ナニカサレタ男がFEifの世界で色々するだけの物語(完結) 作:エーブリス
「…こちらは2年、俺は10年、親父は6年…か。
不平等だね、ホントに」
あの町へ、帰ってきた。
思い出したとはいえ、10年も前の記憶だ…どこか朧げではあるし、何より此処も2年といえど時が経てば変わらないはずがない。
「あんな家、無かったはずだよなぁ…」
多少ではあるが変わり果てた故郷を見ると、本当に故郷なのか疑わしくなる。
…でも、心配はそこじゃない。
「顔どうやって誤魔化そう…いや、手術のアンチエイジングで……そも髪染めないと…」
―――そうだよ、容姿。
90代であろうクラインがかなり若々しそうな様子でラスボスやっていたように、強化人間にはアンチエイジングの効果がある。
しかしだ…色々あって髪は灰色だし、流石に10年もあれば俺自身知らぬうちに変わるモノもある。
「…ってか、一応2年経ってるじゃん」
――――老けは問題ないな。
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「『探してます』、ねえ…」
くたびれた貼り紙があった。
上半分中央には、16の頃の俺が映っている…ああ、こんな制服着てたな。
レイアウトからして、書いたのは姉だろう。
何となくだが、せな姉の個性がある…ように感じる。
「―――何処にもいない人間を、ずっと探してたのか…」
そして人間ですらなくなってると…。
なんだろうね…人生って。
その場所に居られなくなって、何処かへ立ち去る事にした。
…すこし歩けば、幼い頃よく遊んだ公園がある。
此処の公園は2か所に出入り口があるのだが、その内“滑り台に近い方”は小・中・高を通して、俺の通学路の隣だった。
植えられてある桜の木は、既にピークが過ぎて緑が生い茂っている。
「…いや、ちょっち花が残ってる」
見つけた、緑に飲まれずたった一つ残った花びら。
周りが変わりゆく中、一人だけ取り残されていく…。
「…ハッ。
悪いけど俺、そんなロマンティックでもなんでもないんだ」
あの花のように俺は自然ではないのでね。
付け直した花弁が、果たして自然と言えるのか。
…で、この先を行くと―――アレだ。
「ここで、一発やられて…あの世界か」
そうだ、あの時俺は此処で頭に一撃入れられて…………気が付いたら今の俺になっていた。
この小さな道…確かに基本的に目立ちそうもない。
普通に歩いていたら、つい見逃してしまいそうなほど狭くて暗い道なのだ、そんな場所を使って近道した俺も俺か。
…第2の始まりの場所へ、再び足を入れた。
あの時とは違う、仮に殴られても死ぬどころか気絶すらしないしそれ以前に誰か後ろに居たら気付ける。
「…で、何も無いと。
だよな…2度も同じ場所で襲われてたまるか」
運命の悪戯にまた出会う事もない。
…しかし、ただ一つ見覚えのあるモノはあった。
「ッ!…?缶詰?」
日本じゃ見かけないような缶詰だ……ってか、それもそのハズ、ロシア語で書かれている。
―――成程、イクラの缶詰か。
何でかな、よく食った覚えがある。
誰かが置き忘れたのだろうか…しかし何でこんなところに置き忘れる?
缶詰をクルクル動かして見てみると、底に何か書かれていた。
「『かえってこい!』…下手なひらがなだ」
しかし悲しいかな、俺はこれ以上の悪筆だ。
その下には小さく、ロシア語でも書かれている。
こっちは綺麗な文字だ。
意味は…大体同じだな。
―――しかし、俺にロシア人の知り合いなんて…。
「…いや、いるわ。
あのロシア娘か…2年の間に訪れたのかな?」
いるねぇ、あの細身の割にすっごい脳筋な奴。
そんでいたずらっ子で、しょっちゅう脇を突かれた結果俺も背後限定カウンター術も習得するという始末。
もう何年会ってなかったのかな?あの時で。
単純な計算すらするのが億劫だったので、特に数える事はしてない。
でも長い事会ってないのは事実。
「…帰ってきたよ、エレーナ」
缶詰をポケットに突っ込み、狭い道を出た。
ここを左に曲がって少し歩けば、すぐ俺の実家だ。
――ほら見えた、引っ越してなきゃまだ『松田家』だ。
「小5の頃、“マツタケ”って落書きされたな…」
今でも犯人は分かってないが、ぶっちゃけ姉も母も笑っていたのでどうでもよくなってた。
―――ただし松屋のロゴを張り付けた奴、テメェだけは許さん。
「…テメェだよ、榊。
って、いないか」
取り敢えず当初の目的を果たすか。
あの時帰れなかった家に、今度こそ帰る――――。
「…先、プラモ屋行こう」
やっぱりまだ決心がつかない。
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「らっしゃっせー…」
相変わらずやる気の感じられない店主だ。
また万引き記録増やしてんじゃないだろうな?
「(よく潰れてないもんだ…)…あ、マグナアックだ」
絵柄的に、結構新しい奴だな。
マジか…じゃあサンドロックも出てるよな?
「いやまさかな…サンドロックを差し置いてマグナアックがリメイクされるわけないもんな…な……な………」
――――おい店主ゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!
ちゃんと入荷しろよおおおおおおおッ!!
「サンドロックはまだ開発企画中だよ」
「おぅ…」
心の声を店主に聞かれたのかのように、あのダラーっとした声で真実を告げられてしまった…なにやってんだバン〇ムァ!
重い足取りで、プラモ屋を出た。
「…たく、久しぶりに帰ってきたってのに挨拶も無しかよ。トウヤの奴」
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…結局、公園のベンチで腰かけて、ひたすら時がたつのを待っていた。
「…あーあ」
何のためにこの世界に戻ってきたんだよ。
親父の分もあるんだぜ?このまま母さんとせな姉に会わなきゃ、親父にも…後押ししてくれたベルカにも合わせる顔がねえって奴。
「もう今更迷えるかよ…!」
もう一度立ち上がり、再び実家へと向かう…!
―――そして3秒でベンチに戻った。
「やっぱ無理だろ………いや、やれる!」
そして再び立ち上がって、10mほど歩いてまたベンチに戻った。
「無理…」
いや、行く!
「…ごめん無理」
いや、戻った!
「っ…ハアアァァァ…」
頭をガクンと落とし、でっかいため息をついた。
再び頭を上げてハンバーガー4つ分のアフロみたいなポーズで、今度は空を見上げた。
「こんなん、お笑いだよなぁ…」
――――………………。
「…よし、もう振り返らねぇ!」
今度こそ、本当に家へと歩き出した。
しっかりとアスファルトを踏みしめ、前へ前へと力強く進んでいく。
―――もう俺、人殺しなんだよな…。
「そんなこと知るか…!」
―――そもそも、人間じゃ無くね?
「知らんわ…!勝手にさせろ…ッ」
―――顔、覚えてんの?
「子の顔、弟の顔忘れる家族がいるか…!
あの親父ですら覚えていたんだぞ…!!」
―――立ちふさがる疑念を声を出して振り払い、只々向かっていたらいつの間にか家の前にいた。
後はインターホンを押せ、押せェ!
「ッ!(だあもうッしゃらくせぇ!)」
勢いのまま、インターホンを押した。
あの時から変わらぬ、懐かしい音が流れる。
『…はい』
「あ、あの~………うちの子がお宅の庭の木に紙飛行機を投げ入れてしまったみたいで…」
んで、この他人行儀だよ…!
最後の最後で尻込みしてしまった。
『わかりました、今行きます』
…でも、これで母さんもせな姉も態々出てくるのは分かっていた。
そして、黒い鉄製のドアが思い切り空いた。
相変わらず外側の人間をブッ飛ばしそうな勢いだ。
「お待たせ…――――――ッ!?」
出てきたのは、せな姉だ。
彼女は俺の顔を見るや否や、ぎょっとした仕草を見せた。
…さてはもう死んだ人扱いしてたな?
「…あ、あの…」
「と、とう…!」
「ええと…その…」
「…ッ」
「…ただいま」
「…うん、おかえり…!!!」