Fate/Inferno Order 作:ハイカラ 一方通行
ふざけるなぁ!ふざけるなぁ!!
side日番谷
立香も回復し、大聖杯の場所へと再び歩き始めた俺達だが、先程から謎の悪寒が止まらない。
何か、こう、背中に突き刺さる殺気?のようなものを感じる。
後ろを見ても何もいないし…
フエェ…なんか本当に怖くなってきちゃったよ~
≪重國君、精神状態が安定していないみたいだけど大丈夫かい?≫
「あ、ああ。大丈夫だ。今のところはな。」
「おいおい坊主、しっかりしてくれよ。これから決戦だってのに怖じ気づいちまったのか?」
「いや、そうじゃねーよ!…お前はなんか悪寒みたいなのを感じないのか?」
「悪寒って言われてもなぁ…俺は生前からさんざん殺気とかいろいろ向けられてきたんでね、そういうのには慣れちまってんだ。ま、気にすることはねえ。いずれ慣れる。」
いや、もうすぐ大聖杯の所につくから!悪寒に慣れる前に聖剣で塵にされちゃうから!!
「くそ…!人の気も知らないで呑気なもんだ…」
なんかこれだけのやり取りで疲れちゃったよ…
「おしゃべりはそこまでよ。…これが大聖杯…なんてことなの…これって超抜級の魔術炉心じゃない…なんでこんなものが極東の島国なんかに…。」
ゾワッ!!
なっ!?なんだ今のは!?
「奴さんに気づかれたぞ。気ぃ引き締めな…!」
クー・フーリンにそう言われ、殺気が飛んできた方を見ると、そこには真っ黒い甲冑に身を包まれた女性立っていた。
「――――――――。」
なんだよあれ…おびただしい量の魔力が体から溢れ出てるのが素人目からでも分かるぞ!?
なんつー魔力放出だ…。
それにあれは…女性?
「ドクター、あれは…」
≪何か変質してしまっているが間違いない。彼女がアーサー王だ。≫
やはりか…しかし…
…こんなときになんだが…なんで女体化してんだよ!?あれ本当にアーサー王なの!?なんかすっごい可愛いんですけど!?
「おい、見た目が可憐だからって侮るなよ。ありゃあ筋力じゃなくて魔力放出でかっ飛んでくる正真正銘の化けもんだ。気ぃ抜いてると上半身と下半身がお別れすることになるぞ。」
え!?
「なるほど、理解しました。ようはロケットの擬人化のようなものですね。全力で応戦します。」
それを理解しているにも関わらず挑むなんてやっぱ度胸ありすぎでしょマシュ…「ほう――」!?
「面白いサーヴァントがいるな。その盾…そしてその宝具…実に面白い。いいだろう。貴様は試す価値がありそうだ。盾を構えろ娘!その守りがどれほどのものか見せてみろ!」
ヒエッ!?いきなりかよ!?
「…!来ます!マスター!」
「フッ…卑王鉄槌。極光は反転する。光を呑め!
「くっ!ばんか――」
不味い!卍解が間に合わねぇ!
「ハアァァ!
!?マシュのやつ宝具が使えるようになってたのか!
これならギリギリで間に合う!…はずだ!!
「卍解!大紅蓮氷輪丸!!」
マシュは押されていたがなんとか間に合った。
俺はマシュの肩に手を置いて自分の魔力を流し込んだ。
「ぐううぅ!!え?重國さん!?」
「よく耐えたマシュ!
俺は綾陣氷壁を進化させた技をマシュの体を通してマシュの宝具と同じぐらいの魔力で展開し、マシュの宝具と合体させて黒い巨大な斬撃を防ごうと考えていたのだが、現実はそう甘くはなかった。
「ぐぅ!!」
「これでも押されるのか…!」
2人の魔力を合わせても少しずつだが押されている。
くっそこうなったら!
「立香!令呪をマシュに使え!」
「わ、分かった!令呪をもって命ずる!マシュ、全力でこの攻撃を防いで!」
「ありがとうございますマスター!ハアァ!!」
マシュの宝具に込める魔力が上がるのに合わせて俺も綾陣弐霜氷壁に込める魔力を上げていく。
「これでもギリギリか…!」
両者のぶつかり合いは見事なまでに拮抗していた。
拮抗していた時間は何秒か分からないが自分の体感的には何時間も過ぎたように感じる。それほどの極限状態だったのだろう。
しばらくすると徐々に斬撃の威力は減衰していきやがて斬撃は消えてなくなった。
「やった!!」
「ハァ…ハァ…な、なんとか防げました!」
「本当になんとかな…」
「防がれたか…全力で放った一撃だったのだがな…」
「上出来だお前ら!こっから反撃開始といこうぜえ!アンサズ!」
まったく!もう少し防いだ余韻に浸らせやがれ!
「甘いぞキャスター!その程度で私がやられるとでも?」
「無論そんなこと思っちゃいねえさ!いけ!坊主!」
ったく…
「人使いが荒いんだよ!死輪・群鳥氷柱!」
俺は100本の氷柱をセイバーの周りにドーム状に展開し、撃ち込んだ。
「フンッくだらん。」
セイバーは剣に魔力を込め氷柱をすべて打ち払おうとするが、それは…
ビシイィ!
セイバーが剣を振るおうと1歩踏み出したところで、俺が聖剣を防いでいる間に仕掛けておいた罠が発動した。
「六衣氷結陣。これでお前は数秒間の間は動けねえはずだ…キャスター!」
「任せなぁ!焼き尽くせ…
キャスターがそう叫ぶと突如何もないところから巨大な藁人形みたいなものが出現した。
「そのまま砕け!」
キャスターのその言葉と共に俺もセイバーに向かって突撃していく。
「竜霰架――!?「
その瞬間、俺は黒い斬撃に呑み込まれた…
sideout
side立香
セイバーに突っ込んでいった重國さんがセイバーの宝具に呑まれてしまった…
「重國さん!?」
私がセイバーの宝具が通りすぎたところに行こうとすると、キャスターが止めてきた。
「よせ、嬢ちゃん!」
「でも!重國さんが!!」
「今はそれどころじゃねーだろーが!!しっかりしろ嬢ちゃん!お前がサーヴァントに指示を送らないで誰が指示するってんだ!」
クー・フーリンの言葉を聞いてはっとする。
そうだ…私はマスターなんだ。こんなときにこそしっかりしないと…
私は自分の目から流れそうになっていた涙をぬぐい、歯をくいしばりながら、こんな事態を起こしている元凶を見据えた。
「マシュ!いくよ!」
「了解です、マスター。重國さんの分まで頑張らせていただきます!」
「いい面構えになったじゃねーか嬢ちゃん。俺もこんなマスターが欲しかったぜ!」
「マシュ・キリエライト出ます!」
「1人潰しても崩れないか…おもしろい。」
「余所見してていいのかよ!潰せ!
キャスターの宝具がセイバーに向けて放たれるがダメージを与えるには至らない。
そのままお互いに決定打のないまま戦いは続いた。
マシュも盾でよくガードをしてくれていたがやはり元々の馬力の違いからか徐々にこちらが押され始めた。
「ちっ!やっぱキャスターじゃ本領が発揮できねえな…」
「ハァ…ハァ…このままでは…」
「もう終わりか?ならばこれで消し去ってやろう。」
セイバーの剣に魔力が収束されていく。
でももうみんなボロボロだから為すすべがない。
このままじゃ…
「さらばだ!約束された勝利の――(パキッ)っ!?」
セイバーの宝具が放たれる直前にセイバーの体が凍りついた。
「千年氷牢。」
後から声が聞こえてくるのと同時にセイバーの周りを氷の柱が取り囲んだ。
「ったくやってくれたな、おい。」
声のした方を見るとそこにいたのは無傷の重國さんだった。
sideout
side日番谷
こ、ここは?…確か俺はセイバーの宝具をくらって…!?
体が熱い…焼けるような痛みだ…!
俺の体はどうなったのかと思い見てみると、 左の手足が消し飛んでいて、無傷だだったのは頭と右半身だけだった。
「…!ぐっ…」
とにかく体が、特に腕が片方だけでも残っていてよかった。
腕がないと回復アイテムが作れないからな…。
俺は右腕に魔力を集中させ死に意識が飛びそうなほどの体の痛みを我慢しながら1分ほどかけて仙豆を作り出し、それを口の中に放り込んだ。
「!はぁ!危ねえ!氷を張るのがもう少し遅かったら死んでだぞ!て、あれ?氷輪丸は?」
傷が治り思考がクリアになったことで俺は氷輪丸がないことに気がついた。
どこかと思い探してみると俺から10メートルほど先にボロボロになった氷輪丸があった。
「セイバーの野郎の宝具が直撃したからな。そりゃこうなるヨネ!まあ関係ないケド!」
何を隠そう!俺の氷輪丸は氷雪系最強だからな。水分さえあれば何度でも修復できるのだ!これぞ圧倒的便利感!てか原作の最後の方じゃかっこいいことと修復可能なことぐらいしか取り柄がなかった!
だが街全体が燃えているせいか水分量が少なく自分で検証したときよりも治りが遅い。結果治るまでに2分もかかってしまった。あいつらは大丈夫だろうか?
とにかく急いで戻らないとな!
あいつらが視認できる位置まで戻ってくると、絶賛大ピンチだった。
俺は即座に氷輪丸を地面に突き刺しセイバーのいる位置に氷を出現させた。
「よし…次は――」
セイバーが凍ったのを確認すると俺は突き刺し氷輪丸にさらに魔力を流し込んだ。
「千年氷牢。」
セイバーの周りに氷の柱が出現したのを確認すると俺は右腕に達に向かって歩き出した。
「ったくやってくれたな、おい。」
「重國さん無事だったんですか!?」
「まあな。死にかけたが。」
立香の方を見てみるとまるで俺をゾンビでも見るかのような目で見ていた。
「どうした立香?」
「だっで…宝具が直撃したから死んじゃったと思ったのに…」
泣きながらそう言う立香に少しだけ胸が痛くなる。
「悪かったな…次からは気をつけるよ。」
そう言って立香の頭を少しだけ撫でた。
「おい、お前ら。敵はまだ死んでねえぞ。話なら終わった後でもできるだろ?」
クー・フーリンにそう言われ俺は立香の頭から手をはなす。り、立香の髪の毛がサラサラだったから名残惜しいなんてそんなこと少しも思ってないんだからね!…うえぇ、気持ち悪!
「あ、ああ、そうだな。けどもう次の攻撃で終わりだよ…多分。」
「なに?それはどういう――「どうやって私の宝具をかわした?」!!」
「はっ!直撃したに決まってんだろ。おかげで死にかけたわ!」
「なに?ならばどうして生きている?あの距離でただの人間が私の宝具をくらえば確実に死ぬはずだが?」
「それはお前に言う義理はねーし、そもそも説明がめんどくさい。それに…お前はもう終わりだ。」
「なんだと?それはどういうことだ?」
「くらったら分かるさ。」
俺はそういい氷輪丸に魔力を込める。
するとセイバーの足元から半径30メートルの地面が凍り世界を写し出した。
「じゃあな。天臨・霜仙竜!」
「な!?なんだt――」
鏡のように張られた氷から巨大な竜が飛び出しセイバーを巻き込みながら天へと昇りそして空を穿った。
「言ったろ。くらったら分かるってな。」
やがて氷が砕け、セイバーは光の粒子となって消え、砕けた氷は地面に降り注ぎ辺り一体の炎を消した。
≪アーサー王の霊基反応消滅!よくやったぞ!≫
「やった!」
「戦闘終了。お疲れ様です、みなさん。」
「おう、あんたもな盾の嬢ちゃん。しっかしまた坊主にいいとこ奪われちまったな…」
「そう言うなよ。何回かお前の見せ場もあっただろうが。」
「ホントに少しだけじゃねーか!」
「ははは…仲良くね…」
こうして俺達とセイバーとの戦いは俺達の勝利で幕を下ろした。
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ここで主人公のオリジナル技の解説を。
「綾陣弐霜氷壁」
原理は真空多層氷壁と同じ。氷の壁を2枚作り出しその間の空気を無くし真空にすることで絶大な防御力を生み出す。
「死輪・群鳥氷柱」
氷柱を100本出現させドーム状に展開し相手を四方八方から攻撃する技。攻撃力よりも手数優先の技。
「天臨・霜仙竜」
作者が最も考えるのに苦労した技。地面を鏡のように凍らせ、そこから天へと昇る竜を出現させる技。技の規模は調整可能。
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