ソードアート・オンライン 死神と妖精   作:ミルクチョコ

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因みにこの話はキリトとアスカがはじまりの街を出てすぐの話です。


取り憑く想い

アスカside

 

「で、これからどうするよ?」

 

アスカは目の前で黒パンを勢い良く食べているキリトに問いかける。俺も先ほど同じものを食べたが正直俺の好みの味ではなかった。というかほとんど食べれなかった。このパン恐ろしいくらいに固いのだ。初めて食べたときは破壊不能オブジェクトなんじゃないかと思ったよ。

 

「ん、何がだ?」

 

「何がって…これからの予定だよ。次の街に行ったり装備を整えたり回復アイテムを補充したりとか、いろいろあるだろ?」

 

言い忘れていたが俺達は今始まりの町を出て次の村である《ホルンカ》に居た。どうやらここに付いたのは俺達が始めてのようで、見渡す限り周りにはNPCしかいなかった。俺達はそこにつくとある一つのクエストを受けた。確かクエストの名前は逆襲の雌牛だったと思う。そしてそのクエストが終わると俺達は一旦ホルンカに戻り、近くにあったベンチに座り今の状況に至るわけだ。

 

「そうだな…とりあえずアスカの言ってる回復アイテムの補充などをしたらもう一つクエストを受けたいと思ってる」

 

「えっ、何のクエスト?」

 

「リトルネペントが_」

 

「OK理解した行きたくない」

 

「俺まだモンスターの名前しか言ってないんだが…」

 

キリトが発したリトルネペントと言うモンスター。そいつは俺が虫系モンスターの次に嫌いなモンスターである。単純に気持ち悪い。白い肌にたらこ唇が付いたまさに歩く植物。俺にはどう考えてもエ〇ァ量産型にしか見えなかったよ。ああ…トラウマが…よみがえる…

 

「一人で行って来てください」

 

「いや、こんなデスゲームの中なんだから協力プレイをだな…」

 

「人の嫌がることを強制させないでください!!」

 

「必死か!!」

 

ついには涙目で土下座してしまった俺を見てキリトはため息をつきながら苦笑いをする。いや、確かにキリトの言いたいことも分かるよ?こんな事態になったんだ、そりゃあ助け合っていかないとまずいと思うよ。」

 

「なら一緒に行こう」

 

「……また声に出てた?」

 

「こんな事態になったんだ、ってところから声に出てたよ」

 

「…………チッ」

 

「舌打ちされた!?」

 

まさか声に出ていたとは…現実でも同じことがあったがこれからは気をつけないといけないな。うん。でも俺は絶対に行かないからな!絶対にリトルネペントがでるクエストなんて行かないからな!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思ってた時期が僕にもありました…

 

 

「うわああああああああああああああああああ!!!!!」

 

「……………バーサーカーだな…」

 

キリトの言葉に耳を傾けることなく俺は目の前の量産型もといリトルネペントを切り刻んでいく。俺はあの後キリトの説得に折れてしまいクエストについて来てしまったのだ。まあ理由としてはキリトが俺を説得してるときについさっきホルンカに来たのであろうプレイヤーの一人が

 

「一緒に行ってやれヨ、キー坊が可愛そうだロ」

 

と言ってきたので仕方なく付いて来たのだ。だれが来たのかは皆さんの想像にお任せする。

 

「ぽわあああああああああああああああああ!!!!!!」

 

「いやすごい叫び方だな」

 

そして俺がこんな風に叫びながらリトルネペントを切り倒して行ってる理由だが…簡単に言うと囲まれたのである。その光景を見た俺はベータ時のトラウマを思い出し早くリトルネペントの大群を消すために剣を手に走り出したのだ。

 

「貴様らあああああああ!寄るんじゃねええええええ!!」

 

「「「シャアアアアアアアア!!!!」」」

 

「おおっ、一気に釣れたな」

 

「嬉しくねえよおおおおおおお!!!」

 

何故かキリトの近くにはこいつらあまり近寄らないんだよな…ベータ時と一緒で。そう考えてキリトのほうを見ると明らかに周りに居るリトルネペントの数がおかしい。俺3体もいるのにあいつ1体ってどういうことこれ?

 

「ふっ!はああああっ!!!」

 

キリトは直線状に重なったリトルネペントを見て【レイジスパイク】を発動させ攻撃する。それを喰らったリトルネペント達はポリゴンとなり消えていく。俺も同じように【ソニックリープ】を発動させ残ったリトルネペントを倒していく。そして最後の一匹を倒し終わると俺は剣を地面に落とし腰を下ろした。

 

「ハアッ…ハアッ…ハアッ……疲れた……」

 

「ああ…なかなかの働きぶりだったぞ」

 

「腹立つわ~…」

 

キリトの顔から目を離しふと横を見ると奥の方に花つきのリトルネペントの姿が見えた。

 

「なあキリト…あれじゃねえの?」

 

「ん?……おお、あれだあれだ」

 

俺が指差した方に居る花つきを見てキリトは「やっと見つけた」と言わんばかりに嬉しそうにする。いや、俺としては全く嬉しくないんだけどね。

 

「よし、それじゃあ……いや、そこに隠れてる奴出て来いよ」

 

キリトは立ち上がると後ろを見てそう言う。隠れてる奴?いったい誰が…と思い後ろを見ると片手剣と盾を装備したプレイヤーがいた。彼を見てキリトは問いかける。

 

「あんたもベータテスターなのか?」

 

「う、うん。そうだよ…花つきに反応したって事は君達も森の秘薬のクエストをしてるんだろ?」

 

「ああ、そうだが…」

 

「僕もそのクエスト手伝って良いかな?」

 

キリトにそういうと言われた本人は俺にどうする?と目で聞いてくる。いや、俺に聞くのかよ…

 

「別に俺は良いよ…俺にあいつらの姿を見せずに終わらせてくれるって言うんなら大歓迎だ」

 

「アスカ、諦めろ」

 

「………仕方が無いか…はあ~…ここは諦めるよ、それで?聞いてなかったけどお前名前は?」

 

「あ、僕はコペルだよ。宜しく」

 

「俺はアスカだ。宜しく頼む」

 

「俺はキリトだ…宜しく」

 

俺達は自己紹介を終えると先ほどから遠くの方でうろついているリトルネペントたちを狩ろうと歩き出した。するともう一体別のリトルネペントが出て来た。

 

「あれは…実つきか…?」

 

キリトがそれを見て言う。その実を破壊すると周囲に大量のリトルネペントが集まってしまう実つき。恐らくこの場で一番警戒すべきモンスターである。

 

「どうする?流石にキツイと思うんだが…」

 

キリトがそう言うとコペルが一つの案を出した。

 

「なら僕が実つきを引き付けるからその間に二人は花つきを倒して」

 

「…分かった。それで行こう」

 

「ああ、俺も賛成だ」

 

俺とキリトはその案に賛成し俺とキリトは花つきを、コペルは一人実つきの方へと向かう。目の前に立つと俺達の存在に気づいたのか花つきが俺達に襲い掛かってくる。キリトは花つきの触手をかわすと【バーチカル】を放つ。それと同時に俺も背後に回り【ホリゾンタル】を放つ。HPゲージを見るとあと半分、それを見ると花つきは先ほどと同じように触手を俺達に飛ばしてくる。それを回避して俺はバックステップをとる。

 

「お前今の良くできたな」

 

「うん。俺も出来ると思わなかったわ…っていうかそんなこと話してる場合じゃないな!」

 

呑気に話しているとまたも触手が俺達に飛んでくる。キリトは剣でそれを斬ると【スラント】を発動させ花つきのHPを残り二割まで下げる。俺はそれを見ると【レイジスパイク】を発動させ花つきはHPを空にしポリゴンとなり消えた。そして下にはドロップアイテムの胚珠が落ちていた。

 

「よし!終わったな」

 

「ああ、コペルの方は…」

 

キリトがそう言いコペルの方を見るとコペルは俺達の視線に気づいたのか俺達の方を見て_

 

「ごめん…」

 

「………え?」

 

そう言うとコペルは【バーチカル】を発動させ実つきについていた実を斬りながらHPを空にさせた。すると待っていたかのように周りからリトルネペントがポップしてきた。

 

「コペル…アンタ一体何を!?」

 

「ごめん!本当にごめんっ!!」

 

コペルはそう言うと俺達から背を向け逃げていきカーソルを消した。隠蔽スキルを使ったのだろう。今思えばコペルが俺達の前に姿を現したのは良いタイミングだったと思う。花つきが出て来た途端に彼は俺達の前に姿を現した。前から機会を伺っていたのだろう。そして実つきの登場。そして今の状況から考えると…

 

「MPKってことか…」

 

キリトも思いついたように言う。MPKとはモンスタープレイヤーキルのことである。簡単に言うとモンスターを使いプレイヤーをキルすることである。コペルは俺達に花つきを倒させてドロップした胚珠を手にさせた後俺達をMPKにより殺し最終的に俺達から胚珠を奪うつもりだったんだろう。

 

「アイツ…初めから!!」

 

「落ち着けアスカ!今はこの場を切り抜けるぞ!!」

 

俺とキリトはリトルネペントへと立ち向かう。だがやはり戦っていると限界が見えてくる。数が多すぎるのだ。倒しても倒しても減っているように思えない。むしろまだ増えているんじゃないか?無限にわいているんじゃないかとも思った。

 

「くそっ!終わりが見えないぞ!アスカ!あと何体だ!?」

 

「さあな、少なくとも俺達の終わりが近いのは事実かもしれないぜ?」

 

「それが冗談であって欲しいな!」

 

俺達は軽口を叩きながらリトルネペントを倒していく。俺のHPを見ると既に黄色ゲージへと入っていた。キリトも黄色にはなっていないものの俺とゲージの量はほぼ同じである。小さくしたうちをすると後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「う、うわああああああああああああ!!!い、いやだ!助けて!誰か助けてええええええええ!!」

 

「ッ!…この声…コペル?でも何で…」

 

その声を出していたのは実つきを倒し、この状況を作り出したコペルであった。だが何故彼は狙われている?隠蔽スキルを使ったなら狙われていないはずだ。何故だと考えているとキリトが俺の考えについて答えてくれた。

 

「リトルネペントは視覚でプレイヤーを認知するんじゃないんだよ。それに隠蔽スキルってのは視覚以外で相手を探すmobに対しては意味を成さないんだ」

 

「そんな…じゃああいつのやったことは……」

 

「ああ、自分から自殺しに行った様な物だ」

 

そう話している間にもリトルネペントたちは俺達を攻撃してくる。自分の命で手一杯だというのにここでコペルの命まで危ない。どうすれば…そう悩んでいるとキリトが俺に提案をしてきた。

 

「…アスカ…ここは逃げよう…このままじゃ俺達が死ぬ」

 

「でも…それじゃあコペルが……」

 

自分の中で葛藤が始まると俺達の会話が聞こえていたのかコペルの声が聞こえる。

 

「ご、ごめんなさい!!お願いします!お願いだから…お願いだから助けてえええええ!!!!」

 

「…………くっ…」

 

どうすれば良い?確かにキリトの言うとおりここで逃げれば俺達の命は助かるだろう。きっと死なないためにはそうしなければならない。だがそっちを取れば恐らく、いや、確実にコペルは死ぬ…俺はどっちをとればいい?自分のために他の人の命を見捨てるのか?

 

「アスカ!!」

 

キリトの呼ぶ声が聞こえる。

 

「お願いします!!お願いだから!嫌だ!助けてええええええ!!!」

 

コペルの叫ぶ声が聞こえる。

 

 

 

 

 

俺は………

 

 

 

 

 

「………ごめん…」

 

俺はコペルから背を向けキリトと共にホルンカのほうへと走り出した。

 

 

 

「お、お願いだから待って…待って…あ、あ、ああああっ!嫌だあああああああああああああああ!!!!」

 

 

その叫びと共に、後ろから何かが割れる音がその場に響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアッ…ハアッ…ハアッ……アスカ…生きてるか……?」

 

「…………ああ……生きてるよ……」

 

俺とキリトはホルンカの街の前で倒れていた。幸いにも回りに他のmobの姿は見えない。ここに来るまで何度後ろを振り返っただろうか?何度剣を振っただろうか?そしてなんどmobが割れる音を聞いただろうか?そんなこと全く思い出せない。ただその時あったのは『死にたくない』という恐怖だけだった。

 

「…キリト……」

 

「どうした?…」

 

息を整えてキリトに聞く。気になっていたことがある。そのことについてキリトが知っているか分からないが…

 

「コペルは……どうなった?」

 

「……走っている途中で何かが割れる音が聞こえた…あいつはもう……」

 

「…そうか…分かった……」

 

俺はキリトからコペルのことを聞くと立ってホルンカの街へと歩き出した。

 

「…何処に行くんだ?」

 

「……今日は宿屋に泊まって寝るよ…もう疲れたからな」

 

「…分かった…俺もアイテムの補充などを済ませたら寝ることにするよ」

 

「ああ……分かった…また明日な…」

 

俺はそう言ってキリトから背を向けて街の中へと入り宿屋へと入りNPCから部屋の鍵をもらい指定された二階の部屋へ入る。入るとそのままベッドに横になりすぐに眠りの世界へ入ろうとする。

 

『助けてええええええ!!!』

 

「ッ!!」

 

寝ようとするとコペルの声が聞こえた気がした…俺が見捨てることしかできなかったアイツの声が。アイツは最後どんな顔だったのだろう?泣いていたのか?恐怖に顔をゆがませていたのか?…いや、もう…

 

「もう…考えたくないな……」

 

俺はその言葉と共に涙を流し意識を手放した

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