回転割砕の魔導右腕(ライトアーム)   作:変色柘榴石

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お待たせしました。後編です。
スランプ気味です故、クオリティが下がっているかと自ら思うところがあります。

ですが、今はこれにて――


三十一話「拳 ―KOBUSHI―」(Part:B)

 重たくぶつかり合う音が鳴り響く。

 ガン、ゴン、ゴガンと。

 

 ひなたの魔力を纏った拳がジ・オーガの堅牢な腕とぶつかり合う。

 一つ、二つ、三つ。

 重く、正確にぶつかり合う鋼と鋼の光景はいわゆる千日手……互角であり決着がつかない。

 

――否、否。否である。

 

 この場合はひなたが()されていると言っていい状況だ。

 つまり目の前の巨大な鋼を倒すこと以外、勝利はないと。

 

 胴部の肩の、その付け根。上部の蓋が開くと規則的に並ぶ穴がある。

 人を容易く貫く穴。殺すための口……銃口。両肩合わせ計十六の銃口がひなたを狙う。

 理解するよりも速く、体が回避を選ぶ。

 バックステップで下がった直後、ひなたのいた場所を銃弾の雨が襲う。

 鉛の雨はひなたにの後を追い掛け、銃痕で線を描く。

 追従から逃れるためにバック転、ハンドスプリングから壁に跳び移り、壁を蹴ってジ・オーガの頭上へと躍り出る。

 

 

――ナックルバルカン (ツイン)モード

 

 

 ひなたの両腕を環状魔法陣が囲い、片方四つ……計八門のガンスフィアから赤紫色のシューターが連続で放たれる。

 踊るように身体を翻しながら両腕(銃身)と体の向きを向けたままジ・オーガの背後に移動する。

――しかし、

『効かないデスねェ! そんな豆鉄砲!』

 

 嘲笑うジ・オーガ()は肩の付け根にあるバルカン部分をスロットゲームのスロットのように回し、その向きをひなたに合わせ再び発砲し始める。

 両腕(銃身)をジ・オーガに向けつつ両足のスピナーを移動用ローラーに変えて蛇行後退し弾を避け、シューターを集中させつつジ・オーガから距離を開ける。

 

 ジ・オーガの逆間接の巨大な足が足の関節そのものを外側に回し、胴体が腰を起点にひなたへと身体全体を向ける。移動せずに、この巨大な鋼は無駄のない反転をして見せたのだ。

 

……性格は最悪だが、技術だけは本物だよホント――!

 

 再びバルカンでひなたを狙おうとした瞬間、ジ・オーガの背後から衝撃が走る。

――砲撃だ。それがジ・オーガが前のめりにバランスを崩させた。

 

『ウザイ音は――ここか、なぁッ?!』

 

 背後へと向けられた鋼の腕が関節を逆に曲げ、腕の先にある四本爪の交叉点から砲身がせり出てくる。

 しかしその先に人影はない。

 

 それは、上にいた。

 瞬発力に長けるフェイトがなのはを抱え、ジ・オーガの直上へと移動し、なのはは静かに狙いを定める。

 

 

……フェイトちゃんへの反動が無くて、速度と貫通性を――!

 

――スピアーバスター

 

 

 僅か1.25秒。咄嗟に作り上げた即席の単発式速射貫通砲撃魔法。

 しかしその威力は凄まじく――いや、正しく鋭いという言葉が出てくる一撃だ。カノンモードのレイジングハートから放たれた一筋の桃色が、巨大な鋼の腕に穴を開ける。

 細く、鋭く、速く――洗練された槍の如き一撃が何度も放たれる。

 

 一つ、二つ、また一つ。

 射撃魔法(シューター)のように連射された単発式速射貫通砲撃魔法(スピアーバスター)が、堅牢な鋼の腕の風通りを良くしていく、

 ライフル弾。様子を表すのなら、この表現が最適だろうその一撃。

 砲身でもある腕が貫かれ、腕の中の砲弾が誘爆され、砲身を出した腕が爆発する。

 

『――チィッ! うっとおしいんですよォ!!』

 

 破壊されず健在なもう一方の片腕がガコンと一揺れし、次の瞬間にはなのは達のいる方へとぐるんと勢いよく振り上げられる。

 振り上げられた鋼の腕が二人を襲うも、寸でのところで二人分の自動防御魔法(オートプロテクション)が間に入る――が、衝撃を殺し切れずひなたのいる方向へと飛ばされてしまう。

――しかし、飛ばされた先にはひなたが両腕を大きく広げ、両手に魔法陣を用意し、待ち受けていた。

 

「キャーッチ……ッ!」

 

 待っていたと言わんばかりにひなたは全身に力を込めて両手をさらに伸ばす。

 なのはとフェイトは空中で体勢を立て直し、互いにひなたが両手の魔法陣……反発型空間固定魔法『ジャンプフローター』に勢いを溜めるように足を曲げて着地する。

 受け止めた魔法陣を展開しているひなたの両腕はぐぐっと後ろに流れる。

 限界まで伸びきった上半身の中から小さく軋む音がするのをひなたは――それを無視した。

 

「アンド……!」

 

 フェイトの呟きと共にバルディッシュがグレイヴフォームに、カノンモードのレイジングハートから槍の穂先のような桃色の魔力刃が形成され、同時に着地した勢いがジャンプフローターが二人の足下に集束する。

 見様によってはそれは二門の砲台を携えた砲台にも見えるかもしれない「それ」の均衡は限界まで達した。

 

「リ、リースッ!!」

 

 自らを撃ち出さんという意気込みも込めてなのはが声を張り上げる。

 前方に突き立てられた二本の槍を携えた少女二人を投げるようにひなたが腕を振るう。同時、凝縮されたジャンプフローターの魔力が爆発して大きな推進力を生み出され、二本の槍(二人の少女)が射出される。

 

 

――キャノン・ストライクツイン

 

 

「「てぇぇぇえええいッ!!」」

 

 二人の一撃がジ・オーガの堅牢にして巨大な両腕を根元から吹き飛ばす。

 一瞬遅れて、今の状態をようやく理解した(あやし)の絶叫が響き渡る。

 

『あ……? あ、ああ、ああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!?? 僕の、最高傑作(ジ・オーガ)の腕がぁぁぁぁあああああああああああああッ??!!』

 

 絶叫する(あやし)の隙をついてひなたは先程の焼き増しのようにバック転で壁に着地し、ピンボールのように柱から柱へとブリッツアクションで跳び回る。

 それを追い、背部に装備されているミサイルポッドから計三十発のミサイルが放たれる。

 追尾式故に空中でぶつかり合い爆発し、視界が煙幕で覆われる。

 

「――っらぁぁぁあああッ!」

 

 煙の壁を突き破るようにひなたが飛び出してくる。

 だが――

 

『詰めが甘いんだよクソガキィィィッ!!』

 

 胴が、割れる。

 辛うじて人型となっているジ・オーガの両腕の無い胴体が縦に二分される。

 外殻を肩のアーマーとし、人型らしい上半身が内部から出てくる。

 その勢いのまま変形したジ・オーガは振りかぶり、煙幕の中から飛び出してきたひなたを殴りつける。

 

 しかし、それは叶わない。

 殴りつけたはずの右腕に手応えが無い。何故だ。確実に攻撃を当てたはずだ。

 (あやし)の脳内が疑問符で埋め尽くされる。

――答えは単純明快。簡単なことだ。

 

「学習しろよ。クソヤロウ――」

 

――下。(ふところ)回避不可能距離(デッドスペース)

 右腕を何もない空中へ突出した直後。どう足掻いても腕を戻す時間も、至近距離用のバルカンでさえギリギリ届かない懐に入り込まれた。

 (あやし)の目に映るモニターには、両手足のスピナーを火花が散るほど回す年端もいかぬ少年(小さな魔王)の姿。

 うまく見えない顔からは、その目からは、相手に恐怖を叩き付けんばかりの威圧感が放たれていることを、(あやし)は本能で実感した。

 

 何故、上空から飛び出したひなたが下にいるのか。理由は明らかだ。

 ひなた自身、短時間しか使用できない幻術魔法『幻像具現操作魔法(フェイクシルエット)』と『周辺色調同化魔法(オプティックハイド)』だ。

 

 柱から柱へと跳ぶ最中に同時使用し、フェイクシルエットで二体分作り、オプティックハイドで隠した一体を身代わりに、もう一体を突っ込ませる。その隙にオプティックハイドで透明化したひなたが自身では動かずローラーで懐まで移動。

 それが先程までのひなた側の状況だった。

 

……いや、流石に変形したのは驚いたけどさ。

 

 元よりこの幻術作戦は使用するつもりだったが、正直考えておいてよかったと内心胸を撫で下ろす。

 心機一転(台詞から僅か半秒)。意識を入れ替え、さらにスピナーの回転率を上げる。

 

 なのはとフェイトが聞いた、ひなたの両手両足から(うな)り聴こえる駆動音(静かな咆哮)は、明らかに今まで以上の(たけ)りを見せていると感じた。

 まるで、あの両手両足が『獣』そのものかと勘違いさせるほどの駆動音。

 獅子(四肢)、猛る。それ即ち――

 

 

SLG(スピナーリンクギア):3 フルドライブ・マキシマム。物質操作魔法:アースポール承認。フルドライブ一時限定解除により特殊魔法コード『獅子の一撃』を限定解除。我が主、どうぞ】

「一・撃・必・壊ッ!!」

 

――レーベシュラークブレイカー

 

 

 今のひなたができる、最高(最強)の一撃故に。

 

 瞬発的に発動したアースポールによって打ち上げらてたジ・オーガの胴体に、振り子のように振るわれた右腕の拳が叩き込まれる。

 ガリ、ゴリ、ギャリリ。

 拳が沈む。圧し込まれる。捩じ込んでいく。

 

「――――ッ!!」

『■■■■■■■■■ッッ!!』

 

 ひなたの声ならぬ咆哮が。

 (あやし)の声ならぬ絶叫が。

 

「ブ、レイ、クゥゥゥッ――」

『そんな! 嘘だ! 何故だ! 何故だ何故だ、なぁぁぁぜだぁぁぁッ!! 僕が、英雄になれるはずの、この僕がァァァッ!!』

「エ、ン、ドォォォオオオオオオオッ!!」

 

――砲撃にも似た魔力の奔流によって、かき消された。

 

 

 

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 いつ僕は間違えたのだろうか。

 ……いや、『いつから』の方が正しいか。

 

 あの若かったお人好しの最期の言葉……あれで救われた。

 

『君と出会えたことが、馬鹿な僕の……唯一の幸運かもしれなかったね』

 

 誰からも奇人変人と言われ、狂人と糾弾された僕が。

 たった一言。出会えたことが幸運だと言うだけで、たった一言で救われた。

 

 それからある地域の紛争を鎮圧した際に、拠点の街の女の子が小さな花一輪持って言った。

 

『ありがとう。英雄さん』

 

 誰からも褒め称えられたことのない僕が、薄汚れた少女のたった一言で勇気を持った。

 紛争を抑える中、人を殺さねばならないことに心が壊れかけた僕は、その一言で……守ろうと思った。

 

 いつも足りなくて。

 どんな時だって欠けていて。

 何もかもが中途半端で。

 

 それで、いつもいつも一歩が足りなくて。

 

――ああ、だからか。

 僕はその一歩で――諦めてしまったんだ。

 その一歩が足りないと知った(あの子が死んだ)、あの時から――




・即席魔法
感覚で魔法を扱う天才型のなのはと、短期間にして数々の戦いを共にして最適化したレイジングハートが一緒だからこそできた芸当。
尚、この天才型はなのはを含めて今作のみ三人しかいない。

・キャノン・ストライクツイン
ゴムゴムのバズーカとか言っちゃいけない。

・変形のジ・オーガ
マクロス系デストロイドからパシフィック・リムのイエーガー(逆間接)が出てきたと思えばいいと思う(適当)

回避不可能距離(デッドスペース)
( 圭)「呼んだ?」

・ある男の独白
諦めてしまった男の末路。
その一歩を踏み出すには、あまりにも心が脆過ぎた。




 いよいよ大詰めにて。
 物語はついに最終幕となる。
 声は届き、過去に気付けるのか。

次回、回転割砕の魔導右腕(ライトアーム)
第三十三話「ネームイズ」

 しかし心配はない。
 ここは外典。魔導の光のみならず。
――大団円以外認めん。許さん。逃してなるものか。
 ここでは私が法だ、黙して従え……とは誰の言葉か。
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