幼馴染が根源の姫だった件   作:ななせせせ

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二日休みをくれといったな?あれは嘘だ

現在活動報告にて閑話リクエスト募集中です。
出来る限り書くつもりではありますが、ひとまずは十件分のリクエスト消化して第二部行こうかと。


リクエスト閑話:姉妹喧嘩、第三者編

 ずっと、一緒にいるものだと思っていた。

 気が付いた時にはいつも一緒で、構ってくれて、優しくてかっこいい、お兄ちゃん。たまに面倒くさいときもあるけど、基本的にはお人好しの私のお兄ちゃん。

 それがまさか――

 

 

「……ふ、ふふ。綾香?そろそろ離れましょう?お兄ちゃんが困ってるわ」

「……ぷいっ」

 

 

 まさかバカお姉ちゃんに取られるとは――!

 大体お兄ちゃんは分かっていないのだ。このお姉ちゃんが絶対無敵超人ってよく言ってるけど、それはお姉ちゃんのダメダメなところを見ていないからだ。

 

 そう、例えば。お兄ちゃんが見ていないところでは油断しまくりだったり……知り合いから借りたらしい薄い本を読んで、きゃーきゃー言いながらごろごろ悶えたり……そのせいでベッドから落ちてしばらく悶絶してたり、といったお姉ちゃんの裏の顔を見ていないからそんなことが言えるんだ。

 

 

「ふ、ふふふふ……綾香がそういうつもりならこっちにだって考えがあるんだから……!」

「おまっ、馬鹿!その名状しがたい触手のようなものをしまえ!」

「うーっ!バカお姉ちゃんのバカ!変態!」

 

 

 絶対に――絶対にお兄ちゃんは渡さないもん!

 やりあうつもりなら綾香パンチが火を噴くよ!

 

 

「うっ……へ、変態って……そんなわけないでしょー」

「バカお姉ちゃんが薄い本を――」

「わあああ、やめて、やめてぇぇぇ!お姉ちゃんが悪かったから!」

 

 

 お兄ちゃんの膝の上は渡さないもん。

 というか、お兄ちゃんの隣も渡さないもん。六歳差なんて最近じゃ普通ってこの前テレビで言ってたし!

 

 

「……はぁ。愛歌、後で思う存分構ってやるから。抱っこでもあすなろ抱きでもなんでもしてやるからちょっと落ち着いてくれ……」

「えっ、なんでもいいの!?」

 

 

 ……納得いかない。お兄ちゃんは最近になってバカお姉ちゃんのことを甘やかしすぎだと思うのだ。お蔭でどんどんダメになっていく。

 

 

「むぅ……!」

「あーはいはい。綾香は可愛いなーほれほれ」

 

 

 頭をわしゃわしゃされる。結構乱暴に頭を撫で繰り回されるけど、この時はバカお姉ちゃんのことじゃなく、私のことだけを見ていてくれるから好きだ。基本的にお兄ちゃんはお姉ちゃんのことばっかり見ているけど、私だっているのだ。そういう『オトメゴコロ』への配慮がちょっと足りていない。

 

 

「うぅ……綾香が最近冷たいし、さりげなく酷い……」

「それはお前の自業自得なんじゃないか……?って、ちょ、分かった、分かったから揺らさないでくれ!」

 

 

 お姉ちゃんじゃなくて、私のことをもっと見てよ。という無言のアピールは成功し、頭を撫でる手つきもちょっと優しくなる。

 

 ――本当は分かっている。お兄ちゃんからは相手にされていないことも、お兄ちゃんがお姉ちゃんのことをすっごく大好きだっていう事も。

 それでも、『どんなに分が悪くても諦めなければどうにかなることもないことはない』って本人が言ってたわけだし、諦めなければいつかお姉ちゃんから取り戻せると信じて。

 

 今はお兄ちゃんの膝の上を占領しておくくらいにしておこう。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

裏校内新聞 vol.200

 うちの高校に公式カップリングがいくつか存在することは周知の事実だ。この新聞ではそんなカップルたちを取り上げてきたが、記念すべき200回目のため、アンケートで数の多かったカップルについて取り上げる。

 

 今回取り上げるのは男同士の方ではなく、そういったことに関しては珍しい男女のカップルである。生暖かく見守る会というのが出来ていたりするくらいには有名かつ特殊なカップルであり、あまりにも進展がなさすぎるがゆえに先生方からも逆に心配される異例のカップル――沙条愛歌とその幼馴染、気絶王だ。

 今日は、そんな二人の一日を追っていきたいと思う。

 

 朝。幼馴染ということもあって二人は同時に登校してくることがしばしばある。しかし、電車内で会話をすることはない。素知らぬ顔でただ手を握るだけである。周りの人々は胸やけしたような表情で駅に着くのを待つという地獄。これが素で行われるのだからたまったものではない。

 

 登校後。同じ教室に入っていき、隣り合っている席に座る。この時も会話はないし、流石に手も離している。だが、身体の距離はかなり近く、傍に近寄りがたいオーラが出されている。無言なのにも関わらず呼吸の間隔というか、そういったものが通じ合っているのだ。

 

 授業中。これは流石に大人しくしているかと思えば、そんなことはない。この場合は消しゴムを落としたり鉛筆を落とした時にまた無言でイチャつくのだ。

 基本的に、というか毎回そうなのだが、沙条愛歌が気絶王の落とした消しゴムやらを拾って渡す時に軽く手を握ったり、薄く微笑んだりするのである。……余談だが、男がどこに落としても黒い影のようなものが動いたかと思うと、落ちたはずの物が手に握られているのはどういうことなのか。

 

 昼。基本的にこの二人は屋上で食べることが多く、吐糖の被害にあう生徒は少ない。だが、居合わせた生徒はみなブラックコーヒーを買う羽目になる。

 気絶王は毎回沙条愛歌お手製の弁当を食べている。この時ばかりは無言ではなく、味などの感想を言いながら、熟年夫婦の如きまったり感を作り出す。食後はベンチに並んで座り、軽く雑談をしていることが多い。偶々屋上に来てしまった生徒が悔しげな表情で帰っていった。

 

 放課後。と、いっても電車で帰っていくまでの様子しか確認できないのだが。この時も無言で、しかし手を握りながら電車に乗る。これが雨の日なんかになると、駅までの道を相合傘をしながら帰っていくのだから始末に負えない。外を歩くときはさりげなく気絶王が車道側を歩いたりするなど、小さな気遣いが所々で見られた。

 

 ……今回はこの二人についての記事第一回目なのであまり多くは調べられず、また深く調べようとすると意識を失ったり記録が消えていたりと謎の現象が多発したために、調査を断念したが、もし次回のアンケートでも彼らが一位となったならば、より深いところまで調べていきたいと思っている。

 

 最後に――信じられるか?こいつらこれで付き合ってないんだぜ?




記事の方はまだ気絶王が告白されてない頃です()

次の話は?

  • スイート
  • ノーマル
  • ビター
  • デーモンコア

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