ナニカサレタ男がFEifの世界で色々するだけの物語(完結) 作:エーブリス
ちょっとね…色々忘れてたんだ、重要な設定
いつの間にか国境を超えて、暗夜に来ていた。
やはりこの国は暗い。噂通り一切の日光を通していない。
この世界の地球はどんな形をしているのか…なんて、どうでもいい事を考えて落ち着かない心を紛らわす。
ここの所、何かとうんざりしてた。
何の発作か、とにかく誰かに笑われてたり噂されたり狙われたりetcとか薬物依存のソレみたいな気分ばかりだ。心が落ち着ける日がない。
…原因は大体分かる。
このナニカサレタ身体だ。確証も何も、肩から腰に掛けての大きな切り傷が2秒も経たずに塞がるなんて人間のソレじゃあない。
人工的な何かであるのは間違いないんだ…じゃなきゃ、視界を鬱陶しいデータの波で覆われてたりしない。
いつか、強化人間には薬物を使った身体強化があると聞いた。
その副作用か…それとも。
問題は誰がやったか、という話だ。
それさえ知ることが出来れば奴らの元へ殴り込んでこの症状をどうにかさせるか、ダメなら最悪俺の意識を永遠に終了させるかのどちらかだ。
…けど、その考えは半ば諦めている。
何故かって、そりゃ今いる世界は中世ほどの文明発達度の世界…現実(というか、俺の世界)では、人体のあれこれは精霊だの悪魔だのの仕業と言われてた時代と同じレベルなのだ。
そんなトコで人体学を任せては、下手すれば変な聖書やらにぶん投げた治療を施されるのは目に見えている。
まあ、人間界で直せない病気は呪いだっていうしそういう事だろう…。と、その辺の諦めが付けばいいんだ。
だが、それを全力で邪魔をするモノがある。
…今、気が狂う程神経を刺激する様々な症状だ。
先程言った幻覚モドキは勿論、吐き気やら頭痛やら…思い出すだけで…その、頭痛が、痛い。
「…ッ、………ッ」
誰もいない事をいいことに、その苛立ちを隠そうともせず小さな唸り声を周囲に撒き散らす。
人差し指は小刻みにズボンのポケットを叩き、ギリギリと歯軋りを鳴らす。
本当に、何処から見ても不審者ですありがとうございますクソが死に腐れファッ〇ュー。
「…クソッ、クソ、クソ!」
とうとう我慢できなくなった。
左手に持って引きずったグレートソードを左隣の大木に振り下ろす。
…我ながら見事、直径70cmはあろうかという大木を両断し、鋭角の切り株が出来上がった。
何かの先端に付ければ即席の槍(巨人サイズ)になるかもしれない。
だが、これでも苛立ちは消えない。
続けてグレートソードを何度も振り下ろす。
切り株は薪の様に割れ、大きなささくれが出来ている。
そんな針山のような切り株を切り刻んでいる途中だった。
「ッが!!??」
剣を振るう左手に奔る激痛。
何か太い先端が刺さったようだ。
慌てて目をやると、案の定というか何というか…9cmほどの太い木端が腕に深々と突き刺さっていた。
「ッでぇ!いっで!くそ!」
痛い、ひっじょうに痛い。
かつてない大怪我だ、刺さったままでは再生も出来ない。
…が、抜こうにも痛みが邪魔だ。
「あ”あ”ああああああッ!ぁあ”ああああああッ!」
悶えながらあちこちを転げまわる。
もう方向感覚などぶっ飛びそうだったが、そも明確な目的地などない。
「が!、あ”あああッ…ああ…いッてぇ…!」
強烈な痛みは30分ぶっ通しで続いた。
それからはじわじわと来る痛みで相当苦しんだ。
■ ■ ■ ■ ■ ■
あれから約2時間。
一歩歩く度に、次に起きる都合の良い出来事を想像する。
実は夢落ちだったとか、急に陸自が駆け付けて助けてくれるとか…どれもこれもぶっ飛んでると自覚した。
…結局、いつまでたってもご都合主義なんてやって来なかった。
一晩中孤独と左手の不自由に苛立ち、時折泣いたりした。
帰りたい…などと思っても、帰る場所をイメージできない。
その帰る場所というのは、俺の記憶には何処にもない。
自分の家族構成、自分の家の形に内装。
覚えてるのはアニメやゲームの記憶と、多少の雑学だけ。
なんでこんなのばっかりなんだ。
学校で習ったことなど、そもそも真面目に聞いていなかっただろうし思い出せるはずもない。
「…ねむい」
ちょっと、はしゃぎ過ぎた。
左手痛いし、気分悪いし…結局、荒野の上で横になる事となった。
◇ ◇ ◇ ◇
「!、あ…」
起きても空は暗いままだし、腕も怪我したまま…更に助けなんかも来てなかった。
目覚めたら知らない天井…なんて都合の良い話は無いんだ、分かるね?
結局はグレソ右手にフラフラと歩き出した。
…ってか、よく考えたらなんでこんなお荷物いつまでも引きずってるんだろ?
とうとう自分が分からなくなってきた。
「けどな…今、素手で勝てる自信ないな…」
この身体とて、手負いで丸腰じゃ負けて当然かもしれない。
というか、腕痛い。
なんか視野に張り付く情報の波もワーニングだとか何とか告げてる。
…なんか、最悪壊死とかしそうだな、放っておくと。
「…やるしか、ないか」
死にたいけど、苦しんで死にたくはない。
逝くなら一瞬でさっぱりと…贅沢だが。
「…ッ」
そっと、木端に右手を添える。
その振動が傷口に伝わり、痛みとなる。
だがこの程度は序の口、引き抜けばとんでもない激痛が走る。
「フーッ…フーッ…!」
中々抜く意思が起きない。
次、次…!と思っても行動に移せない。
とにかく今だ、今しかない!
そうだ今、今、今――――――!
「ッ!?―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ッア”あッ!!!!」
一瞬、死ねるかと思った。
…けどもちろん俺は生きており、それに伴う激痛もセットされてた。
絶叫を通り越して、もはや声など出なかった。
「クソ…早く、塞がれよ…」
おかしい、普段ならこのくらいもすぐに塞がる再生機能が働かない。
もう一度情報に目を通してみると、何かヤバいって感じの表示で埋め尽くされてた。
「ちぃいッ!何書いてるのか分からねえよ!」
ヤバいってのは分かるが、細かな原因が分からず対処法も知れなかった。
というか英語だった。
ワイ日本人、オーケー?糞野郎。
そうなっては、なりふり構っては居られないかった。
辺りを見て、何か効果のありそうなモノを片っ端から目を通した。
そして見つけた。
枯れた木に張り付く、特大サイズのナメクジ。
瑠璃色っぽい、ヌメヌメとした身体が何故か薬効成分があるように見えた。もう迷信でも何でもいいから、そのナメクジを掴み、ソイツの腹を裂き、出てきた体液を断面ごと傷口に塗り付けた。
最悪毒でも効果ないハズ。
次…何か抑えるもの。
…コレが一番難しかった…辺りは荒野、草一本も生えてない。
やっとの思いで見つけたのが、やはり虫由来のモノだった。
これまた特大サイズの抜け殻…背に腹は代えられない。
何とも言えないソレを傷口に押し当て、傷が癒えるまで待った。
30分ほどたった頃、痛みも引いてきた。
傷もかなり塞がってる…まあ、この虫が薬効あったとは思ってない。
情報を見れば、なんか普通っぽくなった。
「…ひもじい」
今度は腹が減った。
そういえば、ここ数ヶ月何も食べてない。
とはいえ、先ほど言ったが草など無いし、木の皮なんて食いたくない。
…ナメクジ?冗談はよせ。
いや、でも食えるかも…食虫文化とかあるわけだし。
いや、やっぱりだめだ!絶対ヤバいって!
贅沢言えば肉食いたい。
もう生肉でいい、どうせ腹壊さないし。
ああ、なんか肉厚で弾力のある肉が食いたい。
…そう、この、こんな感じの…ムニュムニュして…ソースが絡みついて、
それで――――――。
待て、俺今何喰ってる?
パッと、ナメクジの死体を置いてあった場所を見る。
…ない、ない!
次に手元を見た。
――――――これで絶望した。
もうほとんど食い尽くされた、ナメクジの残骸が手の中にあった。
余計、気分が悪くなった。
汚い終わり方で申し訳ない。
マーシレス、FE世界初めてのお食事
・ナメクジ
・エーブリエタースの先触れ