幼馴染が根源の姫だった件   作:ななせせせ

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壁|(´・ω・`)つ 本編


壁|(´・ω・`)コソコソ


壁|`) ピャッ

10/12 修整




 気絶した彼はすぐに病院に運ばれていき、検査したところ頭に血が上りやすい体質で鼻の血管が弱いことが分かったのだという。血が上りやすいから気絶しやすく、血管が弱いからすぐに血が噴き出す。

 とはいえ、それは頭に血が上るようなことがあればという状況にのみ限られるし、そこまで怒りっぽい性格でもないからそう何度も起こることでもないということらしかった。

 

 

「らしい、らしい、って……あなたのことではないの?」

「いや、そうなんだけどさ。自覚がないんだよ、これが」

「そういうものなのかもしれないけれど……まあ、あなたのように惚けた男はそうでしょうね」

「ひどいなぁ……」

 

 

 あれから数日。未だにノイズは消えず、完全に未来は真っ暗になったまま。彼がなぜ未来視を妨害できるのか、どう見ても一般人のはずの彼になぜこんなことが出来たのか、わたしはそれを知る必要があった。

 彼を殺したところでまた同じような人間(イキモノ)が現れる可能性もある以上、下手に消すのではなく、どういうことなのかを理解することが一番だと考えてのこと。

 

 だからこそ、わたしは彼から一秒たりとも目を離すわけにはいかないのだ。

 幸いにして彼の方からわたしに寄ってくるから監視はしやすい。

 

 そう考えながら監視を始めて、居間でずっと絵を描いている時間が続いている。

 

 

「……それ、何の絵なの?」

「うん? ……ああ、これ。象だよ、象。いや、われながらうまく描けたと思うんだ」

「致命的なまでに絵が下手ね、あなた」

「えっ」

 

 

 そもそもその五本目の足みたいなそれは……尻尾なの? 太すぎて足にしか見えないし、多分牙なのだろうけど、白いそうめんのようなものが顔から生えている。

 

 ――彼には絵心というものが欠如していた。

 彼が象と言ったものの隣には、混沌とした妖怪みたいなナニカがいくつも量産されている。ある種の芸術性すら感じられるほどに、下手だった。

 

 いえ、そういうことを知りたいのではなく。

 いっそのこと直接聞いてしまった方が早いのかもしれない。

 

 

「結局、あなたは未来視を妨害して何がしたいの?」

「未来視? なにそれ、手〇治虫の作品に出てきた?

魔法使い〇リーとかなら俺は全く分からないんだけど」

 

 

 ……そう。そう来るのね。

 あくまでも知らないそぶりを取り続ける、と。なぜだかここでウィップ(触手)を使っては負けな気がした。

 

 

「……そうね。例えば、あなたに未来がずっと視えていたとして。突然視えなくなったらどう思う?」

「はあ、未来か……実際に視えてるわけではないから、俺には正確に分かるわけじゃないけど、それなら……まあラッキーだったと思うかな」

「――へ?」

 

 

 ラッキー? 幸運? 不幸でも、理不尽でも、怖いでもなく、ラッキー?

 ……いえ、そうよ。だって彼には実際に視えていたわけじゃないもの。それなら、その答えだって出てくるかもしれない。

 ええ、そうよ。そうに違いない。

 

 

「……へ、へえ、そうなのね。惚けているあなたらしい、抜けている回答ね。……ちなみに、理由は?」

「相変わらずひどいなぁ……だって、先の分かっている物語なんて、本当に好きなものでも無い限りは面白いと思わないだろう? 未来だって、何が起こるか分かっているなら楽しさなんてないだろうし。勝手に視えていたものなら視えなくなったのはラッキーかなって」

 

 

 ――そんなはず、あるわけないでしょう!

 と、叫ぼうとしたはずなのに、口は動かない。

 

 気持ち悪い(怖い)気持ち悪い(怖い)気持ち悪い(怖い)

 どうして分からないということの恐怖を、この人間(イキモノ)は理解していないのか!分からない。わたしには目の前の人間(イキモノ)が理解できない。ただひたすらに、悍ましい。

 

 ――ああ、だめだ。これ以上この人間(イキモノ)といると、わたしは何か取り返しのつかないことになってしまう。……殺せ。殺さなければ。

 触手を使って殺し(壊し)、その存在を抹消しなければ――!

 

 

「――明日がもしも見えてしまえば、人は夢を描くこともなく生きるでしょう」

「っ……何なの……!」

「と、いう言葉というか歌詞があって。確かにその通りだと思ったんだ。未来が分かってるんだったら夢なんて見ないだろう? いや、もちろん寝てる時のあれじゃないよ?」

「夢……」

「あと、ほら。分からない(未知)っていうのは楽しむものだし。何が起きるか分からないから、色々楽しいんじゃないかな、うん。……あ、でも明日いきなり宇宙人と知り合って最終的にお気に入りのTシャツに穴が空いたりしたら嫌だな」

「楽、しむ……?」

 

 

 彼は一人でちょっとよく分からないことを言いながら、紙にまた混沌を創り出していく。そういわれて見れば、その下手な絵も今初めて見たからこそ下手だとか、気持ち悪いといった感想が浮かんでいるのかもしれない。今までのわたしなら、一度見た光景で、わたしの人生には全く影響を及ぼさないからとなんの感慨もなく流していたかもしれない。

 

 ……灰色のスライムのようなものを描くと、隣に肌色のスライムを描く。本当に何を描いているのかさっぱりだ。

 

 

「――そういえば、あなたの言っていた先を知っていても楽しめる物語って?」

「個人的には、ロビンソン・クルーソーとか、十五少年漂流記とか、宝島とか……その辺かな」

「ふふふ……見事に冒険小説ばかりなのね」

「……別に、いいだろう? いくつになっても楽しめる小説だよ、あれらは」

「ええ、そうね」

 

 

 未来視を素知らぬ素振りで妨害してくるような、酷い人。分からない(未知の)ことを恐ろしくないだなんて、言ったときは気持ち悪さすら感じたけれど……こうして話してみて、ようやく目の前の少年が分かった気がする。

 

 ……ほんの少しだけれども。




そういえば、催眠ボイスに最近嵌っているんですが、どうしても催眠状態になれないんですよね。
トランスにうまく入れないみたいで。……残念だ。


それとはまた別なんですが、最近本当暑いですよね
こうも暑いと、柄でもないんですがストロベリーのアイスとか、食べたくなりますね

次の話は?

  • スイート
  • ノーマル
  • ビター
  • デーモンコア

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