ナニカサレタ男がFEifの世界で色々するだけの物語(完結)   作:エーブリス

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ここから本番です。


蝕む 2

気味の悪い神話生物擬きの殲滅の中で、上着がもはや布切れ同然となっていた。その切れ目から見える傷も所々再生が追い付いていない。

 

ジーンズもダメージ加工が酷すぎて穴あきチーズの様だった。

これじゃ短パンと何ら変わりない。

 

 

「ベルカ、どうだこの格好イカすだろ」

 

「馬鹿なこと言わないで。あなたやり過ぎよ」

 

「ハッ。問題ないね」

 

まあいつもの事だ。

 

 

 

こいつらは駆逐するべき敵だ、他人をあざ笑うかのような顔つきが気に入らん。コロス。

 

「…ラフムみたいな顔しやがって…!

これでも喰らって失せろ」

 

地上で活躍した連射クロスボウにまた破裂ボルトを装填し、今度は正面を薙ぎ払う様にボルトをぶちまけた。

 

するとどうだろう…地上でバリバリ当たってたのが嘘の様にそのほとんどが奴らを素通りした。

 

「いくらなんでももう少し当たってくれ」

 

「…ったく。貸して!」

 

「え、え?…あ、ああ」

 

情けない俺を見かねたのか、ベルカがクロスボウを寄越すよう指示した。

言われるがままにソレを投げ渡す。

 

「できるのか?」

 

「あなたよりはね!」

 

 

その言葉の通り、彼女が放ったボルトは一発一発敵に吸い込まれるように命中した。

 

…これだから射撃は嫌なんだ。

碌に当たらないし。

 

「…もうそれやるよ。射程距離も結構あるから暗殺にも使えるぜ、毒矢もあるし」

 

因みに某ゴルゴダのスナイパーが使っているのは厳密には狙撃銃ではなく突撃銃だ。

 

「つか何処でそんな技術を磨いたんだ?まさか説明書を」

 

「これくらい出来て当然」

 

「そうかい」

 

でもまあ敵さんはウジャウジャと…

目障りだ。

 

 

 

 

 

「それよりもどうしたの?本当におかしい。普通のあなたじゃない」

 

「ああそうだな、普通じゃない。今の俺も…今までも…」

 

「何があったの?」

 

「…スマン、それだけは言えない」

 

 

言わせないでくれ、お前まで絶望させたくない。

…あの時一番辛かったのはお前だろう、二度も嘆く必要はねえよ。

 

 

「もう…あなたに隠し事はさせない。

言って…いや、言いなさい」

 

…なんでだ、分からない。

なんでお前はそんなに強く生きられるんだ…時折お前が分からなくなる。

 

 

 

 

 

 

「…ああ、あああ!ああああくそっがあああ!くそ!クソ!クソ!!!

あああああああアアアアアアア!ッッんのクソがああああああ!!

 

 

 

…わりイ。癇癪起こしたせいで何隠してたか忘れた。

というか目の前の在庫処分終わらせるぞ」

 

「…」

 

ああもうまただ…まァたこれだよ。

 

 

 

 

 

にしてもあの触手生物の数は何なのかね?

本当にスパムか何かって言いたい程隙間なく詰め込まれてる。

スパム&ベーコン&ソーセージ&スパム&スパム&卵&スパム&スパム&ベーコン&スパム&スパム…もういいや。

 

取り敢えず増殖した奴は一回死ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか。まあ俺もこれは増やし過ぎたと思ってたんだ。

けれどそんな面倒を今後一切気にしなくて済む方法があるんだ、知りたくないか?」

 

…チッ。

 

訂正、ずっと死んでろ。

 

「そうかそうか、それは是非とも知りたいね…と言いたいところだが、

生憎たった今その方法を見つけちまったんだ、よッ!!」

 

 

 

死ね!このドぐされ野郎!

俺の目の前で無様に臓物ブチまけな!

 

そしてさらにもういっぺん死ね!!!

 

 

 

「人様からの親切はありがたく受け取れクソッタレ」

 

「るっせぇ!!

そこ動くな!脳味噌引きずり出してやる!」

 

最初の一撃は当然弾かれたが、上段から振り下ろす二撃目は確実に当たる!

いいや当ててやる!あの子達の仇だ!

 

 

この一発!この一撃で…!

決めてやる!これで…これで!

 

 

これで…

 

 

 

 

 

これ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こ…れで………    は?

 

 

 

 

 

…痛い。

足が、腕が、手が、左胸が、痛い。

 

「10年間ダークハンドをこねくり回して拵えた特別製拳カテゴリだ。

まるで粘土みたいに何にでも変形するぜ、『神にも悪魔にもなれる』ってね。

 

…マジンカイザーは一切見たことないがね。

とにかく、コレはやっと取り戻した“力”ととっても相性が良い。

全部お前のおかげだ感謝するよ。この繰り返しの中で絶対的な方法を確立してくれた礼は…

 

そうだな、10年分の恨みの倍返しって形で返そうか。

丁度いい道具もあるんでね

 

まあ、その傷じゃ長くねえわな」

 

 

…クッソ、なんじゃこりゃ。

抜けるか…いや、ダメだ。かえしの様なものがあるのか、完全に固定されてる…

 

よく見りゃあ細かな針が無数に存在し、それが全身にくまなく打ち付けられてやんの。

 

オマケに(さっきも言ったが)デカいのが一本左胸を貫通している。

いくら何でも心臓に刺さりっぱなしは命に係わる。

 

 

「ともあれ、俺の無様な面を拝めて本当にラッキーだ。

グッバイ、磔のマーシィちゃん。この一本はサービスだぜ、受け取っとけ」

 

「クソォ… がはッ!」

 

最後に鳩尾に何かが刺さった。

身体を一切動かせないので物体は目視できなかったが内臓の幾つかが逝ったのは確かだ。

 

 

仇を前に一切身動きの出来ない自分が一層憎たらしくなってきた。

その分だけ、それ相応の憎しみを奴に込める。

 

 

ありったけの恨みで奴を睨みつけてやった。

 

そのせいで、突然の出来事に驚いたのかもしれない。

奴から血…の様な飛沫が噴き出た。

 

 

「…ッ!」

 

ベルカが奴の背中を切り付けたんだ。

とても惚れ惚れするような手さばきだった…なるほど、国一番のアサシンか。

 

「おいおい嘘だろお前かよ!」

 

「殺す…!」

 

「まてまて、クロスボウを突き付けられてはビビッて話も…っで!?」

 

ベルカの奴、クロスボウでクイックドロウしやがった。

そんな事できる造りじゃねえハズなんだがな。

 

ボルトは奴の額のど真ん中を打ち抜き、体制を大きくのけ反らせた。

その間に彼女は…なんと右手の斧を捨て、素手での攻撃に移ったのだ。

 

よく見るとその指は鋭く尖っている様にも見えたが…新しい暗殺道具か?

 

 

それよりも早く加勢しなくては…くそ、何だこの棘動く度に食い込んでくる。

だああもおお!こんな時に役立たずかよ!

 

 

 

 

「!?…くっ!」

 

「…その技術、これは予想外だった。

お前の師は何と言っていた?その術を。

人を狩る術と言っていたか、それとも技術以外何も教わらなかったか…

 

まあ後者だろうな…ならば俺が特別講師だ。

 

 

そいつはなァ!獣狩りの技だよ!知恵者に対する技じゃねえ!」

 

「っがハッ…!?」

 

気が付けば彼女は劣勢に立たされていた。

鋭い指の右手は掴まれ、腹に膝をねじ込まれた。

 

(ッ!!…あのド腐れ外道ォ!コロス、殺してやる!)

 

 

「人も獣ッつっちゃそれまでな気がするがな、どっちにしろ俺は違う!獣風情の枷など俺にはない!内側の重力で俺を縛れるかよ!ッハハハハ!」

 

「ッあああ!…がアッ!」

 

 

先ほどの猛攻が嘘のように、今度は彼女が一方的にやられていた。

アレはもう…ただの私刑だ。

 

自分の伴侶が凄惨な目に遭っているのに、自分は役立たずのまま変わらない。

 

 

 

「…お前、まだ(ひら)いてようだな。

みえないのか?…いや、拒絶しているのか」

 

奴の言葉の意味が不明だが、それどころなんかじゃない。

ようやく左腕が自由になった…右手ももう少しだ。

 

問題は足だ、腕以上に複雑に刺さっているみたいだ。

まるで抜けない。動くだけ肉が削ぎ落される…いっそほとんど削ぎ落してしまうか。

 

 

それに心臓も…

 

いや待て、何か変だ。

多少息苦しいが血液の流れにそれほど異変を感じられない…一度スキャンする。

 

 

 

これは…!

 

 

 

 

 

「…おい見ろよ磔野郎。

俺の好みだろこういうの」

 

突然、目の前に何かが飛び込んだ。

 

 

 

 

「…ぁぁぁ、まー、し…」

 

「うそ、だろ?

お前がこんな、ボッコボコになってるなんて…悪い冗談だ、やめろよ…なあ…」

 

 

傷だらけの彼女は、こちらに向けて手を伸ばしている。

鎧は跡形もなく砕かれ、衣類もボロボロだった。

 

その後ろで、剣を構える奴の姿。

 

(何をする気か知らねえ訳じゃねえが、とっくに片腕使える事忘れてんじゃねえぞ…!)

 

 

「オラ、良い声で泣け」

 

ベルカに向けて振り下ろされた剣を、ソウルから適当な長物を取り出して間一髪防いだ。

傷が癒えず十分な力が入らない上に左手だ、利き手じゃない。

 

 

「おぉ…もう抜けてたのか。

単純バカにしちゃ速いね…

 

 

けど無意味だアホ」

 

…その直後の出来事を飲み込むのに10秒は掛かった。

 

 

 

 

奴の剣が俺のハルバードを、豆腐に指を突き入れる様にするりと貫通したのだ。

その勢いのまま、剣は俺に向けて伸ばされた彼女の右腕に刺さった。

 

 

 

血が顔の半分を染め、痛みに喘ぐ声が鼓膜と心を揺さぶった。

もう現実を見たくなかった。だれがこんな結末を望んだって言うんだ。

 

目を瞑っても耳には瞼が無いし、そも瞼すらシャットアウトの役割を放棄している。

 

 

ああ…あの時と同じだ。

10年前の、苦痛と全く同じ味…けれど何かが決定的に違う。

 

今は何が傷つけられているのか、それをグロテスクなまでに生々しく認識出来ている。

 

なんで俺の周りばっかり…

俺が疫病神だってのかよ…俺がわるいのかよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーて、俺はこれくらいにしとくか。

 

…そいじゃ俺に質問しよう。

まず周りの珍獣共はさっきも言ったが俺の作品だ、人をベースに教会の真似事で作ってみた。

 

で、その…何というか、副作用というか、獣欲っぽいがモノすっごい強いのよこいつら。

そんな中でね、ほぼ無抵抗で半裸の女一人置いておいたら…わぁお、薄い本案件」

 

「な!?

…テメェ!!!何処までも腐りきってやがる!!!」

 

「ッハハハハ!そりゃあな!天文学的数字ほど生きてりゃそうもなるわ、腐るわな!

んじゃ、観客席でプギャーしてようか…」

 

 

待ちやがれェェェ!!!!!殺す!ぶっ殺してやる!!何処まで逃げたって、諦めず殺してやるからよぉ!!!おれの目の前に立ちやがれ!!目玉ほじくり返してやる!その後全身の血管綺麗に抜き取ってやる!!!

 

 

「…お前じゃできねえよ」

 

 

逃げんじゃねえええええええエエエエエエエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!

 

足に刺さる針をハルバードで破壊しようとしたが、所詮無強化の鉄くず。

簡単に折れてしまい、さらに両腕が再度針で拘束された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もうやだ。

 

 




おら、獣姦モノだぞ、喜べよ野郎共。

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