回転割砕の魔導右腕(ライトアーム)   作:変色柘榴石

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何とか書き終えて投下ー……
ちょこっとだけ次回予告からのタイトル変更。
突入の導入書くだけで8000文字近くとかツラァ……
更に増えて四部構成か一話一話、別になるかと思います。


二十四話「総力戦記」(Part:A)

 暫らくして、なのはとフェイトが艦首へと戻ってきた。

 正真正銘の全力全開だった故に、二人はよろよろで互いに肩を貸しながらやって来た。

 

『(フェイトさんに、母親が捕まるところを見せるには忍びないことだから、別室にお願いできる?)』

 

 なのはさんもお疲れの様だし、と続けるリンディの言葉に、ひなたは無言で頷く。

 ひなたは帰ってきた二人の前に立ち、

「お疲れさん。今は休んどけ」

 と、ただ一言。そう言って二人を連れ出そうとするが――

 

『プレシア・テスタロッサ、及び林育怪(しげなりあやし)! 管理局だ。大人しくしろ!』

 

 艦首の中央モニターに映るのは数人の武装局員に杖を向けられて囲まれている女性と男性の姿があった。

 女性の姿は床に引きずるほどの大きな黒いマントに露出度が高めな、如何にも『悪の女幹部』と言わんばかりの姿。

 もう一人。男の姿は単純に白衣姿で、その男は何故か左腕を抱え武装局員をニヤニヤと嘲笑(あざわら)っている。

 

 艦首にいる全員も思っただろう。

 モニターに映る『林育怪』という男は、まるでアースラにいる全員までも嘲笑っているようにも見えたことを。

 そして、その男は口を開いた。

 

『だァ~れが大人しくしますかァ? それともォ……』

 一息。(あやし)は一瞬顔を伏せて、再び顔を上げた。

『ごめんなさーい! もうしません許してくだーい! 僕が悪かったです――』

 今にも泣きそうな表情で言い放たれた言葉に、プレシアらしき女以外が怪の変貌ぶりに狼狽(うろた)えてしまう。

 そして言い終えた怪の顔は再び一変。人を限界まで馬鹿にしたような態度で再び口を開いた。

『なァ~ンて言っておけばいいですかァ? 非殺傷設定なんて甘っちょろいことしてるから、いつまで経っても犯罪者が減らねェンだよ! ま、安心しろよォ?』

 怪の左腕を抱えていた右腕を振る。

 振り払う動作と同時に、暗色のマントを翻してギアナイトがプレシアと怪の前に現れる。

 

 

――穏剣(おんけん)六本骨爪(ろっぽんっこっそう)

 

 

 ギアナイトの胸部装甲がスライドし、六つの穴から藍色の魔力刃が武装局員の手足を刺していく。

 血が出ている所を見ると、どうやら殺傷設定らしいと魔導師達は思った。

 それ以外でも、少しばかり顔が青ざめている。

 

『この女のクローン技術と、ボクのコイツ(ギアナイト)を作った技術が合わされば、世界から争うを断絶できる。根絶できる。平和な世界ができるんだ! そうすれば、ボクはその首謀者として英雄になれるんだ。絶対無敵。唯一無二。孤高のラスト・アクション・ヒーローになれるんだァァァー!』

 

――狂っている。

 ただの英雄願望ならどれだけ良かったものか。

 平和=争いが無い、を統治も何もない、力で蓋しただけの稚拙な世界で、ただこの男は『英雄』になろうとしているだけだった。

 それはまるで、歪んだ英雄願望を持ったままの子供が何も学ばずに成長したかのような――

 

 不意に。

 怪が忘れ物をしたかのような軽さで言葉を告げた。

 

『君たちが先程保護したガキ。それクローンだから。この(プレシア)のォ~、実の娘のォ~、そっくりなお人形さんでェ~す』

 

 艦首にいる全員が驚愕し――たわけでもなかった。

 驚いているのはアルフとなのはぐらいだ。

 

「あー、うん。だろうと思った」

と、ひなたは申し訳なさ気に頬を掻き、

「予想はしてたなー」

というはやてはアハハと顔を逸らし、

「私も、戦いの最中にもしかしたら、って」

 言われた本人は薄々感付いていた様だ。

 

『チッ。面白くないガキ共だなァー……ああ、それともう一つあったっけ』

 心底面白くなさそうな顔から一変。面白くなりそうだと言わんばかりの歪んだにやけ顔で怪は言い放った。

 

 

 

『そこにいるだろう『日野ひなた』の両親と姉君を殺したの、ボクですよ』

 

 艦首が、ピシリと凍りつくのを、誰もが感じ取った。

 

 

<>

 

 

『当のご本人はお気付きでしょうが……君の両親と姉君は管理局員でしたねェ。『陸の鬼』、セイジ・フォン・ベルリッヒンゲン・ヒノと『海の魔女』、アルサルカサ・ヒノ。その長女、『開発局の神童』、アカシ・ヒノ』

 一息。

『全員、貴方のことを心配してましたよォ? その死ぬ間際までねェ!』

 

 艦首にいる全員が、ひなたへと眼を向けた。

 言われているひなた自身に変化はない。放心状態なのは心なしか、心ここに非ずとそう感じた。

 しかし――

 

「そうか」

 

 ただ、一言。

 しかし、いつも言葉に感情を持っていたひなたの言葉は、今は何も含まない無色の声色になっていた。

 

『ああ゛ァ~? つまんねェ反の「ならば潰そう」――お?』

 怪のつまらなそうな顔は再び変わり、だんだん面白くなることを期待するような顔になる。

『で? で? どう潰すんです? ボクを』

 

 鼻息を荒くして捲し立てる怪に対し、ひなたの答えは――

 

「まずは計画を潰そう」

『ふんふん――え?』

 

 期待の顔が無色になる、とはこのことなのだろう。

 怪の表情は茫然自失同然に顔が呆ける。

 それを気にすることなく、ひなたは言葉を続けた。

 

「お前の英雄願望は直接には潰せそうにない。だからその道を潰す」

『な、何を言って――』

「お前は殺さんよ。撫でて壊れるわけでもなし、むしろ壊してしまってはお前にとって目論見道理だ」

 一息。

「死して英雄になど――させんよ」

 ただそれだけだ。と言い残し、ひなたはなのはとフェイトの首根っこを掴んで艦首を離れていった。

 

 

『は、はは――させない。させないぞ。ボクノ夢を、希望を。壊させないんだからァァァーーーッ!!』

 

 艦首のモニターの映像も、怪の絶叫と共に切れる。

 一時の間を置いて、リンディが声を張り上げる。

 

「クロノ執務官、カンジュ二等空尉は協力者の皆さんと協力して、プレシア・テスタロッサ及び林育怪の確保を」

「は、はい!」

「了解」

「協力者の皆さんも、お願いしますね」

 

 聖刃やはやてを含む地球出身の子供たちは一様に頷いた。

 その顔は様々だ。

 

 

「あの顔イラッてしたけど、その役目は日野がやるだろうし。八つ当たりで白いの(ギアナイト)斬ってこよう」

【ええ。私も少しイラッと】

【っつーかあれ、イラッてしない方がおかしいって】

【あの下種……我らの魔法で斬ってくれよう!】

「【【だから相手違う!】】」

【ぬ?】

 

 聖刃とデバイス達はリベンジの意味合いも含めて相手を定め、

 

「私はここでみんなのナビゲートやな。エイミィさーんマップデータとデバイス無い子の通信機貸してくれへーん?」

 

 裏方から徹底的にサポートしようとするはやて。

 

「最近まともな戦闘してないんだけどなー……めんどい」

《御堂。そうは言っても、友の為です》

一根(かずね)の言う通りです御堂。我らも全力で参ります故》

 

 人間大の団子虫の上でダレる鈴になんとか奮い立たせようとする団子虫(一根)天道虫(二枝)

 

「ついに僕らの戦闘シーンキタコレだね!」

「読者はわかるんじゃないかな。色んな意味で」

「「歌は脳内再生でオナシャスッ!」」

【め、メタい! メタいデスよ二人とも!】

【数少ない出番だからね。ツッコミが映えるねキリちゃん】

【こんなところで映えてどうするデスか!?】

 

 シリアスなんてなかったと言わんばかりにワイワイ叫ぶ双子&双子デバイスズ。

 

「なーなーリンディさん。あくまで『拾ったガラクタ』は貰ってって良いか?」

「私とフェイトさんたちに許可通したら持ち帰っていいわよー」

「うぇーい!」

 

 艦首にいるクルー全員が(良いんだ……)と思うような会話をするまり。

 

(われ)ははやての手伝いをしよう。今はそれしか手伝えそうにない故な」

「わー、ありがとうな巡ちゃん。早速やけど、エイミィさんと一緒に役割決めよか」

「うむ。承知した」

 

 エイミィやはやてと共に裏方で準備を開始する巡。

 

 

 各々の顔に陰りはない。

 魔導炉の停止とプレシア達の逮捕という前提(建前)に、それぞれが動き始める(好き勝手に動く)仲間達。

 今この場所に、悲しみはいらないから。

 

 

 

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 アースラ内にある医務室。

 そこのベッドの上に、なのはたちはちょこんと座らされていた。

 そんな二人の前でひなたは両腕を回して準備運動をしている。

 

「あ、あのー……ひなたくん?」

「なんぞ?」

 

 おずおずと手を()げるなのはに対し、いつも通りの反応をするひなた。

 なのは自身は何かを気にしているのか、えーとあのと言葉を濁す。

 何を言おうとしてるのかを流石に察したひなたは、なのはよりも前に口を開く。

 

 あー、うん。と少しばかり言葉を選んでひなたは、

「別に気にしとらんよ。親のことは」

 先に開かれたひなたの言葉に戸惑ったなのはは、挙げていた手と共に胸に抱え込む。

 まるで自分のことのように。

 だからこそ、なのはは言葉を紡ぐ。

「……でも、ひなたくん。あの時怒ったんだよね……多分、はやてちゃんも気付いてた」

「マジでか」

 返事だけは相変わらず短いひなたに、なのははただ、うんと小さく肯定する。

 今度はなのはがフェイトに首を向け、言葉を紡いだ。

「ひなたくんね。本当に起こったときは驚いた時以上に、ん~これでもか! ってぐらい瞳孔が開くんだ。その時のひなたくんの目がすっごいこわいんだー」

 目元を指で上下に開いて表現するなのはに、思わずクスリと笑うフェイト。

 予想以上に面白かったのかフェイトも言葉を返そうとするが、少しばかり声が震えてしまっている。

「そ、そう、なんだ……! ごめ、ちょ、とまらな……!」

 どうやら思った以上にツボだったようで、腹を抱えてベッドに倒れこむフェイト。

 そこで二回。カシャという音がする。

「え、何今の」

「なのはの変顔とフェイト嬢の貴重な爆笑シーンですが何か」

【記録。実に良き被写体でした】

 ごちそうさま、と二人に合掌するひなたになのはは、

「……はぁ。いいよもう。せっかく心配してあげたのに」

 と溜息をつく。

 その様子に、何故か目を見開いているひなた。

 なのはは、どうしたの? と声を掛けると、

「どうしようレオ。なのはのツッコミが無いんだけど」

【怪奇。恐らく魔力酔いによる意識混乱が続いていると判断】

「二人ともすっごく失礼なの」

 

 

……人のせっかくの厚意をなんだと思ってるのかな。この主従は。

 

 でも、となのはは思う。

 どんなことがあろうと、何も変わらない幼馴染の姿に、元気付けるつもりが逆に元気を与えられた気がする。

 (魔法)を手に入れて、自分がまだまだ未熟だって気付かされて。

 友達が知らない間に危険になってるのを知ったり、色んな辛い事、悲しい事が重なってきている。

 知らず知らずに、自分で自分を追い込んでいたのかもしれない。

 

……誰かが傷付く前に。誰かが悲しむ前にって。

 

 思わず、この前の帰宅時に思いっきり熟睡しておけば好かったかも、となのはは心の中で呟いた。

 あの『昔』みたいな、一人からの始まりではない。

 ひなたにはやて。聖刃に、今は鈴達もいる。

 みんながいてくれる。そばにいる。独りじゃない。

 

 故に、

「もう、何も怖くないもんね」

「……さて、二割冗談はさて置き」

「人の決意かき消すような言葉はやめてほしいと思うんです」

 頭がぐでんと落ちるなのはに気にする様子もないひなたは、

「知らんな。ほれ、背中出せ。つか脱げ」

「うー……って、はい?」

 今一ひなたの言葉が理解できなかった(したくなかった)なのはは、言葉を聞き返す。

「えー、あの、今……なんて?」

「いやっはっはっは。ちょっとした裏技でなー。(じか)の方が効くらしい」

【安心。流石に女性の胸元に手を置くのは危険と判断。しかし、(いや)、故に直接『肌に触れた』方が効率上良いので。悪しからず。なのは嬢、フェイト嬢】

 

 レオブロウを起動させ、わきわきと手を動かすひなたに、ベッドの上で後ずさるなのは。

 横にいるフェイトに助けを求めようとするも、

 

「あの、えっと……優しくしてね?」

 何このかわいい生き物。シーツを両手で掴んで口元を隠し、笑い泣きの直後だったのか目がまだ潤んでいる所に上目遣いの追加攻撃。

 フェイトちゃんマジ天使ぐうかわ……! 、と口から出そうになるのを必死で抑えつつも分割思考(マルチタスク)でこの状況をどう切り抜けようかと考えていた。

 

「(そこで問題! この状況でどうやって回避するか? 三択、一つだけ選びなさい……①超絶美少女である高町なのはは画期的ひらめきでこの状況を回避する。 ②もはや誰でもいいからこの医務室に乱入してきてくる。 ③どうせみんなナニカサレル。現実は非情である。……やっぱり――)」

 

 何も、起きない

 答え、③であった。




2014/01/04:ご指摘により後半削除
2014/01/24:後半部分一部追記
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