ナニカサレタ男がFEifの世界で色々するだけの物語(完結)   作:エーブリス

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誕生日だったし…今年で10年目だから、久方ぶりにこっちで書いた。


その翼を漆く塗り…

 

 

死だ、死が翼で飛翔している。

その死は飛ばぬ筈だが、竜の翼を得…その竜たちへと迫りくる。

 

選りすぐりだが、レヴナントナイトの魔竜ではない…只の竜が、死を隣り合わせ、深い森を飛ぶ。

悲痛な慟哭響く…くらいくらい森の中を

 

 

照らす月さえ無い今宵、彼女達は自ら…決死の奇襲作戦に踏み切った。

用意できる最高峰の人材と、そして資材を使い…。

 

まるで正気ではない…鬱蒼とした、なんて表現じゃ追い付かない。

そんな密林の中を、飛竜で…それも最高速度で突っ切る。

 

更にはドラゴンマスター各位、後ろにもう一人の兵士を乗せた状態で。

絶えない慟哭の中、行うこれを“死の飛翔”と呼ばず、何と呼ぶか?

 

 

…まあ、彼女――――ベルカ達には、何かと慣れた行為だ。

元より暗夜のドラゴンナイトは、暴力的とも言えるアクロバット飛行の代名詞である。

 

其れの上位職であるドラゴンマスターは、最早竜による飛行を知り尽くした…その中でも、ベルカの主君カミラ直属の竜騎隊は、国内最高峰とも呼び声高い。

 

その王女カミラ含めて…だ。

 

 

彼女達に、まともに機能する恐怖は少ない。

強いて言うならば…いきなり出て来て飛んで来る、矢の雨と風魔法は御免被りたいところだが。

 

「…ルーナ」

 

「何よ」

 

「酔ってない?」

 

「これ何回目だと思ってるわけ?

舌も噛まないわよ」

 

「そう…」

 

相乗りのルーナ共々、慣れ親しみ過ぎて…軽口を言い合う時間ですらある。

舌を噛まないコツはあるようだ。

 

「で、ベルカ。

どうなのよ?」

 

「どう、って…何?」

 

「旦那。

性根は腐ってても、案外悪いやつでも無いのは知ってるけど…アレじゃない」

 

急にルーナが切り出した話題は、ベルカの旦那についてだった。

人の結婚相手に随分な物言いだが…相応の所業を為した問題児なのは事実なので、ベルカも咎めやしない。

 

「…そうね。

あれでも、部屋ではとても素直よ」

 

「ベッドの上でも?」

 

お互い、契りを交わした相手とヤることヤった身、今更そういう話に抵抗はない。

 

「…ある意味素直ね。

――――話は終わりっ、来る…ッ!」

 

雑談の間に、死の飛翔の終わりが見えた。

当然、ここまでに樹木へ大激突したトンマは一人として居ない。

 

 

此度の作戦、狙いは賊…なのだが、この一団は余りにも勢力を拡大させ過ぎて、国軍でも下手な手出しは出来なかった。

 

故に今夜、一国の最高戦力に狙われた訳だが。

そしてそれこそ運のツキ…襲撃は想定していたが“アテが外れた”様だった。

 

彼女らが来る、真反対を警戒していたのだ…!

 

「跳んでッ…!」

 

「ッ――――!」

 

ここでベルカの飛竜から、ルーナが飛び降りる。

そこから彼女は流れる様に落下攻撃、早速一人を斬り斃す。

 

誰も否定し様の無い先手必勝(ファーストブラッド)だった。

勢いは其れで止まらず、続けて2人、3人、そして4人と斬り斃し…撃破数(キルスコア)のトップを恣にする。

 

伊達に絶望の未来を、生き抜いた訳では無いようだ。

 

 

――――かと思われたが、ベルカがその一歩先を行った。

一人は竜の顎で、一人は投げた手斧で、一人は竜の尾で、それぞれバイタルを致命的に砕いて一石三鳥を達成。

 

続けざまに、奪った鉄の槍で敵を2名同時に刺し貫いて、一瞬でルーナのスコアを超えたのだ。

 

「っ、こんのぉ!」

 

しかしそこは負けず嫌いのルーナ。

回転斬りで敵兵2人の首を一気に跳ね飛ばした後、ジェネラルの装甲の隙間を貫いた。

 

大物狩りで、自慢げな表情を見せる彼女だが…ストイックなベルカはそんな物に見向きもせず、未だ淡々と敵を狩り飛ばしていた。

 

 

斧の薙ぎで雑魚を散らした後、ハンマーで別のジェネラルの頭部を潰し…それでも生きていたので、暗器片手にドラゴンから飛び降りた!

 

暗殺者という前職で、散々取った杵柄だ。

ジェネラルの背中に組み付いた彼女は、その顎を無理やり持ち上げ、暗器の刃をズルリとねじ込む。

 

返り血が掛かるよりも速く、喉笛を裂いた彼女は再び跳躍…とんぼ返りをしていた愛馬―――ならぬ、愛“竜”に再び飛び乗ったのだ。

 

 

近づく、大音量の慟哭をバックにして。

 

 

 

そんなこんなの、親友同士のいたちごっこが続く中、賊は随分と数を減らしていた。

 

「…残念だったわね、私が一点リードよ!」

 

息を切らしながらも強がるルーナに「冗談でしょ」と、同じく若干息を切らしたベルカが返す。

 

「ちゃんと数えて。

私が上」

 

…先ほどは彼女をストイックと表現した。

しかし案外、撃破競争については気にしていたようだ。

 

ベルカの過去を考えれば、まあ良い変化ではあるのだろうか…。

 

 

因みに、彼女ら2人より(みなごろし)に長けた上司カミラは…残念ながら今回、作戦の関係上、旦那のフランネル共々この戦場で一瞬通り魔をしたのみであった。

 

 

「なによ、ボロいジェネラル一人に手間取ってたくせに」

 

「平行した処理で私が勝っている。

…これ以上は無駄よ、何故なら――――」

 

瞬間、近くでとんでもない音量の慟哭が響いた!

ァアアアアアアアア!!!と、怒りに満ち満ちたそれは、聞く者を震え上がらせる。

 

…いや、別にこの二人はコレといった反応をしていない訳だが。

 

「…誰かさんが全部掻っ攫うから、でしょ」

 

「そう。

多分森の中で散々稼いだはず」

 

慟哭は更に、容赦なく近づく。

どごん、ばごん…と、何かが破裂する音を従えながら。

 

 

「…あんたの旦那、なんかキレ過ぎじゃない?にしても」

 

「ァアアアアアアアア!!!!!」

 

密林より、爆発が溢れ出す!

その粉塵の中から飛び出したのは、巨大な鉄塊――――それを片手で振り回す、灰色ずくめの青年だ。

 

歪みに歪んだその表情は、最早悪鬼羅刹の類にしか見えない。

 

 

…彼は偶然近くにいたバーサーカーの敵兵を見るや、一気に距離を詰める。

170前後の身長で、その身の丈以上の大剣を担いでいるのに…まるで瞬間移動の如き速度だった。

 

 

その賊は反応する間もなく、彼の左手で顔を握りつぶされた。

 

「ゥラ”ァ”!」

 

続けざまに天高く投げ捨てられた、賊の身体…その落下地点は、天高く掲げられた大剣の切っ先!

 

ずぶり…と、不快な音が響く。

投げたものが、得物に串刺しになったのを確認した彼は…その刀身を傾け、横に勢いよく剥ぎ払った!

 

遠心力で、切っ先からすっぽ抜けた“死体”は…そのまま生き残りのジェネラルに直撃。

頑丈なハズの重装甲が…人一人の質量、矢をも追い付けぬ速度を持ってぶつかる事で、粘土が如くに拉げた。

 

鎧の変形に巻き込まれたジェネラル兵は、上半身の骨という骨を砕かれ、しめやかに絶命した。

 

 

ァアアアアアアアア!

クソッ、クソッ、クソ!全部テメェらのせいだ、俺の人生結局カスだ!幸せ総てに邪魔が入る!」

 

彼の正体、それは【鴉頭】のマーシレスと…仲間は呼ぶ。

其れは暗夜の…いや、大陸中を包み込む悪夢の正体。昼頃の五百人斬り。巨人の剣。

 

…実態は、トラウマ由来の極度のヒステリック。

生活能力無し…そして、某無責任アメコミヒーローとか某無限残機博士とかを気取った、稀代のトラブルメーカーである。

 

というかトラブルそのものである。

仲間内の立場は実力だけでどうにか築けたようなモノ…とは、まあちょっと言いすぎだが、問題は無い。

 

 

 

…とは言うものの、最近は結婚もして娘も生まれて、それで鳴りを滅茶苦茶に潜めていた。

しかし今夜は随分と荒れている。

 

「…ねえ、本当に何があったの?」

 

「あまり…触れないであげて」

 

妻でもあるベルカは、事情を知るが故に…何も語らない。

 

 

…先ず今日の初めから、彼は自分と…そしてベルカのマグカップを誤って粉砕した。

ちょっとした不注意であり、わざとでは無いので彼女は気にしなかった…実は一番のお気に入りじゃなかったし。

 

しかしマーシレスはそれを引きずり、ブルーな表情のまま“大切な買い物”の為に外出…しようとしたところで、ドアに突き指をした。

 

強靭且つ特異な彼の肉体には、なんてことないが…痛みは残る。

イラつきを蓄積させたまま、街を歩けば…今度は買い物の為の、所持金を全額紛失した。

 

自ら落としたのか、それとも気が付かぬうちにスリにやられたか。

仕方がないので自身の“過去の記憶(壊れたスマホ)”の形見を質屋に出し、ギリギリ目当ての物が買えるだけの金を捻出。

 

…しかし、目当て物は既に売り切れ。

裏路地で暫く拗ねた後、代替品を探すもお眼鏡に叶うものは見つからず…総ての望みを搾り取られた状態で自室へと帰還したのは、作戦開始時間の直前だった。

 

 

マーシレスは一度、全ての日常を…記憶と共に奪われた。

誰とも知らない…何者かに。

 

引き換えに、無駄に強靭な肉体を得た…死にたくても死に難い、苦痛だけの身体。

 

だから…せっかくの幸せが消える事に、強い拒絶を示す。

もうなくしたくないのに。

 

 

「――――…まあ、立ち直りはするから、何でもいいけど。

あたしも人の事、あんまり言えないし」

 

何かと関わりが深くなったルーナも、そこら辺りには同情する。

100%の甘やかしはするつもりも無いが、全否定もしようにも出来ない。

 

「…そろそろ立ち直るわよ」

 

そして、今や日頃彼を見るようになったベルカは“以外に速い”立ち直りのタイミングをもう読んでいた。

 

 

――――彼女の視線の先で、マーシレスは右手の指の間に、3本の安い暗器を挟む。

あ、遊び出した…彼女は直ぐに察した。

 

「クッヒヒ…!」

 

いつの間にか、墓標よろしく突き立てていた大剣を足場に、前方のマーシナリーの賊一人目掛け…その暗器を挟んだ右手を突き出し、錐揉み回転をしながら突撃する。

 

まあ…所謂“スクリュードライバー”だ。

ベアクローでは無いが、まあこの世界にそんな物は無いので代替品を使うしかない。

 

「フォオオオオオオオオ!」

 

「うぎっ――――」

 

狙われた賊は、頭部を一気に抉られ、瞬く間に命を落とした。

 

 

「ッしゃあ!

俺こそがファイティングコンピュータ!イェイッ!」

 

マーシレスと言う男は、悲観主義である以上に戦闘狂…というより、虐殺行為(ワンサイドゲーム)が大好きなのだ。

 

FPSのチームデスマッチで言えば、大体点数差20~30で勝っている状態が非常に好き。

逆にその点数差で負けていると露骨に死体撃ちとかしてくるタイプのクソ野郎である。

 

まあ勝ってても死体撃ちするタイプだが。

 

 

 

 

ともあれ、これで場の敵は殲滅した。

マーシレスは「後一発、今度はクォーラルボンバーでもやりたかった」と燃焼不足だが…直ぐにそれ所じゃ無くなる。

 

「…陽動、お疲れ様」

 

「ッ!!ベルカっ!」

 

愛しい面影を見るや否や、一目散に駆け付け…人の目も気にせず、彼女へと飛びついた。

抱きしめる為、両手を広げながら。

 

「…」

 

無論、他人が居る場でそんな深く愛を確かめたくない彼女は、それをさらりと避けた。

 

「ぶっ――――!?」

 

踏まれたカエルみたいな声を上げ、彼は地面に突っ伏した。

 

「な……何で!?何で避けるん!?

そこホラ、ぎゅーって!いい感じに、ほら、アレする所だったじゃん!今日は俺散々…いやまあ、朝のアレはその、ゴメンだけど…でもいいだろ!」

 

「人前でやらないで。

あなた、一度始めたら止まらないんだから」

 

彼の狼狽を、ベルカは冷静に返す。

けれども「それに…」と、うつ伏せの彼に手を差し伸べた。

 

「朝の事とか…色々、気にしなくて大丈夫。

えっと、その…」

 

気にしていない、では話は平行線である。

けれども、余りに深く慰めるのは――――この場では、今でもちょっと恥ずかしい様だ、お互いに。

 

「…取り敢えず、続きは後でやってくれる?

ウチの人と…あと子供達もそろそろ来るんだし」

 

なんか人前でイロイロ始まりそう、と感じたルーナ。

彼女は「面倒臭くなる前に」と流れをぶった切ったのだった。

 

「え、マ?

もうそんな時間?」

 

「えぇそうよ、どっかの誰かさん…一々木を伐採しながら来た訳だし」

 

彼女が冷ややかに指差すその先…それこそ、マーシレスが森を抜けだした地点である。

 

一直線に、まばらな切り株が奥へ奥へと立ち並ぶその一角は…彼が大剣で邪魔な木々を取っ払った証拠である。

 

「まあうん、環境破壊は気持ちいいゾイ…っていいますかー、そのー」

 

「あなた山一つ枯らした件、反省してる?」

 

「えっ…あ、うん、してるって」

 

言ってる事が数秒前と正反対である。

 

「言ってる事」

 

ルーナもそれを指摘しようとするが、もう態々それを行うのも億劫だった。

 

 

だって、もう目の前に…待ち人が来てるのだから。

 

「おまたせー」

 

「うぉ、マジでもうツバキら来たわ」

 

白夜の天馬武者ツバキが愛馬と共に現着した。

彼とルーナの娘マトイと…それともう一人、空色をした長髪の女と共に。

 

「ウッソ、もう片付けちゃった?

まあ…なんか父さん暴れてたみたいだし、さもありなん…か」

 

「ちょっと処理に困る死体が多いのは…そう言う事ね」

 

「あー…全部フランネルのせい。

木が全部倒れてるのもそう…アイツの必殺拳が炸裂した」

 

「ダウト。

そこの頭部にでっかい穴空いたの、絶対父さんの仕業でしょ」

 

マーシレスに突っかかる彼女は、彼とベルカの娘…スミカだ。

 

若干キツイ性格っぽい所があるが、正直父親とは比べ物にならない程物分かりもよく良識的、そして知能に長けた、事実上の一人っ子である。

父親似の子なのに。

 

鳶が鷹を生む、というか…ダチョウが神鳥レティスを生んだような娘だが、きっと母親の遺伝子が良く作用したのだろう。

 

――――ただし性癖は、父親が霞むレベルで終わってる。

拘束拷問凌辱プレイに嫁を付き合わせる親父より、性癖が、終わってる。

 

「ちがいますー。

フランネルが自慢のベアクローで二刀流スクリュードライバーして敵の大部分を殲滅した後、残党を丁寧ていね丁寧にパロ・スペシャルで仕留めただけですー。

本当の本当に本当ですー」

 

「嘘ですー、今父さんが言った技全部父さんがやった所見た事ありますー。

というかフランネルさんそういう緻密な技できな――――んん、まどろっこしい技しませんー」

 

「あー今失言したー、アイツ今王族配偶者なんだぞー、いけないんだー」

 

「しーてーまーせーんー。

というかその王族の方々にタメ口ききまくってる父さんの方がダメですー、私無罪ー、美少女無罪ー」

 

「むーりー。

俺の遺伝子で美少女はむーりーでーすー、アイツの超絶最強遺伝子を俺の精子が邪魔したお前じゃ美少女むーりーでーすー」

 

「大丈夫ですー、母さんの成分9割なので十分美少女名乗れますー、私の勝ちですー」

 

 

親子喧嘩、というより単なる父と娘のじゃれ合いを…只々微笑ましく、ベルカは眺めていた。

実の所、まだ作戦の途中なので諫めるべきではあるが…もうじきそれも終わりそうなのだ。

 

 

そして彼女の、また一つ年を重ねた日は終わりを迎える。

 

 

 

 

 

 





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