幼馴染が根源の姫だった件   作:ななせせせ

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メモリアフレーゼも始めたせいで時間が大変に……
シノアリスはシノアリスでイベント走るのもありますし、ほんと私に時間をくれ……

あっ、前話の誤字報告ありがとうございます
ですが、最後の糖死は誤字じゃないです。すいません。

半分ネタで入れましたが、全身の穴という穴から砂糖を溢れさせて死ぬという死に方です。
または身体が末端から砂糖に徐々に変わっていくものです。

誤字じゃないヨ!

10/12 修整


10

 一瞬だけどこかに残してきた人間(ゴミ)のことを思い出して怒りが溢れ出しそうになったものの、すぐに冷静さを取り戻せた。

 ちょっと机が砕けたりもしたけれど、それはそれ。

 

 

「……ああ、もうそんな時間なのね」

 

 

 玄関のドアが開く音と、ただいまという声。

 時計を見れば確かに、綾香が帰ってくる時間。……今日はちょっと意識を思考に集中させ過ぎね。

 

 

「ただいま。……お兄ちゃんは?」

「買い物に行ったときに色々連れまわしたりして頑張らせすぎちゃったみたいで……疲れて寝ているけれど、起こす?」

「う”っ……それなら、いいけど」

 

 

 嘘は言っていない。ちょっと言い方とかが誤解を招きそうなだけで。

 と、一人勝利に酔いしれていると、綾香が一枚のプリントを差し出してくる。

 

 

「――ああ、そういえば」

「さっきそこで配ってたのを押し付けられてきたんだけど、今回は三日かけてやるんだって」

 

 

 知らず、手が首元で揺れる安物のアクセサリーに触れていた。――秋を代表する花を象った小さな金属の板が付いただけの、本当にささやかな物。去年の夏祭りで、彼にプレゼントされた大切な物。

 そういえばそうだった。最近は余りにも毎日が幸せすぎて何かのイベントだとかに気が行っていなかったけれど……夏祭りの時期だ。 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 中学三年生に上がって、より彼との溝は広がっていた。

 その理由が彼がわたしと同じ高校に通おうと努力してくれているため、ということは覗いて(・・・)知っているから、文句を言うなんてことはないのだけど。

 

 

「……と、楽観視していられたら良かったのだけど」

 

 

 彼が余所余所しくなった理由はそれだけじゃないということも、分かってしまう。

 どうやって知ったのかは分からないけれど、並行世界の『わたし』を見たことで離れようとしている、ということは覗き見てしまった。

 

 彼が危惧しているような事態には絶対にならないと言いたいのだけれど……突然言うのは心を覗いていたことが確実にバレて(これまた絶対にないとは思うのだけれど)万が一にも嫌われる、なんてことになったら悲しみと怒りのあまり東京を更地にしてから彼を殺してわたしも死ぬか、ちょっと『お話』するかということになる。

 

 どちらの結果も、なるべくなら避けたい。わたしが欲しいのは彼との未来であって、断じて死んで一つになるとか人形のようになった彼とか、そういうものではないのだから。

 

 

「……悩ましい」

 

 

 せめて彼からその胸中の不安を吐露してくれるようなことがあれば、すぐにでも否定してそのままベッドへと連れ込む自信があるのだけど、今の感じだとそれも期待できない。

 いっそのことやり直すことを覚悟して言ってしまうというのも考えたのだけど、やっぱりわたしを否定されたときにちょっとどうなるか分からないということもあって踏み出せない。

 

 そんな状況が、三ヵ月もの間続いている。

 

 あまりの不甲斐なさに、彼に見られていることも構わずに机に突っ伏そうとした――ところで机の中で何かがかさりと音を立てたのに気付いた。

 

 ……ああ。そういえばこんなことが起きるのは視たような気がする。

 最近は触れ合えない悲しみとかで碌に未来視も使っていなかったからよく視ていないのだけど。

 

 取り出してみると――それはレポート用紙を切って作った小さな手紙で。内容は簡潔に一文だけ。

 

 

『午後四時に浴衣を着て高岩寺 A』

 

 

 高岩寺といえば、今日は確か夏祭りが開かれるはず。

 思わず送り主の方を見ると、隣で彼と一緒に何やらひそひそと話している。

 ……んん。

 

 

『午後四時に、高岩寺? なんでまたそんなところに?』

『そんな瑣事、気にするんじゃあない。行けばすぐに分かる』

『寺……? 寺でなんかあったっけか?』

『はぁ……受験で忙しいのは分かるが、少しは周りに目を向けるべきじゃあないか? そんなだから進展が……』

『さっきから気になってたんだがジョ〇ョ立ちやめないか? 周りにすごい見られててちょっとどうかと思うんだ。……というかハマるの早くないか。貸したの昨日だろ』

 

 

 などと、左手で顔を覆いながら身体を逸らした姿勢を取った青木が周囲に引かれながら彼と話していた。

 

 ……って、あれ? ちょっと待って?

 よく考えてみたら――いや、考えなくても分かることなのだけど――つまりこれは浴衣で夏祭りデート、ということになる。

 

 と、すれば。その後は当然そういうこと(・・・・・・)になるわけだし。身体を綺麗にしたりとか、その他諸々の準備が必要になるわけで(ソースは当然本なのだけど)、それに関することもあるけれど。

 

 最近碌に話せていなかったこともあってどう話せばいいのだろうという不安が出てくる。けれど、それ以上に彼と一緒に居られるということの喜びの方が大きい。軽く舞い上がるくらいに、嬉しい。

 そうしてそんな『わたし』を自覚して、やっぱり彼が好きだということを再確認する。

 

 でも、だからこそこの現状が耐えがたい。

 彼の勘違いも、それに行動できない自分も、この状況の原因となった人も。ああ……なんて、腹立たしい。

 そもそも沙条愛歌はこんなにも弱かっただろうか。そんなはずがない。『 』に接続しているという強みを最大限に生かして望んだ結果を手に入れるのが沙条愛歌だったはず。

 

 ――ちゃんと、決着をつけよう。彼と話して、勘違いとか誤解とかを解いて。それで『沙条愛歌』を受け入れてもらう。

 

 

 そうならなかったなら……残念だけど、一生を一緒に、二人きりで過ごす。

 ……そんな幸せな(歪な)世界もきっと、楽しいものね。




ちょっともやっとしますが話の区切りと文字数的な関係でこの辺で。
なるべく早めに次話を投稿したい所存……

もうそろそろで第二部も終わりが近い……結局美沙夜ちゃんとかあんまり出せなかったですね、すいません。
とはいえ話の都合上あまり入れられるようなキャラでもないっていうのが難しいところ。
終わったら美沙夜とかも出せるような感じでちょいちょい話に手入れしていきたい、うむ。

今回の作業用BGM「原田知世:ロマンス」「PSY・S:Woman・S」

次の話は?

  • スイート
  • ノーマル
  • ビター
  • デーモンコア

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