柘榴石:残念だったな。
恐らく今年最後の投稿。
クリスマス編、正月編も書く予定。
この章、一月で終わるといいな……
アースラの訓練スペースにて、大きくバシンと音が鳴り響く。音の原因は、ひなたの手の平からだ。
ヒビキの拳を、右掌底にて押し、当たる瞬間に引く事で衝撃を抑え、受け止める。その後の反応は、互いの表情は対照的に変わる。
拳を受け止めたひなたは驚愕と感心を。想像以上のパワー、拳速、整った体幹と鍛えられた踏み込み、
対しヒビキの表情は笑顔の一つ。お世辞にも自分は頭がいいとは言えないし、魔法にだって偏りがある。
――だけど出来ることがある。やれることがある。自分を命がけで救ってくれた未来の
ヒビキ自身が今やれること、出来ることは、今はまだ定まらない。本当は戦う必要の無いことなのかもしれない。今起きている事件も、これからヒビキ本人がやろうとしていることも。叩いて解決できる問題も、多くなんてないのは分かっている。
でも、どうしてもと心が震える。胸が高鳴る。思いが溢れる! 時代は違えど、
「――良い拳だ。全文字通り身全霊を込めた、『重たい拳』……未来の俺が羨ましい」
「可愛い義娘が出来て?」
「クッ……かもな」
無表情症が治ったとはいえ、少しばかり表情に乏しかったひなたの口角が上がる。
――伝わった。奇しくも、二人同時に思ったことだ。伝える側も、受け取る側も。意味は違えど、同時に思ったのだ。
互いにバックステップで距離を置き、ヒビキは自己流の打撃スタイルを構え、ひなたは右腕を短く脇溜めに、左腕を下して左右に攻守を分けたバランススタイルで構えを取る。
名目上は戦力の自己把握。それだけで現状は大義名分になる。若干無理やりの気もしたが気にすることはないはずだ。多分。
今は捜索隊第一陣の聖刃、
それぞれ高出力、先陣、フォロー、支援役となっており、保護したヴィヴィオ、アインハルト、トーマ組、ヒビキ、アミティエは増援組として基本待機。
後に備えて休めともお小言を言われるが、現状では「知るか! そんなことより模擬戦だッ!」となるのが目に見えているのか何も言わない。……が、一つ条件。
「せめてバリアジャケットや防護魔法で怪我をしないようにな」
「「はーい」」
「……はぁ」
何やらヴィータに溜め息を吐かれたが気にしない。ひなたは騎士甲冑のみを展開。ヒビキも黄色ベースのボディスーツに軽装甲という珍しいタイプの騎士甲冑を展開する。
「行くよッ! ガーニー!」
【オッケー! 任せてよッ!】
「……まぁ、甲冑だけなんだけどねー」
【ぼ、防御を頑張るってことだよッ!】
ガーニー。正式名称SG-L08、ガングニール。分類としてはシンフォギアデバイスにして、形式番号上は文兄妹のイガリマ、シュルシャガナよりも後輩だが、裏事情として様々な事情が絡んでいるのだが……それはまだ先の話となる。
「お前も行けるな? レオッ!」
【無論。魔法が無いとはいえ手加減は無用です】
「しない、する気もない。する必要がないしなッ!」
【嘲笑。そこだけ聞いたら鬼畜ですね】
「貴様ァッ!」
対しレオ、正式名称BTA-00R、アルムバイン・レーヴェが普通のデバイスではないのは知っての通り。アームドの硬度、インテリジェントの人工知能、ブーストの射出制御が組み合わさる完全専用仕様(という名の過保護とも言えるが……)のハイブリッドデバイスであり、旧名レオブロウから三つの新たな力と、製作者からの機能開放により次の段階へと進んだ『エクステンドデバイス』。これについても今語られることは無いだろう。
「「情け無用! 戦闘開始ッ!」」
最近無自覚気味に戦闘狂が感染し始めたひなたと、どこぞのデス仙人ほどではないが求道者気質のあるヒビキが同時に飛び出し、拳を合わせた。
<>
結論から言えばひなたの勝利だった……が、その勝利も辛勝も辛勝。首の皮一枚、紙一重の決着だったのだ。
打ち、受け流し、打って、受け流して、振るって、掴んで投げて、反転して突っ込んで、撃ち合わせてぶつかりあって……なまじ戦闘スタイルが基本的に似ているが故か、一進一退の攻防が続き、止めようにも熱中している故か聞こえていない。
その光景はまるで七つの玉を集めるインフレ漫画のぶつかり合いのようにも見える。むしろ『ぶつかり愛』というか『殴り合い宇宙』とか、大体その類だ。
そんな戦いを繰り広げた二人はと言うと……
「……という訳で、何事にも限度が……」
「はい……はい……ごめんなさい」
「正直すまんかった」
「申し訳ありません……」
「ごめんなさい……」
いつの間にか出撃していた第二陣の、結果報告をしようと第三陣メンバーを呼び出そうとして、ヴィータから模擬戦中であると聞いて出向いたリンディが見たのは、滾って自分達もと、超絶バトル繰り広げる訓練スペースに入れ替わりに入ろうとするヴィヴィオ、アインハルトの姿。
やりきった顔で訓練スペースから出てきたひなたとヒビキが見たのは、正座させられる
「あー……リンディさん? 何か報告あったんじゃ……直でここに来るなんてなかなか無いから」
「……そうでしたね」
色々と言いたげなリンディに対し、助かったと四人が胸をなで下ろすのも束の間。「あとでにしましょうか」と笑顔で告げられ、四人の顔が絶望に染まる。そんな事はさておきと言わんばかりにリンディは言葉を続ける。
「捜索隊の第二陣がマテリアルズを発見。そこでさらにシステムU-Dと思われる個体の少女が出現したものの、マテリアルの三人を恐らく吸収。その際にアミティエ・フローリアンの妹さん、キリエ・フローリアンを庇い左腕を負傷。その後興味をなくしたようにシステムU-Dであろう少女は去っていったわ」
「システムU-Dが、女の子……?」
ヒビキの言葉に、リンディを除くその場の全員が驚く。聞いていた印象としてはリアクターのような印象であり、一種のロストロギアか何かだろうと秘かに予想していた。その中でアインハルトとひなたはある人物が脳裏に浮かぶ。
「アイ……リインフォースさんのような存在、なのでしょうか」
「確かに真っ先に浮かんだが……なーんか違う気がする」
そんな中、ヴィヴィオとヒビキの顔には真剣味が増している。同時に脳裏に浮かぶのは、黒衣に身を包んだ大人の自分と、黒く蝕まれ血色を瞳に宿す大人の自分の姿。もしかしたら、そうなのかもしれない。過去に経験した、暗く苦しいあの世界を、その少女も感じているのだろうか。
だとすれば、どうすればいいか。どうしたらいいか。
……分かってる。決まってる。今やるべき事は。
「――お義父さんッ!」
その声にひなたが目を向ければ、ヴィヴィオとヒビキの目には確かな意志の火が揺らめいていた。それに、その目に、ひなたは見覚えがあった。フェイトとの決着をつけると決意した時のなのはの目。自分自身の目的を見つけたフェイトの目。他にも多くの人間が同じ顔をした、『決意の目』を。
……揃いも揃って同じ顔しやがって。類は友を何とやら、か。
自分も人のことを言えた
「――リンディさん」
「言いたいことは分かるわ。でもね、叩いてどうにかなる簡単な状況ではないのは確かよ。聖刃君の
そう言ってホロディスプレイに表示させたのは、背後に巨大な手を翼の様に携えた金髪の、フェイトとは違った大人しめな印象の少女。思った以上に想像と違う少女の姿に驚きを隠せないヴィヴィオ達だが、ひなたは一人変わらずな様子で口を出す。
「だが無理じゃない。無駄じゃない。ちょっとばかし難しいだけだ。人海戦術でもいい。数をぶつけるか、なのはのような高出力。はやての大質量、聖刃の斬撃特化、俺の貫通力だっていい。選択肢は『やる』中でしか選びたくないガキの
それに、と一息。間を置く。
ひなたの視線はホロディスプレイに浮かぶ少女――システムU-Dの顔に移る。リンディ達も、自然と視線の先を追う。
「こんな鬱で俯いた顔見せられて放っとけるかよ。こいつらも」
一瞬、ヴィヴィオ達を見やる。アインハルトも同様に、その瞳に火を灯している。
「――あいつらも。無論、俺もな」
過去の事件――PT事件や闇の書事件……いや、正確にはなのはやフェイト等に関わった人間なら、動かないはずが無い。動かないわけが無い。
そう言っていると、帰還した第二陣のなのは達が、揃って何かを決意したかのような顔付きで訓練スペースにやって来た。
「――大人は辛いわ。理屈だらけだもの」
「ええ。だから、感情で動く
「……イイ笑顔するわね」
皮肉ですか? 自分で考えなさい。
ここまで来れば煽られたも同然だった。ここまで言われて、天下の管理局が、艦長である自分が、何より大人が。『小さな女の子』一人救えなくて管理局を、艦長を、そして大人を名乗れようものか。半ば
まずはシステムU-Dの居場所の捜索。同時進行であの硬度の防御を突破する手立てを、と脳内で組み立てつつ、ひなたに出撃の準備をするように伝えて、リンディはその場を離れた。
「あれ、ひなたくん。リンディさんからの報告は?」
「聞いた。んで互いに決意表明を」
「ん。そっか」
「しっかし第二陣が揃いも揃って……聖刃とかどうしたよ」
「ゆうくんとゆなちゃんが『何の成果も』『得られませんでしたァッ!』って一発ネタやってからゲストルームで待機中。泥のように寝てるの。
人間テトリスを見てるようだったと呟くなのは。その状況を想像しきれずに思わず苦笑する。捜索範囲も市内と海上……下手をすれば近場の次元世界に漏れている可能性もあるが故の広さを虱潰し。あとで翠屋のシュークリームでも差し入れてやろうか。
「んで、お前らは訓練か」
「うん。私もブレードフォームに慣れないといけないし、はやては大質量高出力とはいえ修行中でゴリ押しから抜けないと」
「フェイトちゃんフェイトちゃん。それやと私が魔力脳筋みたいに聞こえるんやけど」
「むしろヴァッシュじゃね?」
「誰が
「使用適正、広域系がほとんどだろ? むしろ
「
「本番まで抑えとけ。な?」
「というよりはやてちゃんはニコラスだと思うの。口調とか十字とか。一応教会関係だし」
「……牧師いるんかなぁ、あそこ」
実はホロディスプレイ越しとはいえ、ひなた達は聖王教会と何度か接触している。その原因というのも『闇の書』改め、『夜天の書』がベルカ史の中ではかなり古い方に分類され、先の事件で大部分は失われたものの、残された魔法や残存する虫食い状態の記録は無論、歴史的価値が高い。それの提供の申し出に出たのがカリム・グラシアだ。その若さからは想像も出来ない手腕で聖王教会の上役にまで上り詰めたというが、そういう割には真っ直ぐにお願いしてきたのには少々面を食らったのは記憶に新しい。
――尚、噂ではあるが聖王教会の裏の姿はカリムのファンクラブだとかそうでないトカ。
「取りあえず俺も出て来る」
「第三陣はひなたとヴォルケンリッターのみんなだね」
「各個人での単独捜査が可能。三つのチームの中で自由度は高めやな。八神家、家主と一名抜きとは何事か」
「適材適所。んじゃ、じっくり適当に回ってくる」
「一蹴とな!? 気を付けて行きやー」
「頑張ってね、ひなた」
「お土産よろしくー」
「自分ちのシュークリームでも食ってろい」
/>
拝啓、神様ドちくしょう。後悔未練色々決着つきました今日この頃、同級生の腐った眼のような気配を時々感じるのですが高みの見物、如何お過ごしでしょうか(真顔)
最近、目下の目的は
「ああ、顎はやめて! せめて頭……! 頭で、ああ……!
「ほーれほーれ、ほほほのほ。犬みたいな言動してるくせにネコ(みたい)な子には私は容赦しませんよー」
「ぬわーッ!」
――俺そっくりな白い奴が宙ぶらりんで襲われてる光景を目撃させた件について体育館裏でお話があります。無論、高町式です。くそったれ。
・ヒビキ・ヒノ
未だ多くは語られず、語らず。判明しているのは「
実力はアインハルトに技量で及ばず、ヴィヴィオのカウンターが効きづらい。尚、アインハルトとの初見戦のみ勝利。
・戦闘スタイル
ヒビキはヴィヴィオ同様シューティングアーツ。年齢上ヴィヴィオとアインハルトの間に位置するため修練時期は長い。
ひなたの構えは「血界戦線」のクラウスが地下闘技場で構えた重装歩兵の形。左腕で防御主体の動きを、右腕は最速最短距離で叩き込む短槍をひなたはイメージしている。普段が普段、魔法によるブーストとの組み合わせが主なスタイルな為バランス重視となった。
・お目付け役ヴィータちゃん!
不器用だが気遣いもできる。お子様気質な所もあるけれど勝気で面倒見のいいちっちゃいお姉ちゃん。
多分リンディさんが説教しなかったらヴィータちゃんのお叱りがあっただろう。
・決意の目
立てばイケメン。座ればアンニュイ。歩く姿は背中で語る。
作者はおっぱいのついたイケメンを応援しています。
・システムU-D
最強枠その二。
ひなたの魔力循環同様、上限値以上は発揮しない――が、器そのものが高純度にして高密度の循環魔力に耐え切れず暴走する
・
星光「お呼びですか?」
・ほほほのほ
おや? この感情起伏の少なそうな口調は……い、一体何スさんなんだ……!(棒)
白き衣に身を包み、速きこと疾風の如く。
鋼を手に突き進み、苛烈なること業火の如く。
お呼びとあらば即参上。笑顔とカオスと共にいざ参らん。
次回、回転割砕の
第五話「天嵐カグラ」
愛する仲間、主様の為に空翔ける。
何するものぞ、鬱展開。
待て、而して希望せよ。