ナニカサレタ男がFEifの世界で色々するだけの物語(完結) 作:エーブリス
自分の指の調子がおかしいので誤字を連発してますが、とにかく書きます。
状況は想像以上に不利だった。
狭いからコチラの強みである大型武器が使いづらい、そもそも隻腕だから死角がある、切り札の膿も触手もないから押しの強さがない…というか膿は戻れなくなる可能性があるから使いたくない。
あの裏返しグラビティが全て仕組んだんじゃないかと思うくらい不利な状況だった。逃げようにも前後ろ共に塞がれている。
相手には苦手な魔法使いが二人、ゼロも魔力のあるシャイニングボウを構えている…相手さんは俺の弱点を熟知しているようだ。
「(呪術と闇術くらいしかアドバンテージがないな…)ッ!」
ソウルより渇望の鈴を引っ張り出して、次に狙う相手を選ぶ。
…前にレオン一人、後ろにオーディンとゼロの二人。
正直どっちにしてもキツイってのが本音だが…あの神器は少々厄介だ、黙っていてもらおう。
―――先手必勝、前方のレオンに向けて闇の霧を放つ。
此処からは完璧に賭けだ…ゼロの矢を紙一重で躱し、オーディンのライナロックを盾で受けてその反動で二人の方へと一気に飛ぶ。
まさか本当にライナロックを使ってくれるとは思ってなかった。
特に確証もない予測だったが…まあいい、次の段階だ。
普通の武器では効果が薄いので、引き続き闇の刃で肉薄する。
「(こっからノープランだけど…。)死ねッ!」
「ぐッ!」
「甘いなッ!」
オーディンとの鍔迫り合いの最中、ゼロが再び矢を放った。
「見えてるッ!」
ソレを歯で噛み砕き、片手間で押し切ったオーディンの鳩尾にニーキックをぶち込む。
洞窟の遥か奥へと吹っ飛んだオーディンを尻目に、ゼロへと迫る。
何度も放たれる矢を、反射神経に物言わせて全て躱しこちらの間合いまで近づく。
そして弓矢の不利な間合いへと踏み込んだ時、ゼロはシャイニングボウを捨てて腰からダガーを取り出した。
ヤツが繰り出したのは薙ぎでも振り下ろしでもなく、突き。
…一番対処が楽だ。
「フンッ!」
狙い澄まされた突きの一撃を、手の甲で受ける。
別に手袋だとかをしてるわけでは無い…素肌の手の甲だ。
「ッ!…っらァァアッ!」
20cmほどの鋼刃が、残された右手を貫通する。
衝撃はあれど痛覚は無い…奴がダガーを引き抜こうとする前に自分の筋肉で刃を完全に固定し、一切の操作を受け付けなくした。
得物の硬直に怯む隙に、左膝関節へと全力のヤクザ蹴りを喰らわした。
何か硬質なモノが折れる音が洞窟内に響く。
…目論見通り、ゼロの膝関節が粉砕された。
ヤツは崩れ落ちて、膝立ちする状態になった。
後はトドメを刺すだけ…もうどうにでもなる。
「残念だったな…」
「ッ…!」
右の靴に仕込んだ隠しナイフの仕掛けを起動し、爪先から約十数センチ程の刃が飛び出す。
何の予備動作もなく、切先を奴の喉元に突き立てた。
その一撃でゼロは瞬く間に絶命する。
「…先ずは一人か」
隠しナイフの留め具を外し、仕込み靴から只の靴に変える。
ナイフは死体に刺さったままだ…墓標になるかな?
で、先ほど膝蹴りでブッ飛ばしたオーディンだが…。
「ま…アレを簡単に耐えられても困るんだがな」
当然、さっきの膝蹴りにも少し捻りを入れた。
―――どうやら、俺は俺が思った以上にサイボーグのようだ。
ズボンの膝あたりに空いた穴…そこから覗く肉体再生の瞬間。
…俺の身体、その至る所に武器が隠されている。
手首に仕込まれたナイフ…肘関節に仕込まれたスパイク…きっと徒手空拳の状態でのアドバンテージを少しでも確保するため―――若しくは非常装備として内蔵されたモノか。
「(杭が刺さったままじゃ)…ロクに動けまい」
とにかく、あるモノは何だって使う…そうしてでも勝ち残りたい、生き残りたい。
「手間かけさせやがって…」
悪態を吐きながら、痛みでうずくまるオーディンの元へ歩く。
奴は腹と口から血を流し、両手で内臓が零れぬよう傷口を抑えていた。
「…お前らが悪いんだよ、お前らが」
「ここで終わりかよ―――母さん、ゴメン」
「イーリスの王女サマにゃ、よろしく言っとくぜ…気が向いたら」
苦しむオーディンの首を思い切り踏みつけ、骨を粉砕してトドメを刺した。
―――背後から殺気を感じて振り返った。
刃が見えた…持ち主の冷血を現すようにヒンヤリと凍てついた刃が。
…死にかけの刃だったが。
「…邪魔なんだけど、死んでくれない?」
「貴様!…カハッ――――貴様はァ!」
「冷血が煮え立ってるぜ?どうしたグラビティマスター」
「貴様ッ――――ゴホッ、ゴホッ…お前は、カムイ兄さんを殺したお前だけは!」
「まだ死んでねーよ?もう原型留めてないだろうけど」
「ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
暗夜の冷血と呼ばれた冷静さは何処へやら…。
レオンは感情のまま叫び、闇の霧に蝕まれた身体で冷剣を振り上げた。
隙だらけだったので、右手を貫通したままのダガーを心臓に刺した。
「かふッ――――!?」
「…終わり、だよ」
ダガーを引き抜き、今度は首筋に一撃。
―――――――数秒の硬直の後、レオンはマリオネットの糸が切れたように倒れた。
…終わった、終わったんだ。きっと…。
そうだ…長かったよ、此処まで。
何度も何度も、来る日も来る日も…いつだって、失う恐怖があった。
それも終わりなんだ。
本当に、本当に清々しかった。
でも、なんだろう…まだ何かが不安だ。
落ち着かない。
◆ ◆ ◆
洞窟を出てすぐに、ベルカと再会した。
此処で初めて、俺自身が彼女の心配で落ち着かなかった事に気が付いた。
竜共を黙らせて安心しきっていたのだろう。
しかし、その隣にスミカの姿が無かった。
―――どうやら友人の危機を眺めていることが出来ず、救出に向かってしまったらしい。
結局、自分の不甲斐なさがまた家族を死なせてしまった…そう思ったけど、もしかすると生きているかもしれないとも思えてくる。
ただ、死んだと思いたくなかっただけ…それでもよかった。
また会えればいい…死んだという事実が俺の中になければいい。
どういう形であれ、戦争は終わった。
これからは俺達が何も失う事なく、平和に暮らす時間だ。
俺はベルカを連れて遥か遠くへと旅立った。
最終的に何処かで根を下すつもりだったが、明確な目的地は無かった。
ただ遠くまで、誰かの脅威が及ばない所まで行くつもりだった。
そしていつの間にかたどり着いた、どこかの山奥。
結果的にそこでずっと暮らす事になった。
残った武器を使い木を斬り倒し、加工して、それなりの家は作れた。
片手で作業しづらかったが、その分はベルカが手伝ってくれた。
家ができるまでの拠点だった洞窟の場所は今や覚えてないけど、きっとどこかにあるのだろう。
何より幸運だったのは、(誰かが住んでいたのだろう)畑の跡があったことだ。
そこから土と菜種を頂戴して、自分らの家の前に畑を作った。
食卓も干し肉だけの貧相なものから、多少の彩りが加わった。
どうでもいいが、ベッドが一つしかないのはわざとだ。
そんな暮らしを始めて早くも3年半…その日は俺は畑周りに設置する野生生物対策の柵を拵え、その間に彼女は…何してるんだっけ?
まあ、多分編み物とかだろう。
途中、ベルカが何処かに出かけた。
…あの洞窟の場所をまた知りたいそうだ。なんでも忘れ物を思い出したとか。
作業をいったん止めて、彼女が見えなくなるまで見送った。
…アイツ、ここ3年で髪が伸びたな。
昔のショートヘアも可愛かったが、今のもいい。
5分ほどだろうか、しばし身体を休めた後作業を開始した。
―――――――俺達、ずっと一緒だよな。
――――――――ずっと、ずっと…
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【Dルート・欠けた円環】 完
はい、これで終わりです。
後日後書きを投稿しますのでお待ちください。