回転割砕の魔導右腕(ライトアーム)   作:変色柘榴石

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日常パートはやっぱり難しい


九話「こちら海鳴市郊外海鳴温泉内旅館」

「旅行とな」

 

 ひなたの魔導師として初の戦闘から数日。

これと言ったトラブルもなく、はやてとひなたは穏やかな日々を過ごしていた。

 デバイスの名前を『レオブロウ』として改めて設定し、仮想戦闘や並列思考(マルチタスク)訓練にようやく慣れ、それそろ半人前から抜けてても良いんじゃなかろうかと考え始めていたひなたに、高町家から電話が届いたのだった。

 

『うん、すずかちゃんの家とアリサちゃん、まりちゃんと鈴ちゃんも一緒にね、おっきな温泉行こうかって話になったんだ』

「美由紀さん辺り……ってか美由紀さんが『温泉行きたいナリー』なんて言ったんだろ、テレビ見て」

『お姉ちゃんそんな語尾無いよう……、まぁ合ってるんですけど』

 

流石、御神流とメシマズでプラマイ0の一般人さんやでぇ、とひなたは下らないことを考えつつも、なるほどなーと、言っておいた。

 あちょい待ち、と電話の向こうのなのはに待ったをかけ、電話口を軽く塞ぐ。

 

「温泉に、行きたいかー」

 

ゆるい声のしばらく後に、おー、とはやての賛成の声が上がる。

ふむ、とひなたは頷き、

 

「二人分追加な」

『……え、何今の』

「大海横断するクイズ的な掛け声。ちょうど見てた」

『そ、そうなの……何かあったらまた電話するね』

「あいあい、はやてー、温泉旅行とマイラケ準備なー」

 

 今度こそお嬢様コンビに勝ったるでー! と楽しそうなはやての声が奥から聞こえてくる。

その声が聞こえていたのか、電話口からなのはの苦笑する声が聞こえる。

それじゃあなー、と電話を切り、ひなたははやての旅行準備を手伝いに向かうのだった。

 

 

 

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「ほほう、こいつが噂のユーノスか」

「ユーノくんだよ……」

 

 旅行出発の当日。

なのはたち子ども組の乗る士郎の車と、忍たち青年組の乗るノエルの運転する車はゆったりと温泉旅館へと向かっていた。

 

 尚、当初ノエルの運転する車は忍が運転するはずだったが、忍が隠れスピード狂なのをすずかが申告……青年組は身の安全の為にノエルに運転を頼んだのは一種の余談である。

 

「でも悪いなー、こんな大人数に加えてもろうて」

「気にしないでいいよ、はやてちゃん。旅行は大人数の方が盛り上がるからね」

 

申し訳なさそうにするはやての言葉に、運転席の士郎がすかさず言葉を入れる。

同席する他の皆も同じ意見なのか、同意するように頷いている。

 

「士郎さん太っ腹通り越して破裂してるんじゃなかろうかってぐらい親切心の塊で……あー、いや、高町家含む旅行参加者もそうか。それを流石に無下にできんべ。てかできん、主に同年組で」

 

ひなたの言葉に苦笑するすずか、ニコニコと微笑んでいるなのは、何故か誇らしげに胸を張るアリサを見る。

 その光景に思わず口角が上がり、脳内で納得する。

改めて、自らの周囲は――幼馴染の無表情少年を含めて優しい人ばかりだと、はやては理解した。

 

「……それも、そうやな。士郎さん……改めて、今日はお世話になります」

「はい、こちらこそ」

 

はやての言葉に士郎は笑顔で返答する。

――優しい旅行は、まだまだ始まったばかり。

 

 

 

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 温泉旅館に着いた頃。

ユーノス……ではなく、現在フェレット状態のユーノ・スクライアは、なのはから聞いていた二人に目を向けていた。

 

無表情の少年、日野ひなた。

車椅子の少女、八神はやて。

 

この二人も、すずかやアリサ同様小学一年生からの付き合いだという。

 そして、ユーノは気付いている。

二人の魔力に。

 

『(じゃあ、ひなたくんもはやてちゃんも私と同じってこと?)』

『(いや、潜在魔力と言うのは感じ取りにくいんだ。僕だって、なのはがレイジングハートを起動するまで魔力の大きさに気付かなたったし、気付けたとしても『素質があります』程度にしかわからないんだ)』

 

 なのはの外見こそ、他の皆と談笑してはいるが、並列思考(マルチタスク)によって別の思考を使い、ユーノと念話で会話をしていた。

ユーノ曰く、未覚醒状態のリンカーコアは目を閉じた状態と同じと言うこと、となのはは聞いたが……

 

『(つまりどういうこと?)』

『(リンカーコアが稼働状態……魔法が使えるぐらいにはなっている状態だね)』

『(それってつまり……魔導師かもしれない、ということ……なのかな)』

『(多分ね。現地の魔導師なのか、なのはと同じで――)』

『(ちょっと試してみるの)』

『(後天的に、ってなのはァァァ!?)』

 

この娘、何を思ったのか(くだん)の二人に念話を送り始めたのをユーノは感じた。

 確かになのはは思いのほか頑固で行動派だとは分析していたが、ここまでとはさすがのユーノも思ってはいなかった。

 そしてユーノが止める間もなく、なのはの念話が二人に届く。

 

『(犬も歩けば)』

 

『(飼い主放置……おや、この面白味のない問題と声は……)』

『(道が開く……おお、この平凡な問題と声は……)』

『『((なのはか/なのはちゃんやな))』』

 

『(どうせなのはは平凡で面白味のない子ですよーだ)』

 

シリアスな展開なんてなかった。

わけのわからない電波を拾いつつも、ユーノは安堵した。

 毎度ながら心臓に悪いと思った。

しかし、なのはは思わずジトッとした目で二人を見てしまった。

そこまで本人にとっては、少しばかり悔しかったようだ。

 

「ん? どうしたのよ、なのは。そんなに二人を見つめて」

「え、いや、別に……」

「キャー、タカマチサンガイヤラシイメデミテクルー。これから温泉だから俺たちの裸でも想像したのか。いやらしい、流石なのはいやらしい」

「キャー、ナノハチャンノエッチー。未発達なお胸様揉ませてくれたら許したる。エロも辞さない」

「なのは、アンタ……」

「なのはちゃん……」

「地味に引かないでよ二人とも! 全ッ然違うし、ひなたくんたちに言われたくないのおおお!」

 

 騒がしい旅行も、まだまだ始まったばかり。




「犬も歩けば飼い主置き去り」
類義語:迷子相手の後方注意

「犬も歩けば道が開く」
反対語:肩で風切れば人避ける


・その頃の聖刃くん
「はっはーッ! 今日は読書三昧――」
pipipi
「なんすか師匠」
『温泉行くぞ馬鹿弟子』
「いやだい! 今日は終わクロ読破するって『来 い』あい」
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