眠りから覚めた。
胸の辺りで何かがもぞもぞしている感覚がある。
視線を向けるとそこには拾った黒歌(猫)がオレの腕から逃れようと身をよじっていた。
「そういえば昨日抱きしめながら寝ちまったんだったな」
オレは黒歌(猫)を抱きしめたまま撫でて朝食をどうしようか考えていたら急遽、目の前に見覚えのあるペンダントを首から下げて着崩した着物を身にまとった金色の瞳の女の子が現れた。
黒歌(猫)が黒歌になったのか?
「は、はやく離すにゃ! 白音が見てるから!」
黒歌は顔を赤くして慌てていた。
白音とは昨日の結界の中にいた白猫の事だろうか。だとしたらおそらくあの白猫は黒歌の妹って事だよな。
黒歌がチラチラと意識を向けている方に目を向けるとそこには白猫の姿は無く、白髪金瞳の幼女が女の子座りで結界の中にいた。その白髪幼女の虚ろな金色の瞳はガッツリとオレと黒歌を映していて、しかし何をする訳でなく無表情でただオレと黒歌を眺めていた。
あの幼女が黒歌の妹の白音か……。
取り敢えずオレは腕の力を緩めて黒歌を離した。
「…………お前は一体何者にゃ?」
オレの腕から離れた黒歌は訝しげにオレを見て、そう問うてきた。
そうか、そういえばこれが初会話だったな。オレの名前なんか知らないか。
「ロスだ。一応お前の命の恩人って事になるのか?」
「にゃ、そういえば体中の傷が全部治ってるにゃ!」
……っていうか、その「にゃ」って語尾はなんなんだ? キャラ作りか?
「取り敢えず礼は言っておくにゃ。でも、お前の気配は完全に人間。追っ手はどうしたの?」
少しばかり表情は和らいだが、黒歌は未だに警戒は解いていない。
「安心しろ。追っ手はすでにオレの手の中にある。したがって、あいつらに限ってはお前ら姉妹を襲うなんて事にはならないはずだ」
「人間が……もしかして神器持ちかにゃ?」
「セイ……なんだって?」
黒歌は信じられないものを見るような顔をしてオレを見た。
オレは黒歌にセイクリッド・ギアの説明を催促し、その詳細を大まかに理解した。
特定の人間に宿る規格外の力らしい。
聖書の神ってやつが人間に与えたものらしい。歴史上の偉人の多くが神器所有者だったらしい。
「残念ながらオレは神器所有者とやらじゃない。オレが使ったのはただの魔法だ」
「……それで、ロス。なんで私を助けたの?」
「助けた理由? そんなもん簡単だ。お前がオレのペットだからだ」
黒歌は一瞬……というか、数秒放けた。
それから頭に理解が追い付いたところで騒ぎ始めた。
「なんで私が見ず知らずの男のペットになってるのにゃ!!」
「いやー、突然草むらから現れた黒猫が爪を立てて飛び込んでくるから何事かと思うだろ? 捕まえたはいいが傷だらけだったからな。可哀想だったから取り敢えず治癒魔法掛けた。その後軽くお前を見て綺麗な毛並み、金色の瞳、なにより小動物、猫だったからな。ペットにしない理由はないだろ?」
「いや意味分かんないし……。その『何言ってんだこいつ』って顔が心底腹立つにゃぁ……!」
「安心しろ。三食昼寝付きだ。散歩も自由だぞ」
「なんでもう飼ってる前提なのかにゃ! 私は認めてないにゃーーー!!」
フシャーと威嚇してきているが全然こわくない。猫の戯れとしか思えない。ほこほこするな。可愛い可愛い。
その後も色々と黒歌が騒いだが可愛いだけだった。
そして、落ち着いたのか黒歌が自分がSS級はぐれ悪魔になった経緯を語り出した。
黒歌の話を聞く限り悪魔ってのは相当どうしようもない集まりらしいな。
どうしようもない状況で契約を持ちかけて、契約を結ばせる。
その後簡単に契約を反故。
黒歌は悪魔になりたくてなった訳では無いらしい。
っていうか悪魔の駒? とかいうので悪魔は簡単に他種族を悪魔に変えることが出来るらしい。 遺伝子レベルで体を改造、弄られるので元に戻ることは現状不可能らしい。
昨日の悪魔共……説明不足だろこれ。
次会った時お仕置き確定だな。
なぜ悪魔が悪魔の駒というものを使って眷属を増やしているのか、という話になり三大勢力の話も聞いた。
悪魔、天使、堕天使で昔大きな戦争をしていたらしい。
その戦争中に二天龍がなんや、四大魔王がなんや、聖書の神がなんや、なんやなんやなんやと話を聞いて色々と理解した。
オレが知っていた世界のさらに裏側はこんなバイオレンスな出来事が起きていたのか……。
「で、白音はなんでずっとぼーっとしてんだ?」
「白音は私が主を殺した時と追っ手に殺されかけた事がショックで心を閉ざしちゃったんだにゃ……」
黒歌はピンとした耳を垂れさせ、シュンと落ち込む。
「ま、こんな幼子がそんな体験をしたらそうなるのも必然かもしれないな。しかし、自分を囮にして注意を引きつけ、妹を洞窟内に張った封印に入れ保護、ね」
「主を殺す時に力の大半を使っちゃったから白音を連れて逃げるのは難しかったにゃ」
判断としては間違ってはいなかったんじゃないか?
しかし悪魔か……ろくな事しねぇな。
「黒歌は指名手配犯だよな。元同僚の追っ手はもういいとして賞金稼ぎやらが派遣される可能性が高いよな。その都度妹の白音を守りながらこれからを生きていくのも現状じゃ難しい」
「…………なにが言いたいにゃ?」
黒歌は不機嫌になる。
まるで自分は無力、妹を満足に守れず簡単に死ぬ。と言われたようで……。
しかし本当の事、その通りだったので何も言い返せない。だからロスの言葉の真意を探る事にした。
「なに、簡単な事だ。お前ら2匹はすでにオレのペットだからなにも心配はいらないって事を言いたかっただけだ。ペットを守るのは飼い主の役目だからな(キリッ」
「いや、なんかもうアホらしくなってきたにゃ……」
ペットを訂正しようとしたが無駄だと理解したくなかったが理解して諦めた。
しかし、守ってもらえるのは好都合。
追っ手の悪魔を無傷で無力化できるほどの実力者。そんな者に味方してもらえるのだ。
姉妹二人きりでいるよりは安全だろう。
「キメ顔でそんな事良いセリフ言ってもカッコ悪いものはカッコ悪いにゃ……」
なによりロスからは邪気が感じられない。
完全には信用する訳じゃないけど、少しくらいなら信用してもいいかにゃ♪
*
取り敢えず、悪魔共にはこの場所がバレるかもしれない。
追われてる立場の場合、同じ場所に留まるのは時間が経過する毎に危険度が増す。
「それで、どこに行くのかにゃ?」
「取り敢えず人間界の王様のところに行こうかと思っている」
「王様のところ? 王様って言っても世界に複数人いるにゃ。一体どこの王様のところに行くつもり?」
どこだったかなぁ……と呟き、しばらく思考した後「あっ!」と思い出したようでロスは黒歌の質問に対して簡潔に答えた。
「北欧の王様」
パロやクロスキャラをどう絡めるか思案。