回転割砕の魔導右腕(ライトアーム)   作:変色柘榴石

70 / 70
年始を最後に、年末に再開。
ばかはしななきゃなおらんのかなぁ……コフッ

というわけで大変長らくお待たせいたしました。
作業用BGMでゴリ押し更新故、誤字脱字に「ここおかしくね?」などご報告ください。
血反吐を吐きながら直します。

この様子じゃあ空白編も先は長いなぁ……

あ、エドモンは来ませんでした。


B&G10「闇統王」

「つまり、それってもう『変異』しててもおかしくないのかよ……」

「ええ。恐らくは」

 

 跳躍しながら空を進むまりを含めて面々の表情が歪む。

 アミタの言う『変異』とは先に待ち受けるであろう少女型U-Dのことだ。

 キリエなどが出会った際のU-Dは変異前。ひなたなどの予想を鑑みれば、彼女(少女型U-D)はリインフォースのような管理人格なのだろうと予想を立てた。

 しかし制御端末である彼女たちマテリアルズが離れており、現在戦っているであろう露払い組に相対する群体コピーマテリアルズという状況からみて、『無限連環機構(エグザミア)』そのものが暴走状態にある……とアミタは確信染みた予想を言い放つ。

 

 しかしそれは、と聖刃は血の気が引くのを実感しながら内心にて思う。

 

 

……その全てが予想通りなら、だいぶ不味いことになるぞ!

 

 

 聖刃はこの先の事はある程度、朧気ながら覚えている。それが例え大筋のみを辿っているとして、多少の些事が大幅に変わっているとしても。

 それはつまり、管理人格と予想される少女型U-D……その子の正体さえも。その暴走の果てに地球や次元世界が危機に晒されるのはもちろんの事、それ以前に、たった一人の少女が『壊れてしまう』のは明白だろう。

 その強力には本家マテリアルズの協力が必要不可欠なのだが……現状確認できる術はない。

 

「――じゃあ、急がなきゃだな」

 

 誰もが押し黙る中、ただ一人。ブリッツがあっけらかんと言い放った。

 

 

「俺はあんまり頭がよろしくないしさ、言いたいことはいっぱいあるけどゴチャっててよくわかんね」

 

 でも。でも。でも。

 

「とりあえずは、泣いてる奴がいる。これから泣く奴がいる。それがどんどん、もっと増えていくんだろ」

 

 だとすれば、俺のすることは決まってる。

 

「それを助ける。今も、これからも。それが俺自身、この手の力(永劫破壊)の使い道だと思ってる」

「……その手が届かなくても?」

「応とも。届かせる。絶対に絶対、届かせる」

 

 確かめるようなカガミの言葉に、即答で返すブリッツ。

 

「――ハッ……ハッ、ハッ、ハッ……! ンフファハハハハハハハ! ハーッハハハハハハハ!」

 

 少しの間をおいて、声が破裂した。

 

【そ、奏者!? なぜそのように金ぴかの如く笑う!?】

「いや、いや、いや。あの無表情とか、ブッパ魔砲少女とか、俺も対外だが……ククッ、()()()()()()()()()()()()()()とは誰も思わんだろうさッ!」

「セイバ……? キミは何を――」

 

……ああ、そうか。

 

 少年たちを見やり、シグナムは思う。聖刃の言う通りだ。

 あの『真っ直ぐすぎる言葉』を言い放つ者は大抵『()()()()()()()()』ことをシグナム含めヴォルケンリッターは知っている。

 誰かのために全力……死力を尽くして手を差し伸べる。その手が払い除けられようと、あと一歩で届かずとも。『手を伸ばすことを諦めない』……そういう者たちを知っている。

 ――特に。やることを定めた時は、特に。

 

「然り然りッ! 『変異』がなんだ『暴走』がなんだッ! 俺たちのやることは変わんねぇ……斬って叩いて()()のさッ! だろうさブリッツッ!」

「お、おう! なんでそんなハイテンションか分かんねぇが、そういうこった! んじゃ……」

 

 膨大な魔力がブリッツから吹き上がる。栓をしていた間欠泉が噴き上がるように。怒涛のような魔力圧が吹き荒れる。

 

『我が身、光となりて(けが)れを(はらい)

 我が心、器となり悪辣を受け

 我が魂、熱を伝える鋼となる

 (はい)の光を見よ それは導く光と心得よ

 この手の(つい) 悪魔を退(しりぞ)ける(いかづち)を知れ

 轟く雷鳴の下、続け 我が友、我が同朋(どうほう)

 括目せよ 喝采せよ 万雷の喝采を聴け!

 ――【創造(ブリアー)】』

 

 

 魔力圧と雷光の輝きの中から現れるのは、竜を象った白亜の鎧戦士。

 

 

――【雷霆万鈞・電熱招来(トールブリッツ・ドンナーヒッツェ)

 

 振るう拳を握り締め、電竜は(たけ)る。

 

『――さぁ、助けに行こうぜ』

 

 

<>

 

 

 ――満身創痍。

 覚悟はしていた。何かしらの糸口を見つけない限り、これは間違いなく自分たちが不利になると。

 相手は不完全ながら永久機関そのもの。魔力諸々を含めて限界点のある自分たちが不利になるのは明白だった。

 少女型のU-Dは防御外郭を剥がせば攻撃は『通る』筈で、獣型のU-Dは攻撃が核にさえ届けば明確なダメージが入る筈だ。

 

 そう。()()()()()()

 

「プログラムカートリッジ終了まで残り一分!」

「システムU-D、双方健在……!」

「α分隊は急ぎ撤退を! 医療班急いでッ!」

「防護フィールド減衰! もう二、三発食らったら持ちませんよ!」

『いらねぇ区画からエネルギー引っ張って来るから持ち堪えとけ!』

「いくつ‍!?」

『十分……んにゃ、五分!』

「「「――楽勝ッ!」」」

 

 前線後方、双方が慌しく(あわただしく)動く。

 荒波の海の水を人の手で汲み上げるが如く、こちらが必死になろうとも変化はない。

 表すなら……ここはある種の地獄だろう。

 

(両方共ダメージを通す方法が分かっている。ゴールが見えているというのに……!)

 

 そう考えるのはリンディだけではない。この場にいる全員、戦う者達全員が思っている事。

 ――そう。道筋も、行先も分かっている。目の前に、目に見えているのだ。

 しかし、それを阻む壁はあまりに大きく、通す糸口はあまりに小さい。

 あと、一手。その明確な一手がなかった。

 

(システムU-D双方で繋がる魔力ラインを()()()()他ないのに、その手段は今の私たちには存在しない……!)

 

 この魔力ラインは物理的に存在しない。目に見える魔法そのものや魔力残滓は存在する。強力な魔力放出とて色濃く目に映るだろう。

 しかし魔力ラインそのものはエーテル体……実体があるはずもない。それは()()()()()()()()()であるが故に。

 その場にいる全員に、それを断ち切る手段はない。

 

 ひなたの幕引きの一撃……否。あくまで破壊できるものに限る。あれはプログラムという明確な存在があったからこそ。()()()()()()()()()()()()()()()。放つ度に彼の身体に変調があれば、無駄打ちになり戦局は最悪に傾くだろう。

 聖刃の一撃も同様の理由だ。まりの演算能力による直接介入……圧倒的情報量による廃人化が目に見えている。

 

 他に他に、と手段を想像しては破棄する。既存能力ではおそらく好転しない。それこそ、概念を含む()()()()()()()()が必要になる。

 

――脳裏に浮かぶのは、闇の書大規模戦闘時の映像にあった、黒い騎士の姿。

 

 しかし詳細不明で正体も、その行方さえも分からない存在にかけられる時間も思考もない。

 

 今はただ、刻々と迫る少年少女たちの限界(タイムリミット)を眺めるしかできない。

 そんな状況と自分に、怒りが募る。

 あと一歩、あと一歩なのだ。

 

 ……そこで、はたと気付く。

 何かしらの違和感。確かに、顕現したシステムU-Dに対する情報は少ない。

 それがナハトヴァ―ルのように強大であり、無限に程近い魔力量を持つ存在で――

 

 『ナハトヴァ―ル』

 『膨大な魔力量』

 『防衛手段』

 

「……障壁?」

 

 全てのピースが、リンディの中で繋がった。

 

「カガミ特捜の部隊に連絡ッ! 相手の穴は()()です! それを無効化すれば後は――」

 

 勝利の鍵は見えた。あとは前線にいるあの少年たちが鍵穴に差し込むだけだ。

 それをリンディは固唾を飲んで見守った。

 

 

/>

 

 

 

 拳を握り締めて、叩き込む。

 巨大な質量同士がぶつかり合うような轟音が、嵐轟く海の空にて響き渡る。

 

『うぉぉらぁッ!!』

 

 轟雷の力をそのまま拳に込めたような撃音がブリッツとU-Dの魄翼の手とぶつかり合う。

 

「無駄だ」

『無駄でも、通すッ!』

 

 白亜竜の鎧の肩が開き、稲妻が形を成す。それは魄翼の手に対抗したような、轟雷の腕。

 轟雷の腕はブリッツの腕に沿い、魄翼の手を重ね掴む。

 

『今ッ!』

 

 ブリッツの声と共に、U-Dが上を向く。

 そこには既に、剣を大上段に構えたシグナムと聖刃の姿!

 

「駆けろ飛龍ッ!」

「走れ烈風ッ!」

 

 

――飛竜一閃

 

――風 王 鉄 槌(ストライク・エア)

 

 

――飛翔竜一閃(スラッシュ・ストライク)

 

 

 竜の如き炎と荒れ狂う突風が重なり合い、現れるのは途方もなき炎熱の嵐。

 己の失策を知ったU-Dは魄翼を一時消去。自由落下と共に魄翼を再構成し、難を逃れようとする。

 

「逃すはず、ないじゃない」

 

 白紫の光線が魄翼を穿つ。

 一つ、また一つと骨ばった魄翼が文字通りの蜂の巣になっていく。

 光線の先には、巨大な紫の脚甲とそれ以外を隠す外套を纏った少女、カガミの姿。

 

「障壁ぐらい、このシェンショウジンに」

【不可能などないッ!】

 

 小さな鏡たちがU-Dを包囲する。

 舌打ちを一つ。U-Dは魄翼の十の先、この身の十の手先……計二十の黒芯炎刃、エターナルセイバーを現出させる。

 振り抜く勢いを回転に。一瞬の超回転にて放たれた斬撃の嵐はカガミのミニデバイスを破壊していく。

 

「高速形態へ移行。現域を離脱する……!?」

 

 魄翼の指を揃え、戦闘機のような翼に変異し、飛び出した瞬間。U-Dの顔面を壁のような何かが衝突する。

 ――否。()-()()()()()()()()()

 

「言ったろ……逃がさないってな!」

 

 

――強化錬金『壁』、『透』

 

 

 二つに文字で構成された壁がU-Dの行く手を阻む。

 足元に『床』と描かれた足場に立つまりの手から放たれたのは『追』、『加』、『壁』の五セット。

 四方八方を文字の壁に閉じ込められたU-Dが魄翼を再び変形。魄翼の拳を以て壁を殴りつけるも、文字の壁はビクともしない。

 

「キリエ、行きますよッ!」

「オーライお姉ちゃんッ!」

 

「「アクセラレイターッ!!」」

 

 青と桃の光が軌跡を描く。二丁拳銃型のヴァリアントザッパーを減速した世界の中で引き金を弾き続ける。

 軌跡の後に描かれる二色の星々を煌かせ、姉は二刀、妹は大剣に変形を促す。

 減速世界が解かれ、文字の箱に星々が殺到する。その中心へ、姉妹は刃と共に突き進む。

 

「「ファイネストアーツッ!!」」

 

 

――ハイスピード/リッパー

 

 

 超限定的なアクセラレイターによる超高速斬撃の嵐。

 常人には通り抜けと共に、一太刀で幾千の斬撃を放ったようにしか見えないその技に、U-Dは一時的な魔力切れを起こす。それにより魄翼は一瞬消え去る。

 

 ――それは、ほんの僅かな瞬間。U-Dの動きに変化が生じる。

 体の動きが鈍い。システムで原因を探り……見つけた。それは探さねば見つからない背中の中心。何かしらの独のような阻害プログラム。そのプログラムの傾向にU-Dは覚えがある。

 特徴的な、データ毒の胞子!

 

……あの、時か!

 

 脳裏(データベース)に浮かぶのは特徴的な語尾を持つ、『心のマテリアル』の姿。あの時、彼女はただ()()()()()のではない。これを仕掛けるために。彼女はその身を引き換えに、続くこの者たちに託したというのか!

 虚空に笑う『心のマテリアル』の幻影に悪態を思う。

 

 そんな刹那に等しき瞬間に、()は差し込まれた!

 

「捉えた、ぜッ!」

 

 正確無比の転移。シャマルが可能としたそれは、見事にU-Dの胸を貫いた。

 

「ぐッ……!」

 

 胸の中心……魔導師たちで言えばリンカ―コアのある場所。U-Dにとっては自分の中心、『無限連環機構(エグザミア)』が眠る場所にその剣は突き立てられた。

 

「三合剣ッ!」

【風よ吹き荒べ! 光よ輝け、世界よ越えろッ!】

 

 

――翔 光 烈 波(ライジングノヴァ)

 

 

 風王結界、全て遠き理想郷(アヴァロン)を納めたまま放たれた三種の力の奔流はU-Dを突き抜ける。

 ()()()()()()()()()()()()()を乗せて!

 

「が、ああ――ァァァAAAAアアAAAAあああAAAッ!」

「通っ、たァァァ!!」

 

 

 

「――うむ。良くやった。貴様らの健闘、大義である。今までの愚行蛮行、許す。特に許すぞ」

 

 声と共に、黒翼が広がる。

 闇の色。漆黒の闇。黒に潜む翼。

 

「故に、ここより先は我に任せよ。これより先は身内の問題。王たる我の、盟主への説教よ」

 

 その背に、その翼に夕闇と朝焼け。白夜を携えて。

 

「臣下に報いるは王たる我の役目。盟主を諫めるのも王たる我の勤め!」

 

 不敵な笑みを浮かべ、本と杖をその手に。

 ()()()()()は凱旋する。

 

「王のマテリアルD、ロード・ディアーチェ……森羅万象に眠りを与える闇の王に不可能無し! 万物万象我が闇の中にッ! 我ッ! 凱旋であるッ!!」

 

 

 万物の終焉。ここに在り。




・セイバーハイテンション
つまり主人公気質多くてやべぇ、って笑ってるだけ。

・ブリッツから満身創痍の流れ
禁句:即堕ち2コマ

・障壁
ナハトヴァ―ル並みならこのくらいしないと(ゲス顔)
分かりやすく言うと個人フィールド換算で
『大人なのは+大人ユーノ』×(sts過去ゆりかご×50)=今作システムU-D障壁

・ファイネストアーツ
フローリアン姉妹にしか使えない必殺技用起動プログラム。
超過駆動とかドライブ・イグニッションとか。

・データ毒の胞子、ござる忍者の置き土産
コード:サリンの毒胞子。今回の種類は超遅延型神経毒タイプ。
2ターン後にスタン、とかそんな感じ。

・貫いちゃった☆
ヒント:全て遠き理想郷

・ディアーチェ復活! ディアーチェ復活!
ちょっと太陽王混ざったけど気にしない。元からしてネタまみれなこと言ってるし。
……王様をマテリアル『L』にして投稿はしていない。いいね?(震え声)




――次回は我がカルデアに平和が訪れるまで


待て、而して希望せよ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。