、俺はカロン。俺は今ベートと顔を見合わせている。ベートは怒っているようだ。ふむ、まあ俺のせいだから仕方ないか。
「………テメェに関わると本当にろくなことがねぇな。」
「………本当にスマン。」
俺は今珍しく緊張している。ベートも緊張している。そして俺は後悔している。
俺は間違えた。間違えてしまったんだ。俺の軽はずみな一言がまさかこんな非常事態を招きつつあるなんて………。
「………………。」
「………………。」
「ふん、小娘風情がちょっと褒められたからって調子に乗ってますね。」
「おばさんは、歳だから綺麗だとか言われたことないんだ?」
「アァン!?」
「文句あんの?」
そう、このあからさまにチンピラな感じの二人は何とリューとアイズなのだ。
二人は二人ともオラリオに四人しか存在しないレベル7。しかもその中でも実力が近く、互いにアイドルでもある。つまりはライバルなのだ!
いや、これほんとマジでシャレにならんぞ?広場でレベル7が二人も暴れたりしてしまったらここら一帯更地になってしまう。さらに二人とも風の魔法が使えるために、オラリオでは文字通り嵐が吹き荒れ、バベルは揺れて、フレイヤはカミナリ様を恐れておへそを隠すことになるだろう。
………二人に分別があると信じたい。
………ほんとに俺はなんて軽はずみなことを言ってしまったんだ。
~~~カロンの回想~~~
「カロン、今日はどこに連れていってくれますか?」
「今日はこの間の穴埋めだからな。リューが行きたい所とかあるか?」
「どこでも構いませんよ。」
「じゃあ街を見て回るか。」
◇◇◇
「これがじゃが丸君だ。これはアイズの好物なんだ。」
「ヴァレンシュタインさん?私と二人でいるのに他の女の話をするのですか!?」
「ああ、いやスマン。」
「まったく!」
「うん?あれはアイズとベートだな。」
「じゃが丸君、売り切れ………。」
「おお、久しぶりだなアイズ、ベート。」
「ヴァレンシュタインさん、ローガさん。」
「カロンとリューさん。久しぶり。」
「………久しぶりだ。」
「売り切れか。よかったら俺の分食うか?アイズは会うのは久々だが大人びて綺麗になったな。」
「ありがとう。」
「ちょっとカロン、私は綺麗だとか言ってもらったことありませんが?」
「ああ、スマン。リューはいつも見てるからついな。もう見飽きてきたくらいだよ。」
「ちょテメェバカか!!」
「は?」
~~~カロンの回想~~~
俺には女心はわからん。しかし少なくともリューには見飽きてきたはNGだったようだ。
そのあとリューは腹を立てたのか俺に怒り、アイズに冷たくあたった。アイズもアイズで歯に衣を着せない人間だから、気付いたときには広場からはじゃが丸君の屋台すら避難し、暴風雨が吹き荒れそうな気配を醸していた。今の広場には人間は当人達を除けば俺とベートしかいない。
「カロンの良さがわからない小娘が!」
「どちらかというとベートさんの方がまだいい男。」
「所詮犬ころ風情です!」
「あのでくの坊よりはマシ。」
………でくの坊か。ふむ、もともと俺のせいだし受け入れよう。
ベートも切ない目をしている。雨に打たれる子犬みたいだ。少し庇護欲がそそられる。牛乳とかを思わず与えたくなってしまう。
しかしそれは置いといて、これはどうやって止めればいいのか?
「私より弱いくせに何をいうのですか?男に見え見えの媚びを売るクソビッチが!」
「私の方が強いし。それにエルフじゃなかったらとっくに嫁き遅れてるくっさい脳筋よりはマシ。」
いや、本当にどうするんだこれ?二人のファンがこんな所を見たら絶対に
ベート、凄いガッカリしてる。俺はこいつの夢を壊してしまったんだろうか?
「ピーーーーーーーーー」
「ピーーーーーーーーー」
ふむ、ついに二人のイメージを壊さないために規制音まで入ってしまったか。
掴みかかる寸前だし、俺もそろそろ覚悟を決めようか。
「二人ともやめてくれ。俺が悪かった。謝るから何とか怒りを納めてくれないか。」
「「いや(です)。」」
「なあ、頼むよ。リューはとても綺麗だし、アイズも美しくなったからさ。俺が勘違いしてたんだよ。」
「いまさらですか?見飽きていた私に?」
「とても綺麗だよ!なあベート。」
「オ、オウ。」
「ベートさん、そんな年増が私より綺麗だとでもいうの?」
「い、いやっ、アイズの方が綺麗に決まってるだろ!」
「リ、リュー、落ち着け!ベートはあんなこと言ってるけど俺はお前の方が綺麗だと思ってるから、さ。」
「本当ですか?私の方が若いですか?」
「もちろんだよ。お前の方が若くて綺麗に決まってるさ。」
ふう、何とか落ち着いたか。
「ふう、テメェ本当にいい加減にしろよ?」
「ああ、スマン。今度からキチンと気を遣って嘘をつくことにするよ。」
「おい!!バカ!!」
「は?」
………どうやら俺は聖杯戦争でマスターにウッカリを移されたままだったらしい。つい馬鹿正直に気を遣って嘘をつくなどと言ってしまった。また喧嘩が振り返すのだろうか?
「………良く考えたらそもそもカロンがおかしなことを口走ったせいで喧嘩になったんですよね?」
「うん。私たちが喧嘩する意味、なかった。」
「ああ、その通りだ。おかげで俺はとんだとばっちりだ。」
俺はカロン、一般人だ。
俺はウッカリ自分の失言で二人のレベル7と一人のレベル6の怒りを買ってしまったようだ。一般人の俺が。どうしよう?こいつらが少し力を出せば、闘気的なサムシングだけで俺は消し飛んでしまうだろう。
「俺はそいつと関わるとろくなことがねぇからもう帰りたいんだが、アイズはどうしたい?」
「そうだね。帰ろうか、ベートさん。」
「うふふ、それではカロンは私の独り占めということでいいのですね?」
三人が一人に減った。………果たしてこれは助かったと言えるのだろうか?
良く考えたらストッパーが二人減って、加減を知らない人間が残っただけなのではないのか?
「うふふ、カロン。今からお家に帰って二人きりでタップリと女心のお勉強です。楽しみですね。」
………言葉は一見、そこまで怒ってないように思えるが、これは本気でまずい。何しろリューの表情筋が全く動いていない。ホラーだ。口元が動いていないのに、笑っている。恐すぎる。寒気しかしない。
俺は体を担がれ、運ばれる。恥ずかしいとか言ってる場合ではない!誰か助けてくれ!
「うふふふふ、カロンと二人きり。お勉強。うふふふふ。二人きり。」
た、助けてくれええぇぇぇぇ!!!
◇◇◇
家に着いた俺はあっさり解放される。?今回はお仕置きは無しなのか?どうしたというのだ?
「リュー、どうしたんだ?」
俺はおそるおそる聞いてみる。
「ハァー、良く考えたらあなたは以前からそんな性格だったと思いましてね。あなたがそんな人間だと知ってて結婚した私が、ステータスのないあなたをいたぶるのは果たして正しいのかと思ってしまいましてね。」
「俺は強制的に結婚させられたぞ?」
「………別れたいですか?」
「どうしたんだ?」
「ちょっとした自己嫌悪です。別れたければ今日のうちです。明日からは絶対に逃がしません。ただし別れたら私は次の日からずっと泣いて暮らします!それはもう、盛大に泣きわめきます!未練がましくカロンの家の近くに引っ越してきて、夜眠れなくなるほどに、近隣から騒音の苦情が来るほどに、オラリオが水没するほどに泣きわめいてやります!そして気が向いたら勝手にあなたの家に鍵を壊して力尽くで侵入して、カーテンで鼻をかんで冷蔵庫の中身をやけ食いですべて食い尽くして食いカスを散らかして冷蔵庫を開けたままにして下着を盗んで帰ります!そしてあなたの下着と再婚します!!挙げ句にリリルカさんに土下座して頼み込んで大々的な結婚式の告知を行って、私の夫は下着だとオラリオ中に知らしめてやります!!!」
「脅迫と嫌がらせとヤケクソじゃないか!?しかも内容がひど過ぎる!!アポロンでも多分そこまで考えないぞ!?自信満々にそれを言うのかよ!?」
「さあ、返答やいかに!?」
「俺が悪かったよ。俺が間違ってた。リューはとても綺麗だよ。でもとても綺麗にも関わらずそれを忘れてしまうくらい俺達はずっと一緒だったんだ。それで俺が言葉を間違えたんだ。俺が悪かったよ。」
「………本当ですか?」
「嘘じゃないさ。今から二人で一緒に女心の勉強をするんだろ?」
「そういえばそうでしたね。しかし果たしてあなたに女心が理解できるのでしょうか?敵は強大ですよ?」
「余裕さ。俺にかかれば女心なんか朝飯前さ。」
「ビックリするくらい信用できない。」
俺達は顔を見合わせて笑った。
うん、俺の思慮のない言動が俺の大好きなリューを傷付けるのなら、そんな家族を傷付ける俺を俺は倒さないといけない。
うん?………こんなに長く一緒にやってきたんだ。もうどうやっても嫌いになれるわけないだろ?
正直に言ってやれ?嫌だよ恥ずかしい。
これは断じて恋愛ではなくて、友愛だ!絶対にだ!
ツンデレ?まさかそんなわけないだろう!俺は大男だぞ?大男がツンデレとか誰が得するんだ?
………まあともかく女心は俺が今まで戦ったどんな敵よりも強敵かも知れないが、まあしぶとく戦うしか俺には出来ないしな。
さて、戦うとするか!それにしても今回の話のタイトル、ちょっとひど過ぎないか?
リューは楽しそうにニヤニヤ笑う。
「この勉強がうまくいったら、ご褒美に私のお料理を食べさせて差し上げましょう。」
「やる気がごっそりなくなるから、冗談でもそれはやめてくれ。」
不法侵入、ダメ!絶対!
騒音もいけません。
なんかこのSS、犯罪だらけですね。