なんか気絶王を応援してくれる方がいるみたいで結構嬉しかったり
今回ちょいちょい過去と現在の時間軸が入りまじってるのでちょっと読みにくいかもしれません
1
窓から差し込む光に刺激されて、目が覚める。
体感ではあるけれど、まだ五時前だと思う。朝食を作るならちょうどいい時間。
「ん、ふぅ……」
身体を起こして窓の外を見ると、想像通りまだ完全に朝陽が昇っているわけではなかった。とはいえそう時間に余裕があるわけじゃないから、早く支度を済ませてしまわないと。
手早くパジャマから着替えて、サイドテーブルに乗せてあった宝物――安っぽい、というか実際安物なのだけれど――ネックレスを首にかける。必要ないことはもう分かっているけれど、それでも一応更に魔術で保護しておく。万が一にも壊れることのないように。
「ふふ……」
サイドテーブルに立ててあった写真に目が留まり、思わず笑いが零れた。今考えればあの頃のわたしはなんてもったいないことをしていたのだろう。
もっと早く彼に恋していれば、と思う。けれども、あれでよかったような気もするのだから、我ながらおかしくなってくる。
写真に写っているのは小さい頃のわたしたち――小学生の頃の、笑みを浮かべながら彼を警戒するわたしと、まだ可愛い顔に小さく笑みを浮かべた彼。
この頃は……本当にずっと一緒に居たし、ずっと話していた。いつだって手を握っていて、周りにからかわれたこともあった。残念ながら当時のわたしの中にあったのは今も胸の内に迸る愛ではなく、仄かな恋心でもなく。
――この得体の知れない男の正体を暴かねば、という恐怖心だった。
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――わたしの人生は、『わたし』という意識が目覚めてからずっと未来の光景と共にあった。より正確に言えば、未来が視えていた。
「」に繋がっているために未来視が出来た、というのがもっとも正確なところだろうか。
それはともかく。この意識が発生してからというもの、わたしは未来視で視たとおりの日常生活を送った。全ての出来事は既知のもので、未来視によって測定したとおりのレールを辿るだけ。感動も喜びも怒りも悲しみも苦悩も憎しみもなく、他のすべての
でも、機械的なそれはある日唐突に、終わることとなった。
「……え?」
――ノイズ。いつもなら鮮明に見えるはずの未来は大きなノイズに阻まれ、見ることが出来なくなっていた。おかしい、そんなはずはない、と色々試してもノイズは消えず、断片的な、もはや未来視とも呼べないような情報しか得られなくなっていた。
原因が分からない。理由が判明しない。理屈が理解できない。
「うそ、嘘、そんなはずは……!」
視えない。明日はどうすればいいのか分からない。どう
そうして、わたしは怯え、恐怖した。歯の根がガチガチと震え、涙が零れ、体に力が入らない。ベッドの中でがたがたと震えながら、わたしは明日がどうか来ないようにと願った。
怖い、怖い、怖い、怖い……!
――ああ、
胎児のように縮こまってそんなことを考えているうちに、意識は闇へと溶けていった。
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未来視を奪われただけ、と今なら落ち着いていられるけれど、あの頃のわたしは事実無力な子供だった。だからこそ、未来視がうまく作動しなくなった程度で大きなショックを受けた。
「……うん。これなら大丈夫そうね」
彼と綾香の好きなサニーサイドアップの目玉焼き。家族でターンオーバーが好きなのはわたしとお父さんだけだ。
ちょうど六時くらいでいい具合。綾香を起こしたら、彼を起こしに行かなくては。……と、その前に軽くだけ。
「よかった、今日も良好ね」
問題のない、二人の一日が視えた。片時も離れず、ずっと一緒に居る。それだけのことでもひどく安心する。
未来視が使えなかったあの頃はあの頃で彼に大事なことを色々教えてもらって、未来視を必要としなくなったけど……彼を好きになってからは彼が
「んー、これは流石に……怪我しそうだものね。
恋する乙女……というか、もう妻になったようなものだから、夫を想う妻でいいかな。とにかく、女の子にはやることがいっぱいある。
彼の身に直接危険が迫っているなら、どんな方法を使ってでも護らないといけないでしょう?
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目が覚めたわたしはすぐに未来視を使おうとしたけれど、ノイズはさらに酷く、もはや一時間先の出来事すらあやふやになっていた。
先が分からない、ということはわたしから気力を奪い……ベッドから動くことも出来なくなっていた。
「……愛歌、隣の方が挨拶に来ているから、早く降りてきなさい」
下の階からのお父さんの声。
何が起きるのか分からない恐怖を抱えながら、なんとか寝間着から着替えて下に降りる。お父さんは玄関に立って誰かと話していた。
お父さんが気付いてこちらに振り返る。ここまでは視えていた未来。
でも、ここから先は――
「ん、来たか。愛歌、挨拶を」
「……沙条、愛歌です」
教えられたとおりの仕草で挨拶をして、目線を前に向けて……固まった。
少し長めの黒髪、黒目、わたしと同じくらいの年齢の少年。驚愕の表情を張り付けてこちらを見ている彼の顔が真っ赤になっていく。
そして、鼻血を噴き出して倒れた。
慌てる彼の両親と、お父さんとお母さん。
そんなことが気にならないくらい、わたしは彼に意識を持っていかれていた。
彼を見た瞬間、未来視の視界は完全にノイズに覆われ、真っ暗になってしまった。彼の心を覗こうにも、なぜか彼の心はノイズに覆われて覗くことが出来ない。
――間違いなく、この
愛歌(このノイズの原因を排除しなくっちゃ……!心も読めないなんて……何を考えているのか分からなくても〇す方法はいくらでも……!)
気絶王(めっちゃ可愛い女の子だなー幼馴染にこんなかわいい子とか人生勝ち組じゃん。……ん?沙条、愛歌?なんか聞き覚えが……!?うっあたまが)
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