回転割砕の魔導右腕(ライトアーム)   作:変色柘榴石

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初回戦闘入るまでどれだけかかってるだ自分……


六話「ヒナの奇妙な逃走劇」

――走る。疾る。

 

 少年が少女を横抱きに、木々の間を走り続ける。

その後ろからは、ヒトの姿でありながら、ヒトの力ならざる怪力を()って二人を追い続ける謎の男。

 

「やぁやぁ、はやてさん」

「スモークチーズなら家や」

「レアチーズになって出直して来い。……じゃなくてさ」

「スライスチーズも家や」

「お前の晩飯それにするぞゴルァ。……じゃねぇよ。後ろの『あれ』さ」

「……わかってる。わたしもメガネキャラになるところやった」

 

 二人が言っているのは、無論、謎の男のことであった。

見た目は、くたびれたスーツを身に纏った中年男性。

しかし、二人の目には『普通とは異なること』が起きていた。

 

「テレビでもない目に砂嵐とはこれ如何に」

「普段なら中二病展開キタコレなんやけど……」

「どう考えても厄介事フラグです。本当にありがとうございました」

「そうやなぁ……五時、八時下や」

 

 はやての二つの単語。

その直後にひなたの背後から鋭い木片が勢いを伴って飛んでくる。

しかしそれを、ひなたは見ずに、一本目を避け、二本目を跳んで躱す。

 

「とうとう足まで狙い始めたぞ、あのとんでも」

「理性ないような動きしといて、よー狩りしよんなぁ……ああ、本能かなぁ?」

「速攻保健所行き確定ですねわかります。……なんかノイズがおかしいんだけど」

 

 そう。『普通とは異なること』とは、視界に映る男の姿に、極彩色のノイズが掛かっているということだ。

 それだけではない。

周囲の光景にもノイズが走る。

垣間見える極彩色の奥には、陰鬱とした雰囲気の森と緑の炎。

その中心である男の姿は、ノイズの向こう……異形の姿が表に現れつつある。

 

「そろそろ本気でヤバい件」

「色んな意味でなー。あ、四時右上に降り下ろし、九時下から突き。六時加速突きや」

「はやての認識能力、も色んッ、な意味でヤバい件。おおっと!」

 

 先程からはやてが言っているのは、男の攻撃が来る方向だ。

木片らしからぬ軌道を描く攻撃を、はやてはひなたの死角を埋める形で支持していたのだ。

――異常なまでの空間認識能力。

それが今の、現状でのはやて最大の武器だ。

 

「ここではやてちゃんからのバッドニュースや」

「Don’t 来い」

「許可として受け取るで。おっちゃんは化物になりましたー」

「わーわらえなーい」

「ひなは物理的にもなー」

【笑えない冗談です】

「「ですよねー」」

 

――あれ?

今この場で、この状況でそう思ったのは仕方ない。

明らかに聞き覚えのない声が会話に入ってきたのだ。

 

後方の男? ――違う。そもそも女っぽい声だ。

はやて? ――違う。間違ってもお堅い口調なやつではない。

ひなた? ――違う。声変わり前とはいえ、そこまで声は高くない。

 

むしろ、その声は電子音声というやつだ。

 

「うぉー、いッ!?……こ、れ以上の新展開とか、日野さん過労死しちゃうんですがねぇえッ!!」

【疲労状態46% 過労死とは程遠いと断言します】

「精神的なッ! 状態だっての……んで、君は?」

【型式番号:SD―01F 正式採用型、BTA式インテリジェントデバイスです】

 

 その電子音声は機械的に、事務的に淡々と答える。

何処から声がするのか、二人は気になるものの、

背後からの攻撃がそれを許さない。

ひなたとの言葉が所々おかしいのはその所為だ。

 

「とどのつまり……なんだ?」

知性的装置(インテリジェントデバイス)……? 機械的な相棒やな!」

「どこぞの愉快犯型魔術礼装的な? ぅぉっち!?」

【検索該当。非現実的と断言します】

「たしかにあれと一緒にしちゃいかんわな」

「アンバーさんのことは後や」

 

 あれ、どないするんや、と指差すはやて。

後方の男、その姿は既に人ではなく。

――腕が長く肥大化し、くびれの欠片もない球体のような胴体。後方に垂れ下がった枝状の尾。

――まるで足のような手を無理やり生やした顔の無い頭蓋骨のような。

 

【検索該当。古代遺産(ロストロギア):ジュエルシードと断定。現在起動状態と確認】

「要は危ない物……って認識でええんかな? デバイスさん」

【肯定。ジュエルシード……総数21からなる結晶体で、ただ一つでさえ大きな魔力を内包する物質であり、このままでは近隣周辺に多大な被害となる可能性:92%】

「九時三時六時下。なら、どないすればええのか、教えてくれんか?」

【了解。既に策はあります】

 

 

……できれば早く助けが欲しいんですがねェ!?




ここで敵情報。
『玉頭骨/ぎょくとうこつ』
幼少から大学まで天才として名の通っていた男のジュエルシード融合体。

勉強漬けで徐々に頭の固い性格へと変化していた性格が、大きな頭蓋骨として現れ、それを支えているのが『他者への優越感(右腕)』と『異性への逆恨み(左腕)』、そして『無意識の重圧(脊髄ノ尾)』である。
元々は、人に気配りのできる好青年であったが、周囲の馬鹿さ加減、片思い相手の最悪の正体、親からの言葉によって生まれた無意識の期待(重圧)に苛まれていたところにジュエルシードを拾い、取り込まれてしまう。
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