ナニカサレタ男がFEifの世界で色々するだけの物語(完結) 作:エーブリス
あ、Cルート最終回ですね。
――時は遡り、無限渓谷周辺の森…――
この約10分間で、盾チクに対する考えを改めたかもしれない。
前はただ地味で労力だけがかかる戦法だとばかり考えてた。
美しい技巧もなければダイナミックなパワーも感じない…けれども、たった300人の兵士が十万以上の敵に対し、それに似た戦法で善戦した例があるのも事実だった。
まるで敵の周囲に壁があるかの様に俺の剣は盾にことごとく弾かれていく。
その瞬間に敵は俺の身体に槍の切先を沈め込む。
おそらく俺がグレートソードなんて大振りな得物を使っていることもあって、攻撃する度に必ずどこかに傷が出来る。
しかも敵は頗るひねくれてるようで、槍自体に魔法属性が含まれているらしい。
お蔭で再生機能も必死だ、忙しさに目を回していそうだ。
「ッ…!、野郎!」
『アア”――――――ガァア”――――――』
声も見た目も機械の様なソイツは、時折悶えるような声を出す。
何かの実験兵器かと思った…何が来たっておかしくないのがこの世界の現状だ。
「クッソ…速度といい盾受けといい。
バケモンか奴は…!」
『アア”アアアアア――――――」
「そうか、言葉なんて通じなかったな。
元からいらねえんだったな!死ね!」
『ァ――――――シィ!』
「何度も効かねえ攻撃すると思うか!」
手斧を投げる要領でグレソを奴の頭目掛けて投げる。
結局頭をかち割る前に大型の盾で真横に弾き飛ばされたが作戦の内だ。
…あの瞬間、間違いなく隙が出来た。
たった一瞬の隙…回り込む余裕もないほどの隙だ。
それでも俺は真正面から突撃し、サイドから攻撃を仕掛ける。
…もっと詳しく言えば、正面に立ちつつ側面からの攻撃を繰り出す。
可笑しいと思うか?不可能と思うか?
…おいそこのガーキャン野郎、知らねえとは言わさんぞ。
「視野が狭いぜ!」
“ソレ”を逆手持ちで右→左へと振る。
普通の剣や槍なら盾に弾かれ、結局盾チクの餌食になるルートだ。
剣や槍、ならば。
コイツがシースの影響がどれだけあるか知らんが、おそらくは元々この世界の人間だったはず…ならば、これを武器として想定するのはまず無い…と思いたい。
変な理論はさておき、効果はあった。
『――――――!?』
“ソレ”――――――生命狩りの鎌はこの瞬間、間違いなく奴を攻撃した。
柄に垂直な刃は盾をかいくぐり、鎧(あるいは装甲)を抉った後、柄が盾の辺に激突した。
何処に当たったかは見えない…が、体制を右斜め下に崩した辺り、左脚を負傷したと思われる。よっしゃ来た!
踏み込みが甘ければその分、受けも緩くなる。
身が壊れんばかりのタックルを盾にぶつけ、更なる崩しを狙う。
左手で盾の縁を掴み、奴の手から引きはがす!
全体が露わになった…すかさず柄の底で顔面を突く!
そしてのけ反った瞬間!袈裟を切る!
そしてまたタックル!今度は吹っ飛んだ!
しかし奴はその先で何かにめり込む事もなければ、地面にキスをすることもなく立っていた。
まだ殺しきらんか…当然だ。
「逃がすかよ!」
『ヅ――――――ア”アアアア』
「何だ!仁王立ちのつもりか?
よく分からんが死ぬ気だな――――――ッ!」
『ガ――――――ッ!』
あんまり突然過ぎて、何も反応できなかった。
装甲が開いたと思ったら、青白い光が奴を包んでいた…としか言えない。
そして『青白い光』が何なのかは理解できた。
…ソウル魔術だ、やはりシースの手先だったか!
――――――――――――――――って、そんな事してる場合じゃ無かった。
「しまッ…!」
光は四方八方に直径約25センチの塊の群れとして射出され、あらぬ方向を進んだ後全てが俺に向かって急旋回した。
ホーミングかよ…ついてねえな!
いくら特効とて、一発で死ぬ気は無かったが…こりゃ死ねるかもな。
もう避ける暇がない。
いくら反射神経があったって、此処まで接近されたら無理だ。
反応が遅れた…ミスった。
急に、体が浮いた。
一瞬、フワッと…いきなり投げられたようだった。
ああ…逝っちまったか。こんな感覚なんだな………
いやこれ、普通に宙を浮いてねえか?
「…ッ?、ぐべっ!?」
…そして地面に大激突した。
「あら、ごめんなさいね。
少し彼が加減を間違えちゃったみたい」
「わりぃな!マーシレス!
マーナガルムになったばかりでよ!」
「王女サマ……それにフランネル」
アイツら、何でここに?
別行動してたはずじゃ…。
「何でここに?って顔してんな、マーシレス!」
「遅いと思ったら…まあ、そんな事だろうと思ったよ」
「おいおい、ヒナタまで来たのか…後なんかやさぐれてる奴「何その呼び方!どうにかならなかったの!?」」
あー…タクミ王子とは面識ほとんどない。
残念、名前も多分覚えない。
「マーシレス!無事かい?」
「ああ…黒っぽい夫婦の強引なレスキューで無事だぜ、カムイ」
「そうか。
こっちの方は終わってる、あとはあの鎧だけだ!」
「ああ、頼んだぜ…散々コケにされたんでな」
盾チク野郎にリベンジの時間だ。
数は正義、一気に押しつぶす!
「マーシレスが手こずるなんて、めずらしいねー!」
「テメエ自分の事完璧完璧言っておいて…もういいや、行くぞ!」
もう一度、生命狩りの鎌を握りしめ大地を蹴る。
靴が、足が、土を抉って俺を前に押し出す。
「…死ぬぜ、装甲野郎」
走る中で、いつでも鎌を横一文字に振りきれるように構える。
向こうも対抗して背中から二振りの大型ショーテルを抜いた。
しかし奴の敵は俺だけじゃない。
「僕達を忘れちゃ困るね…当たれ!」
タク何とかの風神弓が奴の肩を直撃する。
ついで左の二の腕を破壊し、今にも千切れそうになった。
断面は赤い血の代わりに、僅かに光る火花を散らしている。
「(あの断面…機械か)遠慮なくぶった切れるな」
どーせ金属の皮膚とコードの筋肉だ、R指定が入るわけねえ。
とはいえ、この中に流血や人体切断で動揺する戦争処女童貞は居ねえ…。
奴の左腕は壊れかけ…だが、それを思わせぬほど強くショーテルを握り締めている。
だが間違いなく何かしらの不利がある…ちょいと卑怯臭いがこれなら負ける方が難しい!
鎌のレンジに奴が入った。
予告通り横一文字に薙いで、脇腹を狙う一撃はショーテルのパリィ擬きの受けに阻まれたが次の手が無いとでも?
左手を鎌の柄から離し、一気に握り締める。
そうして掴んだ「力」を装甲野郎の顔面に打ち込んだ!
1発、2発!3発!…途中から数えてないが、炭素強化された拳骨は確かに顔の装甲を拉げていた。分かる…この感じだ、この…この…ッ!
最後は人だと鳩尾に当たる部分を精一杯殴りつけ、とどめに左手同様「力」を掴んだ右手のアッパーカットで遥か前にブッ飛ばした。
奴は今度こそ地面に背を預けた。
その上からまたがるように、マーナガルムとなったフランネルが文字通り牙をむく。
装甲の剥がれた顔を食いちぎろうと顎を開けるが、尋常でない腕力を持つあの装甲野郎はソレを両手で止めている。閉じようとする扉をどうにか開けたままにするように…
そんな時にタ何とかの弓が、奴の左腕を完膚なきまでに破壊し切断した。
いくら奴でもマーナガルムの顎を片手では抑えられない…俺だって無理だ。
限界を超えた不可のかかっている右腕をフランネルが噛み砕き、加えたまま宙へと放り投げた。壊れているとはいえ、重厚な装甲がウソのようにフワッと舞い上がる。
そこへフランネルの追撃が炸裂した。
遠投のような右ストレートが胸あたりに決まり、潔くぶっ飛んだ。
その先にある1本のごく普通の樹木。
奴はそれに背中を強く打ち付け、衝撃の慣性で磔になった。
王女サマはそのチャンスを待ってましたとばかりに駆け付け、魔竜の上から何度も斧を、奴に振り下ろした。
その斧捌きは華麗で…そして残酷、残虐だ。
まるで敵を少しづつ嬲って殺すやり方…一撃必殺の真反対に位置する殺し方。
証拠に、致命傷になる攻撃がたったの一つとして見当たらない。
『――――――ッア”!』
しかし向こうもやられるだけでは済まさない。
なくなった両腕の代わりに足で斧を受け止め、何か複雑な動きの後何処かに跳んで行った。
…あ、何処かってのは訂正。俺の目の前だ。
「迂闊だったな…!」
少し拉げた跡のある左脚に鎌の刃先を貫通させ、右脚を蹴りはらってバランスを崩した。
もう奴には力が残ってないらしく、中々立ち上がらない。
後はこちらのやりたい放題だ。
投げつけたグレートソードを拾い上げ、構える。
「…惜しかったな」
何処かで聞いた言葉の後、ゆっくりと中段に構えた剣を上段に構え直す。
ギロチンの刃が上がっていく光景を錯覚した…まあこういうの自惚れともいうんだろうが。
刹那、奴がいきなり飛び出した。
あの耐性でどうやって飛び上がったかは知らん…が、とにかく隙だらけの俺を仕留めようと飛び上がって来た――――――
――――――が、その目論見も敢え無く潰える。
王女サマが投げた投げ棒が、奴の頭に直撃。
その衝撃で頭が飛んで…
いや、頭じゃない…兜だ。
仮面と一体化した兜だった…奴の本当の顔はまだ胴体とくっ付いたまま。
(…せっかくだし、ふりおろす瞬間にでも拝んでやるか)
そう考えながら息をゆっくりと吸う。
ったく、手間取らせやがって。
剣を握る手は、力で漲らせている。
後は振り下ろすだけ…だった。
――――――だった、のに。
奴が、突然顔を挙げた。
その顔、その眼、その表情…絶対に忘れない。
なんでだよ、何でお前が敵になっているんだ… ベルカ。
” ” ” ”
遅かった。もう遅かったんだ。
振り下ろした瞬間の、極僅かで長い時間の中だったんだ。
” ” ” ”
現実をすぐには、受け入れられなかった。
あの瞬間の、悲しそうな顔が…まだ眼に焼き付いたままだった。
まるで閃光が視界を黒く焼き付ける“アレ”…それみたいにあの顔がずっとあった。
しかしいつかは真実が映る。
もう、あの悲しそうな顔は無かった。
あったのは、生気の抜けた…死んだ顔。
そして死んだ身体。
死んだんだ、ベルカは。
死んだ…殺された、殺した…俺が、俺達が。
俺達で、ベルカを殺したんだ。
俺達が彼女を集団で踏みにじったのだ…もしかすると、あの時は無抵抗を必死に訴えていたのかもしれない。
なのに俺達は…声を聴く事もせず…
「!?」
ここに来て、やっと現実が理解できた。
思わずグレートソードから手を離してしまった。
力ない彼女の身体には、それを支える術はなく倒れてしまった。
「っ…う……うそ、だ…お、お前ら、冗談キツイぜ?
よ、よくできたパーティーグッズだな…騙されちまったよ。
けど…こんな冗談、笑えねえぜ…?なあ…おい…
誰か、ドッキリばらせよ…ほら…チャンスチャンス」
だれも答えなかった。
分かってた…俺が必死に、無様に逃げてる様子は。
でも、お前らがこんな場面に出会ったらどうする?
お前は「はい、そうですか」と言って、受け入れられるのか?
おい、何か答えろよ。
聞いてんだろ…おい…言えよ、全部嘘だって…おい。
なあ…
「こんなの………こんな、の………こん、な…ッ!!」
目元に涙があふれてきているのが分かった。
やっぱり…そうなんだよな…そんなご都合はないんだよな…ッ!!!
「ウソだろ!!おい!
ベルカ!いい加減起きろよ!もう冗談じゃ済まさねえぞ!起きろ!起きろって!
この!分からず屋…!クソ!クソ!クそ!くそ!く…そが…!」
彼女の冷たい体を、何度も揺らした。
…分かってるよ、こんな事したって生き返らないなんて。
でも…
「ウソだ…死ぬな…死なないでくれ…頼むから…。
死ぬな…死なないで…嫌だ、いやだ…。
一人にしないでくれよ…なあ…」
…
赤い…赤い地面だ。
…夢であるはずだ。
あんなひどい話、現実なんかであってたまるか。
俺が何も守れなかったなんてそんな…認められない。
ウソだ、ウソなんだきっと。いいやウソだ絶対。
何も守れなかったどころか、自分たちで壊したなんて話あるわけないじゃん。
やめろよ…アイツがあんな姿に成り果てたなんて…
悪い冗談だろ?夢だよ、アレは(笑)
まっさか~、現実じゃないでしょ、俺が殺すわけないじゃん。
「マーシレス?もう朝よ」
「あ、ああ…わりイ、今行く」
ほォら、生きてる。
ウソなんだ、全部…さっきの流れ全部嘘。
なんだ?ベルカが死んだ?何言ってんのお前、不謹慎だな。
テメーが死んどけよ。
―――現在に戻る…―――
また、過ちを犯した。
俺が現実を見なかったせいだ…
「ベルカ…」
『マー…シィ…』
彼女に名を呼ばれて、急に怖くなった。
…俺の事が許せないだろうな。一度生を奪った挙句、やり直しの機会まで台無しにしたんだからさ。
どんな恨み言を言われるかなんて、想像したくなかった。
けれども、そうでなければ救われないような気がした。
俺の事を見限ってくれなければ、俺はお前の死から決別できないような気がして。
『ねぇ…」
不意に彼女が口を開く。
…その体は既に消滅しそうなのか、少しずつ薄くなってきた。
「…なんだ?」
「怪我は…ない?』
「…聞いてどうする?」
ただ一言、「お前が憎い、あの世で恨みの糧にする」と言って欲しかった。
そうすれば、絶対あきらめがつくんだと…
けど、けど…彼女は優しい、優しすぎた。
『…愛しい人を心配してるだけなのに、それは酷い…」
「ッ…」
ダメだった、荷が下りることなんてなかった。
「お前…ちょっとくらい、恨めよ。
仮にも、殺した奴なんだぞ、お前を」
「そうね…肩こりは消えたわ、あれで…』
なーんて…と、彼女らしくない冗談だった。
そらそうだろう…肩ごと切り落としたんだから、心臓の半分を。
…ソレを思い出すだけで、また涙があふれた。
悲しいし悔しいよ…後悔ばっかりがのしかかるんだから。
『ふふ…また泣いてる。
あの日の朝も、泣いてた…きっと変な夢でも見たのね」
そう言って、彼女は金属の手で涙をふき取ってくれた。
「…もう、長くないわ。私…』
「そんな…!」
『ごめんなさいね、散々言ってた私の方が…死んでしまうなんて…」
「…俺は、お前にまだ謝ってすらいない」
「気にしないでいいの…別に…貴方が悪いわけじゃ無い。
…少し、無理を言うようだけど…いい?」
「ああ…」
もう彼女が消えかかっている。
本当に時間が無い。
「…生きて。
そして、私の事なんて…――――――」
最後まで、聞き取れなかった。
彼女がいえなかったのか、俺が聞かなかったのか…もう分からない。
彼女はもう、消えてしまった。
もう二度とあの美しい表情を見ることは無い。
無くした物はそれだけじゃない、気が付けばすべてを失っていた。
…誰もいない荒野で、声を上げて泣いた。
ずっと、身体中の水分血液を出し尽くすまで、ずっと…ただ彼女が最後にいた場所に縋りつき、泣いた。
泣いた。ずっと。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「もしかして、これ…」
Dルート、反撃準備。