アークフェスにて発表された、ギルティギア&ブレイブルー人気投票。
ギルティギアの方では、まさかのブリジット一位という大番狂わせが発生し、今の時代背景とジャンルの流行りを世に見せつけた。
そしてブレイブルーの方では。1位がまさかのラグナではなく、1位がツバキ・ヤヨイというこちらも予想だにしない順位結果となった。
それどころか主人公であるラグナは、トップ3からも外れ4位という結果に。
主人公が1位で当たり前。もうそんな時代は存在しないと、この人気投票を持ってより多くの者たちがそれを立証した。
そんな人気投票から数日後。
カグツチのコーヒーショップにて、ノエルとマコトはこの人気投票のお祝い会をやろうと雨の中集まっていた。
「いやぁ~。あらためてノエル、2位おめでと~う!!」
「マコトこそ、6位なんてすごいじゃん!」
お互いに高順位であったことを湛えながら、二人はケーキなどを食べ談笑していた。
この人気投票、ノエルはツバキに次ぐ2位という順位を記録し。マコトも並みいる猛者どもを押さえつけ、ジンに次ぐ6位と満足のゆく結果に。
そしてこの場にはいないが、見事1位に輝いたツバキ。前から士官学校三人組というグループで人気を博していたノエル達は、ここまで己の地位を確立させたのであった。
「ツバキも来てほしかったんだけどねぇ~」
「仕方ないよ。ツバキだっていろいろ忙しいみたいだし」
マコトとノエルは、この場にツバキがいないことを残念がっている。
本当ならなによりの1位がこの場に来るべきだった。
だがツバキは己の家柄の事もあり、仕事が結構溜まっている。
ツバキのお祝いは後日にするとして、二人は互いのご褒美としておいしいものをたらふく食べていた。
「……でもさ。やっぱりあたし、ちょっと悔しいんだよね」
「え? 急にどうしたのマコト?」
三十分ほど過ぎたあたりで、マコトが少しばかりの不満を漏らす。
「6位って微妙な数字でさ。ギリギリベスト5に入っていないし、でも人気の高いキャラとしてファンに印象付けるのにも充分すぎる。そこに甘んじていて、本当にいいのかなって」
「マコト……。そう考えこんでいても仕方ないよ。今回は6位でも、次は私達三人でトップ3独占できるって!」
「あはは。ありがとノエル。けど、今回のキサラギ先輩からハザマ大尉までの並びを見るとさ、やっぱりブレイブルーの女性人気ってのが目立つわけじゃん」
そうマコトは、今のこの順位を通してブレイブルーという作品を自分なりの意見を述べる。
「ノエルはいいよ。稼働初期からここまで安定した人気を得ているわけだし。今回のツバキの一位は、そりゃあラジオでの活躍等がファンに認められた証だよ。でも……その中であたしの存在って、正直どうなのかなって」
「そ、そんなマコト」
「あたし的には、やっぱりハザマ大尉に負けたのが一番悔しかったなって。この先ブレイブルーが続いて行く中で、あたし……あの壁を超えられるかな」
最初とは打って変って、ここにきて急に弱気になるマコト。
マコトは初代のモブキャラから始まり、二作目のプレイヤブルを得て人気をここまで伸ばしてきた。
一時期はノエルと並び最強のキャラ性能と謳われたこともあるほど、プレイヤーと制作陣から愛され続けてきたという証拠。
だが、その上にいるキャラとの壁が、果てしなく遠いのも事実。
初代から女性ファンに人気のあるラグナ&ジン。
そして彗星のごとく現れ、ブレイブルーの女性ファンを一瞬で虜にしたハザマ。
多くの女性たちに支持されるこの三人を、この先マコトが超えるというのは、並みならぬ努力を要することは必然。
そう思うと、いくらマコトでも心を打たれる何かがあった。
「マコト。2位になった私が言うのもおかしな話だけど、そんな順位とか気にしていたらだめだと思うよ」
「ノエル……」
「確かに私達人間は順位とか、番付とかを意識する生き物だと思う。自分達の順位を伸ばそうと考えるのは、社会で生きていくには当然の事だと思う」
そう、珍しくノエルはマコトに説教をする。
「けど、自分たちに与えられた順位。位置を大切にするというのもまた必要なことだと思うんだ。だってそれは……多くのファン達が私達を応援してくれたことの証拠だもん。私はそれを大切にしていきたいと思う。そして同時に、より多くのファンの期待に答えられるよう、私は私らしく頑張っていきたいって思う」
「……そっか。ごめんノエル、あたし考えすぎてた」
ノエルの心に響く熱弁を聞いて、マコトは吹っ切れる。
そして飲み終わったコーヒーをゴミ箱に捨てると、この長い旅路を駆け抜けるように、元気よく雨の中を走っていった。
それについて行くノエル。気がつけば二人は河川敷についていた。
「さてと。したらノエル、次は負けないからね!!」
「マコト。私だって負けないよ! そして次こそは……私が1位を取る!!」
そう二人は熱い約束を交わし、この場で別れた。
きっとこの先、この作品は未知なる扉の先にある、長い道のりを歩んで行くことだろう。
物語の終わりを迎えるまで、それぞれの個性を生かし続けていくことだろう。
その中で、再び人気投票という場を与えられた時。悔いのない戦いを出来るか。
その戦いの時に控えて、少女たちは今日も……明日も己を鍛え上げるのだ。
そう……ノエルが心から思っていた時。
――事件は、起こってしまった。
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「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「!?」
突如、遠くの方から聞こえてきた叫び声。
その叫びは間違いない、先ほど別れたはずのマコトのものだった。
ノエルはすぐさま声のした方へと走る。そして、坂を下った先の橋の下で……それを発見した。
それは、ボロボロにやられ無残な姿を晒し倒れる、マコトの姿だった。
「マコト! どうしたの!? いったい何が……」
「あ……あぁ……」
そう、必死に言葉を喉から絞りだそうとするマコト。
その時。マコトにある異変が起こった。
マコトの上に表示されている順位。『6位』という数字が急激に下がっていくのだ。
次第に『10位』、『20位』と。ものすごい速さで二ケタを突破する。
「そ、そんな……。マコトの順位が、下がっていく」
いったいどういうことか。
マコトは何者かによってズタボロにやられ、負けを晒してしまった。
かつては最強キャラとして君臨していたマコト。そんなマコトが今、こんなにも無残な姿へと変貌している。
それに加え思いっきり顔に白化粧まで施され、バカ殿みたいになってしまっている。
当然こんな姿では、6位の貫禄など感じられはしない。よって順位が急激に下がっていったのであった。
「こんな醜態を晒されれば、確かに人気も変動する。けど……いったい誰がこんなことを」
「に……人気投票結果に……まだ、納得していない奴がいる」
とんでもないことを、マコトの口から発せられる。
そんな事実が、存在してもいいのだろうか。
「は……早く逃げてノエル。や……奴は……投票結果を……無理やり……変える……つもりだ」
そう言葉を振り絞り、マコトはがくんと肩を下ろした。
静けさだけが、その場に残る。
気がつけばマコトの順位は、40位を下回っていた。
これはプレイヤブルキャラにはあってはならない順位。そこまでマコトは、地に落ちてしまったのだ。
「……そ、そんな……。マコトーーー!! 48位の……マコトーーー!!」
48位。それはブレイブルーの人気投票では最下位の順位である。
今のノエルにはただ、叫ぶことしかできなかった。
そしてすぐにノエルは周りを見渡す。そしてすぐさま走りだし、周りの見渡せる場所へと移動する。
「ば、バカな。今頃になって、人気投票結果を改変しようとするなんて……もうアークフェスでとっくに順位は発表しているっていうのに! 今更そんなことをして、いったい何になるっていうのよ!!」
ノエルには理解ができない。そう……2位という高順位の彼女には、この醜い現状を理解することはできなかった。
そしてこの状況。ツバキの姿が見えない今、2位である自分が一番危ない位置にいるのは明白。
それだけではない、ラグナも、ジンも。マコトより上にいる順位の皆が危ない。
知らせなくてはならない。ノエルは走る。
だが誰に知らせる。敵は少なくともマコトの6位よりも下位にいる人物。
そしてそれは、ノエルよりも下にいる人物。ツバキを抜いた残りの全てが、ノエルにとっては犯人になりえる人物だった。
候補が多すぎる。こんな中で自分の味方になってくれる人物などいるのだろうか。
そんなことを考えて走る中、ノエルの視界に何者かの人影が写り込む。
ノエルはすぐさま姿勢を低くし、その先を観察する。
そこに歩いていたのは、ν-13だった。
「じゅ……10位の、ニューちゃん……」
10位。正確には先ほどまで11位だったニュー。
そんなニューは、何者かに向かって歩いて行く。
そこにいるのが犯人なのか、ノエルは危険を顧みず、さらに前へと顔を近づけた。
「あなたでしょ~? 人気投票上位を下位に突き落とし、順位を変動させているのは……」
間違いない。
ニューが何者かにそう言葉を向けている。
今、ニューの目の前にいるのが犯人。
ノエルはその人物を肉眼でとらえる。その人物の正体は……。
「ニューちゃん。妙な言いがかりはやめてもらえるかしら? そんなことを言うために呼んだのなら帰ってもいい? 私……暇じゃないんで」
「ら……ライチさん!?」
そこにいたのは、23位のライチ・フェイ・リンだった。
正確には24位なのだが、二人とも順位が繰り上がっている。
「とぼけないでよ! 頭の上見てみなさいよ、順位繰り上がってるじゃん!!」
「それを言うならあなただって一個順位上がってるわよ? よかったわね、きりの良い所におさまれて」
そうニューが指摘すると、ライチは真っ向から正論を返してきた。
先ほどの6位であったマコトがやられたことで、二人の順位が変動したのだ。
ニューはその犯人をライチではないかと疑い、ライチをこんなところへ呼びだしたのであった。
「あなたが犯人でしょ!?」
「だから、変な言いがかりはやめてちょうだい。それにみんな繰り上がるから私が犯人と決まったわけではないでしょ?」
「む……」
「これじゃああなた。ハクメンとの開きは永遠に埋まりそうにないわね」
そうライチが挑発すると、ニューは表情をゆがめた。
「まぁでも落ち込まないで。コンティニュアムシフトじゃリストラされてたし。元中ボス(※CT時代のハクメン)に負けたって仕方ないわよ」
ライチのこの指摘は、ニュー的にはとても気にしていたことだったのか、かなり身体をぶるぶる震わせている。
だがそれで逆上すれば犯人だと疑われてしまうと、ニューは平常心を保つ。
「し……CS時代にラムダと変わってさえいなければ、今頃ラグナとワンツーフィニッシュも夢じゃなかったのになぁ~」
「へぇ~」
「それに比べてライチさんあなたなに? プレイヤブルキャラの中でもめちゃくちゃ下の方じゃ~ん」
「んな!?」
今度はニューの挑発に、ライチが顔を歪ませる番だった。
「過去には闘劇優勝と今回のアークフェス優勝。CS時代から安定の強キャラで名を馳せてきたのに23位って(笑)。あれ? なんかその上にしゃもじと赤フンが見えるんだけど……」
「く……くかかががが……」
キャラ性能としては申し分ないほどに恵まれているライチ。
だがキャラそのものの人気と考えると、他の華のある女性キャラに比べて一歩劣るものがある。
今回の投票結果においては、赤フンことシシガミ・バング。そしてしゃもじ率いるアステカやパクメン。更にはガチムチゴリマッチョ枠のアズラエルにすら負けている始末。
結果としてはμ-12より二つ上と女性プレイヤブル最下位は免れたものの、ミューをノエルと一緒にしてしまえば、実質"女性プレイヤブル最下位"となってしまうライチ。
どうしてそんなことになってしまうかというのは、決して口にしてはならないもの。だがニューは容赦がなかった。
「しゃもじと赤フンに順位負けてない? やっぱあれかな~? ライチさんって"BBA"だからかな~。あぁごめん間違えた。"ババア"だからかな~?」
ライチの前でその単語はけして言ってはならぬもの。
おまけにバングとしゃもじに負けたということを加えてしまえば、ライチの怒りが爆発するのは簡単だった。
そんな一触即発の汚い女争いを見せつけられ、ノエルは遠くで冷や汗をかいていた。
「……おい。他はいい。ババアというのもギリギリ許そう。けどあのむさい忍者を引き合いに出すのだけはやめなさい」
「むさい忍者ってライチさん。そりゃあ言いすぎだよ~」
「いや、ニューちゃんもきちんとむさい忍者って馬鹿にしてるけど……」
遠くでノエルが静かにツッコミを入れる。
そしてニューは笑いを必死に抑えながら、あと少しで爆発しそうなライチに向かってこう侮辱した。
「今年はライチさん。あなたが弱体化候補決定ね。イーーーヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!」
「あぁーーーーーーーーーん!? 次回作でまたラムダに戻してやろうかぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「上等よぉぉぉ!! あなたがいなくなれば私も大会優勝候補に躍り出れるのよぉぉぉ!! このくっそババアーーーーーーーー!!」
ライチはオーバードライブ『大車輪』を発動し、同じくニューもオーバードライブ『アンリミテッドドライブ』を発動する。
二人は全力でぶつかりあい、ここら一帯が吹き飛ぶほどの大激戦を今、繰り広げようとしていた。
そんな二人の間に、一人の少女が割って入り、二人の攻撃を同時に捌く。
「二人とも。いい加減くだらない争いはやめなさい」
「れ……レイチェルさん」
そこに現れたのは、9位のレイチェル・アルカードだった。
ノエルはレイチェルの姿を見て驚く。なぜこんな殺伐とした場所に現れたのか。
「吸血鬼さん……なんで」
そうライチが尋ねると、レイチェルはため息一つ吐く。
そして新ためて、この状況を二人に説く。
「こんなところで争っている暇はないわ。この世界のどこかに、上位陣を下位に突き落とし、上位に食い込もうとしている愚か者がいるみたい」
「そうですレイチェルさん! よかった。私が言おうとしていたことを代わりに言ってくれた。これであの三人の中に犯人はいない。これで安心……」
そうノエルが遠くで安心をしていると、次の瞬間レイチェルがとんでもないことを言い放った。
「この混乱に乗じて、上位陣全てを葬り去るわ。そして私達が上位を独占するのよ」
「何考えてんのぉぉぉ!?」
なんということか。レイチェルはこの状況を解決しようとするどころか、自らも犯人と同じことをすると言いだしたのだ。
これには2位のノエルも焦りを通り越して危機感に変わる。このままでは更に敵が増えてしまう。
「ちょっと吸血鬼さん。本気なの?」
そう聞くライチに、レイチェルは迷いなく答える。
「そもそも気に食わなかったのよ。初代からメインヒロインやってたこの私が、こんな順位で甘んじなきゃいけないだなんて」
「メインヒロイン私なんですけど!!」
まるで最初からメインヒロインだったかのように言うレイチェルにノエルは遠くから訂正する。
確かに初代CTでは、レイチェルは主人公のラグナとの絡み、そして扱いにおいてはメインヒロインのノエルを凌駕していたのは事実。
一時期はBBのメインヒロインはレイチェルと言われていたほどで、主人公との専用曲がある女性キャラも実の所レイチェルだけである。
最近になってニューとノエルもそれなりの扱いになってきたうえ、彼女より人気の高い女性キャラも増えてきたので、今回レイチェルはこのような順位となってしまった。
「幸い6位より上の人たちは順位が変動していない。この騒ぎには気付いていないわ」
「でもさ~。仮に上手く上位陣蹴散らしても、順位的にはあなたが1位になるんでしょ?」
そう文句を言うニューに、レイチェルは呆れながらこう口にした。
「別に1位になりたいとは言っていないわ。2位くらいには入りたいって言ってるのよ」
「ぎりぎり私入ってるんですけど!!」
「まぁ確かにラグナもいることだし。とりあえず2位をぶっ潰すことにしようかな」
「予想はしてたけど標的が私ばかりに向いてるぅぅぅ!」
やはりというべきか、女性陣の宿敵は2位のノエルということらしい。
その中で最も下位のライチは、順位表を取り出し順位を見つめていた。
「でも、タオやアラクネもいるし。ほどほどにしないと彼女たちまでとばっちりを受けてしまうわ」
「それあなたに限った事でしょ!? 少なくとも赤フンは殺るつもりだこの人!!」
23位のライチはともかく、10位のニューと9位のレイチェルからすればタオカカ等は関係ない。
そう三人が順位表を見ながら色々考えていると。
なにやら、現在の8位の欄に、三人の目が集中した。そこにいた人物とは……。
「この子……誰?」
ライチが8位の人物を指さしそう呟いた。
8位のところには、『バレット』と書かれている。
今回の最新作で追加されたプレイヤブルキャラで、ブレイブルーで言うならば"新入り"の女性である。
現在の三人は初代のCTからプレイヤブルをやっており、古参プレイヤーとも5年間という長い付き合いを得て、現在の順位にいる。
なのにもかかわらず。最新作でいきなり追加され、ライチ、ニュー、レイチェルの三人よりも、バレットは順位が上なのである。
これを見たニューは、怒りを露わにする。
「バレット……? 誰ーこの子? ちょっとなんなのよこれー? なんで8位なんて入ってるのよ私達差し置いてさ~ぁ!?」
「そ……そうねぇ~。確かに大人の色気っていうか、良いビジュアルしてるものねぇ~」
平然を保つライチも、どこか声に震えがある。
「良いビジュアルってか、ホットパンツの尋常じゃないローライズこれなによー!? 狙いすぎっていうか際どすぎっていうかさ! そんなんで男誘惑するとかきーーーーーーー!!」
「そ……そうよね。いくらなんでもやりすぎよね。やりすぎたから8位なのかしら? 私はチャイナ服で太もも全開だけど、これで23位だから……あ~」
はっきりと悔しがるニュー。そして表には出さないまでもどこか敵対心を抱いているライチ。
そんな二人に、レイチェルがバレットについての情報を説明した。
「ヴァルケンハインの調べでは、第七機関の元傭兵らしいわ。物事を全て戦闘に例えるという天然を売りにしているのだとか」
「天然って……。出ましたよその狙ったような狙っていないような!? それに加えてこの尋常じゃないローライズでしょ!? 悔しい!! 私だってもう少しプロポーション良かったら尋常じゃないローライズで色気ぷんぷんでラグナを惚れさせられるのにきーーー!!」
「へ……へぇ~。キャラ立てに必死なのねぇ~」
ニューはさらに悔しがり、ライチはさらに声を震わせる。
なんか見てて居たたまれなくなってきたノエルは、寒さで身体を震わせていた。
それが寒さなのか、熾烈な女争いの醜さによる恐怖なのかはさておき。
「まぁ。このまま最新作の家庭用が出たら……更にこの子の知名度はウナギ昇りでしょうねぇ~」
そうレイチェルが冷静に言うと。
ニューとライチは指をポキポキ鳴らして、美少女と美女とは思えない表情で静かに言葉を発した。
「じゃあその前に、示さないといけないよね~」
「CT時代から生き抜いてきた……私達元祖女性キャラの真髄をね……」
「あわわわわ……とんでもないことに……」
この三人は本気で殺るつもりだ。
今はバレットに目を向けているが、いずれその牙はノエルの元へと向けられるだろう。
このままではまずい。ノエルは先に思いやられていた。
そんな中、三人の中で圧倒的下位のライチが単独で動き出す。
「あら? どうしたのライチ?」
「バレットはあなた達に任せるわ……」
レイチェルの問いに、ライチがバレットを任せどこかへ赴く。
その真意は何か、それはすぐさまライチの口から語られた。
「これ以上女キャラが増えて人気が減らないように……あのしゃもじ、潰してくる」
「それだけはだめぇぇぇぇぇぇぇ!! このゲーム終わっちゃうぅぅぅ!!」
なんとライチが標的に定めたのは、ブレイブルーの生みの親であるしゃもじ。
もし本当にライチがしゃもじを倒してしまえば、ブレイブルーの存続に関わる。
これはなんとしても止めなくてはならない。ノエルはすっ飛んで行ったライチの後を追う。
「まずい! まずいことになった!! 考えてみたら犯人捜しどころか、どいつもこいつもいつ犯人になってもおかしくないエゴの塊みたいな連中だった」
思い返してみれば、格闘ゲームという世界観。
自分が一番でなければ気が済まない。そんな世界でこの事件、犯人を捜すというより全員が犯人そのものだった。
ノエルは考える。この状況で絶対に犯人になりえない人物。
その答えはすぐに思いつく。そう、1位の人間だ。
「ツバキ……。でも1位のツバキが見当たらない。だとしたら……」
ツバキがいない今、ツバキの次に順位の高い者。
そう、自分自身だ。信じられるのは自分しかいない。
だがノエル自身では限界がある。ならば他にも協力してもらうしかない。
だとしたら、マコトよりも上の人物――ラグナとジン。ハザマ大尉は姿を現すことが無いため実質いない者として考えた方がいい。
ノエルが自身の順位を守り通すには、ラグナとジンを説得した上で味方につけるほかはなかった。
そうノエルが模索しながら、走っていたその時。
急に画面がぐにゃぐにゃ揺れ始めた。
「な……なんだこれーーー!?」
そして揺れまくり、グラフィックが崩れ始め、何が何だか分からなくなったその時。
ぶつんと画面が真っ暗になり、ネシカからブレイブルーの作品が消失した。
「しゃもじ……やられたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」
果たしてこの人気投票争い、いったいどうなってしまうのだろうか。