幼馴染が根源の姫だった件   作:ななせせせ

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冬コミ原稿終わらない……(´・ω・`)




 ――言うまでもないことだが、私こと玲瓏館美沙夜は美少女である。

 

 

 成績も全国模試で10位以内をキープし続け、運動神経だって常人とは一線を画すほどに鍛えられている。

 それでいて魔術師としてもほぼ超一流レベルにある。

 

 もちろんそれらは自惚れではなく、そうあるべき、そう在らんとして研鑽を積んできたからこその自負だ。

 一分の隙も無い完全無欠美少女――それが(わたくし)

 

 

「なんでよぉぉぉぉ!!!!」

「ちょっ、美沙夜ちゃんここ外だよ……」

「どう考えてもあんな性悪人外魔術師より完璧美少女魔術師の私の方がいいでしょ!? なんで? どうして……うっ、うぅ……!!」

 

 

 あの質問に、結局お兄様は答えることはなかった。

 お兄様が答えるのを拒んだのではなく、珍しく他の客が入ってきたことで会話が中断された――それだけのことだ。

 

 けれど。

 

 お兄様のあの表情を見れば今もなお、沙条愛歌を想う気持ちに変わりがないことは容易に察することができた。

 ……どうして、あの人は振り向いてくれないのだろう。

 容姿、能力、どれを取ってもあの女に負けているものはないというのに。

 

 

 ――憎い。

 

 

「美沙夜ちゃん、どうしたの?」

「……なんでもない」

 

 

 彼の心を占めている事実が。

 それでいながら逃げていったその行動が。

 私に、私たちに勝ち目などないと感じさせる能力差が。

 

 

 ――にくい。

 

 

「……帰るわよ綾香。お兄様の口から直接ではなかったけれど知りたかった答えは得たもの」

「え、うん……」

 

 

 ――ニクイ、ニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニクイニク、

 

 

「――美沙夜ちゃんは、どうしてお兄ちゃんのことが好きになったの?」

 

 

 思考の渦から現実に引き戻したのは綾香のそんな一言だった。

 一瞬生じた間を埋めるように綾香が言葉を続ける。

 

 

「ほら、よく考えたらこういう話をしたことなかったなって思って!」

「……まあ、言われてみればそうね」

「そもそも私とお兄ちゃんの家は隣だったし、家族ぐるみで付き合いがあったけど……美沙夜ちゃんとお兄ちゃんがどうして知り合いになったの?」

「お兄様と知り合ったのは――」

 

 

 ――それは、どんな財宝よりも大切な淡い想いの記憶。

 この玲瓏館美沙夜の原点。

 身を焦がして止まない恋の始まり。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ――玲瓏館美沙夜という少女を一言で言い表すなら、「高貴」だろう。

 

 極東にありながら魔術の名門として知られ、政財界にも顔の利く玲瓏館家に生まれ、容姿、教養、当主としての器――その全てを兼ね備えているのだから恐ろしい少女である。

 しかしその高貴な魔術師にも幼少期というのは存在するもので。

 

 

「……っく」

 

 

 玲瓏館美沙夜、5歳。

 少しおませなお子ちゃまである。

 後の高慢かつ残忍でドSなプライド高き女帝の片鱗を見せつつある彼女は困っていた。

 

 

「……ふん、わたくしを前にしてそのふそんな態度。しつけがなっていないようね」

「バウッ、バウバウ!!」

「ひぅっ……!」

 

 

 犬。わんこ。DOG。

 近づけば猛然と吠え立ててくるこの犬畜生はなんと憎らしいことに、この少女の帰路を塞ぐようにしてそこに在る。

 詳しい犬種は分からないが、美沙夜ちゃんの身体を乗せてしまえるほどの体躯だ。襲い掛かられれば無事ではすむまい。

 

 そも、玲瓏館美沙夜にとって犬とは邸で飼っているものたちのことだ。

 このようにして自分に反抗的な態度を取ってくること自体が初体験といえる。

 

 時刻はもうすぐ六時。

 日は傾き、暗くなってくる頃合い。

 

 

「まじゅつ……駄目だって言われてるし……」

 

 

 一瞬魔術でこの駄犬を始末、ないしは調教してやろうかとも思ったが、父からの教えがある。

 さりとて周りに助けを求めるなど玲瓏館としてのプライドが許さない。

 結果として、犬を涙目で見つめる幼女という構図が出来上がっていた。

 

 遠くで学校のチャイムが鳴る。

 いよいよ追い詰められた彼女の眦から雫が零れ落ちそうになった瞬間――

 

 

「――ほら、取ってこい!」

「バウッ!」

「え……」

 

 

 背後から突然響いた声に驚くのも束の間。

 何かが視界の端をかすめる。

 黄色い球状。くるくると回転しながら飛んでいくそれは、薄汚れたテニスボールだ。

 

 

「――あいつ、この辺を通りがかった人に遊んでほしくて誰彼構わず吠えて通せんぼしてくるんだよ。完全に無視して通り過ぎるか、満足してくれるまで遊んでやるか、そのどっちかだな」

「……はあ」

「ほら、もう暗くなるし早く帰った方がいいよ。あ、でも子供一人じゃ危ないか……」

 

 

 そう呟きながら少し悩んだ様子を見せる彼の顔を見上げ――

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ああ、それがきっかけでお兄ちゃんを好きになったと……」

「人の話は最後まで聞きなさい。別にこれは初めて出会った時の話で、お兄様を好きになった時の話とは関係ないから」

「え? そのあと家まで送ってもらったとか……」

「『けっこうよ。気が済むまでその駄犬と戯れていればいいのではなくて?』と丁重に断ったわ」

「美沙夜ちゃん」

「……いいから。それ以上何も言わないで」

 

 

 

 

 苦し紛れに絞り出したその一言は、どことなく震えていたような気がする。




精神的に重い女と残念な子が好きです(唐突な性癖暴露)
あと、今度なんかハーメルンで祭りやるみたいなので僕も参加しようかと思ってます
よかったら読んでくれると嬉しいゾ

第三部のメインヒロインは?

  • 沙条愛歌
  • 愛歌ちゃん様
  • 根源接続ラスボス系お姉ちゃん
  • 半ゾンビファブリーズ

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