「人の苦しむ姿を見るのが好きです」
「彼奴の道筋を辿って往けば見えてくるな。北欧? して、そこで何をしていると思う?」
「北欧。今、その地の王は名ばかりの勇者を集め、復活したとされている魔王討伐に向かわせているという話を小耳に挟んだが?」
「ふっ、英雄を目指すものが仮初の勇者とはな」
*
「せぇい! せぇや!(くっ! 思いのほか
曹操は槍を規則的に振り回し、バッサバッサとモンスター達を捌いていった。
「────だが! これでぇええええ!」
「ハァハァハァ、ヒューイ、ハァハァハァ、ヒューイ、ハァ、ハァハァ、ま、負け……ハァ、ヒューイ、ハァハァ」
善戦していたが、思いのほか長過ぎた連戦による体力の限界と容赦無く攻め入ってくる魔物達の数。
ここら一帯の魔物達は皆ここに集結したのでは無いのだろうか? そんな疑問が沸き起こってくる。
「何ハァハァ言ってるんですか? 勇者さん。変態ですか?」
「ええ!? 何って見てなかった? 俺今モンスターと戦ってたよなぁ!?」
「ああ、モンスターフェチ」
「ちっがうよ!」
「モンスターに殴られて興奮する系男子」
「お母さんが泣くわ!!」
「まったく、勇者さんは仕方が無いですねぇ」
ロスは「ふぅ」と、軽く溜め息を吐いた。
「やめろ! その『仕方ない子ね、でも私は見捨てないわ』的微笑みをやめろ! モンスターとの戦闘で疲労して息切れしてるんだよ!」
「戦闘? あの終盤一方的に殴られる30分間が戦闘? 何と戦ってたんですか? 自尊心?」
「俺なりに頑張ってたんだよ!!」
「いやぁ、あれを戦闘というなら洗濯機の中のTシャツも戦闘してると言えますよ」
ロスの頭の中には『ゴゥン、ゴゥン』と機械音を鳴らせてTシャツを洗濯している洗濯機の絵面が────。
「世界観守れよ!」
「フッ、自尊心も守れない人に言われたく無いですよね!」
「守ったよ自尊心!!」
「モンスター相手に日本語で謝ってたのに?」
25分前。
体力の限界だった曹操は魔物にボコ殴りにあい始めた。
涙目で血反吐を吐きながらつい口に出してしまった言葉が……。
『ゴメンナサァイ!』
「忘れて! ────そうだ! お前戦士の癖にまったく戦わなかったろ!」
「はい!」
「いい返事!?」
「まったく戦いませんでした!」
「いや……あの……できたら戦ってほしいというか……何で戦わないのかな〜とか……。一応お前って勇者をサポートする為に王から派遣された王宮戦士じゃん?」
「戦わない理由……? いくつかありますが……一番は……ボコボコにされる勇者さんを見るのが楽しかったからです」
「それ一番!?」
「人の苦しむ姿を見るのが好きです」
「何そのドヤ顔……戦士の前に人としてダメだ」
しかし次にはロスの雰囲気は先程のふざけたものとは一変した。
「それと……あなたが勇者だからです」
「!」
「正直、あの程度の雑魚なら一人で倒してもらわないと困ります」
「そうか……俺は選ばれし勇者なんだ……」
「そうです。選ばれし289人のうちの一人なんですよ!」
「そんなに選ばれてたのか!?」
ふざけた雰囲気が消え去り、シリアスが入ってきたと思った矢先これである。
「そうか、勇者さん補欠だから知らないのか」
「補欠!? 289人のさらに補欠!?」
「選んだ勇者を王の間に集めた時詰め込み過ぎて負傷者が出て75人しか旅立てなかったんですよ」
「大惨事起きてる!!」
曹操キャラ崩壊。いや、まだ追い付いたとこまで原作読んでねぇから曹操のキャラ知らんけど。