幼馴染が根源の姫だった件   作:ななせせせ

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リクには関係ないやつです
私が書きたくなったので書きました

あと、活動報告の【重要・至急】と書かれているものに目を通しておいていただきたいと思います。
今作品の更新停止、もしくは私のアカウント削除につながる可能性がある行為についての注意事項となります。
この活動報告については今作品を読んでいる方々全員に関係している話になりますので、自分には関係ないとか、自分は知らないし、という考えを持たずにご一読いただければと思います。

私もあまり気分がいいものではないので、今後はないようにしていただければ幸いです。


閑話:それぞれの(カルデア編)

セーバーの場合

 

 

 何時の頃だったか、俺は息子にこう言ったことがある。

 

 

『大事な誰かを守れる男になれ』

 

 

 守る。

 たった二文字だがその言葉に籠められた意味は何よりも重い。

 どうやって守るのか。何から守るのか。いやそもそも、何を以ってして守るというのか。

 

 とても曖昧な言葉だ。

 

 

「もう……またいじけているの?」

「……愛歌」

「今の自分に満足しないところはあなたの美点でもあるけれど、理想を見過ぎるのは欠点だと思うの」

「でも、さ……」

 

 

 分かっている。

 所詮凡人、ただの人である俺が根源接続者である愛歌を守ろうなんて烏滸がましいどころの話ではないことを。

 

 だがしかし、だ。

 愛する者を守れずして何か男か。

 

 

黎明の腕(イクラ)にまた負けたのがそんなに悔しかったの?」

「……97連敗だ」

「そうね」

「俺は……無力だ……」

 

 

 そう。

 カルデアに喚ばれてから結構経つが、一向に強くなることは出来ず。

 いくつも種火を貰ってレベルも上がっているというのに未だ黎明の腕すら倒すことが出来ないという体たらく。

 ついには見かねた藤丸君(マスター)にちょっと休んだら、とまで言われる始末。

 

 

「レオニダスブートキャンプ、ウルク式魔術教室、魔女式魔術教室、キュケオーン試しょk、もとい女神式魔術教室、エルメロイ魔術教室、守護者式戦闘訓練――色々やってきたのに全て結果につながらないなんてな……」

「……あなたは私が守ってあげるから、自分が弱いなんて心配しなくてもいいのに」

「俺は……愛歌が何よりも大切だから、傷ついてほしくないから。だから、俺が愛歌を守りたいんだ」

「……ええ。その気持ちは本当に嬉しい。でも、それ以上にあなたに傷ついて欲しくないの」

 

 

 きゅ、と手を握られる。

 愛歌の手は彼女の全盛期であるあの頃――まだ付き合い始めた頃と同じ温かさと柔らかさで。

 俺自身も同じような形で召喚されているためか、時間が巻き戻されたかのような奇妙なデジャヴを覚える。

 

 

「本当はね、私が戦闘に行ってあなたはこっちで待っているような形にしたいのだけれど……」

「それは流石にどうなんだ」

 

 

 

 

 ――ああ。

 俺はどうしても大事な人を守れる男にはなれないのか。

 

 全く情けない父親だよ……なあ、みーくん。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

セイヴァーの場合

 

 

 ……ああ。

 朝、なのだろうか?

 

 部屋の片隅でぷるぷると震える観葉植物的な謎生命体と目が合う。

 お互い言葉など発していないが、なんとなく考えていることが分かる気がした。

 

 ……彼との付き合いも長いし。

 多分、『マジ尊敬っす兄貴!』とか考えてる。

 

 

「――あら、まあ。もう朝なのですか……」

 

 

 時間感覚はとうの昔に失せた。

 肉体的にも精神的にも擦り切れ疲れ果てている。

 

 それでも、それでも負けることの出来ない戦いが、引くことの出来ない戦いがあった。男の意地と尊厳をかけて、情けない姿など絶対に見られるわけにはいかない。ましてやそれが惚れた女ともなればなおさら。

 

 

「なあ祈荒……そろそろ終わりに、」

「駄目です。まだ理性が残っているではありませんか」

「……そっかぁ」

 

 

 一瞬で目から生気を失った俺に構わず、祈荒はもう一度上に跨ろうとしてくる。

 なんとも身体は正直というかいっそ愚直なもので、彼女の肢体が目に映るだけで瞬時に戦闘態勢を整えてしまう。だってしょうがないじゃん。最愛の女性だし。

 

 そうやってどこかぼんやりした思考で祈荒を見上げていると、一糸まとわぬ姿の彼女はふいっと視線を逸らした。

 可愛い。

 

 違う、そうじゃない。

 彼女が照れるなどそうは――いや、これはなんというか。

 

 拗ねている……?

 

 

「……祈荒?」

「……なんでしょう?」

「もしかしてだけど、昨日の晩に言ったことを気にしてるとか?」

 

 

 答えない。

 が、赤く染まった頬を見れば分かる。

 

 ……図星だったか。

 

 昨日の晩に言ったこと、といえば彼女から聞かれたことに対して率直な感想を述べたくらいだが……

 俺は何か間違ってしまったのだろうか。

 

 

「……妻は、(わたくし)なのですよ?」

「あれは単に、祈荒が『率直に、沙条愛歌という少女をどう思うか』って聞いてきたから本当に率直に言っただけであって、何か含むものがあるわけではないけど」

「ですが……あの貧相な身体つきの小娘を『可愛らしい』『祈荒と出会っていなければ彼女に惚れていた』『存外貧しいのも悪くはないような気がする』、と――」

「祈荒と出会ってなければ、って言ってるだろ? 俺が惚れたのは『殺生院祈荒』という女性一人だし、これまでもこれからもそれは変わらない」

 

 

 ――そうだ。

 彼女のことを何よりも愛していることは間違いないし、未来永劫それが変わることなどありえない。

 もしかしたら――『沙条愛歌という少女に惚れていた俺』になっていたのかもしれないが、それがあちらの(セーバー)俺なのだろう。

 

 ……ん? いや待て、そうすると俺は俺自身の側面というか誰に惚れたかという点だけで別クラス召喚されているということで――これ以上はよそう。頭が痛くなってくる。

 

 

「だからさ。そんなに不安に思う必要はないんだよ。むしろ俺の方が祈荒に飽きられるんじゃないかと不安で――っ!?」

 

 

 ぎゅう、と抱きしめられた。

 反射的に抱き締め返して、彼女の身体が小刻みに震えていることに気付く。

 

 ああ、なるほど。

 つまり彼女――祈荒は、不安だったのか。

 なんともいじらしいというか、元の彼女を識っているせいで、どこか違和感を覚えてしまうが、しかし。

 

 彼女にとってかけがえのない存在になれていたという実感はどうしても表情筋を緩ませてしまう。

 

 

「ごめんな。不安にさせて」

「……いえ、いいえ。これは私の心の弱さが問題なのです。ですから――」

 

 

 あ、やばい。

 これは……この流れは……!

 

 

「――朝まで(・・・・)、お願いしますね?」

 

 

 もう朝なんですが、という言葉は引き攣った笑みと共に消えた。

 このエロ尼……真剣(マジ)だ。真剣(マジ)で言っている。

 

 

 本気で明日の朝までぶっ続けにヤるつもりだ――!

 

 

 助けを求めて鉢植えへと視線を送るが、黒色の柱状生物(?)はぷるぷると身体を震わせるのみ。

 『無理っす兄貴! 頑張ってください!』と言っているようにも見えるが、そんなのは何の慰めにもならない。

 

 ……そもそもは俺が原因なのだから仕方ないか。

 

 彼女が不安にならなくても済むくらいに――いや、いっそのこともう十分だというほどに、俺がどれだけ彼女のことを愛しているのか思い知らせてやるとしよう。

 

 

 そんなことを考えつつ、疼痛を訴える身体の節々に顔を顰めた。




長くなったので他のはまた別の機会に

祈荒はなんとなく初めて手に入れた「それ」を失うことに耐えられないから、なんとしてでも繋ぎとめようとして身体を使っていくんじゃないかという個人的な妄想です。文句とかは受け付けません。




……

…………

………………はい三章入りまーす

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