そしてコミケのための原稿作業も始まってこれもう死ぬしかないのでは状態。草。
それはさておき、ついに三部です。
感慨深いものがありますね。
さて、この第三部では一部二部とほとんど活躍のなかった美沙夜と綾香に焦点を置いた話ということになります。(美沙夜はマジでほぼ捏造になる気がしてならないし、キャラ崩壊が怖い)
というか綾香と美沙夜を交互っていう感じかな?
この作品のタイトルを考えるとかなり詐欺ですね。
一応予定としては9話ほどで考えていますが、まあいつも言ったことを守れない駄目なおじさんなので、これは流してもらって構わないです。
で、ここからが本題なのですが……
今作品、「幼馴染が根源の姫だった件」はこの第三部を以て完結になります。
他に書いているものも結構ありますし、なによりこれ以上の話が思いつかないというのもありまして。
話としての纏まりも考えて、このへんで風呂敷を畳んでおこうといったところです。
……いや、まだ続くんですけどね?
1
――恋というにはあまりに冗長で。
――愛というにはあまりに醜悪な。
――それでも焦がれ続けたそれを。
――きっと人は、執着と呼ぶのだ。
よくある話だ、と思う。
それまで好き合っていた男女が僅かなきっかけで別れてしまうのも、報われない恋に胸を焦がすのも。
……本当に、よくある話だ。
石を投げれば当たるくらいには、きっと。
それくらいありふれていて、それくらいなんてことのない話なのだろう。
この世界にはもっと殺伐とした恋愛模様が展開されているところだってあるだろう。それこそ、古代の英雄王が騎士王に執着しているとか――。
けれども実際に身近でそんなことが起きてしまうと、どうにも考えてしまうもので。
かれこれ八年も前のことだというのに、私はまだ考えてしまうのだ。
――何が原因だったのだろうか、なんて。
それを知ったところでどうしようもないことは分かっている。
それが分かったところで意味がないことは分かっている。
それが理解できたところで価値がないことも分かっている。
それでも、私は考えてしまう。
どうしてお姉ちゃんとお兄ちゃんが離れてしまったのか、と――
「……なんて、そんなの二人にしか分からないよね」
八年前、大雨が降ったあの日。
お姉ちゃんは家に帰ってこなかった。
ロンドンの時計塔に行ったのだという。
確かに招待が届いていたような気はするけれど、それにしても急だった。
そして、お姉ちゃんがあれほど恋焦がれていた相手は――
「ちょっと綾香?」
「……っあ、ごめんね。聞いてなかった」
「しっかりしなさいよね」
放課後。
斜陽が差し込む教室の中に残っているのは私と美沙夜ちゃんだけだった。
他の人は皆帰ったか、部活に行ったらしい。
「……もう八年なんだから、いい加減割り切りなさい」
「っ、でも……!」
「いい? どんな事情があったって、沙条愛歌は『逃げた』のよ。あの人がどれだけ想っているかも知らないで、それに決着を付けないままね」
「そんな言い方っ」
「――あの女は私たちが欲しくてたまらなかった、ずっと焦がれ続けたものをあっさり捨てた。その結果だけで十分じゃない」
それとも――と。
美沙夜ちゃんは冷たい眼差しでこちらを見る。
「お兄様と沙条愛歌の間にまだ何かが残っていてほしいの?」
「それは……」
私だってお姉ちゃんからお兄ちゃんを奪いたくて仕方なかったのだから、今の状況が好都合であることに間違いはない。
子供心ながらにあの二人がどうしようもないくらい愛し合っていることなんて気づいていたのだし。
――でも、お姉ちゃんがいないままこの恋に決着が付いて欲しくもない。
私はなんて浅ましく卑しい人間なのだろう。
お姉ちゃんに戻ってきて欲しいと願いながら、同時にもう戻ってくることがないようにと祈っている。
「……ま、いいわ。綾香がそうしてうじうじとあの女のことで悩んでいるなら、私は一人であの人の心を奪いに行くだけだから」
そう言いつつ時計を見て「よし、時間は大丈夫」と頷いている。
まさか――
「今から行くの?」
「当然。こういうのは早いもの勝ちなんだから」
「待って、私も――」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
美沙夜ちゃん(私もだけど)が目指していたのは市内の片隅にある小ぢんまりとした喫茶店。
偶に爆発音が聞こえたりネコのような人のような生物が出入りしているのを見かける以外は、至って普通の店だ。
扉を開けると、シンプルな制服に身を包んだお兄ちゃんの姿が――くぅ、いつ見てもかっこいい。
「いらっしゃい――ああ、美沙夜ちゃんと綾香か。空いてる所に適当に座っててくれるか? ……あ、二人ともいつものでいいかな?」
「はい、お願いしますお兄様」
とてもきらきらとした笑顔だった。
……美沙夜ちゃん、お兄ちゃんの前だとすごくお嬢様っぽい猫を被るんだよね。
多分それお兄ちゃん気付いてると思うよ――と言うべきか、否か。この問いはもう何年も答えが出ていない。
「……それで、ここに来てどうするの?」
「とりあえずお兄様の近況を探るわ」
「近況って……具体的には?」
「あの女と連絡を取っているのか、いないのか。それをはっきりさせるのよ」
なるほど――とは思わなかった。
お姉ちゃんが送ってくる手紙にはお兄ちゃんのことは一つも書いていなかったし、高校卒業と同時に一人暮らしを始めたお兄ちゃんの家を知っているはずがないから、連絡を取っていないのはほぼ間違いない。
そもそも、そんなことは美沙夜ちゃんだって知っているはずだ。
それでもはっきり聞こうとしているのは多分、怖いから……なのかな。
お兄ちゃんとの関係を進めるにあたって沙条愛歌という存在は越えようのない壁になるから。
なんてことを考えていると、目の前に珈琲と小さなケーキが置かれる。
ウェイターは当然お兄ちゃんだった。……というか、この時間のこの店にはお兄ちゃんしかいない。
それで回ってしまう辺りがこの店の危うさを助長しているのだが、経営は大丈夫なんだろうか。
「はい、お待たせ。いつものやつ」
「ありがとうございます」
「ありがとう、お兄ちゃん」
「これが仕事だからな」
八年前と変わらない、制服姿。
少しだけ筋肉がついたりして体格が変わってはいるけれど……それでも、あの頃のそれとほとんど差はない。
商品を置いてそのまま立ち去るかと思いきや、お兄ちゃんは席に腰を下ろした。……「よっこいせ」なんて、呟きながら。
「それで? なんか話があってきたんじゃないの?」
「なんで分かるの!?」
「平日のこんな時間なんて、なんかしら用がないと来ないだろ?」
そういえば、ここに来るのはいつもなら休日だ。
言われてみれば確かに納得できる。
「流石ですね、お兄様。その通りです」
「ちょうど今はお客さんも二人の他にはいないし、いいよ。答えられる範囲で答える」
「では、遠慮なく」
「ちょっ、みさや”っ!?」
「……?」
「さっき走っていたから、疲れているのかも。ほら、珈琲でも飲んで落ち着きなさい」
平然と珈琲を勧めてくるけれど、その眼は笑っていない。
まるで女王――ケルトあたりにいそうな感じの――だ。
「まあ、綾香は放っておいて。単刀直入に聞きますね?」
「え、おう」
「お兄様は――今も沙条愛歌を好きでいらっしゃるのですか?」
その感覚を、どう例えたものか。
まるで時が止まったように世界から音が消えた。
先ほどまで笑っていたはずのお兄ちゃんは――沙条愛歌という名前を聞いた瞬間、まるで能面のような無表情へと変わっていた。
もう開き直って美沙夜ちゃんは何かそれっぽくして書いてるだけです()
え、キャラ崩壊? 僕の辞書にはない言葉ですね。
あと感想返しも今話の分からやっていきます。
第三部のメインヒロインは?
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沙条愛歌
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愛歌ちゃん様
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根源接続ラスボス系お姉ちゃん
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半ゾンビファブリーズ