ナニカサレタ男がFEifの世界で色々するだけの物語(完結) 作:エーブリス
「――――――――――――はッ!!?」
この世の道理が通じぬ異空間から、どうにか戻って来れた。
先ほどまで可笑しくなりそうだったのがウソみたいだ。
頭の違和感を拭う為、左手を額にかざす。
…左手が視界に入った時、再び記憶が呼び覚まされた。
訳の分からない、気食の悪い、その類いの罵詈雑言を並べればキリがないグロテスクな腕。まさか俺の腕じゃ…いや、俺の腕である他ない
「ウソだ…ろ…?」
恐怖、というか、嫌悪。
ただひたすらにソレが自分の身体である事が受け入れられない…そんな感覚は強化人間となって以来何時だって感じていたが、それが形としても現れて一層強くなった。
振り払いたい、今すぐに…けど時間が許してくれない。
思い出したかのようにレーザーが俺を掠める。
相変わらず自然破壊を楽しんでいらっしゃるレーザーだ。
「森林伐採は…ほどほどに、ってな!」
センスの欠片もない冗談も、言ってなきゃ落ち着かない。
腕を視界から隠すように腰に当て、ニンジャ走りでその場から離れた。
特に行き先など決めてない、喰らったらお終いだから逃げるだけ。
枝を、木の幹を蹴って駈けて、切断されて湖へ落ちてゆく巨木を尻目にカットチーズになる運命から必死で逃げる。
「(逃げるのはいいが…このままじゃ逃げ続けるだけだ)ハイドラ潰すか!」
レーダーを確認したのち、行き先を焼く90度ぐるりと変えた。
丁度、クレイドルの位置的に中々攻撃の薄い場所に出た。
この比較的安全地帯が何処まで続くかと思ったが、それ以前にレーザーの速度が遅いし余程密集されてなけりゃ回避は出来る。
…と思った矢先、いつの間にか真横をレーザーが並走していた。
ほんの数mでも寄って来られたら消し飛んじまう。
「ッ!?この!」
大きくバックジャンプしてレーザーを躱す。
しかし背後からも2段構えで待ち受けていた!
「うっそだろッ!?」
すかさずもう一回、右に飛んだはいいが今度は木の枝から飛び降りてしまった。コンマ数秒前の自分を馬鹿野郎!と殴りたい。
「このまま落ちたらいくら何でも…!
――――や、やるしかねえのか!?ねえのかよ!?」
とにかくこの高度じゃ関節が逝かれる。
何処まで伸びるかもわからないし、そもそも俺の体重支える強度があるかも知らん。
とにかく、とにかくでいい…理論だとかお呼びじゃねえ!
比較的太めな枝に向けて“左手”をかざした。
…狙い通り、数本の触手が伸びて枝に巻き付いた。
「やったッ――――――グゥオッ!?」
そして急激に引き上げられた。
圧力に押されながらもどうにか足場に足を付けた。
しかし休まず走り続ける。
「まだか…まだハイドラ見えねえか…!」
見つけたら即座に叩き切ってやる!と、右手を剣の柄にかけていた。
レーダーが表示した残りの距離は数m…近い。
「(とうとうか!)ッ!!」
剣の柄をとうとう握り締めて、跳躍する準備に入った!
巨木の森林を抜けて、見えたのや複数の人影!
その、やや中央に紫色のオーラを出す奴がいる、紛れもなくソイツがハイドラ!
「居たァ!」
跳んだ。
ふわり、と身体が宙に留まる。
その間、遂に大剣を引き抜いた!
しかし…ここで肝心な事を思い出した。
あの狂騒の中、大剣も左手よろしく触手に絡まれていたことを―――。
「!!?!??!!???!??!?」
あまりに変わり果てた大剣の姿に二度見三度見四度見してしまったが、構わず振り下ろす姿勢を続けた。
「この…その体ごと居なくなれ!」
「ッ!、鴉頭!?
貴様ぁ!!!」
「俺の明日のためだ!消えて無くなれェ!!」
落下の勢いも載せて振り下ろした一撃は、紙一重で躱された…いいや、こちらが不手際で外したのか…。
けれど2度目が無い訳じゃない。
反射的に左手の触手を横に薙いで、ハイドラの足をすくう。
「ぬぅうッ!?」
「消えろ!俺の目の前から消えろ!」
触手の想定以上の力強さに、ハイドラは強風の前の落ち葉のように空を舞う。
奴と同じ高さに飛びトドメを刺そうとしたが、魔弾による迎撃が頬を掠め、思わず怯んでしまった。
「ッ!!ウザい!」
「ガァアッ!」
代わりに鳩尾に蹴りをねじ込み、ほんの少しばかり吹っ飛ばす。
「これで…!これで終わりだ、ゲームオーバーだ!」
着地と同時に大地を蹴って奴へと再度ぶつかりに行く。
こちらが剣を構えた時、ハイドラも自らと同じ紫色のオーラを纏った剣を構えた。
互いに刃のレンジに入った時、金属の甲高い音を伴った衝突が起きた。
「フハハ!当初はカムイを絶望させることだけを考えていたが…アレはもう態々手を下すまでもないな!」
それから少々の斬り合いの末、鍔迫り合いとなる。
「悔しいがソレには同意してやる!あの意気消沈気味じゃ勝手にカリスマを手放していくわな!」
「ふん!なれば次は奴以上に気に入らん貴様を――――――」
「何だとッ!!!?」
「ぐぉおおっ!」
力任せに、ハイドラを押し込む。
「お前…お前ェ!お前も俺から奪うってのか!俺の…俺の、世界を!」
「世界ィ?まさかとは思うが、貴様の家族たる二人の事か?
はッ!笑止!まこと狭き世界よな!」
「そうだよ、俺の狭い世界にはあの2人しかいない!それを奪おうってなら!」
「そうしてくれようと言っておるのだ!」
ハイドラが押し返してくる。
「それに!どうせ低俗な人間らしく邪な感情しかないのだろう!?」
「そうだったとして、何が悪い!」
こちらも全身の筋肉のばねを使って、今度は押し飛ばす。
そして仕上げに心臓を穿つつもりで突きを放ったが、寸での所で奴が態勢を戻し、結局また鍔迫り合いになった。
「いいだろう…何処ぞのデカブツではないが、貴様に絶望を送ろう」
「寝言は、死んで言え!」
「マーシレス!そのまま抑えて!」
突然、声がした。
声の主は振り向かずともわかる…!
「カムイ!邪魔だ!」
「ふん、貴様に用はないが…精々鴉を絶望させるくらいには使ってやる!」
ハイドラは俺を抑えつつ、左手に何かを構えた。
それは…杖?確かドローとか何とか…………!!!?
「まさか…!」
振り向くと、もうすでに夜刀神を振りかざすカムイの姿があった。
「止めろ!戻れ!」
この叫びも遅かった。
ハイドラのドローが、魔法陣に包まれる。
そして…ソレと同じ魔法陣がカムイの目の前に現れた。
ドロー…敵を一体、自分の近くに引き寄せる暗夜の杖。
使うにはそこそこ高い杖技能が必要だが、このドラゴンにはその程度練習するまでもなくあるのだろう。
このタイミングで呼び寄せられる人間など、分かりきっていた。
けど…俺は、何もできずただソレを見ているだけしかできなかった。
魔法陣の上に、スミカが現れた。
そう…引き寄せられたのは、スミカだった。
「やめ――――――――――――」
もう、遅かった。
カムイがスミカを認識したときには、夜刀神で肩から腰までをバッサリと斬っていた。
彼女の鮮血が、俺の顔半分を赤く染める。
スミカはその場に力なく、仰向けに倒れた。
「お前、お前…お前!」
頭の中が真っ白になった…次に怒りが真っ白な紙をグチャグチャに染めてゆく。
「お前…よくも、よくも、よくもよくそよくもよくもよくも!
よくもおおおおおあああああアアアアア!!!!!!」
うっし、