Fate/Inferno Order 作:ハイカラ 一方通行
立香side
「重國さん、大丈夫でしょうか?」
私をお姫様抱っこしているマシュが思い詰めたような表情で聞いてくる。
正直心が痛い…けど、
「きっと大丈夫だよ。だって、重國だもん。絶対に何もなかったかのように戻ってくるって!」
「だといいのですが…」
「正直厳しいだろうなぁ…あの黒い剣士、間違いなく聖杯のバックアップを受けてやがる。」
ちょっとクー・フーリン!?余計な事言わないで!?
「ああ、あれは強いぞ。恐らく単純な火力だけなら私よりも上だ。」
「何にせよ、奴の決めたことだ。我々は我々のすべき事をするべきだろう?」
≪そうだね…ん?立香ちゃん後ろからサーヴァントの反応だ。数は2騎。先程の霊基とは違うから、さっきのサーヴァント達ではないと思うけど、一応警戒しておいてくれ。≫
また!?っと思ったが、どうやらさっきのサーヴァントとは違うらしい。
「─────来ます!!」
マシュの声とともに私も身構える。どっからでもかかってこい!!
「ハァーイ!ボンジュール、異国の方々!」
…あれ?なんか想像と違うぞ?あれれ~?おっかしいぞぉぉ!?
「どうやら無事だったみたいね!私はマリー・アントワネット!よろしくね、素敵な異国の方々!」
「は、はい。よろしくお願いいたしますマリーさん。」
「マ、マリーさん?………………」
「あの、もしかして何か気に障りましたか?もしそうだったのなら謝罪しますが…」
「いい!!いいわ!!マリーさん…!いい響きじゃない!羊さんみたいで!」
「それはメリーさんでは…?」
「そ、それはともかくよろしくお願いします、マリーさん。」
「はい!ハイハイハイハイハイハイハイハイヾ(・ω・ヾ)マリーさんでーす!」
なんかいきなりテンション上がったぞこのサーヴァント!?
「そこまでにしたまえマリア。そちらの方々も驚いて固まっているじゃないか。おっと、自己紹介が遅れたね。僕はアマデウス。そこそこ有名な音楽家さ。所でそこのお嬢さんはなにか言いたいことがあるんじゃないかい?」
「え?どうしてそれを?」
「なぁに。君の胸の鼓動が速くなっているからね。そしてその表情から読み取ったことを言ったまでさ。」
「まぁ、アマデウスったら!女性の胸の音を聞くなんてサイテーね!」
確かに…
今日の下着何色だったかな~?…って一体何を考えているんだ私は!?
そういえばダヴィンチちゃんが芸術家サーヴァントは考えることが私達一般人とは思考のベクトルが違いすぎるみたいな事を言っていたような…
「…そ、それよりもドクターから、「すぐ近くに霊脈があるからそこを目指してくれ」って言われたのですが…」
「まぁ!私ったらまた1人で舞い上がって…なんてはしたない!それじゃあ霊脈を目指すとしましょうか。」
そう言ってマリーさんは駆け出して100メートルほど先まで走って行ってしまった。
…なんて落ち着きのない人なんだ!!
「いえ、そこですよマリーさん…今貴女がたっている場所が霊脈です。…とりあえず休憩にしましょう。」
「あら、失礼。コホンッ…それじゃあ休憩にしましょうか。」
「いや、全く誤魔化せてないよマリア…」
ホントにね…
・
・
霊脈に着くと、いきなりスカサハ達が立ち上がった。
「どうしたの?」
「…!どうやら始まったようだな…」
いや、答えになってないんですけど…
「へっ、すげーなこりゃ。」
「なんとも言えない複雑な気分だがね、私は。」
≪凄い魔力の衝突だ…!そこが霊脈じゃなかったら通信が切れていたよ。≫
もしかして重國の戦いの事?…うーん、ここからだとよく分からないなぁ…
「ねぇ、スカサハ。そんなに凄い戦いなの?」
「そうだな…あそこ一帯はまるで神霊同士がぶつかり合っていると錯覚してしまってもおかしくないほどのエネルギーの奔流だ。」
「あんな化け物がいるなんて僕は聞いてないんだけど…」
あっ、アマデウスさんがへたりこんじゃった。
「そうね…確かに凄まじい戦いだわ。もしかして今戦っているのは本当に神霊同士だったりするのかしら?」
「いや、一方は普通の人間だが?まぁ、あれを人間と呼んでいいかは置いといてだがな。」
スカサハおばさんひどい言い草だな。
ウワッ…あの人私がおばさんって思った瞬間にこっちを見たんだけど。エスパーかな?…ありうる!!
「もし普通の人間がここまでの力を出そうと思えばそれこそ魔法とも呼べる力を使わなければ不可能だ。さすがの奴でも相当な無茶を体に強いているのだろう。」
「まぁ!だったら急がないと!」
≪そうしてほしいのは山々なんですけどね~。近くにサーヴァントの反応だ。数は1騎。けどこの人数なら大丈夫だろう。≫
だといいけど、ドクターあんまり信用できないからな~
「こんにちは、皆さま。寂しい夜ね。」
え?夜なのにこんにちはって言うの!?
「先輩、私の後ろに!」
「───それほどまでの風格。さぞ高名な英霊とお見受けしますが、何者なのですかあなたは?」
「さあ?何者なのでしょうね私は。己を聖女たらんと戒めてきたというのに、こちらの世界ではすでに壊れてしまった聖女の使いっ走りなんて…。まったく、彼女のおかげで今の私は理性を保つので精一杯です。だからあなたたちが「もしかしたら」と期待しているようなことは怒らないわ。ごめんなさいね…」
「マシュ。私とあなたで防御を受け持ちます。盾をしっかり構えなさい。」
「了解です。ジャンヌさん。」
あなたたち!話を聞いてあげて!?あの女の人涙目よ!?
「我が真名をここに!私はマルタ!聖女のマルタよ!旅人たちよ。私の胸に刃を突き立て、ためらいなく私の屍を越えて行きなさい。無論私も手加減はしません。さあ出番よ、大鉄甲竜タラスク!」
≪マルタってあの聖女マルタか!?不味いぞ。気を付けろみんな!≫
よく分かんないけど凄い人なのは分かった!
「みんなお願い!」
「任せよ。」
「即興の安物だが僕の音楽を聞いていくがいい。」
「タラスクはあちらの4人を殺りなさい。私はあちらの3人をやります。」
───グオオオオォォォ!
「おもしれぇ…!」
「ええ!やってやろうじゃない!覚悟なさい!」
「マスター。こちらは儂らだけで大丈夫だ。お主はそこの女にのみ集中しておけ。」
「分かった!」
タラスクと呼ばれた竜に向かって突撃していったスカサハを見届けると私はマルタと名乗った女性に向き直った。
「さて、マスター。指示を頼むぞ。」
エミヤから指示をしろとの催促がきた。
じゃあ、えーっと…
「今回エミヤは前衛をお願い。マシュとジャンヌは基本防御で、隙が出来たら攻撃して。」
「「「了解(した)!」」」
「あなたたちの力、見極めさせてもらいます!せやっ!」
バーサーク・ライダー(もうライダーでいいや)がエミヤの剣を弾いた。
しかも
「なっ!?ぐっ…拳…だと…!?」
「さあ、耐えきってみせなさい!鉄・拳・制・裁!」
あれはさすがにヤバい!!
「ジャンヌ!!」
「任せてください!
ジャンヌが宝具でなんとか耐えている間にエミヤとマシュが攻撃する。
「はあぁ!」
「干将・莫耶!」
「…っ!!ちっ、やるわね。でも、それじゃあまだ足りないわよ?」
「マスター、魔力を回せ。私の宝具で仕留める。だが詠唱に時間がかかるからな。その間の防御を頼むぞ?」
「わ、分かった!」
「そのようなことさせるわけがないでしょう!」
「はあぁ!」
「なっ!?…くっ!こざかしい!!」
「I am the bone of my sword.
――― 体は剣で出来ている
Steel is my body, and fire is my blood.
血潮は鉄で、心は硝子
I have created over a thousand blades.
幾たびの戦場を越えて不敗
Unknown to Death.
ただの一度も敗走はなく
Nor known to Life.
ただの一度も理解されない
Have withstood pain to create many weapons.
彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う
Yet, those hands will never hold anything.
故に、その生涯に意味はなく
So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS.
その体は、きっと剣で出来ていた 」
「凄い…」
エミヤの詠唱が終わると、辺りの景色はすっかり変わった。辺り一面剣が刺さった荒野となり、空には歯車が浮かんで回っている。
「これは固有結界!?自らの心象風景を具現化したというの!?「悪いが無駄話をしている時間はないのでね。一気に決めさせてもらうぞ。」…!?」
エミヤはそういうと手を上に上げて、ライダーのまわりに剣をドーム状に展開した。
「食らっていけ!」
ライダーに向かって数えきれないほどの剣が全方位から迫り、ライダーの体を切り裂く。
「ぐっ…!うぐぁ!?」
「これで幕引きとしよう。
鶴翼三連!!」
エミヤの剣がライダーを切り裂いた瞬間、固有結界が解けて、もといた場所に戻った。
「…ふん。ここまでのようね。」
「私の鶴翼三連を直撃で受けてまだ立っていられるのか。化け物かね君は?まったく、英霊とはそういうものだと理解しているつもりだが、実際にそのしぶとさを目の当たりにすると嫌になるというものだ。」
「あら?失礼ね。せっかく此方側の情報を教えて差し上げようと思ったというのに…」
「むっ、それは失礼。非礼を詫びよう。これでいいのだろう?では、遠慮なく言いたまえ。」
「ホントムカつくわねコイツ。まったく私に虐殺なんかさせるからこんな風になるんだってえの!」
「え──マルタ…?」
「まあいいわ。あんまり時間がないから手短に教えてあげる。今のままのあなたたちでは竜の魔女が操る竜と黒のセイバーには恐らく勝てないわ。本当は2体いるはずいるはずなのだけれど、ついさっき黒のセイバーとあんたたちの仲間の人間に4等分にされたわ。…黒のセイバーは結局あの人間を殺さなかったみたいね。」
「重國は生きてるのか…よかった…!」
なんか死亡フラグっぽい感じのセリフだったからすごい心配しちゃったじゃない!
≪殺さなかったってことは、あの重國君が結構ヤバい状況まで追い詰められたってことなのか?≫
「さあね?そこまでは私も知らないわ。そんな事よりもここからが重要よ。竜の方の名はファヴニール。あなたたちは知っているかしら?」
≪ファヴニールだって!?ジークフリートがやっとのことで倒したっていうあの!?≫
「そうよ。そしてそれよりも遥かに厄介なのが黒のセイバー。あのファヴニールをたったの一閃で屠ったあの人間も大概だけど、あいつはそれ以上に厄介だと思うわ。聖杯のバックアップを受けてるから魔力切れなんて起こらないしね。」
「それほどまでの力の持ち主なのか…」
「ええ。恐らく生前よりも強いでしょうよ。背中の弱点も再びファヴニールの血を浴びることによって消えてしまったしね。」
≪背中の弱点ってまさか!?≫
「そう、黒のセイバーの真名はジークフリート。世界最強の
そう言い残してマルタは消えていった。
…ていうかマルタの話通りならいつの間に重國の戦いは終わったんだ!?
「あそこを見てみろ。凄まじい戦いの余波で地形が変わっているぞ?」
いつの間にか戻ってきたエスパースカサハに言われた通りの見てみると、重國が戦っていた場所の地面は斬撃痕が残り、地面からはは赤い氷が突き出てワイバーンを凍らせて串刺しにしていた。
文字通り地形が変わって、地図を書き直さなきゃいけないレベルだと思うんですけど…
エミヤなんか現実逃避をするためかは分からないけどずっと「体は剣で出来ている、体は剣で出来ている、体は剣で出来ている、体は剣で出来ている、体は剣で出来ている…おっと心は硝子だぞ?」とか呟いてるし。
「え、えっと重國は今何処に?」
≪さっきのばしょからはあまり動いてないみたいだけど…≫
「じゃあ今すぐ合流して対策を練ろう。重國にも通信できる?」
≪わ、分かった!ちょっと待ってて。≫
ドクターはそう言って私達との回線を1度切って重國と会話を始めた。
1分ほど待っていると重國との通信を終えたドクターがこちらに話しかけてきた。
≪重國君は戦いで疲れちゃって今少し寝てるから立香ちゃん達に来てほしいってブーティカさんが言ってたよ。≫
「分かったよ。じゃあみんな!重國のいるところまで行こう。」
「「「「「了解」」」」」
「ええ、じゃあ行きましょうか。」
「そうだね。また1人で突っ走らないでくれよマリア?」
「あら、分かってるわよアマデウス。」
「ならいいんだけど…ねぇ?」
そう言いながらこっちを見るアマデウス。
うん…まぁいいけど、こういうときぐらい合わせてほしいな~なんて考える私なのであった。
立香sideout
戦闘中の模写は…まああれだね、難しいよね?そうだよね?
評価感想よろしくお願いします。