ハイスクールDxD ドS戦士ロス   作:季節夏季

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「…………あ、そ」

 ロス御一行は、シトリー領から遠く離れたところまで歩き進んだ。

 目の前のそこには農場が広がっていた。

 しかし、ところどころ街が見える。

 どうやらこの農場は主に野菜やフルーツを栽培しているようだ。

 

「ゴウセルの情報通りならあと少し我慢すれば到着するっぽいな」

 

 ロスのそのセリフに黒歌が突っ込む。

 

「それで、なんで伝説の騎士団と知り合いなのかにゃ?」

「ああ、それはなー。あれだ、昔強敵の前で色々と共闘してたんだよ」

 

 ロスは嘘は吐いていない。

 しかし、セリフの中で説明に必要かつ大事なワードを抜かしている。

 だけど黒歌はこれ以上聞いても無駄だろうと、答えてはくれないだろうと折れた。

 

「まぁ、今はそれでいいにゃん。……けど、いつかちゃんと話してね。色々と」

「…………ああ、必ず」

 

 黒歌(猫)と白音(猫)はロスのペットだ。

 おそらく黒歌はそのことを忘れているだろうが、二人? 二匹? はロスのペットだ。

 しかし、そうでなくとも黒歌はロスを信頼していた。

 まだまだ短い付き合いなのだが、黒歌はロスのことを信用に足ると判断した。

 

 確かに少し意地悪なところがあったりするが、ロスは黒歌が絶対に許せないということは一切していない。

 それにロスは猫姉妹の恩人。

 なにより人見知りの白音がロスに大変よく懐いているというのが大きなポイントだ。

 妹が信じるものを姉が信じないでどうする。という精神も若干入ってのロスへの信頼が、現在の黒歌の心境である。

 

「君たち、人間と……妖怪? と、悪魔と悪魔のような気配がするヤツ、一体ここで何をしている?」

 

 デケー男が現れた。

 

「あんたは?」

「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

 

 なんかすげーオレの声と似ている気がする。

 ……ってか、さっきからビッグネームのやつに遭遇し過ぎじゃないか?

 それはそうとして……。

 

「お前……もみあげすごいことになってるぞ……」

「ほ、ほんとにゃん……もみあげがえらい事になってるにゃ……」

「もみあげすごい癖に威圧感(プレッシャー)もすごいよこの悪魔(ヒト)……」

 

 もみあげが……すごいのだ……。

 

「でもロスだって髪の毛すごいでしょ? バリ3だにゃん」

「オレは髪質硬いんだよ」

 

 そんなオレ達の反応にサイラオーグは苦笑して、そのあとすぐに威圧的な雰囲気を出し、真面目な顔に変えて黒歌に告げる。

 

「それで、どうしてSS級はぐれ悪魔がここにいるんだ? ……黒歌」

 

 黒歌は気圧され、冷や汗をかきながらも応戦する体勢をとる。

 それを見たサイラオーグはやる気だなと、拳を構えた。

 

 それを見たルキは二人からササッと離れて二人を観戦している。

 

「はいストーップ」

「むっ!?」

「にゃ!?」

 

 そんな一触即発の空気の中、ロスは気怠げに待ったをかける。

 

「サイラオーグ、お前を話の通じる悪魔だと見込んで話がある。まぁ、このまま女と拳を合わせるよりはこっちの方が健全だろ?」

「…………」

 

 サイラオーグは少し考える素振りを見せて「分かった」と。

 

「なら、落ち着ける場所に移ろう。ここだと俺の家が近いな」

「ん。おい、ルキ、黒歌、行くぞ」

「まって〜」

「分かったにゃ」

 

 移動中、ルキが黒歌に話しかけて黒歌がルキに言葉を返す。

 言葉の応酬。雑談が繰り広げられていた。

 その様を見たサイラオーグはギョッとした表情を浮かべたが、次の瞬間には微笑ましいものを見る優しい表情を浮かべていた。

 

 そんな最中、ロスは昨日の賞金稼ぎの悪魔にメールを打っていた。

 ────早く冥界の情勢を詳しく逐一報告しろ。無視したりサボってるようだったら……分かるよな?

 送ったそばすぐにピロリン♪と着信音が鳴り、メールが返ってきた。

 ーーーー分かってます! 分かってる限り報告致します!! だから兄貴、剣で腕や足をプスプス刺すのはもうやめて下さいぃぃぃ!!

 それに対し空メールで返したらピロリン♪ピロリン♪ピロリン♪と開いてみるとメチャクチャ情報が羅列されていた。

 

「(さすがは賞金稼ぎ(ハンター)。情報の管理もお手の物ってか)」

 

 しかし、あまりにも着信音がうるさく感じたのでマナーモードにしておいた。

 

 

 

 *

 

 

 

「団長」

 

 大きな鎧の男、ゴウセルは騎士団『七つの大罪』のホーム、豚の帽子亭に戻ってきた。

 ホームの中に居るのは店長をしている団長、調理に勤しんでいるコックの悪人面の男、そしてグラスをキュッキュッと拭いているもやし体型のメガネおじさんの三人だ。

 

「おーゴウセル。帰ってきたか! で、どうだった?」

「団長の言葉通り、■■■■■■は復活していた。しかし、なぜか力は使っていなかった。理由に納得ができない。なぜ力を使わない? なぜ?」

「ゴウセルは人の心を……って無理か……」

「久しいな、団長殿」

 

 軽く鎧をまとった女がホームに瞬間で現れた。

 

「お、マーリン! 久し振りだな! 今回はどこまで行ってきたんだ?」

「人間界でイタリアンマフィアのボスと会談、そして次に冥界の辺境の英雄の国にてあの慢心姫と会談だ。さらに各神話勢力と会談、それとルーマニアの吸血鬼達と会談をしてきた。さすがの私でもかなり疲労を感じている」

 

 ふーっとマーリンは息を吐き、「エスカノール」と、もやし体型のメガネおじさんにワインを頼む。

 エスカノールは慌てながらも愛しのマーリンの為に急いでワインをグラスにつぐ。

 

「世界に鳩、蝙蝠、鴉の三大勢力がデカイ顔をしているが、実際は身を潜めている勢力の方がよっぽど注意するべきだ。久し振りに実際に会ったから分かるがあれはバグだ。人間も英雄の子孫も神も吸血鬼もみんなが強かった。あ、神神話サイドは神に付いている人間が1番光って見えたな」

「千年前、アイツが動き始めてから世界のバランスが崩れちまった────────

 

 

 

 ────────でも、アイツは言っていた。そうすることによって本来進む道より被害が最小限に抑えられる……ってな。まぁ、正確にはアイツの友達の意見なんだけど」

「そういや団ちょの言ってるアイツの友達って確か転生者(・・・)……だったっけか?」

 

 ジュ〜とフライパンから香ばしい匂いをホーム中に広げながら悪人面のバンが確認する。

 

「その認識で間違っていないぞ、バン。ちなみにその転生者はこの世界の事を混沌と称していた」

「昔はみんなでいっぱいバカやってたよなぁ。■■■■■■と一緒に行動してた時はかなぁーり楽しかったなぁ♪」

「私もそうだ。■■■■■■と共に過ごしていた日々はとても充実していた。なにせ日々未知がこちらに転がり込んでくるんだからな」

 

 団長と呼ばれている金髪の男はジョッキをドンッと音を立ててテーブルに置いて会話を途切れさせる。

 そして一言……。

 

「アイツが復活するって事はまた大きな争いが起きる。オレ達はそれに備えるぞ。────────────聖戦が再び起きないとも限らないからな」

 

 

 

 *

 

 

 

「ここだ」

 

 サイラオーグに連れられてやってきたサイラオーグの自宅。

 途中悪魔の特色について黒歌が話し始めて間違っているところをサイラオーグが訂正していくというお話があったそうな。じゃなくてあったのだ。

 

「で、でかいにゃ」

「さすが大王の家……」

「わー! おっきいー!」

 

 文字通りデカイ家がそこにはあった。

 門の入口で執事とメイド達が次期当主サイラオーグを出迎える。

 

「執事って、あいつを思い出すなぁ……」

 

 ロスは昔、全自動家事処理機────通称、お母さんをやっていたあいつを思い出す。

 それから毒舌完璧主義者のあいつ、悪魔で執事のあいつ、暗殺一家の執事のあいつ……っていうかあいつら執事の癖にキャラが濃いっ!

 と、そんなこんなで客間に通されたロス、黒歌、ルキはソファに座った。

 

「じゃあ、順を追って聞いていくぞ。まず、なぜはぐれ悪魔の黒歌が我がバアル家の領内にいるんだ?」

「目的地までの通過点を通っていたに過ぎないにゃ」

「目的地?」

「ああ、オレが行きたい場所に付いてきてもらってるんだ。だから、黒歌が領内にいたっていうのはそういうことだ」

 

 今のでサイラオーグの疑問はさらに増えた。

 

「次の質問だ。なぜ人間である君が冥界(ここ)にいる?」

「その疑問は今のオレには明確に答えることはできない」

「つまり言えない、と?」

「いや、言わないんじゃない。言えないんだよ。オレ自身なんでこんなところに来たのかまったく分かって無いんだからな」

 

 ロスははぁ……と溜め息を漏らす。

 

「まぁ、取り敢えずは信じることにしよう。それで、人間の君……ロスだったか?」

「ん」

「ロスはなぜはぐれ悪魔の黒歌を連れているんだ?」

 

 ロスはそのままストレートに伝えると誤解を生むだろうと少し伝える方法を考えてから口を開いた。

 

「黒歌、猫になってくれ」

「にゃ? なんで?」

「いいから」

「……まぁ、分かったにゃ」

 

 ぽんっと煙を出して黒歌は猫に変身した。

 ロスは黒歌(猫)を抱えてサイラオーグの前に立った。

 

「サイラオーグ」

「なんだ?」

「猫、可愛いだろ?」

 

 サイラオーグは何を言ってんだこいつという顔をしたが、取り敢えずロスが自分に見えやすく抱えている黒歌(猫)を眺めた。

 

「……確かに、可愛いな……」

「だろ? つまりはそういうことだ」

「まぁ、癒されるけどな……」

 

 もう戻っていいぞ。と、ロスの言葉に黒歌は人型に戻る。

 ロスは黒歌からサイラオーグに視線を戻して再び口を開く。

 

「サイラオーグ、お前悪魔の駒(イーヴィル・ピース)についてどう思う?」

「む? まぁ、画期的な発明だと思っている。純潔悪魔の出生率はかなり低いからな。アジュカ様の発明で転生悪魔で人口が増えつつあるし良い発明だったと思っている」

「…………あ、そ」

 

 ロスはサイラオーグの言葉に失望を覚えた。

 

 結局のところ、悪魔は悪魔ってことか。

 思考回路から違うんだからそりゃ分かり合えるはずも無いよな。

 他種族を食い物にするお前達は自分たち悪魔という種が優れていると自惚れて───────。

 いや……。

 

「黒歌、こいつにこれまでの理不尽を説明してやれ」

「………………。はぁ、分かったにゃ」

 

 黒歌は始めの方は渋っていたが、ロスの瞳を見て適当半分とかではなく、普通に本気で考えてるんだなと折れ、ロスの言う通り転生悪魔になってからのことを説明した。

 サイラオーグはその話を聞いた時、ひどく狼狽えた。

 

「そういう貴族がいるとは耳にした事はあるが、まさか黒歌の主がなぁ……」

「そーいうこと。悪魔の駒は使い方次第では他種族の尊厳を踏み躙る最低な道具ってことだな。もちろん使い手の問題ってのもあるが、とにかく開発者が悪い。アジュカ……とかいったか? 出生率が低いからって他種族を改造していい理由にはならない。幾度も自分たちの種族だけで同族を増やす努力をするべきだったな。話を聞いているだけでどれだけ他種族に恨まれて、怨まれているかが分かる」

「そ、そうか………そういう考えもあるのか………」

 

 サイラオーグが頭をグルグルと苛ませていた時、バンッ! と、扉が開かれた。

 

「サイラオーグ様! ミスラ様のご容態が!!」

「なんだって!?」

 

 突然扉を開いた従者の女は慌てた様子でサイラオーグに事を伝える。

 それを聞いたサイラオーグも従者と同様に取り乱す。

 そしてサイラオーグは従者と共にロス、黒歌、ルキを放置のまま部屋を出ていった。

 

「……ロス、どうするにゃ?」

「ここにいてもアレだしな。……つけるか? ルキは……」

 

 客間のテーブルに常備されているお菓子を一心不乱に食べていた。

 ロスは「はぁ」と溜め息を吐き、黒歌と共にサイラオーグを追い掛けた。

 

 

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