ナニカサレタ男がFEifの世界で色々するだけの物語(完結) 作:エーブリス
という訳で今回は予告通り三人称です。
そうでないとパルパルの話は書ける気しなかった。
身体に水か氷か、青い流動体を奔らせるそのボディ。
シルエットは、言うなれば『異形の人型』。手足こそ2本ずつ…だが人で言う腹に当たる部分は異常に細く、そして腕と肩はあらゆる武装で人のソレとはかけ離れていた。
そんな人型の異形…パルヴァライザーの姿を見てカムイ達が思い浮かべたのは、七重の塔に現れた鋼鉄の竜――――プレデターとスカベンジャー。
確かに、どちらも機械だ。
けれど…今、目の前に立つパルヴァライザーは、彼らにあの二匹との格の違いを直立不動のまま知らしめた。
…それは神々しさとも言える。
カムイ達は困惑を極めていた。
ただでさえ、行方不明だったギュンターとタクミが共に彼らに刃を向け尚且つギュンターに至っては自らをあの「ハイドラ」と名乗る始末。
その追い打ちがパルヴァライザーの来襲なのだ。
最早彼らの指揮系統は、少しずつ確実に混沌の渦へと向かっていた。
「機械の…!?」
「ハイドラは…あんなものを――――――ッ!?」
アクアが言いかけた途端、ギュンター――――――ハイドラの背後に無数の透魔兵が召喚された。
…しかしそんな軍勢を召喚していても、何故かハイドラに邪悪で余裕な表情は無かった。
それは予測を大きく超えた“未知”との遭遇を果たしたような顔だった。
「…なんなのだ、アレは!」
その一言に、カムイ達も事情を察する。
「まさか…ハイドラの差し金じゃないのか?」
「だとしたら、あの人型は一体―――――――――――――――――――――」
それはあまりに突然で、誰もが反応すらできずに現象を受け入れてしまった。
突然、何かを焦がすような音と共に周囲が眩い光に包まれた。
いや…正確にはハイドラの背後、透魔兵の軍勢が光に覆われた…と言うべきか。
その光が消える頃には、透魔兵は跡形もなくなり焦げた大地だけが残った。
「なッ…!?」
「何が…いったい」
「七重の塔の個体なんかの比じゃない…!」
「バカな!?
ちィ!、ええい!殺せ、全て殺し尽くせ!」
手駒たちの、あまりの呆気なさに激昂したハイドラは更なる軍勢を召喚し無差別攻撃を指示!
そう、パルヴァライザーだけでない…カムイ達も、いや、生きとし生けるものそうでないモノ全ての破壊を命じたのだ!
「不味い、透魔兵が!」
「分かってる!
皆、構えろ!」
カムイの指示に、皆それぞれの得物を握り締める。
地平より透魔の兵。宙より粉砕者。
混乱、混戦、乱戦…。
カオスを現す文字を多く使い、表現できるのが今の戦場。
無数にいる透魔兵の数だけの、無尽蔵の矢がパルヴァライザーのいる空中へ放たれた。
多くはパルヴァライザーに近づく事すらせずに落ちていく。
運よく目標へと進んだ矢も、その鋼鉄の装甲…いや、それ以前にエネルギーバリアを撃ち破ることなく弾かれた。
報復攻撃は、より強く、より当たり、より速いハイアクトミサイルの雨。
多くの弓兵がミサイルの爆風に消され、余波で吹き飛崖の下へと消えていく透魔兵が大勢いた。
パルヴァライザーはその様子をただ無情に見つめている。
元より情など無いのだが。
再度ブースターを吹かして他の透魔兵をレーザーブレードで薙ぎ払う!
最早斬るのではなく蒸発させると言った感覚が正しいのか…極光の彫刻に触れたモノはその場に居なかった様に消え、残る残骸は赤熱していた。
それだけでは効率が悪いと判断すると、肩のキャノンを構えた。
銃身が5つ束ねられた異様な巨砲―――5連装HEATキャノンを透魔の軍勢の中央に向け、トリガーを引いた!
4つの銃身が、それぞれ順序を護り火を噴く!
太い弾頭は、着弾地点を爆発で包んだ!
カオスに爆発というカオスを投下され、中世の戦争らしき人混みによる混沌は鳴りを潜めてしまった。
魔法の様な化学による一方的な蹂躙は、知恵の竜の眷属とて逆らえなかった。
それでも1割すら倒してない。
そしてその全てがパルヴァライザーを狙っているワケでもない。
生身の兵士達が、鋼を…魔法を…武器をぶつけ合い、生き延びながらも泥臭い戦場にむせて血反吐を吐く。
「数の割に…攻めが激しくない?」
「あの人型機械に力を入れているのだろう。
…ッ!、避けろカムイ!」
「何―――――――――――――――――――――え?」
一瞬、凄まじい速度の何かがカムイを掠めた。
カムイとリョウマは風圧から、ソレが放たれた方角を割り出しそちらを振り向く。
…ソレは神器の矢、放ったのは他でもないタクミだった。
「タクミ…お前…!」
「…タクミを早く止めないと危険だ。
分かるな?心を鬼にするんだ!」
「…分かった、リョウマ兄さん!」
「行くぞ!」
カムイとリョウマは、亜光速の矢を放つタクミへと突撃した。
タクミの…彼の眼は禍々しさを感じる紫に染まり、それは正気の欠如を感じさせた。
迫る彼らをただ棒立ちで眺める彼ではない。
眼と同じく禍々しさを放つ弓を構え、放たれた矢は二人の目の前に炸裂する。
この射撃は牽制、まだ殺すつもりはないらしい。
しかし両者とも止まる気配などなく、むしろ速度を上げていく。
ならば…と、もう一度矢を番え今度は殺す気で放つ。
バシュウッ!と、矢にあるべきでない音を放ちながら空を切る。
それらをリョウマは居合で全て打ち落とし、カムイも夜刀神を盾にして防いだ。
「カムイ!俺が先行して道を切り開く!」
「そんな!僕はまだ…!」
「2人で必死に矢を切ってもッ!、消耗していずれ力尽きる!
俺がタクミを引き付ける…カムイ、お前が目を覚まさせるんだ!!」
「あの矢を受けきるなんて、そんな事…」
「そんな事などが道理ならば、俺の無理でこじ開けて見せるさ…行け!」
「…うん!」
カムイは明後日の方向に走り出した。
まるで逃げ出したように見える彼にタクミは狙いをつける。
光る弦を引き絞る…だが、易々と狙える彼ではなかった。
タクミの目と鼻の先に
「俺のきょうだいでもあるのだ…これ以上は!」
リョウマは俊敏さを最大限に出し切り、真正面から矢の雨に立ちむかう!
斬撃と雷撃が奔る矢を叩き落とす!
その姿は、阿修羅ですら凌駕する!
「おおおおおおおおおオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
修羅の国を轟かす咆哮!
それは彼の剣技により一層の力を与え、矢を叩き落とすどころか時折跳ね返していた!
だからとて、容易く斬り倒される程今のタクミは甘くない。
27つもの矢を同時に放ち、それら全てにホーミングの力を持たせた。
「何!?だがぁ!」
そんな絶望的な光景を前にしても、前進を止めないリョウマ。
この絶望すら霞むほどの『絶望的』に諦めの悪い彼が、それしきで立ち止まるハズが無いのだ!
打ち落とすべき矢は全て弾き、それ以外は敢えて“受ける”。
肩に、脛に…様々な場所に矢が突き刺さる!
足に矢を受け、失速してしまった――その時だった。
「目を覚ましてくれ!タクミぃぃぃぃ!」
いつの間にか側面に回り込んでいたカムイは、タクミとはそう離れていなかった!
何をどうしても確実に刃の当たる距離!
カムイは、“柄の底”を思い切りタクミに振り下ろした。
…しかし、その甘さが未熟なカムイに危機的状況にさせ、タクミにカムイ殺害のチャンスを与えてしまった。
確かに柄の底は直撃した…しかし、威力が十分ではなかった。
何処かで躊躇し、握りを緩めてしまったのしれない。
その緩みがショックアブソーバーとなり、気絶するほどの一撃を生み出せなかった。
至近距離で絞られる弦。
その鏃はカムイの脳天をまっすぐに指していた!
―――――――――――――――――――――彼が、死を覚悟した瞬間だった。
突然タクミが、矛先を変えた。
何か自分に迫る危機を感じ、そちらの方角へ素早く矢を放った!
…放ってしまった。
あろうことか、矢が飛び去った先はパルヴァライザー。
その矢は、エネルギーシールドをぶち破り、装甲に極軽度の傷を負わせた。
終わりが、始まった。
パルヴァライザーはタクミは『今一番に倒すべき障害』と判断し、レーザーキャノンで狙い撃った!
それをタクミならば間一髪避けれたかもしれない。
しかし、タクミは避けるより先に、目の前のカムイを押し飛ばした。
「え…?」
分かりやすく言うと、【庇った】。
寸での所でカムイは直撃を避け、遅れて回避したタクミは右腕にレーザーを受けてしまった!
「タクミ!」
リョウマが彼の名を叫ぶ頃には、着弾時の煙は晴れていた。
…右腕と両足が消えてなくなっていた。
容赦なく、一瞬で詰め寄るパルヴァライザー。
肘関節を曲げ、そこからレーザーブレードを展開した!
その刃先はタクミに向けられている。
逃げられない…カムイとリョウマが助けに向かうが、もう間に合う距離などではなかった。
それを悟ったのか、眼の禍々しさに薄れが来たタクミが、彼らに顔を向けて、何かを言葉で伝えようとしていた。
――――――――――――極光は、タクミを飲み込んだ。
次回でマーシレス視点に戻ります。