蒼魂~ブレイブルー銀魂パロ~   作:トッシー00

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第12話です。


人気投票なんて灰になれ

 アークフェスにて行われたブレイブルー人気投票。

 だが、その投票結果を良しとしない何者かが、6位のマコトを襲撃し人気順位に変動を起こした。

 これを受けてレイチェルをはじめとした女性陣が、攻められる前に攻めよと動き始め、18位組の一人であるプロデューサー『パラケルス森』が始末されてしまった。

 はたしてプロデューサー不在のまま、このゲームはどうなってしまうのか。

 そして、ノエル達の運命は……。

 

-----------------------

 

 ネシカ筺体から消えてしまったブレイブルー。

 だが一定時間を経過した後、なんとか元に戻ることに成功した。

 

「元に戻った。あのしゃもじ、なんとか致命傷は避けられたみたい……」

 

 どうやらしゃもじはライチの攻撃をぎりぎり回避することができたようだ。

 

「よかった。これでプロデューサー死亡で作品未完結という、最悪の事態は避けられた。後は何とかして、ラグナさん達と合流しないと。なんとしてでもこの人気投票を……」

 

 そうノエルが意を決し、走っている最中。

 再び画面にノイズが走る。

 そしてノイズが終わり、映し出された画面には、ブレイブルーとは思えないほどの荒廃した世界が、ノエルの背に描かれていた。

 

「この醜くも美しい世界を……奴ら外道の好きにはさせない!!」

 

 そしてたくましい体つきになったノエルが、世はまさに世紀末をかけぬける。

 

 テーレッテー♪ テレレーレレレ♪ テレレテッテー♪

 

「ホアッタァァァァァァァァァ!! 行くぞ!! 蛇狂王 照流美ーーー!!」

 

 そう敵の名を叫び、どこかで聞いたことのある音楽をバックに、ノエルは世紀末となったカグツチを走りぬける。

 変わり果てたカグツチにいたのは、モヒカンヘアーやマスクをつけた筋肉質の男たち。

 これでは誰が咎追いなのか誰が犯罪者なのかわかったものではない。

 こんな状況を見て、ノエルが内心ツッコミを入れる。

 

「って! 世界観とグラフィックまるっきし変わってるんですけどーーー!! サイボーグ森って誰? 愚欄存って誰? 蛇狂王 照流美って誰だぁぁぁぁ!?」

 

 そう戸惑いながらも、周りを見渡せばそこは荒廃したカグツチの荒れた世界観。

 ゲームシステムも前作まであったガードプライマーが七個になって復活しているし、ブーストゲージやバニシングストライクなどの要素まで追加されてしまっている始末。

 更に現在のプレイヤブルキャラの全員が即死、永久コンボを所持している等。完全にゲームバランスまで世紀末になってしまった。

 

「一命は取り留めたけど、ゲーム自体まったく別物になっちゃってるじゃんしゃもじ! あっちはあっちでヴァルケンハインさんがアズラエルに開幕1秒で即死コンボ決めちゃってるし、こんなゲームバランスじゃ5年目いっぱい持たないわよ! 愚欄存先生も原作協力ありがたいけどもう少し原作読んできてよ!!」

 

 そんな数え切れぬ文句を言い続けていると。

 またしても画面にノイズが走り、ぐにゃぐにゃに揺れ走れなくなるノエル。

 

「また!? ひょっとして制作チームとプロデューサーで喧嘩始めちゃった!? やめてよ今は仲良くしてよ!! 確かに北○とBA○ARAは即死永久が醍醐味だけどもうこのご時世パッチあてて直せるんだから無理にそういうのいらないんだって!! アニメ化だってするんだし初心者をより惹き込まないとこの先……」

 

 ブツン!!

 

「あ……。また真っ暗ーーー!? どうすんの!? 家庭用とアニメ化までもう何ヶ月かしか残ってないんだよーーー!!」

 

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 そして数分後。

 再び画面が復旧し、そこには元の世界に戻っているカグツチがあった。

 ノエルの身体も筋肉質からいつもの細い体つきに戻っている。

 

「あ……どうやら戻ったみたいだ」

 

 だが安心してはいられない。

 ノエルはすぐさまラグナがいつもいるカグツチの外れの、スナック『アルカード城』のある路地へと向かう。

 きっとラグナもそこにいるはずと、だが……そこへ付いた瞬間ノエルは察した。

 そこにはたくさんのカグツチ住民が。そしてその中には順位下位のモブキャラが数名。

 

「ノエルちゃんじゃない~。あんたちょっとこっちおいでよ~」

「はやくこっち来るッス」

「少尉さ~ん。はや~く」

 

 そこで悪魔の手招きをする二匹と一人。

 人気投票38位のギィ&ナゴ。そして34位のリンファ。

 普段はあまり出番のないキャラ達が、一斉にノエルを見やる。

 

「あ……あわわ……」

 

 いくらノエルでもこの数はまずいと。

 すぐさま誰もいない方向へ逃げるノエル。

 するとノエルの順位を狙う野獣どもはすぐさま逃げるノエルを追う。

 

「追いなさい!! あんたらけっして逃がすんじゃないよ!!」

「あれぶっ潰したら順位がまた一つ繰り上がるよーーー!!」

 

 ナゴとリンファが先導しノエルを追う。

 逃げるノエル。だがこの数、逃げ切れるか不安だ。

 四方八方から襲ってくるカグツチの猛者どもの追撃をなんとかかわし続ける。

 そんな中、建物の屋根を走っていた時、屋根の基盤が抜け落ちノエルは地面に落下。

 その落ちた路地裏には、ナゴと数名のカグツチ住民が。

 

「見つけたわ! 追えーーー!!」

「きゃあああ!! もうおしまいだーーー!!」

 

 そうノエルが観念した瞬間。

 何者かがノエルの首の襟を掴み、路地裏の横道にある店の倉庫へと引きずり込んだ。

 そのおかげか、ナゴ達はノエルを見失う。

 

「消えた!? あんたたちもっとよく探しなさい!! けして逃がすんじゃないよ!!」

「は、はい!!」

 

 そして数分後。

 ナゴ達の気配は完全に消え去った。

 そしてノエルを連れ込んだ人物、ノエルの順位を考えればほぼ間違いなくその人物はノエルの順位を狙っている。

 いったい何者か。ノエルは後ろを見ると。

 

「どうやら行ったみたいだな……」

「そのようだな……」

 

 そこにいた人物。

 一人は銀髪のツンツンヘアー。そしてもう一人は、猫の尻尾のようなピンクの髪の毛をした人物。

 

「ラ……ラグナさんとココノエさん!?」

「馬鹿てめぇ! でかい声出すんじゃねぇよ!!」

「おい、お前の方が声大きいぞ……」

 

 そこにいたのは、4位のラグナと7位のココノエだった。

 

「ど、どうしてこの二人が。いったいどういう組み合わせ……」

 

 普通だったら共闘なんてしないだろう二人組。

 だが今のこの現状。この二人がこの場にいる理由は大体察する。

 

「てめぇも見ただろ? カグツチはあの調子だ。こんなんじゃあ信用できる奴も限られてくるだろ」

「ただの成り行きだがな。少なくとも4位のこいつなら私に襲ってくることはないだろう。他の連中は知らないが……」

 

 そう見渡すと、そこにはこの状況から逃げ、一時的な同盟を組んだ者達が数名。

 人気順位5位のジン。6位のハクメン。12位のタオカカ。17位のバング。22位のテイガー。

 普段は敵通しの面々だが、この時ばかりは皆が味方であった。

 

「くだらん。僕にとって人気の順位なんてものはどうだっていい。こんなことになるくらいならば5位なんて取るんじゃなかったと今になって思う」

「キサラギ少佐!」

 

 ジンはそう、他の連中と慣れ合う気はないと隅っこでそう愚痴を言っていた。

 中途半端だが高順位を取ってしまったことで、下位に目をつけられ嫌々敵の連中と組む羽目になったのだ。ジンとしては迷惑以外の何物でもない。

 

「じゃあ貴様は外でいいな?」

「下がっていいんだもんねぇ。パンツも順位もズリ下げられていいんだもんねぇ~?」

 

 そんなジンの態度が気にいらなかったのか、ココノエとラグナはジンをドアの向こうへと蹴り飛ばしこの隠れ家から追い出した。

 すぐさまジンは中に戻ろうとしたのだが、二人は鍵をかけジンを無法地帯の外に置き去りにする。

 

「開けろ貴様らぁぁぁ!!」

「開けてほしかったら5位とってうれしいですって言え。犯罪者に負けたエリート少佐が」

「言ってみろジン・キサラギ。今の貴様になら言えるはずだ~」

「殺すぞこの犯罪者と鬼畜眼鏡がぁぁぁ!!」

 

 そう散々ジンを煽り、ラグナとココノエは数分に渡りジンの無様な姿を楽しんでいた。

 そんなジンの哀れな姿にノエルがどうしていいかわからない見つめる一方、こちらではこんな二人組がこの人気投票を議論していた。

 浪人街に済む忍者シシガミ・バングと、第七機関の兵士アイアン・テイガーである。

 

「がっはっは! なんだかんだ言っておきながら人気順位が気になるらしいでござるな」

「1位だ2位だと、何が嬉しいんだか正直私のデータには理解できない」

 

 そう二人は、周りの子供じみた争いに呆れを口にする。

 そんな二人、なにやらいつもと様子が違う。

 いつもならバングは己の忍者服と赤フンを、テイガーは特製の赤いタンクトップのようなものを着こなしている。

 だが今回バングは魔道都市イシャナの制服を、テイガーは大きなスーツと帽子を着ていた。

 人気投票に興味がないとか言っておきながら、明らかに他の順位の高い人物を意識している二人。

 

「私達はそういうところで勝負していないわけだし、そんな無理やりな方法で1位になれるなら今頃私は数多くの者を投げ飛ばしているはずだ」

「上位取ろうと思えばいつでもとれるでござる。今回はあえてとっていないというか、他のキャラを立てるのも拙者の役割というか、あまり目立ち過ぎると全国一億人のバング殿ファンに申し訳ないでござるからな~」

「全くだ。投げキャラが1位を取ると何かと周りでうるさくなるから、私も今回はこの順位で甘んじさせてもらった。毎度新作が出るたびに強化してもらっているのだ。それくらいの心配りは紳士として当然というものだ」

「わかるでござるよテイガー殿。こちらは自然体で勝負してるわけでござるからな。互いに初代から玄人向けキャラとして愛してもらっている身、キャラのビジュアルで勝負している他の者達とはわけが違うのでござるよ」

「…………」

 

 そう互いに己の正論を言い合っては頷いているが、今している格好とどうも引っかかるような言い方が説得力に欠けていた。

 自然体がどうだのビジュアルがどうだの言っている割に、二人が今している格好が自然体じゃないし、ビジュアルを狙っていたからである。

 そんな二人をノエルはジト目で見つめていた。

 

「この3位とか意味わからんでござるよ。ただスーツ着こなして常にニヤニヤしていて、他のやつらに散々嫌がらせしまくったあげくに3位でござる。女子相手に容赦なくゴミだの人形だのもう人権侵害で逮捕されていてもおかしくないのに、その点拙者は女性には優しいバング殿でござる!!」

「そうだな。あ、私の場合今回は紳士としてスーツ着ているだけだが……」

 

 なにやら二人は3位の人物に対して批評を述べ始めた。

 だがそれだけには飽き足らず、次に二人は……。

 

「この13位……小説版のヒロインだったか。いきなり出てきては周りからプレイヤブル化まだかだとか本編に出してくださいだとか。フェイズ0から読ませてもらったが正直みんなの足引っ張ってただけじゃないのか? ただ女子高生の制服着ているだけだ。それで数多くのプレイヤブルキャラ押しのけて13位はちょっと甘やかせすぎだと思うが……」

「テイガー殿の言う通りでござるよ。その結果今回あらゆるコネ使いまくって小説からゲームに出るまでに至ったのでござるからな。あぁちなみに拙者は今回ちょっとイメチェンして制服着てるだけでござるよ」

 

 小説版の人気キャラである13位の人物まで文句を言う始末だ。

 その後も勝手に二人の格好をしているだけなのにパクっただのパクられただの言いだす始末で、ノエルはもう声のかけようがなかったという。

 そんな二人の醜い会話を聞いて、奥の方にいたこの人物が二人を叱るように口を開く。

 

「いいかげんにしろ。パクっただのパクられただの、今はそんなことを言っている場合じゃないだろう……」

「ハクメンさん!」

 

 そう口にするハクメン。だがその姿は傷だらけで、腕にはココノエ特製の術式による手錠がかけられていた。

 

「こんな傷さえ負っていなければ。あの化け猫に後れを取らなかったものを……」

「ハクメンさん。まさかその傷は……外の連中に……」

 

 ハクメンもの強者がここまでの傷を負うことは滅多にない。

 ならば考えられることは一つ。それまでに外の下位の者たちの争いが激化していたということ。

 彼らの順位争いは予想以上に戦火を拡大させており、ハクメンはそれに巻き込まれてしまったといったところか。

 その際に手傷を負っていた所を、ココノエに見つかり捕まってしまったのか。そうノエルは考えた。

 

「最早誰が敵で誰が味方なのか皆目見当もつかぬ。この世にもう安息の地などどこにも存在しないぞ……」

 

 そう外の悲惨な状況を語るハクメン。

 だが彼の背景に映し出されていた風景は、なぜかサファリパークが映し出されていた。

 ノエルはその回想に目をやり、冷徹にツッコミを入れる。

 

「……ハクメンさん。回想がおかしいんですけど。安息の地というかこれサファリパークですよね? サファリパークに自転車で行ってやられましたよね?」

「やはり肉球を間近で見たいと思ったのが全ての悪夢の始まりだったのか……くっ」

「「くっ」じゃないでしょ。あなたバカでしょ、どんだけ猫好きなんですか、それでどうしていつまでもその猫の娘と喧嘩してるんですか」

 

 ハクメンの肉球への異常な執着は、過去の親友の影響があったからなのかもしれない。

 と、ノエルはあることに気がついた。

 

「そういえばパクメンさんは? まさかパクメンさんだけ置いて逃げてきたわけじゃないですよね?」

 

 そう、18位組の一人であるパクメンがいなかった。

 18位はしゃもじとパクメンとアステカの3人で構成されているため、しゃもじがやられた状態でも順位が変動するわけではない。

 だが今の状況では全滅だって十分あり得る、そう思いながらノエルが周りを見渡すと、なにやらタオカカのいる方で雑音が聞こえてきた。

 その方向へノエルが目をやると、そこにはアステカと共闘し14位のアラクネをボコボコにしているパクメンがいた。

 

「いいぞ白いの~! もっとウネウネをボコボコにするニャス~!!」

「…………」

 

 その殺伐としたマスコット同士の争いを見て、ノエルが言葉を失った。

 どこでも誰かが争い、どこでも誰かがこの人気投票に意を唱えている。

 

「以上25位より上の7人と4匹だ。まぁこの辺りなら裏切ることもねぇだろ」

「いや、メチャクチャ不安なんですけど。全員ハラに一物抱えてそうな人ばかりなんですけど……」

 

 ラグナはそう言うが、ノエルからすればこの面子では信用しきることはできずにいた。

 それもそのはずで、その中で最も順位が高いのはノエル。いつ何時誰がノエルの2位を奪い取ってくるかわかったものじゃない。ノエルからすれば全員が敵も同然だった。

 

 その後、ラグナ達は手配していたカグツチ某所にあるホテルへと移動。

 このホテルはラグナの古い知り合いが管理しているホテルらしく、しばらくは誰も来ないようになっているらしい。

 ここにラグナ達は篭城し、ほとぼりが冷めるのを待つ作戦である。

 

「ほとぼりが冷めるまでとは言うが……。いったいそれはいつ冷めるんだ? そんないつ来るかもわからないというのに、世界を動かす三大勢力が集まっているこの場に留まれというのか? そもそも本当に……このホテル内で争いが起こらないと言い切れるのか?」

 

 ジンはそう冷静にこの場を分析する。

 今このホテル内には、統制機構、六英雄、第七機関。その組織の核を担う人物が集まっている。

 外に出れば順位争いに巻き込まれるというが、この場で争いが起きないとは言い切れない。

 そんなジンに対して、ノエルが珍しく異を唱えた。

 

「キサラギ少佐。人気投票というものは、たくさんのファンに協力してもらって成立してるんです。この順位を個人の私利私欲で捻じ曲げようとするなんて、おかしいとは思いませんか?」

「ほう? 僕より上の順位になって勢いづいたか、言うようになったな障害」

「……なんとでも言ってください。でも私はこの想いだけは曲げるつもりはありません。私達にはこの順位をどんなことをしても義務があります。ファンが与えてくれたこの順位を……守る義務があるんじゃないですか?」

 

 そうまっすぐな瞳で言い切ったノエルには、悪態をつくジンでもそれ以上は言い返せなかった。

 確かにノエルの言う通りだ。これ以上争いを続けることは、5年というブレイブルーの歴史を汚すことに値する。

 格闘ゲームの枠を超え様々な人たちに愛されたブレイブルー。その人気の果てにはアニメ化まで決定したほどに、衰退する格ゲー界を表立って支えてきた。

 いつしか2D格闘ゲーム最高峰とまで言われ、その地位を確立させてきた。

 ならばこそ今、このような醜い争いをしていてはならない。アーク25周年という華舞台にてつけられた己の順位を……けして誰にも奪われてはならないと。

 

「守り通そうじゃないですか。己の順位を、己の役割を。私達が力を合わせれば……不可能はないはずです」

「……当たり前だ障害」

 

 ノエルの気迫のこもったその言葉に、一番最初に反応したのはジン。

 そしてジンは立ちあがり、皆にこう言い放つ。

 

「……裏切るなよ、貴様ら」

 

 その言葉に、ラグナも少し嫌な表情を見せながらも、満更ではない様子で……。

 

「けっ! そっちこそな」

 

 こうして、ラグナとジンはそれぞれ真逆の道を行く。

 ココノエとタオカカはラグナについて行き、ノエルとバングはジンについて行く。

 

「キサラギ少佐。これで安心ですね……」

「あぁ、いい芝居だったぞ障害」

「……え?」

 

 そう、ラグナの方に見せないようジンはほほ笑む。

 その一方で、ココノエとタオカカ、そしてラグナ達も……。

 

「ラグナ・ザ・ブラッドエッジ。これで勝負はもらったも同然だな……」

「ニャス~」

「……あぁ」

 

 そう、さきほどのノエルの言葉の数々を、この場にいる全員には何一つ心に響いていなかった。

 あの言葉は、それぞれを欺くための着飾りにすぎない。

 ラグナ、そしてジンの目的は元から共闘などではない。そう……二つの勢力は最初から、互いに潰しあうことしか考えていなかった。

 

「統制機構を蹴落として、俺たちで首位独占するんだよ!!」

「あの犯罪者どもを蹴落として、僕たちで首位を独占する!!」

 

-----------------------

 

「はぁ……。大丈夫かな私。おそらくあの様子だとラグナさんも同じことを考えているはず。あの人たちなら順位争いはしないと踏んで協力を求めたけど、これじゃ逆に2位の私が一番危ない……」

 

 ノエルは一人、ホテルの屋上に身を潜めていた。

 今すぐには動かないだろうが、きっと何かを転機に誰かが攻撃を仕掛けてくるはず。

 しかも今度からは下位が上位を落とすだけでなく、上位が下位を容赦なく落とす状況。

 もう何を信じていいかわからなくなり、ノエルは個人的に外を監視していた。

 

「外の警戒はおこたれない。ここを襲撃されてはおしまいなんだから……」

 

 そう思った矢先。

 ノエルの視界に、8位の人物が映り込んだ。

 

「あ、あれは……バレットさん!」

 

 8位の人物、それは先ほどレイチェル達の会話に上がってきたバレットだった。

 見た所バレットはこの騒ぎに気づいていない。悠々と外を出歩いている。

 これでは格好の的だ。すぐさま知らせなければならない。

 だが、物事はそう上手くはいかなかった。なぜなら……。

 

「そ……そんな。バレットさんの向かいからやってくるのは……」

 

 そう、時すでに遅し。

 バレットの向かいにはすでに、9位のレイチェルを筆頭に、10位のニュー、23位のライチが三人そろってバレットの元へ歩いていた。

 このままでは鉢合わせする。いくらバレットでも相手は三人、それもラスボス枠のニューにアークフェスの決勝にて死闘を繰り広げたライチとレイチェルがセット。

 明らかに相手が悪すぎる。ノエルはバレットに声をかけようとするが、その瞬間バレットとライチの肩がぶつかってしまった。

 

「あ、すまない……」

 

 そうぶつかり、バレットが謝ると……。

 

「ちょっと待たんかーーーい!!」

 

 通り過ぎるバレットを、ニューが叫び歩みを止める。

 いったい何をするつもりなのか、ノエルがそう思っていると。

 

「姉ちゃんよぉ。あんたなにしてくれてんねん。あんたがぶつかったおかげで……アネゴの23位がこれ、取れてもうとるやんけーーー!!」

「あ、当たり屋だぁぁぁぁぁ!!」

 

 そうわざとらしい関西弁を使ってバレットに因縁をつけるニュー。

 なんとライチ達は、わざとバレットとぶつかり順位が取れたことをバレットのせいにしようとしている。

 古典的なやり方だが、これなら相手側に責任をなすりつけることができる。

 それをビルの屋上から見ていたノエルは、なんという作戦を思いついたんだと驚愕している。

 

「なにしてくれてんねや! アネゴの23位に傷がついとるやんけ! どないしてくれんじゃアホー!」

「完全にヤクザの手口だよ、奴らヤクザ以外の何物でもないよ! てかあれ着脱可能だったの!?」

 

 どうやらノエル達の上に付いている順位は取り外し可能のものだったらしく、それ故にライチの23位が取れてしまった。

 そのことをニューが責めると、バレットは冷静にその場を対処する。

 

「すまん。よそ見をしていてな。ちゃんと洗って返す」

「組の代紋に泥を塗っておいて洗って返すじゃすまされへんで。ちょっと事務所までご足労願おうか」

 

 そうレイチェルまでわざとらしい関西弁を使う。

 すると、いよいよ後ろにいた大御所。ライチが前に出てきた。

 

「レイチェル、サーティン。その辺にしとき」

 

 そう二人に声をかけると、ニューとレイチェルはかしこまったように身を引く。

 そしてライチが前に出てきて、バレットと対峙する。

 いったい何をするつもりなのか、と……ライチはなにやら申し訳なさそうな表情をする。

 

「こちらのお嬢さんも悪気があったわけやないんや。これ以上カタギいじめたるなやみっともない」

 

 と、ライチはバレットを無理に責めたりはしなかった。

 なにか考えがあるのだろうか、そしてその極妻キャラの意味はなんなのだろうか。

 

「エライすんまへんでしたな。うちの若いモンが」

「こ、こちらこそ申し訳ないことをした。何か大切な物を失ったようで」

 

 そう律儀に謝るライチに、バレットは先ほどよりも戸惑ったように謝り返す。

 次第にバレットがライチ側の術中にハマっていく。自分が悪いはずなのに謝られるものだから、バレットとしてはどうしていいかわからずにいた。

 そんなバレットに対して、ライチは全てを許すかのように優しくも、穏やかさを前面に出す。

 

「ええねや、もう気にせんといて。どの道わしゃもうこの世界から足洗うつもりやったんや……」

「アネゴ!」

「23位なんて中途半端な看板背負っててももうどないにもならへん」

 

 若頭役のレイチェルの制止を振り払いながら、ライチはこの世界で生き疲れたその胸の内を明かす。

 

「わしらのやり方はもう古い。かつてはキャラソン出させてもろたけど今じゃ誰も覚えとらへんし、そもそもわしのBGMなんて人気どころかわしのこれまでの戦歴相まってゲーセンじゃ聞きとうないって輩も多いしなぁ。でもいつかプリンセスプリンセスみたいなユニット組ませてもらえるんちゃうかって、引きずっていたらかれこれブレイブルーも5年目突入しとった」

 

 そう語るライチの傍で、レイチェルとニューは涙ぐんでいた。

 そんな三人の様子を、ただただバレットは眺めることしかできない。

 

「けど押し寄せる時代には流石のプリプリも勝てれへん。プリプリの時代も終わった。これからは新しい時代……そう、あんたら"ももクロ"の時代なんや」

 

 新しい時代であるバレットにそう告げ、古き戦を戦い抜いてきたライチは背を向いた。

 まるで全てをバレットに託したかのように、ライチは己の戦歴も順位も全て拭い去るようにその場を立ち去ろうとする。

 

「後の事は頼んだで。わしらの分まで頑張るんやで……」

「……ちょっと待ってくれ」

 

 そう立ち去ろうとする三人に、後ろからバレットが呼び止める。

 そしてなにやらベキリという痛々しい音が鳴る。ライチ達が振り返ってみると、そこには自らの8位を取り外したバレットがいた。

 

「こ……これ落ちてたんだけど。ひょっとしてこれもお前たちのものかな……」

「ちぎったぁぁぁ!! バレットさん自分の順位ちぎっちゃったよ! そんなことなんてしなくてもいいのに!!」

 

 なんということか、バレットはどうもこの状況で自分が許されるのが許せなかったのか、自分の順位をライチに譲るつもりでいる。

 この行為にはノエルも驚きを隠せなかった。だが裏を返せば、これも全てライチ達の作戦ということ。

 

「いやそれ、君のじゃ……」

 

 そうレイチェルがバレットに言うのだが、こうなるとバレットもむきになり嫌でも自分のだと言い張らない。

 無理やり順位をちぎったせいか頭から尋常じゃない程に出血をしている。だがバレットは順位は譲っても己の意地はゆずるつもりはない。

 

「そこに落ちてた! 気にせんといて!」

「バレットさん! そんな奴らに気を使わなくてもいいから!!」

 

 遠くでノエルが忠告するが、当然バレットに聞こえているはずもなく。

 そんなバレットの優しささえも、ライチは利用するようにこう口にした。

 

「お嬢さん。気持ちはありがたいんやけどそれは受け取れへん。プリプリにも意地っちゅうもんがある。それにわしだけ8位になったって意味なんてあらへん」

「アネゴ。なんかいい方法はありませんかね? "全員が8位"になる方法とかないんですかねぇ~?」

「そやなニュー。"全員が8位"になればアネゴもこの世界から身を引く必要なんてあらへんのに~」

 

 ライチの優しさに涙しながら、どこかわざとらしくそう言うニューとレイチェル。

 全員が8位を共有する。つまり現在18位のパクメンとアステカのようにするということ。

 例外が存在するため、できないことはないのだろう。だがそれを行うためには、現在の8位である人物の承諾が必要なのだ。

 するとその見え見えの手に乗っかったように、バレットは己の8位をロックオンで補足してぶん投げた。すると……。

 

「……なんかドライブボタン間違って押したら、自分の順位を投げてしまった。どうしよう、8位が四つに割れてしまった」

「今度は自分の順位四分割しちゃったぁぁぁ!!」

 

 屋上でノエルがまたも驚愕。

 どこまでも義理堅いバレット。自分の順位をちぎるどころか、それを四つに粉砕してしまった。

 

「これ、みんなで分ければひょっとして全員8位になれるんじゃないかな?」

「んなわけねぇだろ! しゃもじ達は"その他"枠で19位取ってたけどあんたらの場合はキャラ個人だから無理だろ!!」

 

 そうノエルが、この無謀な考えに対して否定していると。

 

「だったらこんなのはどうでっか?」

 

 その単純な思考をぶち壊したのが、レイチェルの言い放ったこの一言だった。

 

「わしら四人合わせて、"(アストラル)クローバーZ"でまとめて8位ということで」

「誰がももクロ!? そんなやり方あったの!? いいのそれで、あんたら本当にそれでいいのぉぉぉ!?」

 

 なんとレイチェルは、しゃもじ達その他枠に乗っ取って、自分達をアイドルユニット"超クローバーZ"団体として8位になれると言いだした。

 この裏技には流石にノエルも手出しできない。ただただ呆気に取られ、全員が8位になる様を見せつけられるしかなかった。

 

「こ……こんなの全然ももクロじゃないよ。あんなの"はらグロ"でしょ。腹黒しかいねぇよ……」

 

 実質ノエルの言う通り、全てを終え8位となった後、ライチとニューは勝ち誇った笑みをバレットに見せぬよう浮かべた。

 このままじゃ取りこまれるのも時間の問題か。ノエルはすぐさまホテル内に戻ろうとする。

 と、そう足音一つ建てた時、下にいたニューが超感覚センサーを発動しビルの屋上を認識する。

 

「……認識。対象……このホテルの屋上に補足」

「!?」

 

 そうニューが言葉を発すると、間を置くことなく瞬時にライチとレイチェルが動いた。

 

「国士無双!!」

「バーデン・バーデン・リリー!!」

 

 二人は己の技をホテル屋上にしかける。

 それをノエルは間一髪でガード、そして逃げるようにホテル内へと入っていく。

 

「か、勘づかれた!! 奴らが乗り込んでくる。もうじきここも戦場だ!!」

 

 つかの間の休息もこれで終わる。

 あと数分もしないうちに、順位争いという名の戦争が始まる。

 このままではいけない。今でこそこのホテル内の全員が一致団結しないと、奴らはらグロに全てを吸収されてしまう。

 

「ラグナさん! キサラギ少佐!! 襲撃です!! 仲間同士で争っている暇なんて……」

 

 そう階段を下り、皆の所へ駆けつけようとした時だった。

 突如ノエルの首もとに、剣の切っ先が向けられる。

 その刀先からは冷気が出ていた。そう……ノエルに剣を向けたのはジンだった。

 

「仲間同士で争う……か。しかもそうやって両者に言いふらすことによって共倒れを狙うとは……貴様もやるじゃないか障害」

「キ……キサラギ少佐?」

「貴様……最初から僕らを裏切るつもりだったんだな」

 

 そう鋭い眼光をノエルに向けるジン。

 

「ち、違いますキサラギ少佐! 今のはそういう意味じゃ……」

「とぼけるなよ障害……。あれを見てもまだ……言い逃れができるのか?」

 

 そう誤解を解こうとするノエルに、ジンは階段の先の方へと剣を向ける。

 そこに映し出されたのは、衝撃の光景だった。

 

 そこには……予測データ以上のダメージを負い、ブリキロボと化し順位が256位となったテイガーの姿があった。

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