蒼魂~ブレイブルー銀魂パロ~   作:トッシー00

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第13話です。


人気投票なんて……

「テ……テイガーさん!?」

 

 ノエルがホテル内へ逃げると、階段を下った先にはテイガーがいた。

 それも、ダメージを受けおもちゃのような姿になっている。

 いったい誰がこんなことをしたのか、その犯人は誰か。

 そして今ノエルは、ジンは自分が犯人じゃないのかと疑われている。

 だがノエルはやっていない。元からやるつもりはなかったし、それ以前に先ほどまでホテルの屋上にいたからだ。

 

「ちょっと目を離した隙にこれだ。僕たちの中に裏切り物がいる。それはいったい……誰だろうなぁ?」

 

 そうジンは、不敵な笑みを振りかざしノエルに問う。

 

「わ、私じゃない! テイガーさんは私より下位だったんですよ!? なんで私があんなことをする必要があるんですか!!」

 

 そうノエルは真っ向から否定する。

 ノエルは2位、テイガーはノエルよりはるか下の順位にいた。

 今までの事を考えると、下の者が上の者を襲うのが普通なのだ。

 その工程を踏まえた上で、ジンは新たにこんな推測をした。

 

「その考え自体が間違っていたのかもしれない。もし犯人の目的が、自分の障害になりえる存在をおとしめることだったとしたら?」

「そ……そんなこと」

「殺られる前に殺る。完全に油断しきっている協力体制を結んでいる今しかない……と」

 

 そうジンに言われ、ノエルは激しく動揺する。

 ノエルは確かにやっていない。だが、そういう考えを持つ者はどこかしこにはいるはず。

 ノエルが犯人でなくても、そういう脅威は確かにそこにある。そうなっては、もう誰が味方で誰が敵なのか、無茶苦茶になってしまう。

 そんなことになってはならない。ノエルは必死に疑惑を晴らそうとする。

 

「わ、私にはテイガーさんを襲う動機が……」

「動機? そんなものは探せばいくらでも見つかる。テイガーは新作が出る度に、性能が強化され続けてきたな。なのに貴様は毎回どこかしこか調整されている」

「そ、それは……」

「大きな大会で結果を残したわけでもなく、強化と弱体化を続け。結局お前の成分はキャラ人気が大半だ。もう少しゲーム面でも優遇してほしいと、そう欲望を抱いていたのではないのか?」

 

 そんなめちゃくちゃな動機をジンに押し付けられ、ノエルは冷や汗をかく。

 確かにどこかで思っていたことかもしれない。だが、思っていても行動では実行しない。

 だからこそノエルは否定する。自分はやっていないと。

 

「わ……私じゃない! やったのは私じゃない!!」

「言い訳は……300位になってからしろ! うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 そう叫び、ジンはノエルに斬りかかる。

 ノエルが身をかがめた。その瞬間、突如誰かがジンのズボンを思いっきり下げた。

 

「な!?」

「300位に下がるのはお前だよ。ジン!」

「ラ、ラグナさん!!」

 

 そう勝ち誇った笑みを浮かべるラグナ。

 ラグナの強襲に驚くノエル。

 これでジンは情けない姿を見せ、順位が下がるはずだ。だが……。

 

「ククク。ついに本性を露わしたな。この犯罪者が」

 

 ズボンを下げられたのに、焦り一つ見せていないジン。

 

「だが……下げたはずのズボンをよく見てみるといい……」

「な、なにを。俺は確かにてめぇのパンツごとズボンを下げた。これでてめぇの順位も……」

 

 と、その瞬間。ラグナに衝撃が走った。

 ラグナは最初からジンのズボンなど下げてはいなかった。

 なぜなら、ジンはズボンなんて端から履いていない。

 彼が内側に着こんでいるのは、特注の全身タイツ。

 つまりズボンを下げることなどできるはずがない。ラグナは幻覚を見ていたのだ。

 

「タ……タイツ当身雪風(ダブルファントム)だと!?」

「いやあんたが勝手に勘違いしただけでしょ!!」

 

 この策を必殺技風に言うラグナだが、ノエルからしたら単にラグナの思い過ごしにすぎない。

 そんなことで呆気に取られていると。今度は後ろからバングがラグナを襲う。

 

「大悪党め! パンツと共に地獄に落ちるでござる!!」

 

 そう叫び、バングがラグナのズボンをパンツごと下げる。

 

「ラグナさん!!」

 

 このままではラグナの順位が下がる。

 だが、ラグナもバカではない。すでに手は打ってある。

 ラグナの露出してはならない部分には、パンツではなく己の秘儀、デッドスパイクが噛みついていたのであった。

 

「デッ……深淵に潜む獣(デッドスパイク)とな!?」

 

 ラグナの予想外の策に、バングは驚愕する。

 そんなバングを見て、ラグナは笑みを浮かべた。

 

「バカめ。気がつかなかったのか? 今日の俺は波動Dやっても技がでないことを、なぜなら最初から常時発動状態だったからだ」

「いや知らねえし! つかその絵面の方がよっぽど恥ずかしいし! つかあんたらさっきからカタカナ使ってるだけで大したことやってないけど!!」

 

 そうノエルがツッコミをすると。

 第三の刺客、タオカカがバングに襲いかかる。

 

「むさい人! これでおしまいニャスーーー!!」

 

 今度はタオカカがバングのズボンを下げる。

 だが、ジンとラグナと同じく、バングもただでズボンを下げられるわけにはいかない。

 この時すでに、バングの策は動いていた。

 そう、バングは最初からズボンを履いていない。最初から全てを脱ぎ捨てた状態だった。

 

「きゃーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 

 それを見て、ノエルが顔を真っ赤にして手で顔を隠す。

 

「最初からフルチンって、何やってんですかあんたは!?」

「フ……フルチン(フルティン)ニャス!?」

「いやフルチンでいいよね!? ほとんど読み変わってないし!!」

 

 このバングの策にはタオカカも驚愕していた。

 ただ乙女の恥じらいとかは一切感じられない。タオカカからしたらそういうのはまったく意識が無いのかもしれない。

 そして乙女と猫女に大変な物を見せてしまった自称正義の味方は、他の者達を見下ろし笑みを浮かべる。

 

「バカでござる。パンツを下げられ順位が下がるというなら、最初からこうやって全てをさらけ出せばいいのでござるよ」

「バカはあんただ! 何が正義のヒーローよ! つか女の子に恥部見せてそれでも順位下がってないけど」

 

 ノエルは顔を半分隠しながらバングの方を見る。

 こんな醜態をさらしても、バングの順位は15位(超クローバーZ誕生で順位が繰り上がった)のまま。

 一体どういうことなのか。その真相がバングの口から放たれる。

 

「醜態を晒して順位が下がるというのは、お主ら怠け者の話でござる。拙者はこれまでもギャグポジションの代表キャラとして、そして拙者の声をやっているお方のイメージも踏まえた上で何度も死地をくぐり抜けてきた。拙者がフルティンになったところでプレイヤーは特になんとも思わないでござるよ」

 

 そう豪語するバング。

 確かにバングの声をやっている人は、そういう方面で有名である。

 そこにバングのこれまでのキャラを乗せてしまえば、むしろ醜態をさらしてこそのバングなのかもしれない。

 

「つまり拙者の15位は、中の人を踏まえての15位!! この戦いにおいて拙者の死角はない! 誰もこのイカルガ城を落とすことなど叶わないでござる! ぬはははははははは~!!」

「死角しかないんですけど! とっくの昔にイカルガ城ボロボロなんだけど!!」

 

 そう豪快に笑うバングを、ノエルは救いようのない顔で見る。

 

「お主らにこの難攻不落のイカルガ城を、落とすことができr」

 

 と、その時。

 そう言い終わる前に、突如バングの股間に強烈な蹴りが入った。

 見ると、蹴りを入れたのは現在超クローバーZのライチだった。

 ライチは静かな怒りを沸き立たせながら、重くのしかかるような声で言った。

 

「じゃあなにかい? 元24位のわしは、そのフルティン込みの15位に……。いや、その粗末な汚物に負けたゆーんかいぃぃぃ!!」

 

 そう叫び、ライチは思いっきり蹴りあげてバングを天井まで吹っ飛ばす。

 するとバングの上に付いていた難攻不落のイカルガ城がボッキリ折れ、床まで落ちる。

 それをただ眺めるノエルとラグナ。

 

「落ちた。難攻不落の城、違う意味で落ちた」

 

 そうノエルが言い終わると、後ろからタオカカがライチに抱きつく。

 

「乳の人~!!」

「タオ、もう大丈夫や。汚れた忍者は消滅したで。もう怖いことなんてあらへん」

 

 そうタオカカを優しく抱き寄せ、肉まんを一つあげるライチ。

 すると次の瞬間、なにやらラグナ達の後ろから三人がやってくる。

 それは、ライチ以外の超クローバーZ。バレットとニューとレイチェルだった。

 そして三人は、己のユニットの踊りを披露しながら。ラグナ達の行く手を遮る。

 

「このホテルに立て籠る全ての上位陣に告ぐ。すでにここは、超クローバーZが占拠させてもらいましたわ」

 

 そう後ろの三人が宣告し、ライチが階段の上から笑顔で見下す。

 

「大人しく武器を捨てて、みんなで赤く光るアンタレスのようになろうや」

 

 ライチはももクロの歌の歌詞に合わせて、ラグナ達をこちらの領域に誘う。

 ちなみにタオカカは肉まんで釣られ、あっさりと超クローバーZの仲間入りをしてしまった。

 相手は五人、一方ラグナ達はノエルとジンを含め三人。圧倒的にあちらが有利になってしまった。

 

「ラグナ。まさかこの包囲網をくぐりぬけるつもりか?」

 

 ジンはそうラグナに問う。

 ラグナの答えは決まっている。ラグナは剣を構えた。

 するとノエルとジンも己の武器を取り出し、超クローバーZに対抗する。

 現状は挟み打ちにされている状態。前に行っても後ろに行っても逃げるのは困難だろう。

 絶体絶命の状況。と、その時だった。

 

「!?」

 

 突如、何者かがライチとレイチェルに後ろから迫る。そして両者の身動きを封じた。

 

「そこまでだ。この馬鹿ども」

「こんなくだらない争いをしている場合じゃない」

 

 その人物とは、同じく同盟を組んでいたココノエとハクメンだった。

 

「ぐ……お前ら……」

 

 ライチは背後にて自分を狙うココノエを睨みつける。

 完全に状況は振り出しに戻った。だからこそ今、皆で話し合い解決しなければならないとハクメンは説く。

 

「待てライチよ。これ以上この醜い争いを続けるべきではない。もうかれこれ三話に渡ってこのくだらない争いを繰り広げているのだ。このままでは作品の人気までもが下がってしまう」

 

 そのハクメンの言葉に、一時は沈黙が流れる。

 ハクメンが言っている事は正しい。だがそのような正論で、今順位を欲している者達を、弱者を陥れようとしている荒くれ者どもを抑えられるかどうか。

 変に動けばまたも争いが始まる。ハクメンはなおも冷静に皆に視線を向ける。

 

「まずは冷静に話し合おう。そうだろう道化よ」

 

 ハクメンは一番話のわかる、今刃を向け押さえつけているレイチェルに言葉を向けた。

 すると、レイチェルは顔色一つ変えずに答える。

 

「それは構わないけども。あなた……そろそろ私から離れないと大変なことになるわよ?」

「む? どういうことだ道化よ?」

「私は抵抗できないでしょうけど。後ろ……」

「後ろ?」

 

 レイチェルに指を刺され、ハクメンは後ろに振り向く。

 すると、そこには世紀末の覇道のオーラを身にまとったヴァルケンハインがいた。

 今のヴァルケンハインは北斗のシステムで構成されているため、触れられただけで永久か即死コンボである。

 

「我が主になんというご無礼だ、ハクメン殿……。ホォォォォォォ……」

「……ヴァルケンハインよ、少し落ち着き」

「ホアッタァァァァァァ!!」

「ぬおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 ヴァルケンハインに思いっきり蹴られ、ライチの方へととばされるハクメン。

 するとライチもその一瞬の隙をつき、身を屈めた。

 

「な!?」

「ココノエ博士。あなたにこのわしに敵う道理はありゃせんで。わしに張り合おう言うんなら……プレイヤブル化してから出直してきぃや!!」

 

 そしてライチはココノエをハクメンの方へぶん投げる。

 二人は中央でぶつかり、状況は超クローバーZの有利な方へ。

 

「あんたの人気は実力で勝ち取ったものやない! ただのラジオの宣伝効果や!! 人気が出ればプレイヤブル化するだろうというファンの組織的な活動でもらったおこぼれ票にすぎん!」

 

 そう元上司のココノエに反旗を翻すライチ。

 ココノエとハクメンはこれで脱落。あとは全員を超クローバーZに吸収すればライチは本当の意味でブレイブルーの頂点に立てる。

 と、そう野望を確信したその時。

 

「……ライチ。貴様言ってはならぬことを言った」

 

 投げ飛ばされた中央から声がする。

 そう、ココノエは脱落などしてはいなかった。

 上手く態勢を立て直し、ハクメンと向かい合わせに手を組んで立っていた。

 そしてハクメンにつけていた手錠を解除し、ライチに怒りを向けるココノエ。

 

「この私がどれだけプレイヤブル化を待ち望んでいるか、貴様にはわかるか? CPが発表された時、私が何の話題にも上がらなかった時の私の苦しみを理解できるか。ようやく稼働してプレイヤブル化の目途が経ったというのに全く発表のない今の現状に、私がどれだけ心を揺さぶられているか……貴様に理解できるか!?」

 

 そしてココノエは、そう啖呵を切った後、空高く特製の爆弾を投げ捨てた。

 

「ハクメン、一時休戦だ!! 貴様を捉えるのはあの、アークフェス優勝だか知らないが……プレイヤーの力とも理解できていない調子に乗っているあのバカ弟子を葬ってからだ!!」

「承知した!」

 

 そう掛け合いをした瞬間、投げられた爆弾が爆発し、争いの火種が鳴る。

 全員が同時に散らばり、それぞれが因縁の相手との戦いを始める。

 最初にぶつかったのは、ハクメンとレイチェルだった。

 

「む!」

「う……」

 

 互いに己の順位にひびを入れる。

 そして二人は睨み、動こうとしたその時。

 

「レイチェル様。ここは私にお任せください。今の私はゲームシステムをも超越した存在、いくらハクメン殿とて私には敵うことはない」

 

 そう主人よりも前に出るヴァルケンハイン。

 ちなみにヴァルケンハインも、いつのまにか超クローバーZの一員と化し、8位と表示されている。

 ヴァルケンハインはプレイヤブルキャラの中で最も順位が下だった。CS2以降安定の強キャラと評価をされていただけあって、惜しい順位には屈辱を感じていた。

 そんなヴァルケンハインを、レイチェルは静かに制止する。

 

「下がっていなさいヴァルケンハイン。たまには私も戯言に興じたくなったわ」

「ほう……言うではないか道化よ」

 

 そのレイチェルの物静かな敵意に、ハクメンは敬意を交えて答えた。

 

「世紀末ゲーの力を借りずとも、私は今回のアークフェスにて準優勝を飾った身。CPでは強キャラと言われているあなたでも、今の私には敵ではないわ」

「ならば我も、己の与えられている力の限りで答えよう。主人公の保護者キャラは二人とていらない」

 

 そう自分の格付けを述べた後、ハクメンとレイチェルはぶつかり合う。

 一方で、階段の方ではライチとココノエが己の信念をかけて戦っていた。

 

「ココノエ博士。そろそろあなたがプレイヤブル化しなくてええんですか!? 本当はあなたが一番プレイヤブル化したいんちゃいますの!? ウズウズしてるんちゃいますの!?」

「このおっぱいお化けが!! そろそろその口を閉じないと跡形もないくらいに貴様のその乳を改造するぞ!!」

 

 相変わらずライチにプレイヤブル化の話題を持ちかけられ、ココノエは悔しさをにじませる。

 

「いざ私がプレイヤブル化した時に貴様が調整なしでいたら厄介だ。だからこそ今、貴様をここで葬る!!」

「部下の戦績をキャラごともみ消そうって魂胆? 流石は鬼畜眼鏡、やることがえげつないこっちゃな! だがそんな心配はいらへんでココノエ博士」

 

 そう不敵な笑みをこぼすライチ。

 すると、ココノエが背後に不穏な気配を感じた。

 その正体はすぐに分かった。それはライチの口から語られる。

 

「なぜなら、どうせあなたも含めて全部が……わしらに取り込まれるんやから」

 

 そうライチの言葉と同時に、ココノエが後ろを振り返ると。

 後ろの天井にぶら下がっていたのは、すでにライチ達に取り込まれ廃人と化したバングだった。

 

「ココノエ殿。お主もこちらに来るでござる~!!」

「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 その一方で。

 階段から少し離れたところで、ジンとタオカカが戦っていた。

 

「氷の人を倒せば。タオ達は5位になれるニャス~」

 

 相手は現在のタオカカよりも順位が上のジン。

 当然倒して取りこめば順位が上がる。

 そのタオカカの発言を聞き、ジンは馬鹿にしたように笑った。

 

「ふん。貴様ら首位を目の前に。とんでもないミスを犯したものだな」

「ミス? だってほら、今しっぽのおねーさんを倒したからタオ達は7位に……」

 

 そう、順位が1つ繰り上がろうとしたその時。

 あり得ない事態が発生した。

 

「ニャス! 14位!?」

 

 繰り上がるどころか、8位から14位に下がってしまった。

 これは一体どういうことなのだろうか。

 焦るタオ。そしてその真相を知っているかのように、ジンはニヤリと笑っている。

 

「上位を取り込み順位を上げるとは良く考えたものだ。だが、どうやらその過程でいらぬものまで取りこんだみたいだな」

「ま……まさかニャス!!」

 

 そう、タオの不安は的中していた。

 それはココノエとライチがいる場所にて起こっていた。

 現在の14位とは、バングの順位。そしてバングは超クローバーZに吸収されている。

 そこが問題だった。バングを吸収したことがあだとなり、バングの負のエネルギーに負け一番上の順位に連動するつもりが、バングの順位に連動してしまったのだ。

 

「しまった! いくらなんでもあのむさい忍者を吸収したのは間違いやった!!」

 

 後悔するライチ、だが時すでに遅し。

 バングは下だけでなく、上まで脱ぎだし、何も身につけていない状態になる。

 

「さあココノエ殿!!」

「ちょ! そんな汚いものを私に見せるな! 私だって女なんだぞ!! 汚いなさすが忍者汚い!!」

 

 そう顔を隠し、こんな時だけ全うに恥じらうココノエ。

 だがバングはお構いなしに、ココノエにこう提案する。

 

「今の拙者をもっと辱めれば、ライチ殿達の順位も下がるでござる!!」

「に、忍者……それは本気か?」

「もうこれ以上順位に狂うライチ殿を見たくはないでござる! これ以上は聖母のような優しいライチ殿の印象まで崩れかけないでござる! だからせめて拙者の手で、ライチ殿を元いた位置へと戻すでござる!!」

「と、とは言うが忍者。そんな全裸の貴様をそれ以上どうやって辱めればいいんだ!?」

 

 全裸の上の恥など存在するだろうか。

 戸惑うココノエ。だが戸惑っていても何も解決できない。

 すぐさまその場にジンが駆け付け、容赦なくバングを攻撃する。

 

「ならば僕がやってやる! 全裸にウェストポーチだ!!」

「いいぞジン・キサラギ! もっとやるでござる!!」

 

 そうジンが余計にひどくなるコーディネイトをバングに施す。

 すると負けじとタオカカが、順位を戻すためにバングの元へ。

 

「そうはいかないニャス! いつものむさい人のむさいズボンニャス!!」

「ぬお! 拙者のズボンとポーチを利用して順位を上げたとな!?」

 

 その後もジンとタオカカでバングの順位を上げ下げ。

 知らぬ間にバングはとんでもない衣装になっていたことは言うまでもない。

 それとはまた違う場所で、ラグナとノエルは追い詰められていた。

 相手はニューとバレット。すでに後ろは壁で逃げることは叶わず。

 

「ラグナ~。一緒に身体も順位も溶けあおうよ~」

「断る! そんなもん俺は認めねぇぞ!!」

「そんなんで1位とって意味あるんですか!? ファンの投票を無駄にするつもりですかあんたら!!」

 

 追い詰められた二人は、最後は言葉で説得しようとする。

 そんな二人に対し、バレットは困ったような顔をして仕方なく答えた。

 

「正直私も人気投票なんて興味はないぞ。新参者の私がどやかく言っても仕方のないことだ。だが納得いかない奴らもいるのは事実、ならばこうするのが一番手っ取り早いだろう」

「……ちょっとバレットさぁ。今なんて言ったの?」

 

 そう己の正しいように言うバレットに対し、ニューが納得いかないような顔をした。

 

「いや、もう人気投票なんてどうでもいいからさっさと終わらせようって……」

「それさぁ。なんかずるくないかなぁ? 私達は汚れる覚悟でここまでやってきたってのに自分は仕方なく付いて来ちゃいましたみたいな。巻き込まれて無理やりやらされましたみたいな。そうやってしゃもじに媚ついて一人汚れずに終わらせようってスタンスでしょ? 新参者がどうとか新入りポジション利用してるだけでしょそれ」

「だって興味ないものは興味ないし……」

「あぁ~はいはい! わかりましたよ偉いねバレットは!! 興味ないのに9位なんて取っちゃいました的な!? その余裕も9位たる所以なんだろうねぇ~。やっぱり9位は違うわ!!」

 

 なにやら仲間割れが発生したようだ。

 バレットの発言をきっかけにニューが絡み、二人は喧嘩してしまった。

 

「……なんか仲間割れ始まっちゃんたんですけど」

「今のうちだノエル。今ならこの馬鹿二人を黙らせられる」

「え? どうやってですか?」

 

 急にそんなことを言い出すラグナ。

 いったい何を考えているのだろうか。

 

「ノエル、考えがある。そしてそれはお前の決断が必要だ」

「え?」

「お前は本気でこの争いを止めたいと思うか?」

「は……はい」

「そうか。お前には確か変身能力があったな。それを使えば圧倒的な力の元で、この争いを終わらせることができるだろう。俺はそう考えている」

「ムラクモユニット……ですね」

 

 ラグナの言う考えとは、ノエルがムラクモユニットを起動してパワーアップして、争いを終わらせるというものだった。

 意外な所で、きちんとラグナは考えていた。どうすればこの粗ぶる猛者共を抑えられるかどうかを。

 その結論が、パワーアップしたノエルの力によるものだった。

 

「ま、結局は力づくでの解決だな。てかそれしかねぇ。別に強制はしねぇさ、お前が決めろノエル」

「……やります」

「いいのか? 下手したら今まで必死に守ってきたお前の2位を、汚すことになるかもしれねぇぞ」

「構いません。もうこれ以上、私達ブレイブルーを、この築き上げてきたものを汚すことになるのなら、私一人が多少汚れようが構いません」

「……すまねぇ、ノエル」

 

 いつ以上に素直なラグナ。

 それだけこの作品の主人公として、この人気投票の争いを重く捕えていたのだろうか。

 ノエルはそれに気づかず、ずっと一人で抱え込んでいた。

 だが今知った。自分以上に抱え込んでいた者がいると。だからこそノエルは、その人のために己の力を発揮しようと。

 

「気にしないでくださいラグナさん。いきますよ……ムラクモユニット機動!!」

 

 ノエルが覚悟を決め、ムラクモユニットを召喚する。

 すると巨大な剣が己を包み込み、ノエルはμ-12へと変貌する。

 この力があれば皆を抑え込むことができる。ノエルは沸き立つ力の元そう確信を得る。

 

「ラグナさん! これならいけます!! これならみんなを邪悪な念から救い出すことが!!」

「……あぁ。よくやった……ノエル」

 

 そう感謝するラグナ。

 だがノエルが見遣ると、そのラグナの顔は……まるで勝利に満ちたような邪悪な笑みが浮かんでいた。

 さきほどまでの重い雰囲気を一切感じさせない。

 

「ラグナさん……?」

「俺はずっと考えていたのさ。俺より上の奴……2位のお前を"どうやって落とそうか"を……な」

「……え?」

 

 人が変わったかのように、そう己の心の内を宣言するラグナ。

 そしてその瞬間、ラグナの今まで揺らぐことのなかった4位の順位が、一つ繰り上がり3位となる。

 これは一体どういうことなのだろうか。ノエルは未だに全てを理解できていない。

 

「なんで、ラグナさんの順位が……」

「お前の順位を良く見てみな」

 

 そうラグナに言われ、ノエルが恐る恐る自分の順位を見ると……。

 

「に……20位ーーーーーーーーーーーー!?」

 

 そこに表示されていたのは意外な数字だった。

 先ほどまでの2位が嘘のように、18位も繰り下がり20位まで転落している。

 一体何が起こったのか、ラグナは全てをやり遂げ、その真相をノエルに打ち明けた。

 

「この人気投票、ノエルは確かに2位だ。だがな……お前じゃないもう一人の奴の順位は、26位だったのさ」

「ま……まさか!?」

「そう……μ-12は26位だった!! つまりお前がノエルを捨ててミューになれば、当然ノエルの2位を維持することはできない。俺は……ずっとお前がミューになるのを待ってたんだよ!!」

 

 そう高笑いし、ラグナはミューを見下した。

 さきほどまでのは全てが演技。全てがラグナの作戦だった。

 

「まぁ気に済んなノエル……いやミュー。このままいけばハザマも不戦勝扱いで更に俺の順位が上がる。お前が成し遂げなかったことは全部俺が」

「うわぁあああああああああああああああああああああああ!!」

「ってうおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 調子に乗るラグナ。

 当然騙されたノエルは、ラグナを放っておくわけにはいかない。

 ミューとなったノエルは圧倒的な力をラグナに向ける。

 

「憎い憎い憎い!! この腐った銀髪が憎いぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

「ちょ……お前CS仕様に戻ってんぞ!! 自我を保て! 保つんだノエルーーー!!」

「憎いーーーーーーーー!!」

「あ~。すいませんでしたノエルさん。あなたの順位を返上しますからどうか戻ってくださぎゃあああああああああああああ!!」

 

 憎しみに支配されたノエル。

 こうなることは予想できなかったのだろうか。

 ズタボロになるラグナ。ノエルはラグナの頭を噛みついて離れようとしない。

 結局はノエルも含めて、あっちやこっちやでくだらない争いが起こるばかり。

 もう収まる気配もない。そんな時……。

 

「ぐほ!!」

「うえ!!」

 

 何者かが痴話喧嘩をしていたニューとバレットをふっ飛ばした。

 そこにいたのは、世紀末と化したパクメンとアステカだった。

 そして二人のマスコットは、まるでしゃもじの使いがごとく縦横無尽に暴れまわる。

 各地で起こるジンやハクメンの争いを、北斗のシステムを使い蹴散らしていった。

 

「な……なんだあいつら」

「憎い~」

「おいノエル。そろそろいいかげん頭噛みつくのやめてくれねぇかな……」

 

 と、その時。

 また新たな異変が起こった。

 なんとラグナとノエル、その他全員の順位がとてつもない速さで下がっていったのだ。

 

「な、なんだ!?」

「順位が下がっていく……?」

 

 この事態にノエルもムラクモユニットを解除する。

 ラグナ達は何もしていない。醜態をさらしたわけでも誰かに順位を奪われたわけでもない。

 なのにどうして順位が下がっていくのか。理解に困っていると、奥の方からブリキロボと化したテイガーがこちらへやってくる。

 

「お、遅かったか……」

「テイガーさん!」

「どうやら私達は争いすぎたようだ。格闘ゲームにあるまじき人間の欲が生んだくだらない争い、本来ならば正々堂々と戦うべき格ゲーの世界で、私達は手を汚し過ぎた」

 

 そのテイガーの語りを、ラグナとノエルはただ聞くしかできなかった。

 

「それに怒ったファンが、神となり私達に天罰を下したんだ。そして……問題はここからだ」

「問題?」

 

 そうテイガーにノエルが尋ねる。

 話の本題はこの先にあった。そして、それがこの醜い争いを生んだ核心へとつながる。

 

「このままでは……"奴"の思惑通りだ。神は奴の手により人為的に呼び出された」

「奴……とは?」

 

 ノエルのその問に、テイガーが答える。

 

「この私を陥れ、この争いの火種を生んだ人物だ。原点に帰れ……全ての答えが……屋上で待っている」

 

 そう言い残すと、テイガーはエネルギー切れで沈黙する。

 ノエルとラグナはすぐさま屋上へと向かう。

 すると、そこにはすでに倒されたはずのマコトが倒れていた。

 そして奥の方で、今までけして姿を現さなかった人物。

 この人気投票の覇者。全ての者達が狙いを定めながらも、けして表には顔を出さなかった人物。

 そう、この事件の黒幕は……人気投票第1位――ツバキ・ヤヨイであった。

 

「遅かったじゃない。ノエル」

「ツバキ……なんで……」

 

 そこにいたツバキを見て、ノエルが唖然とする。

 黒幕の正体はツバキだった。それも……人気投票1位の人物が、どうしてこのような事態を巻き起こしたのだろうか。

 

「てめぇ。今までどこに隠れてやがった?」

 

 ラグナがそうツバキに問うと、ツバキはノエルを指さした。

 

「それは……ノエルと同じよ。私も第二の姿を持っている。それを使って、今まで中途半端な順位となって身を隠していたのよ」

「……イザヨイか」

 

 それだけ言われれば全てが理解できた。

 今まで1位が現れなかったのは、1位の人物が1位ではない人物になりすましていたからだ。

 だからこそ1位は揺らぐことはなかったし、襲われる危険性もなかった。

 そうやって高みの見物を決め込み、ツバキはこの状況を安全な位置でただ……嘲笑っていたのだった。

 

「どうして……こんなことを?」

 

 ノエルがツバキに問う。それはとても悲しそうな顔で。

 するとツバキは揺らぐことなく、こう答えた。

 

「私は1位になった後。特にそれを見せびらかすことなく、今までのように平然と、これまでと変わりなく振舞っていたわ。けど視線でわかっちゃうのよ、なんであなたが1位なのよって、あなたじゃなくて今井麻美が1位なんでしょって、結局はラジオの宣伝効果でしかないと、そう陰口を叩かれていたわ」

 

 そう、人気投票が発表された後も、ツバキの1位をよく思わない人が多かったという。

 ツバキは元から人気のあるキャラ。でもラジオを除けば、そこまで表立って印象を与えるキャラでもない。

 ラグナとノエルとツバキ。高順位の三人はぶるらじでパーソナリティをやっている分、それだけキャラを宣伝する機会が恵まれていたということ。

 そのアドバンテージと、闘劇優勝の経歴はあれどどこか印象が薄いツバキが1位という結果。それを妬むものは多かったという。

 

「結局なにかしら理由をつけられ文句を言われる。だから見せつけてやりたかった、その機会を与えてやったわ。そしたら案の定この通りよ」

 

 そう言い終わり、ツバキは悲しい表情を見せた。

 結局こんなことをやっても、自分の抱いた苦しみは晴れることはない。

 だがやってしまったことを後悔しても仕方がない。諦めたかのように、ツバキは自棄になったように、二人に挑発する。

 

「殴りたければ殴ればいいじゃない。順位が下がってもいいなら殴ればいいじゃない。もはやファンはこの争いに飽き飽きしている、その怒り……買う度胸があるならやってみればいいのよ!!」

 

 そう手を振るツバキを、ラグナは真っ先に殺意を込めた目で睨んだ。

 

「上等だ!! 女だろうが容赦しねぇぞ!! 人を弄んだ分だけ、ぶん殴ってやらぁぁぁぁ!!」

 

 そうラグナが向かうより先に、ノエルが前に出る。

 そして躊躇なく、思いっきりツバキをぶん殴るノエル。

 

「ノエル!?」

「ラグナさんの手は汚させない。これはツバキの親友である私の責任です」

 

 そう順位が下がりながら、なおも真っ直ぐな目でノエルはツバキを見る。

 

「ツバキ。確かにあなたの考えはわかる。1位になれば妬まれることだってある。それをあなたはずっと……抱え込んでいたんでしょう」

「ノエル……」

「けど、1位を取った者には取った者の責任がある。1位にはそれだけ作品を盛り上げるだけの責任がある。ラジオ効果? 今井麻美? それも全部……あなたがブレイブルーを盛り上げて来た上での大切な要素じゃない!!」

 

 そう涙しながら、ツバキに叱咤するノエル。

 この言葉、ツバキには届いているだろうか。ツバキは心から受け止めているだろうか。

 いや、きっと届いただろう。ツバキの涙がそれを物語っている。

 

「私だけは知っている。ツバキは心からこの作品を愛している事を!! ツバキは知ってくれている、みんながブレイブルーを愛している事を!!」

「ノエル……うぅ……」

 

 そう硬い友情が、温もりとなって二人を包み込む。

 そんな二人に、ラグナは優しく声をかけた。

 

「てめーらだけじゃねぇ。みんなそうだ。みんなここが好きなんだぜ」

「ラグナさん……」

「上……見てみろよ」

 

 ラグナがノエルとツバキの頭を指さす。

 すると、二人の頭上に浮かんでいた順位は……まごうことなき1位だった。

 その後、ホテル内にいた皆も駆けつけ、二人を胴上げする。

 

「ほらおめぇら! ブレイブルーの二大看板を胴上げしようぜ!!」

 

 そうラグナの声で一斉に、みんなが二人を持ちあげる。

 この作品は全ての者たちの優しさで作られている。今、それを皆が理解し一つとなった。

 ノエルとツバキは目を合わせる。今後も、この優しい世界を、二人で盛り上げていこうと。

 二人は約束する。そして誓う。この先の……この作品の安泰を。

 そう二人が優しく微笑み合うと、急に……落下の速度が上がったような気がした。

 そして今まで受け止めてくれていたみんなの気配がしない。まるでどこかに落ち続けていくような、そんな気がした。

 二人が目を開き上を見ると、そこには屋上にいるラグナ達が。

 そして今、ノエルとツバキはホテルの屋上から落下していた。

 

「「……え?」」

「本当に二人ともおめでとう。そして……どこまでも落ちていくがいい」

 

 そう言い残し、ラグナ達は去っていった。

 どこまでも、どこまでもノエルとツバキは落ちていった。

 

 高い高い蒼穹を舞いながら、どこまでも……。

 

 そしてその落ちゆく中で、二人は思う。

 

 人気投票って……本当に必要ですか……?




この数日でたくさんの評価とお気に入り登録を貰いました。みなさんありがとうございます。これからも蒼魂をよろしくお願いします。
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